「う~ん…。」
…あれ?
俺はいったい何していたんだっけ?
目を覚ましたら目の前に文さんと小傘ちゃんの顔があって心配そうに覗き込んでいた。
「よかった、気が付いた。」
「文さん…。俺は一体?」
「陽炎さんの攻撃を食らって気を失っていたのよ。かなり激しい戦いだったわね。」
「陽炎…さん!?」
そうだ!思い出した!!
俺は陽炎さんと戦いを繰り広げていたんだ。
そして蹴りがぶつかり合った時に起きた爆発に巻き込まれて…。
あ。
陽炎さんは俺の隣に横たわっていた。
…気を失っているのかな?眠っている?どっちだ?
「ん~妖夢…いいぞ…」
眠っているな。しかもなんという寝言だ。
文さんと向き合い、苦笑いをかわす。
…それにしても、鬼になった時はあれほど怖かったのに、寝顔は本当にかわいいんだな。
おもむろにカメラを向けると、その寝顔を写真に収めた。もしかしたら妖夢ちゃんが高値で買ってくれるかもしれない。寝言で妖夢ちゃんの名前を呼んでいたと言えばさらに…ぐふふ。
「欧我、顔が怖いわよ。」
「わっ、レミリアさん!?」
いけね、変なこと考えてた。
止めよ、そんなこと考えるの。
「素晴らしい戦いだったわ。陽炎と相打ちに持ち込むなんて強いじゃない。」
「…いえ、でも力や能力では俺は負けていました。」
「落ち込まなくていいわ。確かに陽炎には底知れない力がある。でも、そんな陽炎をここまで追い込んだあなたの力はまぎれもなく本物よ。」
「レミリアさん…。」
もう一度陽炎さんの寝顔を見つめる。
戦いに発展した理由はすっかりと忘れてしまったが、俺と戦い、お互いの強さを理解しあえた。
何か、お礼がしたいな…。
「レミリアさん、陽炎さんの大好きなものってなんですか?」
「よし、作るか…。」
博麗神社の台所に立ち、袖をまくる。
レミリアさんに聞き、陽炎の好きなものは「抹茶」、「甘い物」ということが分かった。
それに、「辛い物」が大の苦手だということも。
そっか…。
陽炎さんは大嫌いなものが渦巻くこの晩餐会にやって来てくれたんだ。
俺は、そんなことも知らずに強引に辛い物を薦めてしまった。
俺は陽炎さんにひどいことをしてしまった。そのお詫びも込めて、陽炎さんの大好きな甘いものを作ろう。
材料は…。うん、何とかあった。
オーブンを180℃に予熱しておき、バターを湯煎で溶かす。砂糖と薄力粉、そして抹茶パウダーをふるいにかけ、バターの入ったボウルに入れて混ぜ合わせる。
そこに卵と牛乳を流し込み、だまにならない程度に混ぜ合わせる。
…これぐらいでいいかな。
「あれ?欧我、何してるんだ?」
「げげっ、陽炎!?」
良かった、目を覚ましたんだね。
…そうじゃなくて。いきなり来ないでよ、びっくりした。
「ん?何か作ってるのか?見せてもらっていいか?」
「ダメ、秘密!部屋に戻って待ってて。」
「えっ、おい。それよりも俺は喉が乾いてて…お茶を…。」
陽炎さんを驚かせたかったから、とにかく秘密にしなければいけない。
俺は半ば強引に台所から陽炎さんを追い出した。
「お、押すな。戻るから戻るから…。」
ふう、何とかバレずに済んだ。
ごめんね。
お茶は小傘ちゃんに頼むから待っていてね。
…よし、作業を再開するぞ。
クッキングシートを引いた型に生地を流し込み、180度に温めたオーブンで30分焼く。
付け合せは…無いからホイップクリームでもつけておくか。あとは切り分けて皿に盛り、粉砂糖を振りかけてホイップクリームを絞れば…。
完成、抹茶のパウンドケーキ!!
