魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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ちょい短め、勢いで投稿。


第107話 きらりんのお礼

「「いよおぉぉぉぉっし!!!」」

 跳ね起きたオグマを取り囲む一同が、魔界の戦士の復活に一斉にガッツポーズを決める!

「オグマさん、良かった!」

涙目のきらりんがオグマの肩に手を置いて安堵の表情を見せる。

「きらりん殿・・・そ、それに、父!?みんな??」

周囲を見回したオグマが、その場にいる面々を見て素っ頓狂な声を上げる。無理もない、

彼が意識を失う寸前にはいなかった故郷の父が、仲間たちが、自分に笑顔を向けているのだから。

 

「俺らもいるよー、オグマ兄貴!」

「覚えてますか?僕です、マルタです!」

「おお!マルタにザンか、見違えたぞ!!」

 成長した2人の少年に嬉しそうに応えるオグマ。かつて別れる時に「立派な戦士になる」

と言ったあの言葉を早くも実現し始めているではないか!

 

 が、今は感傷に浸っている時ではない。

「そうだ・・・奴は、天界の戦士ヒュンケルは・・・うおっ!?」

 立ち上がったオグマが周囲を見渡して思わず叫ぶ。サルトバーンの戦士たちも、そして

職人たちもみんな石像と化してしまっている・・・かつての忌まわしきわが集落と同じように。

「おのれ・・・輝きのシア、そして・・・魔界皇ヒュンケルっ!」

 

 彼らの輪から一人だけ外れている少年が、倒れ伏したまま石に変えられている獣人の元で嘆く。

「ワニの大将・・・あんたが、真っ二つかよ!」

 ぎりっ!と歯噛みして倒れているクロコダインを見るヒム。かつてデルムリン島で俺を

叩きのめした彼をこうも呆気なく叩っ斬るとは・・・何者だ!

 

 と、クロコダインの体から、そしてこの地にいるすべての石像から、光のモヤがぽっ、と灯り、

ゆっくりとその体から離れていく。

「あれは・・・いけない!魂が昇天しちゃう!!」

 きらりんが悲痛に叫ぶ。魂があれば石化を解くことで元に戻すことも可能だろう。しかし

天に還ってしまったらもう手遅れになる・・・

 

「魔族の人!お願い、この人たちも石化を解いてください!」

「ダメだよきらりん!みんな重症なんだよ、元に戻しても誰が治療すんだい!!」

 ずるぼんが珍しくきらりんを叱りつける。だがそれも無理なき事、仮に今彼らの石化を解いたら

そのまま肉体が死んでしまうだろう、もはやきらりんもずるぼんも魔法力はカラなのだから。

皮肉にも致命傷を負った彼らの体は石化したおかげで、出血も脳死進行も止められているのだ。

だが、このまま魂が天に昇ってしまえば、肉体が生き帰っても植物状態になるしかない。

 

「んじゃ、こいつらの魂をキープしときゃいいんだな。」

 ヒムその返しにほぇ?という顔をするきらりん。キープって言っても、どうやって?

そのヒムはおもむろに”魔法の玉”を取り出すと、高々と天に掲げて玉の能力を発動させる。

「イルイルっ!!」

 

 -キュイィィィ・・・ン-

 魔法の玉が鳴動し、たちまち周囲を飛ぶ魂がその玉に吸い込まれていく。ものの20秒もせずに

昇天しようとした魂は、残らず玉に吸い込まれた。

「おう、さっすが神のアイテム!こんだけ吸い込んで余裕じゃねぇか。これでいいのか?」

きらりんに笑顔で球を見せるヒム。ま、これでちったぁこの小娘も俺の事を見直すだろう・・・

「すごいすごい!魂を吸い込んで保存できるなんて・・・そんなアイテム初めて見ました!」

キラキラした目でアイテムに感激するきらりん。ヒムは「そっちかい!」と体をがくっと傾ける。

 

「ヤツは・・・どこに行った!?」

「たぶん・・・次の柱を斬りに行ったんだ!一本目もあの有り様だしな。」

 周囲を見回すオグマにでろりんが真っ二つになった柱を指差してそう発する。確かに奴は

「2本目はどこだ?」と言っていた。ここの柱だけではなく、全ての柱を斬って魔界を

落とす腹なのは間違いない。

 

「そうはさせぬ!急がねば、きらりん殿、みんなっ!!」

「だね!こっから一番近いのは・・・あの世界樹んトコの柱か!」

オグマの激にずるぼんが答える。が、きらりんが困り顔でそれに続く。

「ダメ・・・私もう魔法力が無いから、ルーラが・・・」

 

 しょげる彼女の肩をぽんと叩いて笑顔を見せたのは父でろりんだ。にかっ!と笑って一本の

小さな羽根を見せる、キメラの翼(ルーラアイテム)だ!

「こいつで一端サルトバーンに戻って、そっから誰かにルーラで連れてってもらおうぜ!

