先日、とある方からコラボの依頼を頂きました。
それは、「東方自然録」でおなじみの高速でゆっくりなペペ…うん、ペペ様です。
ペペ様の書いたコラボを基に、欧我君視点に書き換えました。
まだ新婚旅行編の途中ですが、まあその中で起こった出来事ということで、大目に見てください。
あ、このコラボの凌さん視点は、「東方自然録」で見ることができます。そちらもぜひ読んでください。
白玉楼には、今日も穏やかな風が吹いている。何もせずに縁側に座って体中に風を受けていると、自然と心が落ち着いてくる。この数日間、私は欧我と共に幻想郷の各地を回ってたくさんの思い出を作ってきた。数えられないほどの年月をここで過ごして来たというのに、愛する夫と一緒にいるだけで何もかも新鮮に感じられる。
欧我のそばにいると、たくさんの幸せを感じられる。でも、何もせずにのんびりと過ごすこのひと時もまた格別だ。
「ん~っ」
両手を空高く掲げ、大きく伸びをする。自然と口を突いて出てくる欠伸。このままでいると、安らかな夢の世界に旅立って…
「すぅ……すぅ……」
すでに旅立っている人がいましたね。すぐ近くの部屋では紫さんが仰向けに横たわり、気持ちよさそうな寝顔を浮かべている。妖怪の賢者である紫さんは、一体どんな夢を見ているのでしょうか。賢者といえども、寝顔は安らかな少女のようだ。
「よし、いいぞ!」
「はい藍様!」
紫さんだけではなく、今白玉楼には藍さんと橙さんもいる。なぜ八雲一家がここにいるかというと、橙さんがどうしても欧我の作る料理が食べたいと言って聞かなかったからだ。だからこうして3人でやってきた。欧我は食後のお茶を淹れるために台所にこもっている。
今2人は中庭で妖力の修業をしている。藍さんが妖力で飛ばした巨石を、橙さんが同じく妖力で受け止めるという修行であるが、妖力の修業ってこういう物でしたっけ。
「橙、今度はこの大きい物を行くぞ!」
「はい!」
と、橙さんの胸のあたりまであるくらいの巨石を空中に浮かせる。これほど大きい石を受け止められるのだろうか。それよりも、この石って中庭にある石ですよね?しっかりと元に戻してくださいよ。
藍さんが橙さんに向かって石を投げつけたその直後…
「みなさーん、お茶が入りましたよー!」
と、欧我がお盆に湯呑とお茶菓子を乗せてやってきた。
「お茶!?わーい!」
そんな欧我に反応し、橙さんが待ってましたと言わんばかりに飛び跳ねた。しかし、そんな橙さん目がけて巨石は飛んで行く。
「橙、危ない!!」
「えっ?」
慌てて藍さんが妖力を放出し、橙さんの目前に迫っていた巨石を弾き飛ばす。弾き飛ばされた巨石は…
「ん?」
「欧我!!」
真っ直ぐ、欧我目がけて突き進む。慌てて駆け出したが、時すでに遅く…
「がぁっ!!」
ドゴッ!っという音がしたかと思うと、巨石は欧我の頭に激突した。荒々しい音と共に廊下にまき散らされるお茶と湯呑、弾き飛ばされる欧我の身体。欧我に駆け寄って身体を受け止めようとしたが、悲劇はこれで終わらなかった。
「むにゃ……スキマ…ぐぅ……」
欧我の背後に紫さんの隙間が現れると、まるで吸い込まれるように欧我はスキマの中に落ちていった。
「欧我ぁぁぁぁ!!!」
私の悲痛な叫びも虚しく、最愛の夫を飲み込んだスキマは閉じられ、そして消滅した。
「そんな…」
がっくりと膝を突き、項垂れる。こんな時に頭を優しく撫でてくれる、大好きな人はもうここにはいない。
「…っ!」
悲しみと共に湧いてきた感情。それは怒りだ。欧我を何処かへと飛ばした犯人は、畳の上でぐっすりと眠っている。安らか寝顔も、今や私の怒りを助長するだけだ。
「起きなさい!」
紫さんに掴みかかり、力任せに揺すり動かす。藍さんたちに止められようがお構いなしに揺さぶっていると、紫さんはゆっくりと目を開けた。
「あ、え、文?どうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ紫さん!欧我はどこに行ったのですか!?」
