魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第12話 リヴィアスvsオグマ&ナタルコン

『(魔法力!)』

 開始の合図の杖が地面に落ちる直前、ナタルコンは相対する人間の戦士から発せられる力を見て

驚愕の声を心で上げた。

 

 -どずっ!!-

 

『オグマ!よけろおぉぉぉっ!』

 開始と同時だった。オグマが見据えていた決闘相手リヴィアスの持つコーンランスが瞬時に、

そして一切の気配無く、大きくなったのを。

 

「・・・っ!?」

 辛うじて体をそらすオグマ。その頬をコーンランスがえぐっていく。オグマの脇をリヴィアスが

風を巻いて通り過ぎていく。

 

 状況を理解しないまま、オグマは咄嗟にナタルコンを振るう。既にリヴィアスは10mほど

離れたところで体をこちらに向き直し、槍で刺突の構えを取る。

 

 バチィン!

 そのコーンランスが大きく弾かれ、思わず体制を乱すリヴィアス。突然の衝撃に驚きつつも

彼は何が起こったのかを瞬時に悟る。

真空呪文(バギ)か!あのナイフ、魔法を備えていやがる!」

 

 地面に片手を付いたまま相手に正対するオグマ・・・何だ今のは?ヤツは手も足も一切

動かさずに、ただ間合いだけを一気に詰めて来た。そのため自分に向けていたその槍が

敵の体ごと一気に大きくなったように見えたのだ。

 

飛翔呪文(トベルーラ)だ!・・・ヤツめ、どうりであんな武器を使うわけだッ!』

 ナタルコンが苦々しくそう伝える。この立ち合いの初撃でナタルコンが描いていた

勝利への青写真は完全に消し飛んでしまった。

 コーンランスという武器はその形状から1対1の決闘には向いていない、殺傷力のある攻撃が

突きのみに限定されるからだ。横薙ぎの攻撃がただの打撃になり、柄側に石突きも

付いていない以上、横や後ろに回られたらただの重りにしかならない。

 その上、正対したとしても突きが決まる間合いは極めて限定的だ。手を引いた時に相手が

刃先より先に居なければならず、そこから突いた時に相手に届かなければ意味が無い。

 本来は軍隊での歩兵や騎馬などが横並びで、槍ぶすまを作って相手の陣形を突き崩すように使う武器。

 

 そんなコーンランスを使う相手に対して、オグマとナタルコンならば対応策は明らかだ。

刺突の届かない所から真空呪文で封殺するか、槍の内懐に飛び込んで、オグマの光の闘気で一撃を

食らわせてやればいいだけの話だ、そのはずだった。

 

 だがこの相手は、飛翔呪文でまるで地面をすべるように移動して攻撃してきた。

たったそれだけでこの武器が持つ欠点はほとんど消え去ってしまったのだ。

 まず間合いの調節が自在なこと。接近しても容易に間を空けられて刺突の間合いにされる、

離れて真空呪文で攻めても高速で移動されれば命中は困難で、わずかなスキをついて

接近してくる。

 何より刺突の構えを取ったまま移動されるのは脅威だ、常に渾身の一撃を準備したまま

正中線を乱さず、ここぞという間合いに来た時に必殺の一撃を放てるその戦術に、

ナタルコンは苦戦を確信する。

『オグマよ、動け!止まっていたら嬲られるだけだ!』

 

 

 リヴィアスは突きの構えを取ったまま、すべるように円を描いて移動する。正面から攻めては

飛んで来る真空呪文をまともに食らうことになる、それを防ぐために横の動きを混ぜ込み、

呪文のスキをついて一気に間合いを決め、貫き倒すために。

 が、相手の人熊はナイフを鞘に納め、自らの足で走り出す。真っすぐに向かってはこず、

動く自分に対してジグザグに走りながら間合いを詰めてくる。

 

「獣の代表として出てくるだけの事はある、戦いをよく知っているな!」

 足を止めている相手なら間合いの調節は自在だ、いつでも好きな時に刺突の間合いに入り、

突き終わったらさっさと退避すればいいだけの話、だが相手が動いているならそうはいかない。

敵の狙いを読み、一撃を叩き込むそのタイミングを計る戦いが要求される。

 

 リヴィアスは飛翔呪文(トベルーラ)で後退しながらオグマを誘い込むと、一転して

飛ぶ方向を変え、向かって来る相手の右側を通過する進路を取る。

「シャアァァァッ!!」

 そしてすれ違いながら突きの連打を繰り出す。すれ違う時の距離を刺突の間合いに

合わせてあるから、狙いを付けずに連打してもうまくいけば命中する、という狙いで。

 

 ガッチイィィィ・・・ン

 

 連撃のひとつがオグマの脇腹を捕らえる。だがその突きはオグマの持つ光の闘気と、

身につけている竜鱗鎧(スケイルアーマー)によって防がれ、小さな刺し傷程度に

とどめていた。

逆にリヴィアスのほうがその衝撃に「何っ!?」と、飛びながら驚愕の表情をする。

 

「スケイルアーマーとはな・・・」

 己の槍に刺さった竜のウロコをむしり捨てながらリヴィアスは毒づいた。このコーンランスは

突きの威力が完全に一点に集中するため、牽制程度の突きでも相手を刺し貫くことは可能だ。

 だがこの相手は、強靭なスケイルアーマーに己の闘気を通してさらに強化している、渾身の

突きでないと、その防御を突破するのは困難だろう。

 

「がっ!」

 そのリヴィアスの頭に何かが直撃する。貫かれて間合いが開いた瞬間にオグマが素早く放った

斬撃が生んだ真空呪文が、一時距離を開けたと思って油断した彼に一撃を食らわしたのだ。

たらり、と鼻血を垂らしながら、己の油断を反省しつつも闘志を相手に向ける。

「・・・やってくれるな!」

 

