1ページにまとめようとしたら4000文字を越してしまいましたw
「ふー。」
妖夢が持ち込んだお酒によっていつの間にか宴会に発展してしまった。そのせいで大量の酒の肴が必要になり、さらに幽々子様の夕食と重なって大量の料理が必要になってしまった。そのため、今まで台所に籠って必死に両腕を動かしていた。
突然作る羽目になった大量の料理を無事に届け、今は縁側に腰を下ろして酷使した腕を休ませている。
部屋の中からは相変わらず陽気な声や元気なや笑いが溢れている。
レミリアさんの「う~☆」という声が何度も聞こえたけど、こんなキャラだったっけ?
…まあいいや。
ふぅっと息を吐き、夜空を見上げた。
雲一つ無い空では大きな月が綺麗に輝いている。
何もせず月を見上げていると、障子が開く音が聞こえた。
「欧我、お疲れ様。隣、良いか?」
という陽炎さんの声に「うん。」と頷くと、「ありがとう。」という声が聞こえ、俺の右隣に腰を下ろした。
隣に陽炎さんがいる。
久しぶりに会うことができた親友の隣にいるだけで、心の中に嬉しさと幸せを感じる。星を見上げながら、どんどん心を満たしていく幸せを噛み締めた。
しばらく何も話さないまま二人で空を見上げていたが、「あのさ…。」という陽炎さんの声が聞こえた。
「…欧我、今日は招待してくれてありがとう。欧我に会えて嬉しかった。またこれからも会えると思うと、嬉し過ぎるよ。」
「どういたしまして。俺だって、陽炎さんと再会できて本当に嬉しいよ。心の中に幸せが溢れてきて、今は最高な気分だよ。」
親友と再会できた今の気持ちを、素直に言葉にして陽炎さんに伝えた。優しい笑顔を浮かべ「ありがとう。」と感謝の気持ちを伝えると、陽炎さんはそれに負けないくらいの笑顔で「どう致しまして。」と返してくれた。
そして、再び夜空に視線を移す。
キラキラ輝く沢山の星を見つめていると、「欧我。」という声が聞こえた。
陽炎さんの方に顔を向けると、彼女はうつむいていた。顔にかかる髪によって、表情を捉えることができない。
「私は……欧我が羨ましいよ。」
「どうして?」
「文と欧我は、お互いの事が好きだとハッキリ言えるだろう? そんな2人の関係が羨ましいんだ。」
その言葉を発する陽炎さんは、どこか悲しげな雰囲気を醸し出していた。
「ありがとね。でも、陽炎さんにだって好きな人がいるんじゃないの?」
「いない……いや、分からない…の方が正しいかな?私には、恋愛が何なのか分からないし、深く考えた事も無いんだ。それに……。」
そう言うと陽炎さんは口をつぐんだ。
「私にとって、もはや愛してくれない人を愛するのは辛いことだ。それよりも、私が愛していない人に愛されるほうがもっと不愉快だ。」
「陽炎さん…。」
小さく、小刻みに肩を振るわせながら話す陽炎さんを心配して何か声をかけようとしたが、彼女の「だから。」という声によって遮られた。
「…だから、欧我は恵まれている。私の様な恋愛を知らない者から見ても、2人がお互いを愛し合っているのは手に取る様に分かる。その関係、ずっと大切にしろ。欧我。」
「うん、わかった。」
しっかりと頷き、笑顔で答える。
陽炎さんも笑顔になってくれたが、笑顔の奥に隠れる悲しさと寂しさを見逃さなかった。
「そうだ。酒、飲む?」
「ふふっ、私より先に酔い潰れるなよ?」
「うっ…。うん、頑張るよ。」
鬼が言うとシャレにならないよ。
陽炎さんに見えないように苦笑いを浮かべながら腰を上げると、台所を目指して進んでいく。
久しぶりに再会した親友と腹を割って話し合うには、酒を飲みながらのほうが良いに決まっている。そういえば、こうして2人だけで飲むのは初めてだな。相手は鬼だから、自分のペースを崩されないように気を付けないと。
さっと塩茹でした大量の枝豆と他愛もない会話を肴にして、2人は酒を酌み交わした。
今まで幻想の地で生きてきて、それぞれが経験したこと、腹を抱えて笑った瞬間、潜り抜けてきた異変などを延々と語り合った。
しかし、2人とも「影鬼異変」のことは一切口にしなかった。
なぜなら、それは欧我にとって大切な仲間を危険に巻き込んでしまった苦しい異変であり、陽炎にとっては親友を失った悲しい異変だからであろう。
自分のペースを崩さないように飲んでいたはずが、相手は鬼だ。
すっかり主導権を握られてしまい、俺はもう酔っぱらってしまった。
「なぁ、欧我…。」
「ん?」
「文の胸の事をどう思っているんだ?」
「ぶふっ!?」
陽炎さんから投げかけられた意表を突く質問に驚いて、口に含んだ酒を豪快にぶちまけてしまった。
えっ!?あ、文の…胸!?
「え!なになに!?どうしていきなり!?」
かぁーっと真っ赤に染まる顔。そう、これはきっと酒のせいだ。そう思いたいが…何故心臓の鼓動が激しくなっているの!?
「どう思っているのか知りたいんだ。欧我は、直に見たことがあるんだろう? 聞かせてくれないか?」
「ぎくっ!?」
な…っ。
聞かせてくれだなんて、そんな…。
確かに…確かに見たことがあるけど…
大好きな人の胸だからもちろん大好きなんだけど…って何考えているんだ俺!?
「ふーん、わかった。」
えっ!?