「え?欧我は台所にいるんじゃないの?」
その一言に、私の中の何かが顔を出した。
無意識の内に、紫さんの襟を握る腕に力を込める。
「違います!欧我は紫さんが開いたスキマの中に消えていったんですよ!欧我をどこに連れて行ったんですか!?返してくださいよ、私の欧我を返してくださいよ!!」
自分の中の感情を爆発させるように、力任せに揺さぶった。
私の中には、夫を失った悲しみと夫を何処かへと消した紫さんに対する怒りだけしかなかった。
「ちょっ、文!痛っ、いたたたたた!分かった、謝るから離して!」
紫さんの悲痛な叫びを聞き、私ははっと我に返る。欧我を失った衝撃で我を忘れていたみたいだ。
「まずは、貴女の愛する人を何処かへと飛ばしてしまってごめんなさい。寝ぼけていたとしても、私の能力が発動して欧我を何処かへと飛ばしたことは素直に謝るわ。でも…」
そう言うと、紫さんは深々と頭を下げる。
「無意識の内に開いたスキマは、私もどこへ繋がっているのかは分からないわ。だから、スキマを使って欧我をここに連れ戻すことはできないの」
「そんな…」
「だから、欧我が無事にここに戻ってくることを信じましょう」
はらはらとこぼれ落ちる涙。
「欧我ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
絶望に突き落とされた悲しみに任せ、私は最愛の夫の名前を呼ぶことしかできなかった。
うーん・・・
頭がくらくらする。
今、一体自分がどこにいるのか、どんな状況におかれているのか、全く見当がつかない。
わかること…
それは、今自分は生きているということだけだ。
目の前の景色がかすんで見える。
うっそうと茂る木々の隙間からまぶしい光が差し込んでくる。
自分の周りに壁が見える。おそらく、地面にぽっかりと口を開いた大きな穴の中に横たわっている。
くそっ!起きろ…!
両手に力を集中させ、体を持ち上げる。
そうだ。肘を伸ばし、膝を立て…いいぞ。いける!
自分に言い聞かせ、何とか立ち上がろうとする。
しかし、次の瞬間大地が真横に傾いた。
…いや、自分が倒れただけか。
もう、視界がぼやけてきた。頭も痛い…。
そんな目の前に、何者かが下りてきた。
体を揺さぶられていると、だんだんと視界が鮮明になってくる。頭の痛みも和らいできた。俺の目の前には、真っ白なパーカーと黒と薄い黒のチェックの長ズボンを身にまとった青年が心配そうに俺の顔をのぞき込んでいた。
「あー、えーと大丈夫か?出来ればこの状況を教えてほしい。俺は
そんなイケメンの名前は凌さんと言う事が分かった。
この状況と言うのは、おそらく今俺が置かれている状況の事だろうか。
…あれ、ここはどこだ?俺はどこから来た?どうしてここにいる?なぜバラバラになった妖怪がここに転がっているんだ?ナゼなんだ?
「あのーそう言われても俺も何が何だか…覚えてるのは自分の名前と能力位で…。名前は葉月欧我、能力は『空気を操る程度の能力』。あとはさっぱりなんだ」
自分の名前、それは葉月欧我。空気を操る程度の能力を持っている。
自分に関してわかるのはこれくらいしかない。それ以外はまるですっぽりと抜け落ちているのか、全く思い出せない。なにかとても大事なことを忘れているような気が…。それは一体何だろう?
凌さんはすこし首をかしげて何かを悩んでいるようだが、うんと小さく頷くと口を開いた。
「あのさ、記憶喪失か何かなら俺の家来るか?まあ、ここら辺で死んでもらってもあれだし…。他、いく宛無いんだろ?記憶が戻るまで家にいても俺は構わないが?」
「記憶が無いし、そうさせて貰おうかな。因みに何処ですか?ここ」
「ここは『妖怪の山』…
ズキッ…
突然、頭に痛みが走った。しかし、その痛みは一瞬の事ですぐに収まった。
…山。鬼や妖怪、『天狗』…
ズキズキズキッ!!!
