東方共作録   作:戌眞呂☆

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高速でゆっくりなペペ様とのコラボ part.2

 

 腰まである銀色の髪にワンピースを着た少女は、不思議そうな表情を浮かべて俺の顔をじっと見つめている。

 

 

「たく、こいつは葉月欧我。今さっき記憶喪失なところを見つけた。で、ご飯だが欧我は何がいい?」

 

 

「あのー邪魔じゃなければ手伝いか何かさせて貰いたいんだけど…」

 

 

 確かに、せっかく倒れているところを助けてもらったのに、お世話になりっぱなしはなんか申し訳ない気がした。そう言うと、その少女が

 

 

「本当ですか! いやー助かります、じゃあお願いします!」

 

 

 と笑顔で答えてくれた。何だろう、笑顔を見ていると、何とも言えない幸せな気分になる。俺は、笑顔が好きだったのか?

 少女の後について、まっすぐ廊下を進んでいく。

 

 

「ところで、君の名前は?」

 

 

「あ、私は雪と言います!あなたは、欧我ですね。さっき凌が教えてくれましたし」

 

 

「うん、よろしく」

 

 

 雪さんに笑顔で応え、家の廊下を進む。すると、いつの間にか台所に辿り着いたみたいだ。コンロや冷蔵庫など、最新の機器が備わっている。さて、何を作ろうかな?

 

 

 

「あら、美味しそうね」

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

 不意に話しかけられ、驚いて思わず飛び上がった。見ると、いつの間にか雪さんのほかに、金髪のロングヘアでドアノブカバーのような帽子をかぶった女性がじっと俺を見つめている。

 

 

「あ、あの、貴女は…」

 

 

「ああ、失礼。私は八雲紫よ。よろしくね、欧我」

 

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

その女性、紫さんは優しくて、そして何かを秘めているかのような、不思議な笑顔を浮かべている。そんな紫さんの見つめる先を追って視線を移すと、皿に盛られた美味しそうな焼きそばが置かれていた。

 あれ、何時の間にこんなものが?

 

 

「すごいですよ欧我!無駄な動作が一切なく、あっという間に焼きそばを作るなんて!」

 

 

 と、雪さんが目をキラキラと輝かせながら拍手を送っている。

 

 

「え?これ、俺が作ったのですか?」

 

 

 改めて目の前の焼きそばを見つめてみても、これを作っている時の記憶が全くない。これも、無意識の内にやっていたことなのだろうか。写真と料理…。ああ、頭が混乱しそうだ!!

 

 

「そうですよ!でも、これじゃあ少し足りませんね。さあ、私も一緒に手伝うからたくさん作りましょう!」

 

 

「私は多めにね!」

 

 

 その後、雪さんと一緒に大量の焼きそばを作り出した。これを部屋に持っていくと、待ってましたと言わんばかりに紫さんがものすごい勢いで食べ始めた。

 ちょうどその時、凌さんが部屋に戻ってきた。そして、テーブルの上に置かれた大量の焼きそばを見て目を見開く。

 

 

「多っ!!いや、誰が食うんだよ!俺こんなに食べないぞ?雪か?欧我か?……紫、お前か」

 

 

 そう言うと、紫さんの頭に掴みかかる。

 ちょっ、凌さん、抑えて抑えて!

 

 

ばば(ああ)ぼぶ()びばぼ(いたの)ばびばべべぶば(先食べてるから)

 

 

「ここは俺の家だ。俺がいて当たり前だろ。なあ欧我、これ作ったの紫のためか?」

 

 

「はい、雪さんが足りないと言ったので…」

 

 

 そう言うと、ようやく凌さんは紫さんの頭を離して焼きそばを食べ始めた。

 それにしても、頭を掴まれているのに平然と焼きそばを食べ続ける紫さんっていったいどんな人なのだろう。かなりの実力者か、それともただ鈍感なだけか…。

 

 

 

 

 

 焼きそばを食べ終わると、雪さんが何かを思い出したかのように手を叩いた。

 

 

「そう言えば凌。欧我は記憶喪失と言いましたね。よくあるあれですよ!『強い衝撃を与えれば治る』的な奴ですよ!戦った衝撃で思い出すかもしれませんよ!」

 

 

「何でそんなこと知ってんだよ!いや、そうかもしれないけどさ……でも欧我、戦えるか?」

 

 