走るより早いだろ。」

 おお!と一同手を打って感心する。ルーラが使えなくなった時の為に、サルトバーン直行の

キメラの翼を用意して貰っていたのだ。

 

「父よ、みんな。すまないがここにいる皆の石を壊す者がないように見張りを頼めないか・・・

皆、俺の大切な同志たちなのだ!」

 オグマが里の皆に、マルタとザン、そしてヒムにそう言って頭を下げる。かつてオグマ自身も

それを懸念して彼らに元に竜の棘を野良モンスター除けに備えて来た。ましてここにいる

大勢の者たちは魔界を閉じる計画に抗う者たちだ。精霊が復活を恐れて石を破壊に来る

可能性も否定は出来ない。

 そしてもうひとつの事情、あの魔界皇ヒュンケルに彼らを相対させても、おそらく歯が立たない

だろう。自分はナタルコンと共に己を高めて来たが、彼らは集落でシアに石にされた時から

そう時間も経っていない、己を鍛えレベルアップしていたワケでは無いのだ。

 

「何言ってんだよオグマ!俺に留守番しろってか?」

「オグマの癖に生意気な!俺がその精霊ぶっちめてくっからお前がここにいろよ!」

「ズルいぞ、伝説の魔界皇ヒュンケル、俺にも見せろよ。」

 威勢よく反対するオグマの友人たち。彼らにしてみれば自分たちが石化している間、

オグマ一人に負担をかけて来たのだ、頼りっぱなしで居られるかよ、と意気を上げる。

 

 が、その面々を制したのは、オグマの父ダルタレクだ。

「オグマよ、ワシらを雑用に当てる以上、必ず勝って帰って来い。」

「父よ・・・」

尊敬する父を見上げてオグマが返す。相変わらず大きい人だ、体も、そして度量も。

「これはオグマの戦いだ!いいなみんな。」

その鶴の、いや熊の一言にオグマの友人たちはやれやれ、と意思を引っ込める。

「・・・仕方無ぇ、心置きなく戦って来い、オグマ。」

 一番の親友ミルグの言葉に、オグマは力強く頷く。彼らがここを守ってくれるならば

俺は全力でヤツらに相対できる・・・頼むぞ皆!

 

「んじゃ、行くぜー。みんな集まれ!」

 でろりんがキメラの翼を掲げ、オグマとずるぼんが脇に集まる。が、きらりんだけは

「ちょっと待って」と目配せすると、ヒムの方にとことこ歩いていく。

 

「魔族のお兄さん、色々ありがとう、本当に助かりました。」

「ンだよ今更改まって・・・ま、まぁわかりゃいいさ、俺の・・・」

 と、きらりんはヒムに寄り添うように密着して、その頬に顔を近づけると・・・

 

 ちゅっ。

 

「んなっ!!!???」

頬を抑えて、目をむいて、奇声を上げて飛びずさるヒム。今コイツ何をした???

「今はこれしかお返しできません、全て終わったら魔王の名において必ずお礼をします。」

ぺこりと頭を下げ、きびすを返してでろりんの方に駆けていくきらりん。

 

「ヒューヒュー、モテるねぇヒムぅ。」

「たらしてんなぁ、隅に置けない奴め・・・」

からかうマルタとザンに、ヒムが顔を真っ赤にして反論する。

「バッカ野郎!そんなんじゃねぇよ、アイツはなぁ・・・」

 と、そこまで言ってようやく気付くヒム。そういや俺はこの体になってから、アイツに

会ってなかったんだ・・・どうりで知らない奴のような対応をされてたワケか。

 

 後ろでは集落の面々が、左右にはマルタとザンが、そして装備している親衛騎団の面々が、

そろいもそろって俺をニヤニヤした目で見てやがる・・・思わず口をヘの字にして汗と鼻水を

たらしつつ、唇を当てられた頬を掻くヒム。

 

「だーっ、もう!さっさと行きやがれ!!」

 合流したきらりんが笑顔で手を振っているのを見て思わず悪態をつく。とにかくこの場に

俺とアイツがいると、どんどん俺が変な立場になっちまう・・・全く。

 

 -キランッ-

 キメラの翼が発動し、サルトバーンに飛んで行く4人。剣豪ヒュンケルとの第2ラウンドを

控えて、彼らの心境は結構バラバラだった。

(うう・・・俺ですらきらりんにはキスしてもらって無ぇのに、あの野郎・・・)

くだらない事に悩んでいるでろりんを見て、やれやれと首を振るずるぼん。きらちゃんも

そろそろ色気づく頃かしらねぇ、と娘を見る。

(あの魔族さんかっこよかった・・・また会えるといいな、えへへ。)

あー、顔赤らめてるわ。こりゃホレたわねぇ、と悟ってくすくす笑う。そろそろ春を思うお年頃か、と。

 

そんな中、オグマだけは来たるべき再戦に闘志を燃やし、そして考えを巡らせる。

 

 

(俺が、奴に勝つには・・・やはり、”アレ”しか無い!)




過酷な戦いの中、たまには砂糖をひとさじ。
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