魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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演説回。


第115話 たったひとつの可能性

() () () ! () () () () () !!!」

 

 

 その空間を静寂が支配する。2秒、3秒・・・そして5秒。

 

(は・・・はぁ?)

 でろりんとずるぼんが口を台形に広げ、鼻水を垂らして思わず呟く・・・作戦って、そんだけ??

 

 言いたいことは分かる。オグマの強さはナタルコンあってこそだ、光の闘気と暗黒闘気を

お互いに高め合うことで己の地力を極限まで伸ばし、数々の強敵を打ち破ってきたのだから。

 だが、今そのナタルコンは自ら、本来の主、魔界皇ヒュンケルの元に戻り、あまつさえ

その刃で一度はオグマを刺し殺して見せたのだ。その結果こそがナタルコンが二度と戻らぬ

敵である証拠なんじゃないのか・・・。

 

(愚かな・・・我が主はヒュンケル様のみだ、今更貴様に迎合するなど・・・)

 当のナタルコンも冷めた目でオグマを見つめる。ようやく居るべき場所に戻れたというのに

何故今更主の元を離れ、敗北が確定している側で戦わねばならぬというのだ。

 蘇った覇者の剣を振るう主は天地魔界に敵などおらぬ、そして魔界を滅ぼした暁には、

あのシアを、主を一度は殺した精霊を、この手で葬ることが出来るのだぞ・・・

 

 そんなナタルコンの心の嘆きを聞き取ったかのように、続きの言葉をかけるオグマ。

「俺ではどうやってもその男には勝てん。だが・・・お前と俺なら必ず勝てる!!」

 

 そのセリフに、その場にいる全員がえっ?と反応する。ヒュンケルさえもが「ほう?」と

アゴを撫で、懐にいるナタルコンを見下ろす。そのナタルコンは呆れたように半目になり、

かつての相棒の的外れな言葉に心で返す。

(馬鹿な・・・自惚れにも程があるぞ・・・)

 

「己の敵を知れ、褒めよ、学べ!父が残し、お前が褒めた戦いの心得だ、覚えているだろう!」

(そうだ、そのオグマの戦いの哲学こそが、光の闘気と言う武器を得るきっかけだったな・・・)

 

「ならば!誰よりもその男を、魔界皇ヒュンケルを知り、尊敬するお前こそが、その男を

倒しうる唯一の存在だ!そうではないか!!」

 

 -ざわっ!!-

 

 その言葉が、ナタルコンの心に烈風となって吹きつける。

 

「ナタルコン!俺はお前を相棒だと、そして戦士だと思っている。残念だが俺はお前を

その男ほど上手くは使えん・・・先程の刺突、まさに見事であった・・・だが!」

神妙な語りから、一度言葉を区切って声のトーンを上げ、叫ぶオグマ。

 

「その男の手にある限り、お前は()()()()()()だ!」

 

 まさかの言葉に目を見開き、真っ赤に充血させてオグマを睨みすえるナタルコン!

 

「俺はその男ほどお前を上手く使えぬ!だからこそお前は”魔剣”として力を発揮した!

俺が未熟だからこそ、お前は魔界一のひとくいサーベルとなり得たのだ、そうだろう!!」

 

 かたかた、と震えるナタルコン。その上ではヒュンケルが(こいつが?)という顔で

懐刀を見下ろしている。あの脆く、繊細に扱わねばいつ折れるか分からないこのナタルコンが・・・

 

「その力を持って、魔界の覇者に挑んで、勝利してみせようではないか・・・今、この場で!!」

 

(お、おおお・・・我が、この、魔界皇ヒュンケルを・・・たお、す・・・?)

 

 

 それまで固まっていたでろりんが、オグマの主張を後押しする。そうだ、それをオグマは

俺達に託してたんじゃねぇか!

「そうだ!やいナタルコン、真空呪文(バギ)は、暗黒闘気はどうしたい!なーんもせずにただ

振るわれてるだけじゃねぇか・・・楽してんじゃねえっ!」

 

 きらりんがそれに続く。今のナタルコンはかつて自分を褒めてくれた貫録を感じないよ・・・!

「そうです!あの勇者ダイと互角に張り合った真空極限斬撃(バギ・エグゼド・クロス)は、光熊・暗黒剣(オグマ・ナタルコン)

どうしたんですか!今の貴方なんて魔剣でもなんでもないですっ!!」

 

(ぐ・・・うぬぅっ!)

 心の芯に響く言葉を浴びせ続けられ、ナタルコンは混乱状況にあった。そうだ、主の手に

ある我は、常にいたわられながら使われていた・・・だが、あのオグマの手にある時、我は常に

己の力を全力で使い、時には限界すら超えて戦ってきた。我は・・・どちらが・・・

 

 

「ハッ!止めな二人とも。ソイツに何言ったって無駄だよ。」

「「えっ?」」

 説得の腰を折ったのはずるぼんだ。彼女は心底軽蔑したような口調で、今のナタルコンを

皮肉る言葉を続ける。

「ソイツは楽したいんだよ、頼もしいご主人様に気を使われて、弱い相手にゃ闘気で、

強敵にはそのゴツイ剣で、たまにさらっと使ってもらって・・・そりゃ楽だよねぇ、

『ゆりかごの中』は!」

 

 -びりびりっ!-

 侮辱極まるその台詞に、ナタルコンの感情がスパークする・・・

(おのれ・・・だが、その通り、では、ないかッ!!!)