 凌さんの問いに、俺は頷いて立ち上がった。

 

 

「記憶が戻るかも知れないなら!やりましょう!」

 

 

 雪さんの言った方法は、試す価値があるのかもしれない。戦えば、何かを思い出すことができるかも。

 すると凌さんも立ち上がり、裂け目から2本の刀を取り出して腰に下げる。

 

 

「よし、じゃあやるか。って、言うか技とか覚えてるのか?」

 

 

 俺の使える技…

 頭の中を探ってみると、俺の『空気を操る程度の能力』で繰り出すことができる技の一覧が見つかった。なぜかこの記憶だけは失わずに済んだみたいだ。

 

 

「覚えてますよ。何故か能力、名前、技とかは覚えているんですけど…」

 

 

「都合のいい記憶喪失だな。いかにも戦えと言わんばかりの偶然だな」

 

 

 確かに、俺もそう思う。俺がここにいる理由も、もしかしたら凌さんと戦うためだったのかもしれない。そう言いながら凌さんと共に外に出る。外には既に雪さんの姿があり、紫さんは凌さんの物と似た裂け目を作り出し、扇子で口元を隠しながら胡散臭い笑みを浮かべてこちらを見つめていた。

 

 

「紫はともかく雪はどうやって来たんだよ!」

 

 

「能力で自分のいる場所を書き換えました」

 

 

 凌さんの問いに、雪さんはそう答える。

 

 

「相変わらず凄い能力だな。技とかないくせに…」

 

 

 これが、雪さんの持つ能力ですか…。一体どんな能力なのだろう。

 

 

「さて欧我、始めるか!気絶か参った、戦闘不能になったら決着な。なんでもあり。欧我は殺しても良いぞ、俺不老不死だし」

 

 

 1人で考えていると、凌さんが俺の方を向いて言った。

 いやいや、流石に不老不死と言えど殺すことには抵抗がある。それに、なんか俺も死なないような気がするし。

 

 

「いや、殺しませんよ…じゃあいきますよ!」

 

 二人は高度を上げて屋根より少し高い所にくる。

 

 

「じゃあお先に!神断『ダーインスレイヴ』!!」

 

 

 空気を大剣の形に固め、その中の水分量を操る。すると剣が虹色の光を纏う。それを凌さん目がけて力いっぱい降り下ろした。

 

 

「少し動作が遅いな」

 

 

 凌さんはそう呟くと刀を抜き、俺の振り下ろした大剣と競り合う。しかし、この攻撃はまだ終わりじゃない。大剣から大量に虹色の弾幕が放出され、凌さんに命中して吹き飛ばす。

 

 

「ウガッ!これ空気か。結構威力あるな。少し弾幕が残ってるな。よし、これで全てうち落とす!霊砲『霊丸』!!」

 

 

 凌さんは両方の人差し指と中指、そして親指を伸ばし、銃の形を作る。そしてそこから大量の光弾を打ち出して虹色の弾幕を全て撃ち落とした。

 

 

「今度はこっちからだ!電撃『ガウスカノン』!!」

 

 

 こちらに向けた手の平から電気の太いレーザーが射出され、真っ直ぐ突き進んでくる。これに当たったらまずい。両手を前に掲げ、空気を固めて壁を作り出す。しかし、レーザーはいともたやすく壁を突き破り、こちらに迫ってきた。

 

 

「危ない!」

 

 

 紙一重の所で身体を翻し、何とかかわすことができた。

 

 

「そんな防御じゃ俺の攻撃を防げないぞ!フッキーの様な奴を防御という!双炎『X-バーナーH・B』!!」

 

 

 凌さんは一旦地面に降りると、足を踏ん張りながら両手から火のレーザーを打ち出す。

 火は酸素が無いと燃えない。目の前の空気中の酸素濃度を操り、完全に酸素をゼロにした。案の定、火のレーザーは目の前で火力を失い、消滅した。

 

 

「火は酸素がないと燃えない。俺の正面だけ酸素を無くした!これでその技は使えない!虹符『蜻蛉(かげろう)の舞-巻の壱-』!!」

 

 

 空気を固めて大量の蜻蛉(とんぼ)を作り出し、ばらまいた。それらは同心円状に広がると、それぞれの軌道を描きながら凌さんに向かって猛スピードで飛んでいく。それを見て、凌さんも負けずに攻撃を繰り出す。

