魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第一部 魔界編 第1章 オグマとナタルコン~怨敵は”神の涙”
第1話、魔界のオグマ


 

 おい・・・俺は、何を見てる?

 

 主よ、我が主よ。

 

 何故貴方が、貴方の剣で刺し貫かれている?

 

 主の剣よ、お前は一体何をやっている?何故お前が主を刺し貫いている!

 

 主の防具よ、お前は何をやっている?何故主を守らない、何をいともあっさり刺し貫かれている!?

 

 

 俺は、俺は・・・お前ならきっと主の剣に成れると、主の偉大さにふさわしいと思っていた。

 

 お前ならきっと、あらゆる災厄から主を守ってくれると信じていた。

 

 なのに・・・なのに、なんだそのザマはあっ!!

 

 長年主に仕えて来たこの俺を差し置いて、主の剣に成っておきながら、よくも主を裏切ったな!!

 

 長年主の懐に居た俺なら守れたのに、いま主の身を包む貴様は何故その刃を止められない!!

 

 

 主よ、我が敬愛してやまぬ主よ、どうして・・・そんな奴を己の剣としたのだ!

 

 ずっと懐刀として仕えてきた私を差し置いて、そのような奴等を身に置いたばかりに・・・

 

 

 裏切者め・・・許さぬ!許さぬ!!

 

 何が最強の剣だ!何が無敵の防具だ!!主を守れず、まして主を害するなど!!!

 

 

 

 

 許さぬぞおぉぉぉっ!『神の涙』あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

 

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「ふぅ、こんなもんかな。」

 

 大量の獲物を抱えてご満悦な人熊(ウォーベア)の若者、オグマはそう呟いた。

とある集落に住む彼は、仲間の食料調達の為に近くの谷に出向いていた。根菜や果物、

小さいが栄養価の高い植物の種、そして数匹の小動物など、首尾は上々である。

 

 ここは魔界。地上の遥か下に存在する地下世界。

 

 弱肉強食が支配するこの魔界ではあるが、それでも個々に争いと略奪ばかりが行われている

わけではない。

 集落、団体、そしてパーティ。個々の力だけでは出来ないことが、寄り集まれば可能になる。

例え力の弱き者でも、集団の中での役目というのは必ずあるものだ。か弱き赤子すら将来には

団体をしょって立つ強者になるかもしれない、集落を豊かにする方法を生み出すかもしれない。

 強者もまた、それ故に弱者を支配し、同時に守っていかねばならない。個で出来ることなど

所詮は限られているのだから。

 

 オグマの集落は主に獣人族と知性のあるモンスター、そして数人の魔族で構成されている。

それらを束ねるのがオグマの父、巨人熊ダルダレクだ。身の丈4mを超える巨体を備え

6mはあろうかという戦斧を自在に振るって他を圧倒する強さを備える。

 

 ダルダレクの曽祖父に当たる男は、かつて魔界を支配した伝説の剣豪ヒュンケルの片腕として

その怪力を振るった伝説の人熊、ガルドだと言われている。

 もっとも魔界では先祖の七光りなどなんの意味もない。父ダルダレクもそれをよく弁えており

日々の鍛錬を欠かすことなく、また息子のオグマに対しても常に『強くあれ』と教えて来た。

 

 オグマはそんな父を尊敬し、常に指標としてきた。いつか自分もあんな強者になって

仲間たちを守り、導いていける存在になりたいと思い続けていた。

 が、悲しいかなオグマは父や先祖ほどの才能は見えなかった。生まれつき体が小さく、

力も他の獣人族はおろか、同年代の魔族の仲間にも力比べで勝てない。

人熊なのに非力な存在、そんな嘲笑を受けることが彼の日課に、そしてコンプレックスになっていた。

 

 だが彼は常に前向きに生きて来た。己を鍛える事を日々の日課とし、集落の仲間とも

積極的にコミュニケーションを取って来た。生来の明るい性格と偉大な父のその背中が

彼にネガティブな思考へと舵を切らせなかった。

 今日もこうして仲間の為に食料調達に出かけ、十分な成果をもって帰宅することが出来る、

皆もさぞ喜ぶことだろう。

 

「ササドの種が取れたからミルグの奴が喜ぶな、アイツ魔族の癖に肉嫌いだからなー。

ビブワナの実はまぁ全部酒になるんだろうな・・・あんな酸っぱい水の何がいいんだか。」

 帰宅してからの皆の対応に思いを馳せながら溶岩の谷を歩く。地下世界である魔界だが

決して漆黒の闇の世界ではない、そこかしこのマグマがこうこうと灯の代わりを成し、

また天の大地もうっすらと発光し、おぼろげながら魔界に光を与えている。それが

地上の遥か上にあると言われる『太陽』の光なのか、それとも天の大地そのものが

発光物質を備えているのか、そんな事はオグマには知る由も無かった。

 

 魔界は暗く、そして時に明るい。そんないつもの道を帰宅するオグマ。

 

 

 だが、彼は見た。己の集落が、いつもより遥かに明るく照らし出されているのを。

 

「なっ!?」

 

 集落が燃えている。家が、櫓が、柵が炎に嘗め尽くされ、熱波と赤に彩られている。

荷物を放り出してオグマは走る、ただ事ではないその事態に、集落の皆を案じて駆ける。

 

「どうして・・・何があったんだ!あんなに燃え広がるまで止められないなんて!」

 あの父がこんな事態になるまで行動を起こさないはずが無い。いや、集落には他にも

火の扱いに長けた者もいれば(ヒャド)系呪文を使える者もいる、間違ってもあんな

燃え広がるまで放置されるはずなど無いのに!?

 

 集落の門に飛び込む。むせ返る炎と煙の中、彼の目に入ったのは門の際に立つ柱。

なんだこれ?こんなのあった・・・か・・・

 

 炎に照らされたその柱の上部に彫られているのは、彼のよく知った同年代の友人、その『顔』。

「ミ・・・ルグ?」

 それは柱では無かった。彼の友人の魔族が石化した状態でそこに佇んでいたのだ。

 

「なんだ・・・こりゃ。誰が、こんなもん、作ったんだよ・・・」

 オグマは背筋を凍らせながらやっとそれだけを絞り出す。そう、分かっている、

これは彫刻なんかじゃない、日々顔を合わせている仲間そのものじゃないか!

 

 彼は恐る恐る周囲を見回す。そこには彼の予想通りの、そして最も見たくない光景が広がっていた。

 

 そこかしこにある石象、そのひとつひとつが彼の良く知っている顔、そして体。

集落の仲間がそこにもあそこにも、石に変えられ佇んでいた。燃え盛る炎に様々な角度から

照らし出される友人、隣人、仲間たち、その『成れの果て』。

 

「あ、あああ・・・」

 オグマは心の芯から競り上がってくるものを感じた。それは恐怖、そして絶叫。

どうして?分からない。何が起こっている?みんなは・・・そして俺は・・・どうなる!?

 

 不安と焦燥と、そして恐怖が絶叫という音を奏でようとしたその刹那。

 

 

『何故だぁっ!何故貴様らが我らを襲う、何が狙いだ・・・精霊どもおぉぉっ!!!』

炎をかき消す父の声、オグマすら聞いたことのない怒りに満ちた咆哮。

 

 -集落の英雄ダルタレクの、魂からの、最後の雄叫び-

 

 




ダイの大冒険の二次創作ながら、ダイもポップもほとんど登場しない物語、とりあえずスタートです。
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