東方共作録   作:戌眞呂☆

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booty様とのコラボ part.3

 

 よし、上手くいったぞ。

 文さんのスピードを自分に投影させて空を飛びながら、内心でそう呟いた。一方的に褒め倒してこちらのペースに引き込むよりも、まずは千鶴さんがどこから来るのか、つまり拠点を押さえることの方が重要だという考えに至った。拠点を探し出すことができれば、その後の行動や謎の究明の手助けとなることだろう。もちろん取材や写真撮影にもね。

 今、千鶴さんはまっすぐ魔法の森に向かっている。この広大な森のどこかに、千鶴さんの拠点が…

 

 

「あれっ!?」

 

 

 前を行く千鶴さんの姿が忽然と消えた。まるで空気中に溶けて行ったかのように、まるで最初からそこにいなかったかのように。いや、千鶴さんは確かにそこにいた。じゃあ、どこに行ったのだろうか…。

 これが、千鶴さんの能力…。

 

 

「やっぱり、一筋縄じゃあ行かないよね」

 

 

 うん、ここまではイメージ通りだ。いくら褒め倒して冷静さを失わせても、いつかは途中で正気に戻るはず。追跡を逃れるために姿を消すことはイメージできたよ。

 でも、流石にここからの捜索は難航するだろう。こんな広大な森のどこを捜せばいいのやら。まあ、千鶴さんが魔法の森にいると言う事を掴めればそれで十分か。

 

 

「さて、と」

 

 

 地面に降り立ち、じっと魔法の森を眺める。このうっそうとした広大な森のどこかに、千鶴さんの拠点があるはず。でも、どこを捜せばいいのやら。ここで考えていても進展はなさそうだし、まずは入ってみよう。一歩ずつ着実に、森の中へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

「…あれ?」

 

 

 え?ここは…どこだ?

 目の前には、開けた大地が広がっている。いつの間にか森を抜けたみたいだ。ってか、魔法の森ってこんなにも小さかったけ!?入って数分しか経ってないぞ!?まあいいや、戻ってみよう。

 

 

 

 

 

「いいところに!今日こそあたいの強さを欧我に魅せてあげるんだから!」

 

 

 え、霧の湖!?どうしてこんなところに来てしまったんだ?俺は真っ直ぐ来た道を引き返したはずだぞ。それなのに目の前には広大な湖、そして遠くには妖怪の山が見える。

 

 え、弾幕ごっこ!?ちょっ、ちょっと待って!!あぶなっ!?

 

 

 

 

 

「はぁ、一体どうなっているんだ?」

 

 

 息を切らし、地面に座り込んだ。目の前には再び広大な草原が。ここ、前にも来たことがあるよな?え、無い?もう訳が分からねぇよ…。

 チルノちゃんから挑まれた弾幕ごっこを数分で片づけ、今度はイメージで地図を脳内に映し出して森に飛び込んだが、全くイメージとはかけ離れた場所に辿り着いてしまった。

 

 

「なんかもう頭が混乱しそうだ…」

 

 

 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!『俺は今森の中心を目指して歩いていたと思ったらいつの間にか抜けていた』。な…何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった…。頭が混乱している。催眠とかワープとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。

 

 あるアニメのキャラの言葉を真似て言っても、何の解決には至らなかった。こうなると、この森全体に何かしらの魔法なり結界なりが仕掛けられていると考えた方が良いな。仕掛けた者は誰かというと、千鶴さん以外イメージできない。千鶴さんは魔法使いか何かか?とにかく、まずは森の中に住んでいる人たちに会って話を聞くべきだろう。アリスさんか魔理沙さんのいそうなところは…

 

 

「欧我!」

 

 

「ん?」

 

 

 不意に背後から名前を呼ばれ、後ろを振り返る。

 

 

「あ、霊夢さんに藍さん!」

 

 

 目の前に、上空から霊夢さんと藍さんが降り立った。どうしてここに2人が来たのだろうか。もしかして…

 

 

「あら、私もいるわよ」

 

 

「うひぃっ!?」

 

 

「そんなに驚かなくてもいいじゃない」

 

 

 慌てて後ろを振り返ると、紫さんが空中に開いた裂け目に腰を掛け、不満そうに頬を膨らませながらこちらをじっと見つめていた。

 

 

「その登場の仕方は心臓に悪いですよ」

 

 

「それについては私も同感だわ」

 

 

 俺の言葉に、霊夢さんはうんうんと頷いた。霊夢さんはいつもこんなことされているのかな?

