ついにコラボ編が始まりました!
今回コラボをしていただくのは、「東方吼狼伝」でおなじみのMr.SIさんです!!
この方の戦闘シーンを迫力満点に書き切るスキルは素晴らしいの一言で、勝手にお手本にちゃってます。それだけではなく、シリアスな面と甘々なシーン、ギャグシーン、そして臨場感あふれる戦闘シーンのメリハリも絶妙です。
実を言うと、この方とは以前からコラボしてみたいなと思ってました。
では念願かなったコラボ物語、ぜひ最後までお楽しみください。
どうぞ!!
「準備はできたかしら?」
俺の目の前に立ち、優しいまなざしを浮かべる紫さんに向かって力強く頷いた。昨夜紫さんから聞かされたパラレルワールドの存在。今まで数回は耳にしたことがある並行世界だが、実際に存在するなんて思ってもみなかった。そんなものこの世に存在しないと思っていた。しかし、本当に存在し、しかも今からその世界に旅立つなんて未だに実感がわかない。楽しみ半分不安半分と言った感じだ。
パラレルワールドの幻想郷に旅立つために一体どんなものが必要なのか、文たちと話し合い何とか準備を終える事が出来た。調理器具やスープストック、藁の網で出来たカゴ、そして小傘から預かったカメラに結婚式の時に文からもらったエメラルドの指輪…。無い物は現地で調達したり、空気を固めて作り出す事にした。
「そう。では早速行きましょう」
そう言うと紫さんの背後にスキマが現れ、中からは不気味な目がじっと俺を見つめている。このスキマを抜けた先にパラレルワールドがあると思うと、無意識の内に身体がわずかに震えているのを感じた。
「じゃあ、文、小傘、心華。行ってくるよ」
紫さんから目線をそらし、後ろを向いて家族のみんなと向かい合った。3人とも不安そうなまなざしを浮かべていた。
「気を付けてね」
「絶対に戻って来てね!」
「ああ、絶対にここに戻ってくる。約束する」
泣きそうになっている小傘と心華の不安を取り除くかのように優しく抱きしめ、よしよしと頭をなでる。この幸せな温もりとはしばらくお別れだ。
「文、2人をお願いね」
「ええ」
目と目を合わせ、しっかりと頷き合う。そして何の脈絡もなく、それでいて極々自然にお互いの唇が軽く触れあった。
「お守りよ。行ってらっしゃい」
「ああ、行ってきます」
顔が少し赤く染まっている文に笑顔を向け、ふわふわと空中を飛びながらスキマの方に向かった。
「私の目の前で行ってきますのキスをするなんて、もしかして自慢しているのかしら?」
「まさか。そう言えば紫さん…あ、まあいいや」
「何よ!最後まで言いなさいよ!」
紫さんの声を聞き流し、スキマと向かい合った。この向こうに、今から行くパラレルワールドがある。ここでは一体どんな出会いが待っているのだろうか。文と小傘はいるのか、もしいるとしたらどのような生活を営んでいるのか。俺がいない世界で、俺の家族は一体どんなことをして生活しているのだろう。それが非常に楽しみだ。
「行ってきまーす!」
見送ってくれる家族に手を振り、スキマの中に飛び込んだ。
―パラレルワールドの妖怪の山・天魔の屋敷前―
スキマを抜けた先には、かなり大きな和風の建物がデンとそびえ立っていた。そして豪華な門の前には2人の白狼天狗が剣を腰に差した状態で目を光らせている。ここが、紫さんの言っていたパラレルワールドの天魔の屋敷か。茂みの中に隠れ、そっと屋敷の様子をうかがう。この屋敷のどこかにいる天魔さんに会うためにはどうするのが正解なのだろう。姿を見えなくして中に侵入するか、それとも事情を説明して中に入れてもらうか。
「でもな…」
排他的社会を築いている天狗に向かって、異世界から来ましたって言って信じてもらえるわけないよな。こうなると方法は前者の方に限られる。よし、そうと決まったら早速行こう。能力を発動して姿を見えなくし、空中へ浮かび上がった。