何?なんでそう分かったような顔しているの?俺まだ何にも言っていないよ!
に、ニヤニヤしないでくれ!!
陽炎さんに表情を見られないように真っ赤に染まった顔を両手で覆い隠し、膝の間に埋めた。
隣から「ふふっ」という笑い声が聞こえたけど、頼むから笑わないでくれぇ~!!
「欧我…。」
「ん?」
笑い声が止み、陽炎さんの静かな声が聞こえた。
名前を呼ばれ、未だに真っ赤な顔を上げて陽炎さんの顔を見上げる。
「欧我は文の何処に惚れたんだ?」
「…え?」
どうしてそんなことを聞いたのだろうか。
そう質問したら、頭を掻きながらこう言った。
「私は、興味があるんだ。欧我が文を好きになった理由が。それに、恋と言う物が。」
「そっか…。じゃあ、ちょっと語らせてもらいます。」
杯を傾け、中に残っていた酒をグイッと飲み干した。
そして月を見上げながら記憶を遡っていく。幻想郷に迷い込み、文と出会ったあの日まで…。
実をいうとね、文は俺のすべてを作り上げてくれたんだ。
初めて文と出会ったのが春、妖怪の山で気を失って倒れていたところを助けられたことが切っ掛けなんだ。その時に見た文の優しくて暖かい笑顔を今でも覚えている。今なら分かるけど、俺はその笑顔に一目惚れした。その後文の家に居候しながらブン屋の助手兼写真屋として幻想郷の各地を回り、多くの友達を作ることができたんだ。能力の練習にも付き合ってくれて…あ、そうだ。その時に文が弁当を作ってくれたな。あの時に食べた手作りの玉子焼きがとても美味しかったな。今では俺の大好物だよ。また作ってくれないかな…。
…あ、ごめん。脱線しちゃったね。
この頃からなんだ、俺は文の事が好きなんじゃないかって思うようになったのは。
でも、その時の自分は今の陽炎さんと同じで恋愛というものが分からなかった。だからこのドキドキの正体が分からなかったんだ。
そこまで語ると、盃に酒を注いだ。
夜空から月が辺りを照らし、星が燦然と輝いている。
「そっか…。」
「うん。俺が恋について気付いたのは、真夏に起こったあの異変の時。その時に文のために戦ったことで、自分の気持ちについて知ることができたんだ。」
「永嵐異変…だね。」
「うん、永嵐異変。この異変が起きなかったら、俺達はどうなっていたんだろうな…。」
永嵐異変の時に、俺は文のために命を懸けて戦い抜くと誓った。誰も山に近づけさせないために、九天の滝の真上で異変を解決しに来た人たちと戦ったんだ。…うん、霊夢さんと魔理沙さん、そして幽香さんの3人だよ。小傘が駆けつけて共闘してくれたんだけど、結局は負けちゃったな。
でも、その異変のおかげで、文が大好きだという自分の本心に気づくことができたんだ。異変解決後の宴会の時に初めて文と唇を重ね合わせてキスをした。その時のドキドキと喜び、そして唇の感触は今でも忘れられないよ。
「キス…。」
「うん、キス。俺の初めてを文に奪われたんだよね。まさか文が…」
「なぁ、キスしたらどんな感じになる?」
「へ…?」
ドキッ!
な…なんだ?心がドキッとして…この気持ちは一体?
…酒に酔ったせいではないようだ。
いやいや、まさかそんな訳ないだろ。俺は文が大好きだ。だからこの気持ちはあり得ないはず。
でも、意識してやっているのかは分からないがこのウルウルな上目遣い…。
そんな目で見られちゃったら、もう自分を抑えきれないよ。
頭をフル稼働させ、必死に理解しようと努める。
しかし、理解しようとすればするほどこんがらがり、何も考えられなくなっていく。
「教えてくれ、欧我。」
「っ!?」
陽炎さんの一言によって、何かが外れたような気がした。
ついに俺の頭がショートを引き起こし、気付いたら陽炎さんの顎に軽く握った右手を添えていた。
陽炎さんは俺の行動に戸惑っている様子で、瞳をしきりにきょろきょろと動かし、見る見るうちに顔を真っ赤に染める。
間近で陽炎さんの顔を見ると、その美しさがよく分かる。大人のような整った顔立ちで、真っ白ですべすべな肌は赤く染まっている。
酒に酔った勢いと、可愛さを秘めた美しい顔がさらに拍車をかける。もう、自分を止められなくなっていた。
「お、欧我!何しようとしているの!?」
「何って…キスだよ。」
「そうじゃなくって、教えるんじゃなかったの!?」
「百聞は一見にしかず、だよ。実際にやって教えてあげる。だから、陽炎の唇を俺にくれないかな?」
「たっ、たた確かに教えてとは言ったが……やっぱり……その……!」
その言葉を遮るように、顎に添えた右腕に力を込めて陽炎の顎をクイッと斜め上に向ける。そして、戸惑いの表情を浮かべる陽炎の唇に、そっと唇を近づけた。
パシャッ!
「「誰だ!?」」
唇同士が触れ合う直前に響いたカメラのシャッター音に反応し、同時に音が響いた方に顔を向ける。そこには、みんながニヤニヤという表情を浮かべて俺達をじっと見つめていた。
ただ、文だけは笑いながらも目は笑っていなかった。その光景を見て、一気に酔いが吹っ飛んだ。
「欧我?今、何をしようとしていたのかな?」
「あ…あの…えっと…」
「私以外の女性と…。ふふっ、問答無用…ですよ。」
「そんなぁ!」
その後、白玉楼に欧我の断末魔が響いたのは言うまでもない。