 

 

「霊夢まで?そんなの酷いわよ~」

 

 

「まあまあ2人とも、今はそんなことをしている暇はありませんよ」

 

 

 口喧嘩に発展しそうな2人を藍さんが若干呆れた様子で宥める。そういえば、紫さんのせいで完全に聞くのを忘れていたな。

 

 

「あの、皆さんはどうしてここに?霊夢さんがいると言う事は、もしかして異変ですか?」

 

 

「なんで私イコール異変という方程式があるわけ?まあいいけど」

 

 

 小さくため息をつくと、ここに来た経緯を語ってくれた。それによると、霊夢さんの所に「この森には不思議な術がかかり、中に入っても入口に戻ってしまう」という苦情が相次いだそうだ。そこで不思議に思った霊夢さんは紫さんの力を借りて調査に乗り出した。調査の結果、この森には紫さんの能力でも突破できない不思議な結界が張り巡らされていることが分かった。誰が仕掛けたのかは分からないが、その結界を取り除こうと何度もハッキングをかけたが失敗していたそうだ。しかし、調査を繰り返すうちに、ついに解除する方法を発見することに成功したらしい。そこで今回、結界の内部を調査するためにやってきたというわけだ。

 

 その話を聞き、ひとつ確定したことがある。それは、千鶴さんがこの結界に関係していると言う事。千鶴さんが消えたのもおそらくこの結界を通過したからであり、つまり結界を通り抜ける術を知っているというわけだ。じゃあ、何時の間にか森を抜けていたのはその結界のせいだと言う事になるな。

 

 

「それで、欧我はどうしてここに来たの?」

 

 

「…え?」

 

 

 1人で先ほど森で起こった瞬間移動の原因を考ていたら、霊夢さんからそう聞かれた。

 

 

「ああ。俺は千鶴さんを追ってきた」

 

 

「千鶴?聞いたことない名前ね」

 

 

「うん、最近里で話題になっている『正体不明の人形師』の名前だよ。文さんと一緒に取材をしようとしたらぜんぜん応えてくれなくて。だからどこから来たのか突き止めようと後を追ってきたんだ」

 

 

 『正体不明の人形師』の名前を聞いた途端、霊夢さんの眉がピクッと動いたのが見えたけど、何か引っかかる点があったのだろうか。

 

 

「それで、居場所は突き止めたの?」

 

 

「いえ、魔法の森のどこかにいるというのは掴めたんですが、いきなり姿が消えてしまって。空を飛んでいたし、姿を消せるから、千鶴さんはただ者じゃないですね」

 

 

 その他にも、霊夢さんたちに今まで手に入れた千鶴さんについての情報を伝えた。不思議な魅力のある顔立ちや引き込まれる人形劇について、自分が思っていることなども話した。

 その後話し合ったことで、この結界を仕掛けた張本人は正体不明の人形師こと千鶴さんだという結論に至った。

 

 

「そう。じゃあその千鶴っていう人に会って話を聞いてみないとね」

 

 

「みんな、結界を解除することができたわよ」

 

 

 ちょうどその時、紫さんの声が聞こえた。どうやら結界を解いていてくれたみたいだ。

 

 

「よし、では早速中に入りま…」

 

 

 藍さんの言葉が途中で止まった。どうしたのか問いかけようとしたが、それを遮るかのように、脳内に響くエコーのかかった声。

 

 

『我が森に入りし侵入者、術を破りし狼藉、甚だ業腹なるや、直ちに戻る者は罪に問わぬ。即刻立ち去れ。それでも森に進みし愚者よ、心せよ。これより入りしは死地也や。各々努々御覚悟なされよ、そして心の臓を我が前に捧ぐ覚悟ができた者より進むがよい。私はこの森の奥にて待ちにける』

 

 

「これって…」

 

