「ようこそ真っ赤な晩餐会へ!」
レミリアさんたちに向かってお辞儀をした。
正直、レミリアさんたちは来ないと思っていた。
…でも、紅魔館の皆さんを連れてやってきてくれたことが素直にうれしかったのだ。
「最近異変も起こらないから退屈だったのよ。刺激がほしいと思っていた時に面白そうなものを見つけたから、みんなを誘ってきたわ。今日はお願いね。」
「はい、任せてください!…それで、貴女は?」
執事服を着た女性の方に顔を向ける。
この人、初めましてだよな。
…なんだろう、少し表情が暗い。
「…あ、すみません。俺、月詠陽炎(つくよみかげろう)と言います。紅魔館で執事長を務めている者です。」
そして深々と一礼した。
俺…?
ああ、所謂俺っ娘というやつか。
少し高めの声で、落ち着いた印象だ。
…声が若干震えていたのが気になったけど。
「よろしくお願いします!俺は葉月欧我、写真屋です。さっそくですが、1枚いいですか?」
その女性、陽炎さんにカメラのレンズを向けた。
「はい、構いませんよ。」
その女性、陽炎さんはカメラに向かって美しい笑顔を見せてくれた。
笑顔がぎこちなく見えたんだけど、気の精だろうか。
「それにしても…凄い量の料理ですね。」
「はい、全部俺が作りました!皆さんに唐辛子の素晴らしさを知ってもらうために腕を振るったのですよ。」
「これを全部ですか…凄いですね。俺も料理は出来るのですがここまでは無理ですね。凄いです。」
「えへへ。じゃあ、皆さんにも料理を作ってきます。しばらくお待ちください。」
そう言うとみんなに頭を下げ、後ろを向いて歩き出した。
陽炎さん、具合でも悪いのかな?
さっきから顔色が悪い。
こんな時は辛い物を食べてスッキリとしてもらおう。
「そう言えば豆腐とひき肉があったな。豆板醤も手に入れたし、簡単にアレで行こう。」
靴を脱いで部屋の中に上がり、台所に向かった。
台所では小傘ちゃんがせっせと皿を洗ってくれていた。
「小傘ちゃん、紅魔館の皆さんにお茶を出しておいて。7人分。」
「はーい!」
7つの湯飲みにお茶を注ぐと、お盆に乗せて台所を出ていった。
さあ、さっそく取り掛かろう。
陽炎さんのために、辛い物を…。
…いや、レミリアさんとフランちゃん、そしてこあさんは辛い物を食べれるのだろうか。
ちょっと控えめにしておこうかな。
豆腐の水けをきり、ネギ、にんにく、生姜、唐辛子を細かくみじん切りにする。
フライパンを熱し、油としょうが、にんにく、ネギ、唐辛子を入れて炒める。
…うん、この香りがたまらない!
香りが出てきたら豆板醤を入れる。
ひき肉を投入して色が変わるまで炒め、醤油や鶏がらスープなどの調味料を加える。
沸騰してきたら豆腐を入れて煮込む。
大きさはこれくらいでいいかな?
再び沸いたら弱火にしてさらに煮込み、水溶き片栗粉を入れてとろみをつける。
7つの皿に盛ってごま油を少量かけ、ネギを振りかければ…。
「出来上がり~!!」
やっぱ美味そうだな~。
これは俺が大好きな料理の一つだ。
見る角度によって変わる輝きと、鼻を突く唐辛子の香り、あ~お腹が減ってきた。
丁度ご飯も炊けているし、小傘ちゃんが洗ってくれた茶碗もちょうど7つある。
茶碗にご飯をよそい、お盆に乗せた。
「みんな、喜んでくれるといいな~。」
台所を後にし、レミリアさんたちのもとに向かった。
「あれ、小傘ちゃん。」
小傘ちゃんが陽炎さんと楽しそうに話していた。
「今ね、師匠の写真について話していたんだよ。ねぇ、今まで撮った写真見せたら?」
「うん、いいよ。でも、その前に皆さんお待たせいたしました!欧我特製麻婆豆腐!召し上がれ~!」
みんなから一斉に歓声が上がる。
でも、ただ一人陽炎さんだけはうつむいたままだ。
やっぱり体調が悪いのだろうか…。
「どうしました?」
「いえ、ちょっと昔のトラウマを思い出していまして…辛かった思い出です。」
「そうですか…。でもまあ、食べて元気になってください。」
陽炎さんの前に、器に盛られた麻婆豆腐を差し出した。
…でも、陽炎さんは受け取ってはくれなかった。
「スッキリできますよ?」
「どうしたの?食べないとクビにするわよ。」
隣からレミリアさんが言った。
「食べましょうよ!とても美味しいですよ!」
麻婆豆腐をかき込みながら、美鈴さんも勧めた。
唐辛子を食べると元気になることができる。
気分をスッキリさせることができる。
俺は陽炎さんに元気になってもらいたい。
その一心で、麻婆豆腐を半ば強引に持たせた。
「……。」
「ん?」
陽炎さんは何かをボソッとつぶやいたが、それが何かは聞き取れなかった。
器を持ったまま身体を小刻みに振るわせる。
次の瞬間、陽炎さんは器を地面に叩き付けた。
パリーン!という皿の割れる音が響き渡り、麻婆豆腐は無残にもまき散らされた。
辺りは一瞬でシーンと静まり返る。
俺の中に、ふつふつとわきあがる感情。
せっかくの料理を台無しにされ、俺の気持ちも踏みにじられた。
それよりも…。
食い物を粗末にするんじゃねぇよ…。
「俺に…。」
「ん?」
静まり返ったことで、陽炎さんの言葉を聞き取ることができた。
「俺に…。俺に辛い物を勧めるなァァ!!」
陽炎さんはそう叫ぶと上空に飛び上がり、手の平を俺の方に向けた。
すると、そこにまるで血液のように赤黒く輝く球体の光弾が姿を現す。
それは徐々に成長していき、ドッヂボール2つ分の大きさに膨れ上がった。
「皆さん、下がって!」
2枚の写真を取り出しながら、俺は声を張り上げた。
成長する光弾をじっと見据えながら、テレビとボールが写された写真を重ねる。
「砲符『ブラストショット』!!」
「写符『カーラームブラスト』!!」
放たれた光弾と円柱状のレーザーは2人の中間あたりで衝突し、すさまじい爆発を引き起こした。
激しい爆風の中、俺はじっと陽炎を見つめた。
その表情は、今までの大人しい雰囲気とは全くの別物だった。
一言で言えば…「鬼」だ。
こいつ…イメージ以上に強い。