「うっ!」
先ほどとは比べ物にならないほどの痛みに襲われ、思わず頭を押さえてうずくまった。
「うぁ く、ぐああ!」
脳にガンガンと響く痛みが走り、堪えきれずに声を漏らした。
それと同時に、脳に響く声。何を言っているのか全く聞き取れなかったが、優しい女性の声が脳に直接語りかけてくる。
誰だ!この声は一体誰なんだ!?
「どうした欧我!…頭か、能力で治しても良いけどあんまり人の人生を狂わせたく無いんだよな。とりあえず大丈夫か?」
凌さんが俺の肩に置いてくれた手から温もりが伝わってきて、そのおかげで脳を襲う痛みがどんどん和らいでいく。
「うう、大丈夫です。少し痛みますが…」
俺の言葉を聞き、凌さんは安心したようにほっと息を吐き、俺の体を持ち上げて肩に担いだ。
「じたばたするなよ?すぐに着くからな」
そう言うと、凌さんは目の前の空間に裂け目を作り出した。
この裂け目を見た時に、頭を軽い痛みが走った。この痛みの正体は一体何だろう。
裂け目を潜り抜けた先には、大きな家が建っていた。
「ほら欧我、水だ。あとそこに座れ、とりあえず落ち着いたあとに思い出せばいい。俺は少しある人にO☆HA☆NA☆SIをしてくるからな!」
凌さんに促されるまま縁側に腰を下ろし、水の入ったコップを受け取った。その後凌さんは家の中に姿を消したが…
「今の凌さんのオーラと言うかなんと言うか……怖かった」
ある人の無事を祈ろう。
それにしても、ここはなんと美しい所だろうか。青々とした木々に眩しくて暖かい日の光。吹き荒れる強風を除けば、のんびりと過ごすにはもってこいの場所だ。
「うーん、何か思い出せそう。けどなー……ん?」
これは何だろう。何かに引かれるように、部屋の片隅に置かれた黒い物体に手を伸ばす。
「ん?頭は良いみたいだな。カメラが気に入ったのか?欧我」
え、カメラ?
いつの間にか部屋に入ってきた凌さんの一言によって、今、自分がカメラを手にしていることに気づいた。どうしよう、人の物を勝手に使っちゃったけど…
「えーとすみません!勝手に触って」
「いや、別にいいんだけどね?どれどれ……うま!撮るの上手くない?めっちゃ綺麗じゃん」
凌さんはたった今撮った写真を見て目を見開いている。俺も、どうしてこんな写真を撮れるのか分からないよ。
「『写真家』か何かか…
その直後、また頭の痛みに襲われた。
『欧我…』
そしてあの声も響いてきた。今度ははっきりと聞こえた。自分の名前を呼んでいる。どうして!?どうして全く知らない人が俺の名前を呼んでいるんだ!?
「く、ううう!ま、また!」
「うーん記憶が戻りそうになると頭は痛むとかがよくある漫画、アニメの定番だが……そう上手くあるものか?因みに今まで反応した言葉は欧我、何だ?」
え、今までに反応した言葉…?
「えーと確か……妖怪の山、天狗、写真家とかですか?でも俺、何でそんな言葉に反応したのかな?でも記憶に関係してそうですね」
どうしてこの言葉に反応してしまったのだろうか。
記憶を失う前の自分と何か関係があるのだろうか。
すると、凌さんは何故か真剣な面持ちになると…
「なあ、欧我。俺さ、多分次反応する言葉分かったんだけど」
「そ、それは何ですか?」
「それはな、sy「凌さん、お昼ご飯何が良いですか?って、お客さんですか?」お前は空気を読め!」
凌さんの言葉を遮るように、家の中から一人の少女が出てきた。
ところで、妖術の修行ってこれでいいのでしょうか。
欧我を記憶喪失にさせて、なおかつ異世界へ送るためには、この方法しか思いつきませんでした。
ご了承ください。