 

「私たちへの警告ね。甘く見られたものだわ」

 

 

 ぼそりとつぶやいた俺の言葉に、霊夢さんが答えた。

 

 

「みんな、心して頂戴。相手はかなりの手練れよ。私はここに残って結界が復活しないように抑えるから、気を付けていくのよ」

 

 

「ええ、頼むわよ、紫。さて、欧我」

 

 

 紫さんと向かい合って頷き合うと、霊夢さんは目線を移動させてじっと俺を見つめた。

 

 

「ここから先は何が起こるか分からない。千鶴っていう人の実力もね。それでも、貴方は行くの?」

 

 

「ええ、まだ写真も撮ってませんから!」

 

 

 霊夢さんの問いかけに、俺はカメラを強く握りしめて首を縦に振った。今度こそ千鶴さんの笑顔を撮ってやるんだから!

 

 

「決まりね。まだ何かしらの結界が仕掛けられている可能性があるから、私と藍は左右に分かれて進みましょう。欧我、貴方はこのまま真っ直ぐ進みなさい。通信札を渡すから、何かあったらこれで連絡を取り合いましょう」

 

 

「はい!」

 

 

 霊夢さんから通信札を受け取り、森の中へと足を踏み入れた。この後どんな敵や罠が待ち受けているのか分からないけど、霊夢さんと藍さんを信じてまっすぐ突き進もう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり、何かしらの結界が仕掛けられていたな。まっすぐ進んでいるのに、さっきのような別の場所に抜けていたという不思議な現象が起こらない。この森のどこかに、千鶴さんの拠点がある。そこさえ掴めれば、また取材なり写真撮影なりができるはずだ。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 何かが迫ってくる気配を感じて慌てて身を翻すと、さっきまで俺がいたところを青い弾幕が飛んで行った。よく目を凝らすと、目の前からたくさんの人形がこちらに迫ってきた。手に持つランスから弾幕を放出し、これ以上先に進むなと言わんばかりに攻撃を仕掛けてくる。

 なるほど、気付かれたか。そう結論付け、懐からボールと石が写った写真を取り出す。相手がその気なら…

 

 

「受けて立ちますよ!」

 

 

 その声と共に写真に意識を集中させると、俺の両側に写真から赤い球体が飛び出し、前方に向かって弾幕を放出し始めた。さらに木の枝が写った写真を取り出すと、そこから棒状の弾幕を大量に放った。 放たれた弾幕は人形を次々と撃ち落していく。もちろん人形も負けじと弾幕を放ってきたので、文さんのスピードで攻撃をかわし、反撃していった。

 しかし、倒しても倒しても人形は次から次に襲ってきて、さらに弾幕の量も密度も増えてきた。これじゃあ埒が明かない。

 

 

「ああもう!」

 

 

 しびれを切らし、懐から写真を大量に取り出した。

 

 

「写符『立体(ソリッド)大進撃』!!」

 

 

 スペルカード発動と同時に写真から立方体や球体、三角錐など様々な立体を作りだし、前方に放った。放たれた立体は前方に飛びながら大量に弾幕を放出し、あっという間に人形を一掃した。

 

 

「よし、今のうちに!」

 

 

 両足に力を込めて大気を蹴り、飛び出した。しばらく行くと、目の前に何者かの人影が見えた。風にたなびくあの黒髪、そして背丈も間違いない。あれは…

 

 

「千鶴さん!!」

 

 

 俺の呼びかけに、千鶴さんは動きを止めて振り返った。サファイアのように輝く眼で、表情を変えずに俺をじっと見据えている。その目に、今まで感じたことのない冷たさを感じ取れた。

 

 とりあえず霊夢さんと藍さんに報告しないと。懐から通信札を取り出した。

 

 

「霊夢さん!藍さん!千鶴さんを…」

 

 

「通信することあたわず」

 

 

「っ!?」

 

 

 今までつながっていたはずの通信札が、突然その効力を失った。ちゃんと繋がっていたはずなのに、千鶴さんの言った通り通信が不可能になってしまった。まさか、千鶴さんの能力って…

 

 

「なぜ追いかけてきた?」

 

 