天魔の部屋の前に立ち、呼吸を整える。今から天魔に合うと思うと緊張で鼓動が激しくなった。ここに来るまで廊下をふわふわと飛び続け、気付かれる事無く何とか辿り着く事が出来た。この中に、天魔がいる。紫さんからなぜか「小さい」「幼児体型」「ロリ」とそれに関連する言葉は禁句だと釘を刺されたけど、それはいったいどういう意味だろう。天魔ってもっとこう、巨漢でドッシーンと構えているイメージがあるんだけど。まあ、会ってみないと分からないな。深呼吸を数回繰り返したのち能力を解除して、ドアをノックした。
「入りなさい」
部屋の中から、やけに幼い女の子のような、しかし威厳に満ちている感じの声が聞こえた。あれ、声色が俺のイメージと違う。まあいいや、入っちゃえ。
「失礼します」
ドアノブをひねり、恐る恐る扉を開ける。扉の向こう側にはやけに広い部屋が広がっており、豪華なソファとローテーブルがある様はさながら社長室みたいだ。そして向かって右側、豪華で重厚感あふれる黒い机に座っているのが、天魔さ…
「何者だ!!」
「危なっ!?」
自分に向かって飛んでくる何かが視界に入り、ほぼ反射的に飛び上がり、クルクルと回転しながら飛んできた何かを両手でつかみ取った。かなりのスピードで飛んできたからなのか受け止めた両手がジンジンと痛む。
「本…?」
投げつけられた物が何か確認すると、それは何の変哲もないただの本だった。辞書と比べると一回りくらい大きく、薄く、そして軽い。こんなものを弾丸に近い速度と威力で投げつけるなんてどんなパワーなのだろうか。
「その身のこなし、只者じゃないな!」
背後から幼さと威厳溢れる声が聞こえた。少しの驚きと感心したような感じが含まれるその声の主は間違いなくこの本を投げつけた人物だろう。果たして、この本を投げつけた人物は一体どんな容姿をしているのか…な…え?
その人物の容姿を見て、俺は言葉を失った。えっ、この子が天魔さんなの!?
「ち…っ」
紫さんの言葉を思い出し、慌てて言葉を飲み込んだ。全身から殺気と威圧感をたぎらせ、刀の柄を掴んで迎撃の体勢をとっている天魔さんの姿は俺のイメージとかけ離れていた。その姿は
その姿に圧倒されじっと天魔さんを見つめ続けてしまい、天魔さんはその視線にいら立ちを見せ、刀を鞘から引き抜いた。
「お、落ち着いてください!今日はここにお願いがあって来ました!」
「お願い?…私にか?」
天魔さんはそう呟くと俺を見定めるかのような視線を向ける。しばらく見つめ続けたのち、何かを理解したかのように小さく頷くと刀を鞘に収めた。
「いいだろう、話を聞こうじゃないか」
「ありがとうございます!」
天魔さんから放たれていた殺気が消えたものの、警戒は解いてはいないようだ。排他的な社会を築いている天狗のトップなのだから、突然現れた部外者にすぐ心を開かないのは無理もないだろう。しかもさっき投げつけられた本の威力はすごかった。こんなにも小さい体に秘められた力は相当なものの様だ。
「ほほう?つまり、此処とは違う幻想郷。所謂パラレルワールドから来たってことか?」
「はい。葉月欧我って言います。よろしくお願いします」
笑顔を浮かべて自分の名前を述べ、頭を下げた。その後天魔である
「で?その、此処とは違う幻想郷の住人が、私に何の用なのだ?」
「はい。俺の世界の幻想郷で異文化の交流を深めようと言う運動が出来まして。ここに俺の出張料理店を開きたいと思いまして。その提案を持ちかけたのです」
「ふーん?あまり意味は分からないが、その異文化の交流を始めたのは、もしかして紫と言う奴ではないか?」
「え?よく分かりましたね。正解です」