 

 

「初めて攻略されたぜ!最神槍(さいしんぎ)『七神槍の裁き』!食らえ!!」

 

 

 すると、凌さんの目の前に7本もの槍が現れた。形や長さはそれぞれバラバラだが、どれも不思議な力を秘めている。

 凌さんはそれらの槍を操って、瞬く間に蜻蛉の光弾を貫いた。しかしそれだけでは終わらず…

 

 

「欧我、避けてみろ!グングニル、天沼矛(あめのぬぼこ)、トリシューラ!行け!」

 

 

 3本の槍の名前を叫び、飛ばした。

 

 

「負けない!記憶の為にも!虹線(こうせん)『ドラゴライズシュート』 !!」

 

 

 目の前の空気を圧縮して虹色をつける。はち切れんばかりまで圧縮したら、こちらへと猛スピードで飛んで来る槍、そしてその先にいる凌さん目がけて虹線を放った。それはまるで、天駆ける龍の如く。

 

 

「やべ! トリアイナ、ブリューナク、ルーン、ゲイボルグ!頼む!」

 

 

 凌さんは危機を感じたのか、残りの4本もまとめて飛ばした。

 虹色の龍と7本の槍がぶつかり、拮抗する。

 

 

「「くっ!行けぇ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺の負けか…欧我強いな!最後は押しきられた」

 

 

「いやいや、こっちもあと少しで押しきられる所でしたから。記憶は戻りませんでしたし」

 

 

 勝負を終え、地面に大の字で寝転がる。勝負の結果、俺はギリギリ勝つことができた。おそらく、記憶を取り戻すことに対する思いが勝負を決したのだろう。

 そんな2人のもとに、紫さんがやってきた。

 

 

「まったく、そんな長い戦いじゃないのに少しハラハラしたわ。あと貴方の弟子が今の騒ぎを聞き付けて此方に向かって来てるわよ」

 

「な!止めろ!今来ると…」

 

 

 すると、上空から何者かが猛スピードで降りてきた。

 真っ白なカッターシャツに、黒いスカート。左右に3つずつボンボンの付いた赤い帽子に、赤い下駄のような靴…

 

 

「師匠! 何ですか今の爆発!」

 

 

 ズキッ!!

 

 この人は…

 

 

「うぐ…」

 

 

 この人は一体…。

 

 ・・・っ!!

 

 

「欧我!」

 

 

 その直後、これまでに感じたことのない強烈な痛みに襲われた。その痛みをこらえることができず、地面に崩れ落ちた。

 頭が割れるような強烈な痛みとともに、再びあの声が響いてきた。

 

 

『欧我…』

 

 

「ウァァアアアアア、グガァァァアアア!!頭が割れる!だ、誰だぁ!頭の中に話しかけてくるのは!!」

 

 

 その声をかき消そうと、俺はあらん限りの大声を上げた。しかし、その声は消えることはなく、逆に強さを増していった。

 

 

「おい!欧我!やっぱり文か…タイミングが悪かったな。これは待つしかないか」

 

 

「うわぁぁぁ!!」

 

 

『私は射命丸文と言います。貴方は?』

 

『わかりました。だから、欧我も私にそのまぶしい笑顔を見せてください。ずっと一緒に、ね?』

 

『うらめしやぁ~!!』

 

『欧我!!』

 

『欧我…ありがとう』

 

 

 この声…。

 優しく包んでくれるかのような、幸せと思いやりに満ち溢れた声…。

 

 忘れていた…。いや、覚えていた。けど思い出せなかった。

 どうして俺はこんな大切なことを忘れていたのだろうか。大切なことを忘れていた悲しさと、取り戻すことができた喜びが体の中で溢れだし、涙に姿を変えて体外に溢れだした。

 

 

 

「記憶が戻ったか? その調子なら戻ったか…これで元の世界に帰れるな」

 

 

 凌さんの声に頷くと、流れていた涙をぬぐった。

 …え、元の世界って?と言う事は、もしかして…

 

 

「え?ここは違う世界なんですか?」

 

 

「お前の知ってる文か?こいつ」

 

 

 凌さんが示した先には、きょとんとした顔で俺を見つめている文の姿があった。しかし、よく見ると俺の知っている文とはちょっと違っていた。妻の方がもっとすらっとしているし、胸も大きい。そして何よりも、この文は幼い。幼い文を見ていると、俺の知っている文は非常に美しくなったんだなぁと思うことができた。

 

 

「そう言えば少しお腹周りや胸が…違いますね」

 

 

 すると文は

 

 

「あんたぶん殴りますよ」

 

 

 と、握り拳を掲げて見せた。

 おお、こわいこわい。性格も全く違う。

 いや、似ている…かな?