陽炎さん喜んでくれるのだろうか…。
「陽炎さんお待たせ!抹茶のパウンドケーキでーす。」
「えっ!?さっき作ってたの…抹茶のケーキだったのか!?欧我の手作り…ありがとう!欧我!」
「どういたしまして。さあ、召し上がれ。」
「ああ、いただきます!」
陽炎さんは目をキラキラと輝かせ、俺から皿を受け取った。
フォークで切り分け、口に入れた。
「おぉー!口の中に入れた瞬間広がる抹茶のほろ苦さ…。あー、生きてて良かった…。」
「そんなに?じゃあ俺も食べてみようかな。」
台所に戻り、残っていたケーキを切り分ける。それらすべてに粉砂糖とホイップクリームをつけて…っと。俺の分を抜かして6人分か。
まあいっか、戦争でも起こそう。
外に集まった大勢の人に向かって大声を張り上げる。
「台所にケーキがあるよ!先着6人!!」
しーんと静まり返り、みんなの目線が俺に集中した。
「6人、早い者勝ち!よーい、スタート!!」
俺の合図で、せきを切ったように一斉に台所へと走り出す。
霊夢さんの忠告なんてどこ吹く風、博麗神社ではケーキの争奪戦が始まってしまった。
激しさを増す争奪戦を尻目に、陽炎さんの隣に腰を下ろしてケーキを口に入れる。
「あー、抹茶が少ない。失敗失敗。」
「良いんだ。抹茶の量は少し少なかったかも知れないが、俺は充分満足している。だからありがとう。欧我。」
「いやいや、喜んでもらえてうれしいよ。こちらこそありがとうね、陽炎。色々と。」
「ああ。」
「ん!?」
陽炎の方を向いた瞬間、身体を電撃が駆け巡る。
…何!?
なぜ…こんなものが。
陽炎って鬼だろ!
なのに、なんで…犬耳が!?
陽炎さんはケーキに夢中で気づいていないが、明らかに頭から犬耳が生えている。
しかも、真っ白でかなりもふもふだ。
ゆっくりと、そして慎重に右手を伸ばす。
ぎゅっ!
「くぅ~ん。」
俺はびくっとして手を離す。
無意識のうちに耳を掴んでしまった。
にしても…。
「か、可愛い…。」
「可愛い言うな!」
無意識のうちに頭をなでる。
こんな美しい顔なのに、犬耳まで生やして、しかも「くぅ~ん」なんて。
ああ、可愛すぎる…。
「な、撫でるなぁ!話を聞け!だから撫でるなぁ!!」
陽炎さんはそんなことを言ったが、俺の手はもう止められなかった。
しばらくの間、陽炎さんの頭をなで続けた。
「欧我~。」
「ひっ!?」
そんな俺の腕がぴたりと止まった。
後ろを振り返ると、鬼の形相をした文さんが仁王立ちをしていた。
あ…。
その後、博麗神社に欧我の断末魔が響いた。
「あー、残機が一気に10くらい減ったよ。」
「大丈夫か?」
「うん、何とか。」
まさか、文さんからボコボコにされるとはな…。
もしかして、妬いてた?
まあ、陽炎さん美しいからな。
「2人とも、写真撮るよー!!」
陽炎さんと笑い合っていると、小傘ちゃんがカメラを持ってやってきた。
今日1日、本当にいろいろなことがあった。
でも、陽炎という俺にとって最高の友達ができた。
この出会いは、一生忘れられないだろう。
2人で肩を組み、レンズに向かってまぶしい笑顔を浮かべた。
~あとがき~
これで、ゆっくり霊夢様とのコラボレーションは終了しました。
人生初のコラボ物語、いかがだったでしょうか。
はぁ、ゆっくり霊夢様のキャラクターを生かしつつ物語を書くことって難しいですよね。
上手く生かせたのか、それとも生かし切れなかったのかはわかりませんが、とにかく楽しかったです。
ここの欧我と陽炎みたいに、俺にもゆっくり霊夢という最高の友達ができました。
いやぁ、コラボって最高ですね。
ほかにも、コラボをしたい!
欧我を使いたい!という方がいましたら、遠慮なく申し出てください。
では、本編のほうでもよろしくお願いします!
最後に、今回のコラボで多大なる協力をしていただいたゆっくり霊夢様に感謝の言葉を申し上げます。
本当にありがとうございました。
それでは、失礼いたします。
平成26年5月10日 作者:戌眞呂☆