颯希さんがこの異文化交流を言い出したのは紫さんだと言い当てたことに俺は驚きを隠せなかった。一方の言い当てた颯希さんはため息を吐いて何かを呟き、頭を抱えた。その仕草から察するに、紫さんはこの次元の幻想郷にいて、しかも似たような性格をしているに違いない。まったく、この世界でも紫さんは迷惑をかけまくっているのか…。
「まっ、異文化の交流ってのは楽しそうであるから、一応山を徘徊出来る許可書でも発行してやるか」
「本当ですか?」
「あぁ」
そう返答して机の引き出しから一枚の紙を取り出す。これが、許可証なのだろうか。自分の世界での妖怪の山と同じように、ここでも鉄則として天狗やこの山に住む住人以外は妖怪の山を自由に徘徊は出来ない事になっている。しかし、天魔が直々に発行する許可書を持っていれば自由に徘徊する事が出来るのだ。
すらすらとペンを走らせる姿を緊張した面持ちでじっと見つめる。無事に天魔から許可証を頂くことはできたけど、絶対に何かしらの条件が付けられるはずだ。条件によっては食糧調達が出来なくなるのかもしれない。そのように考えていると、書き終わったのかペンを傍らに置いた。
「ほれ、許可書は書いてやった。絶対に無くすなよ」
「ありがとうございます」
小さく頭を下げてお礼を述べ、差し出した許可書を受け取る。手渡された許可証には自由に妖怪の山を徘徊出来る事が書いているが、予想通り条件も記されていた。なかなか難解な言葉で書かれているが、要するに条件はこの2つ。一つ目は「妖怪の山を徘徊する際に、一人以上の監視役を付けること」そしてもう一つが「妖怪の山に危害を加えないこと」だ。確かに妖怪の山に危害を加えないってのは守るべき大前提だろう。しかし、この一人以上の監視役を付けるというのはどういう事なのだろう。
「あの、この監視役って誰ですか?」
そう質問すると颯希さんは顎に手を当てて一考する。
「そうだな…少し待ってろ。今からよう――」
「颯希ちゃん、遊びに来たよ!」
颯希さんの声を遮るようにドンと勢いよく扉が開かれ、元気な声を張り上げながら何者かが入ってきた。完全に不意を突かれた来訪者の登場に俺は驚きを隠せなかった。しかし、それ以上に驚いたのはその人物の顔があの人にものすごく似ていたからだ。大人っぽい優しさを秘め、それでいて無邪気な輝きを放つ瞳に妖艶な魅力を醸し出す艶やかな唇、体の動きに合わせ優雅にたなびく滑らかな黒い髪。そして何よりもそれらすべてが整った顔から繰り出される、胸の高鳴りを引き起こすほどの魅力あふれる笑顔。その人は大好きな人である文と瓜二つだった。この人が、この世界の文なのか?それとも、文に似た別の人物なのか?
「おい。どうしたんだ?」
文に似た人物をただ唖然と見つめていた俺の耳に届く颯希さんの声。その声のお蔭で、俺は現実の世界に引き戻された。
「い、いえ。少し知人に似ていて……」
「ん?もしかして文の事を言っているのか?」
「………え?」
颯希さんの口から放たれた文の名前。その名前を聞き、俺は驚いた表情で2人を交互に見詰めた。
「も、もしかして……こちらの世界にも文が……?」
「あぁいるぞ。パラレルワールドって意味を知らないのか?」
「い、いえ……。自分の世界では颯希さんも、あの文に似た人も見た事がなかったので……もしかしたらと思いまして……」
俺は自分の世界の天魔に会ったことがあるのだが、その人は豪快な性格をした鼻高天狗の男性だった。こんな小さい女の子じゃない。しかもこの文によく似た人は話の流れから考えて文本人じゃないようだ。
「と言う事は、そっちの世界には私はいないって事になるのか……。けど、それはそれでレアなのかもな」
普通パラレルワールドというものは同じ自分が違う世界で生きている事が多いとされている。しかし、確かに今ここにいる2人は俺の世界で見たことが無かった。自分の世界に颯希さんはいないという事実に落ち込むどころか、逆にこの世界の自分の存在がレアだと思い笑っている。たしか心華も同じことを言っていたような。なんだか少し似ている。