「え?」

 

 

 表情を一切変えることなく、落ち着いた声で千鶴さんはそう問いかける。千鶴さんが発した声に、わずかながら殺気が含まれている。そりゃあ警告を無視して飛び込んできたから、殺気を含んでいても仕方がない。ここは慎重に答えよう。

 

 

「写真です」

 

 

「写真…ですか?」

 

 

「はい。俺は写真屋です。美しい物を写真として永遠に残したいのです。もちろん、千鶴さんだって」

 

 

 平静を装うと、落ち着いた口調でそう答えた。しかし、千鶴さんの醸し出す殺気や威圧感に影響され、声が震えてしまった。それにあの目。まるですべてを見透かされているような、そう言った目でじっと見つめてくる。

 

 

「そうですか…」

 

 

 千鶴さんはそう呟くと、再びじっと俺を見つめた。一瞬という長い間お互いを見つめ続けていたが、不意に千鶴さんはどこからか太刀を取り出し、引き抜いた。

 

 

「ど、どうして刀を抜くんですか!?」

 

 

 体中から嫌な汗が溢れだし、背筋を冷たい物が駆け巡った。どうして千鶴さんは刀を引き抜いたんだ?さっきから少ししか話していないのに、どうして…。

 

 

「どうして…ですか。分かり切った事を」

 

 

 俺の問いかけに、千鶴さんは呆れたように返した。しかし俺には何の事だかさっぱり分からないし、イメージも出来ない。一体、俺が何をしたというのだろうか?

 

 

「何をした?よもや私が刀を向ける理由が分からないと、そう仰るのですか?」

 

 

 心を読まれた!?考えていた事を当てられて、俺は驚いたのと同時に千鶴さんに対する警戒を一気に引き上げる。幻想郷演技で読んだことのある、地霊殿に住まう覚妖怪の様に俺の心を読んだ事も警戒する理由の一つだが、それだけではない。殺気だ。彼女から感じられる殺気が一気に高まったからというのが一番の理由である。

 警戒しながら、必死にイマジネーションを働かせる。しかし、それでも全く分からない。一体俺が彼女に何をしたというのか?

 頭の中でぐるぐると、彼女が殺気を向けて来る訳を考えていると彼女はため息を吐いて小さく、本当に小さく答えた。

 

 

「永嵐異変」

 

 

「――ッ!?」

 

 

 千鶴さんが言った言葉に、俺は愕然とする。そんな、彼女はまさか、異変の被害者だったのか!?しかし、彼女は再び俺の心を読み、それをすぐに否定した。

 

 

「私が直接被害を受けた訳ではありませんし、ましてや私自身、天狗を恨んでいる訳ではありません。天狗の件は、きっと八雲紫から妖怪の山に対して何らかの制裁が下っているはずでしょうし、私が今更どうこう言うつもりもありません」

 

 

「なら、何で?」

 

 

「疑問に思うか葉月欧我。好奇心を持って私を知ろうとするというのか。笑止。好奇心は猫をも殺すという言葉訳ではあるまいに?宜しい、さらば聴きなさい、彼らの怨嗟の声を。聴いて己が業を知るといい!!」

 

 

 口調の変わった千鶴さんに、俺が疑問に思っている暇など無かった。頭の中に、沢山の人々の声が聴こえてくるのだ。最初は本当に小さく、何の声か分からなかった声が段々と強く、そして激しくなってくる。人々の恨みの声が。大切なものを奪われた、人々の憎しみの声が…

 

 

――親を殺したはオマエか

 

――友を殺したはオマエか

 

――子を殺したはオマエか

 

――妻を殺したはオマエか

 

どうしてお前が生きていて、我らの大切なモノらは死ぬか?

 

許さぬ、許さぬ、許されぬ!!