「見てらんないねぇ、巣立ったはずの雛鳥が、元の巣に戻って親に甘えてる姿なんて、さ。」

手を広げ、やれやれのジェスチャーをするずるぼん。

 

 それもまた彼女なりの交渉術、ナタルコンに対する挑発と奮起を促す憎まれ口であった。

元々ニセ勇者一行として楽して世渡りをしていた頃の自分を今のナタルコンに重ねて、

彼のプライドを見事につっついて見せる。

 

「もうよせ、ずるぼん殿。」

 侮辱を止めたのはオグマだった。怒りと憤りに震えるナタルコンを見かねたのもあったが

何より彼のこれからの剣生が、あまりにも空虚であろうと思われたから。

「ナタルコン!魔界最強の強敵に挑んでみたいとは思わないか?お前は魔剣であり、戦士だ。

その男とずっと居続けたとして、お前の満足する戦いはこの先、訪れるのか!?」

 

『我の・・・満足する、戦い・・・』

 ついに空気を震わせ、言葉を返すナタルコン。

 

 そうだ、この先魔界を閉じた後、あのシアとの戦いなど何程の事も無い。所詮精霊が

いくら覇者の剣を使おうとも、我が主の剣技にかかれば即両断は疑うべくもない。

その先も、我は無敵を誇る主を見守るだけではないのか。だが・・・

 

 あのオグマと組み、この最強の剣士と対決する・・・この先何千年、何万年生きたとしても

そのような機会などありえるであろうか!少なくともシアとの戦いなど比べるべくもない、

我が長き生涯を掛けた、己の大舞台が目の前にあるのでは・・・ないのか?

 

「そうだそうだ!お前はオグマと共に在ってこそだろうが!」

「オグマさんといたほうが、ずっとずっとカッコいいですっ!!」

「あんたも男だったら、プライドのひとつも見せてみな!」

 

 そしてオグマは、もう一度最初の言葉を放つ。いろいろ喋ったが、言いたいことはそれだけだ!

 

() () () ! () () () () () !!!」

 

 

「面白い話だな、ナタルコンよ。」

 未だ震えて動かないナタルコンに声をかけたのは、誰あろう魔界皇ヒュンケルだ。

「俺は、お前と共に在りたいとは思っている。だがお前がもし俺を倒すほどの力を秘めて

いるならば、それを見たいとも思うぞ。」

にやり笑って、ナタルコンの刃を右手でつまむヒュンケル。そしてそれを己の頭上に掲げて・・・

 

「お前が決めよ、ナタルコン!」

 

 -ビュゥオォッ!!-

 

 スナップを効かせ、小さなモーションでナタルコンをぶん投げるヒュンケル。まるで

レーザービームのように航跡を引いて向かう先、それは先程と寸分違わぬオグマの心臓の位置!

 

(そうだ、ついさっき主も言っておったでは無いか。強さなど敵無くば無意味だと!

この先、最強の武器を手にした無敵の主が望むもの・・・それは敵では無いか・・・

それに・・・我が・・・成る!)

 

 -バッチイィィィ・・・ン!-

 

 ナタルコンは投げられながら、起動を変える事は無かった。

 

 彼の頼もしい相棒は、心臓に刺さる寸前で彼の刃を、右手で握りしめていた。

 

『よくぞ・・・止めたな、オグマ。』

 

「・・・お前に、最初に習った技だったから、な。」

 

 -我を振れ、我の刃に果物でも刺さっていると思え、剣を振ってその実を飛ばし、

  アレにぶつけるつもりで振れ!-

 

 

 ナタルコンの中で、何かが砕けた。

 

『お人好しめが、己を殺した相手をたやすく信じおって!』

「俺をあっさり殺す魔剣、味方なら頼もしい限りだ!」

 

 暗黒闘気が魔剣を包む。光の闘気が人熊を輝かせる。瞬時に何度も光と闇に包まれる

ひとりと一振りの戦士、点滅の旅にその闘気が加速度的に膨らんでいく!

 

「いよっしゃぁ!!」

「来たよ来たよぉーっ!」

「うん、うんっ!」

 歓喜するでろりん一家。その先でヒム、マルタ、ザンは、信じられないくらいに増幅されていく

オグマの闘気を愕然とした表情で眺めていた・・・なんだ、あんなのアリかよ!!

 

 -カッシャアァァァ・・・ン-

 オグマの腰にあったナタルコンの鞘、ロン・ベルクに拵えて貰った、光と暗黒の闘気を

同時に使う為のナックルガードが、再びナタルコンと一体化する!

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

『ヌウゥゥゥゥゥゥム!』

 

 -光と闇が、再び交わる-

 




 別シナリオ。

オグマ「ナタルコン!ベンガーナのデパートで俺が助けてやったのを忘れたか!」
ナタルコン「おお!我が主オグマ様」

ヒュンケル「ちょっと待てやコラ!」
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