自分のことをそっちのけに2人で盛り上がっていることに、部屋に乱入して来た文に似た人はむっと少し口を尖らす。
「なに二人で話を盛り上げてるの?私にも説明してよ」
まあ、確かに途中でいきなり部屋に入って来たからそれまでの俺達の会話については知らないよな。颯希さんはその女性に口端を吊り上げて皮肉気に言った。
「知りたいのであれば、仕事を引き受ける事だな」
「うっ……」
するとその女性は言葉を詰まらした。仕事はしたくないという欲求と知りたいものは知りたいと言う好奇心が心の中でせめぎ合い、苦渋の選択を迫られた様な感じだろうか。腕を組んで、うーんと悩みだす。
「いや、仕事は真面目にしろよ……」
颯希さんの呆れた声が聞こえてきたが、今の俺も同じような気持ちだよ。そうして悩む事5分、仕方ないかと言わんばかりに溜息を吐く。
「分かったよ。颯希ちゃんの仕事を引き受けるよ」
しぶしぶと言った感じだが、どうやら好奇心には敵わなかったようだ。
「そうかそうか、それは良かった」
颯希さんは小さく頷きながらそう言って女性に仕事を言い渡す。その仕事の内容は俺の監視人だった。なんか言い渡された途端少し苦い顔をしているけど、この人が俺の監視役で大丈夫なのだろうか。
「じゃあ、何の話をしていたのか教えてよ」
章は話の内容が本当に気になっていたのか、仕事を引き受けたのだから教えてと目を輝かせていた。なんか純粋な人なんだね。
「よし、仕方ないから教えてやる。欧我とやら、後は任せた」
「はあ!?」
予期せぬ颯希さんからのバトンパスを受け、俺は言葉を詰まらせる。一体どこから話せばいいのか、どの言葉を使ったらこんな人でも理解してもらえるのか、その言葉が全く出てこなかった。
「よし。そこの君、何の話をしていたのか教えて」
「い、いや……その……」
ビシッと女性から指を刺され、さらに戸惑ってしまう。言葉を詰まらしていると、トントンという音が聞こえた。音が聞こえた方に顔を向けると、颯希さんが指で机を叩いている。颯希さんは俺の顔をじっと見据えると、一つの質問を口にした。
「そう言えばな、お前に聞き忘れていたのだ。お前は山を徘徊してなにをするつもりなのだ?」
異世界から交流の深めに来た俺に対して快く許可書を発行してくれたのはいいが、その一番重要なことを話してなかったことに今更気づいてしまった。
「簡単に言いますと、山の中で食材調達をしようと思いまして」
今まで言い忘れていたことに気づき、頭を掻きながらそう説明すると、颯希さんは「食材調達?」と怪訝そうに首を傾げる。
「はい。よろしければ、異世界からの交流の証として宴会でも開きたいと思いまして、よろしいですか?」
「…………それは最初に言う事ではないのか?」
「ははっ、………すみません……」
おっしゃる通りでございます。俺はただ颯希さんに苦笑いを浮かべることしかできなかった。そして、またしても自分を無視して話を盛り上げる俺達に、女性はむぅと口を尖らせる。
「もう、また私を蚊帳の外にして!ほら、仕事をしながら話を聞くから、とっとと行くよ!」
「え、ちょっと?」
まだ話の途中だと言おうとしたが、それよりも早く俺の首根っこを掴み、颯爽と部屋を飛び出していった。その女性の力は予想以上に強く、もがこうにももがけず、俺はただ引きずられていくことしかできなかった。廊下をすれ違う白狼天狗の視線が痛かった。本当にこの人が監視役で大丈夫なのか!?そう言う俺の叫びは、俺を引きずる監視役の女性には届かなかった。
果たしてこの後どうなる事やら…。
そしてこの物語は東方喉狼伝に投稿されたものを欧我君支点に書き直しています。
俺とSIさんは1ページにおける文字数が違うので進むペースはバラバラですが、ぜひ「東方吼狼伝」の方も読んでみてください。