 

憎し、憎し、憎し、憎し憎し憎し憎し憎し憎し憎し憎し憎し憎し憎シニクシニクシニクシニクシニクシニクシニクシニクシニクシニクシシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ――

 

 

――分かりましたか、あなたの業が

 

 

 はっと、千鶴さんの声によって現実の世界に引き戻される。如何やら俺は千鶴さんの幻覚に掛かっていたようだ。

 

 

「これが、私が貴方に刀を向ける故。私の中に眠る、彼らの怨嗟の声です」

 

 

「俺、は……」

 

 

「葉月欧我、貴方に彼らを思い、泣く権利などない。それは許されない事なのです」

 

 

 俺は流れる涙を拭い、じっと千鶴さんを見た。俺の中には罪の自覚はあったけど、それを真正面からぶつけられて揺らいでいる自分がいる。千鶴さんの言う通り、俺に涙を流す権利は無い。

 

 そして千鶴さんの言った「私の中に眠る、怨嗟の声」。

 もし、それが言葉通りなら…。もし、洪水の被害を食い止めようと治水事業を主導したのが千鶴さんだったとしたら…。自分の中でイマジネーションを膨らませる。

 

 水路、何処か人々から欠落した怨みや憎しみ、そして彼女の人形劇。

 

 全て、彼女が行ってきたことが、全て永嵐異変で傷ついた人々の為なら……

 

 

「悲しすぎる……」

 

 

 俺たちがやった事を、千鶴さんは一人でどうにかしようと頑張って来たのではないのだろうか?

 一人で彼らの苦しみを全て抱えて来たのではないか?

 俺の考えた結論に、俺の思考を読み切っているはずの千鶴さんは一言も答えない。

 

 

「千鶴さ「罪には罰を」……え?」

 

 

 千鶴さんに話しかけようとした途端、千鶴さんが言葉を被せて遮る。

 

 

「しかし私は大罪を犯した罪人を殺すことはしません。何故なら人は死ねばそこで終わり、罪の意識を感じる間もなく逃げられてしまうからです。だから私はどんな罪人だろうと滅多には殺しません」

 

 

 スッと千鶴さんは引き抜いた太刀の先端を俺に構えた。

 

 

「な、何をするんですか!?」

 

 

 何とか出した声は、恐怖で震えている。

 

 

「何をって、多くの命を奪った貴方達に罰を与えるためです。」

 

 

 淡々とした口調が、より恐怖を増長させる。何も言い出せず、俺は彼女の次の言葉を待つことしかできなかった。

 

 

「貴方の罰はその両腕。腕が無ければ自慢の写真を撮れはしまい。貴方にとってそれは写真屋としての死を意味するでしょう?」

 

 

 俺の、両腕を?目線を移し、俺の両腕をじっと見つめた。確かに、この腕がなくなれば、俺はもう二度と写真を撮ることができなくなってしまう。輝く瞬間()を永遠に残すことも、文さんの助手として取材に行くこともできなくなってしまう。

 

 

「それともう一つ。あなたの最愛の人、射命丸文の右腕を奪いましょう。それは彼女にとって新聞記者としての死を意味する」

 

 

 千鶴さんの言葉を聞き、俺は耳を疑った。俺だけじゃなく、文さんにまで罰を与えるのか!?確かに文さんは永嵐異変に加担したけど、それでも人々の身を案じて泣いていたんだ。それなのに、そんな…。

 

 

「構えなさい、葉月欧我。一応スペルカードルールに則ってあげましょう」

 

 

 一言も話せずにいると、千鶴さんは語気を強めてそう促した。

 

 

「ハンデとしてこちらはスペル二枚、其方はスペル制限なしです。それと無粋な思考解析も切ってあげましょう」

 

 

 ここで千鶴さんと戦った場合、俺はどうなるのだろうか。イマジネーションを働かせてみたが、勝ち筋が全く見えない。それに、彼女から漂うオーラや気迫、それに先ほど見せた能力…。俺と千鶴さんの実力差は天地程の差がある。

 でも、ここで負けたら大切なものを失ってしまう。愛するものを守れなくなってしまう。

 

 

「さあ、掛かってきなさい葉月欧我!!愛すべき人を守りたければ己の力で運命を切り開いて見せるがいい!!」

 

 

 絶対に、負けられない。勝ち筋が見えなかろうが、相手が相当の手練れであろうが、ここで負けちゃあならない。愛するものを守るために、俺は全力を出す!

 





これ、欧我君に勝ち目はあるのでしょうか…(汗)
 
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