 

 

「まあまあ落ち着け。踵落としをしようとするんじゃない」

 

 

 少し落ち着いてきたので、俺がなぜここに来たのかをみんなに説明した。どうしてこの世界来たのか、そしてどうして記憶を失っていたのか。隙間に飲み込まれる直前の出来事は、断片的にしか思い出せなかったが。

 

 

「と、言うことなので戻りたいんですけど、紫さん戻せますか?こっちの紫さんと同じならですが…」

 

 

 そう聞くと、紫さんは凌を見ながら

 

 

「凌なら出来るわ。私でも出来ますけど面倒臭いもの」

 

 

 そう言うと隙間を開いて中消えていった。こっちの紫さんは、俺の知っている紫さんと似ているな。

 

 

「はぁ…分かった、俺が送ろう。痛い方と痛くない方、どっちがいい?」

 

 

 そんなのはどっちでもいい。まずは、一秒でも早く最愛の家族の元へ戻りたい。

 

 

「早い方でお願いします」

 

 

「痛くない方な。ありがとな!また会おう!能力発動『欧我をもとの世界へ』!」

 

 

 その直後、まばゆい光に包まれた。今回の事で、妻の大切さ、そして美しさを再確認することができたし、凌さんや雪さんといった、親友も手に入れることができた。目の前に巨大な石が迫ってきたときは死んだと思ったけど、こういった災難もたまにはいいものだな。

 

 

 

 

 

 眩い光が徐々に収まり、視界が鮮明になるにつれて周りを確認することができた。どうやら、無事に白玉楼に戻って来れたみたいだ。

 

 

「欧我!欧我ぁぁぁ!」

 

 

 その直後、何者かが駆け寄ってきて俺をしっかりと抱きしめた。

 

 

「ただいま、文」

 

 

 抱き着いてきた文をしっかりと抱きしめ、よしよしと頭をなでる。こうして、また文を抱きしめることができて良かった。

 

 

「欧我!心配したんだからね!!欧我がいなくなったって聞いて、私…」

 

 

 文に続き、小傘も俺に抱き着いてくる。そして、無事に再会できた喜びからなのか声を上げて泣き出してしまった。そんな小傘の頭を優しく撫でていると、藍さんたちが歩み寄ってきた。

 

 

「欧我、誠に申し訳ない。私が巨石を飛ばしたばかりに」

 

 

「ううん、私がよそ見をしちゃったから。ごめんなさい」

 

 

「いや、無事に戻って来れたから、もう謝らなくていいよ。それよりも、ちょっとお腹減っちゃった。遅くなったけど、これからおやつでも食べよっか」

 

 

「欧我…」

 

 

「わーい!」

 

 

 ほっと胸を撫で下ろす藍さんと、うれしそうな笑みを浮かべている橙ちゃんに笑顔で頷くと、小傘を残し、文と一緒に台所に向かった。

 

 

 

 

 

「文…」

 

 

 台所に着くと、もう一度文をしっかりと抱きしめた。

 

 

「あやややっ、どうしたの?」

 

 

「今回のことで、俺にとって文は無くてはならない大切な存在だと言う事を改めて実感できたんだ。だから、これからもずっとそばにいてくれる?」

 

 

「もちろんよ」

 

 

 文のその一言が非常に嬉しかった。流れ落ちそうな涙を我慢し、文にお礼の言葉を述べる。そして、2人は口づけを交わした。

 

 

 

「でも不思議ね。私、昔貴方と会ったことあるような気がする」

 

 

「ふふっ、それはどうかな?」

 




 
はぁ、疲れました。
気が付いたら9935文字も書いていましたもん、驚きましたよw

まずは、俺とコラボをしてくれたペペ様、本当にありがとうございました!
これからも、俺の物語をよろしくお願いします!


今回のことで、文の大切さを改めて実感することができた欧我。
これからの生活に期待したいですね。

では、コラボはこれでおしまい。
次は、とうとう異変が起こります。

それでは、失礼します!
 
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