 一矢報いたオグマだが、浅いながら傷を負っており、追撃は出来なかった。なんとか

一発返して仕切り直すだけでも上等というものだろう。

「甘く・・・見て、くれるなよ、人間!」

 

 臍を噛むリヴィアスに、息を切らせながらオグマが返す。

 

「ならば、戦いのレベルをひとつ上げるぞ、ついて来れるか、オグマとやら!」

 そう言うと同時に、リヴィアスの体が浮き上がる。飛んでしまえば飛翔呪文(トベルーラ)を使っているのが

ハッキリと分かる。

『コッチもいくか!』

「おうっ!」

 ナタルコンのハッパに応えるオグマ。光の闘気を使ったことにより、ナタルコンの力は反発して

上がっている。

 

 空中から突進してくるリヴィアスに、ナタルコンを上段に構えるオグマ。だが槍と短剣で、

しかも相手が飛翔呪文を使うならば結果は明らかだ。リヴィアスもそんな物で!と

螺旋を描きながら突っ込んでいく。

が、直後に彼はぞくり、とした悪寒を覚える。短剣の発する暗黒闘気が、その刀身の先に何かを

つぎ足したような気配を感じたからだ。

 

『闘魔真空斬っ!』

 短剣に真空呪文の刃を足し、ロングソードと化したその剣を上段から打ち下ろす。それは

飛んできた槍と交錯し、強烈な火花と衝撃音を撒き散らす。

 

 ギュワァァッチィィィ・・・ン!

 

 交差の直後、振り向いたオグマが見たのは、空中で逆さまになっているリヴィアスの姿だ。

「今だ!」

こちらは地に足がついている、相手は天地を逆にしている、今ならこちらが先手を取れる!

そう思ってすかさずナタルコンを振る、当たれば勝ちだ!

 

 だが、リヴィアスは逆さまになったまま、その一撃をランスでいなす。そしてそのまま

飛翔呪文で横にスライドし、そこから刺突を放ってきた。逆さまの姿勢のままで!

 

 ガリュゥゥン!

 

 オグマは幸運だった。相手が狙ってきたのはナタルコンを握る右手の甲だったのだ。

装備していた竜の牙の手甲が辛うじてその一撃を防いでくれたのだ。

 

 だが相手は逆さまのまま動き続ける。そう、飛んでしまえば上も下も無いのだ。そして接近

したかと思えば、そこから強烈なケリを放つリヴィアス。

 

「ぐぅ、っ・・・!」

 本来ありえない角度からのケリを首筋に食らいよろめくオグマ。だが体は咄嗟に次の攻撃を

警戒して、大きくナタルコンを横薙ぎに振る、しかし手ごたえはない、どこだ?

 

 バコォン!

 

 なんと真下からオグマにドロップキックがめり込む。リヴィアスはなんと飛翔呪文でオグマの

股の下に潜りこむと、背を地につけた状態でオグマの腹を蹴り上げたのだ。

 

『なんという奴だ!飛翔呪文(トベルーラ)を細かく使ってあらゆる方向、あらゆる角度から!』

 転がって逃げるオグマに握られたままそう吐き出すナタルコン。奴の飛翔戦法は単に間合いの

調節だけではない。本来重力に縛られて上下が決まっているこちらに対し、あらゆる角度を制し、

全方向に天地を変えて攻めてくる、まさに三次元殺法だ。

 

「だぁっ!」

 オグマは剣を鞘に仕舞うと、光の闘気を開放して一気にジャンプした。だがそれは空中で

自由に動けるリヴィアスの的になるだけの行為でしかない、飛翔呪文(トベルーラ)で追撃し、

次々と槍の刺突をお見舞いするリヴィアス。

 

「馬鹿め!決まったな。」

 マグマグマがそれを見上げながら勝利を確信する。あの人熊、赤い首巻(レッドネック)相手によく粘ったが

最後に馬鹿をやったな、と。

 対の場所で見守るメンフィスは、四方から刺されるオグマを見ながらも、その闘気と

鎧の防御力に、そして腕を組み合わせて防御の姿勢で丸まるその様に祈る。死ぬな、

持ってくれ!

 

「・・・チィっ!」

 空中で刺しながら毒づいたのはリヴィアスのほうだった。飛んでる状態で横からの突きでは

完全に踏ん張りは効かず、突いた相手も後ろに流れて、コーンランスが浅くしか刺さらない。

 突くたびに相手のヨロイのウロコを焼き鳥のように刃先に刺し加えるが、これでは致命傷は

与えられない。

 やむを得ず落下するオグマを見送り、その真上から追撃するリヴィアス。着地で硬直した瞬間に

上から貫くべく槍を構える。

 

 どんっ!!

 

 地面に力強く着地したオグマ。その瞬間、彼の光の闘気はかき消え、鞘に収まるナタルコンの

暗黒闘気がぐわぁっ!と広がる。

 そして今まさに真上からコーンランスがオグマの首筋を捕らえようとしたその時!

 

真空竜巻(バギネイド)!!』

 ナタルコンの声と同時に、彼らの体の中心から強烈な竜巻が巻き上がった。リヴィアスはその

竜巻をモロに受け、槍と共に上空に舞い上げられた、致命の一撃を届かせることなく。

 

 真空呪文を広範囲に展開すれば、宙を舞う敵の動きを封じる効果が得られる。

この真空竜巻(バギネイド)はその極致とも言うべき、彼らのオリジナルの技だった。ただし

ある程度オグマの光の闘気によって、ナタルコンの闇の闘気を引き上げておく必要がある。

 その最後の溜めを作るために、オグマは光の闘気を全開にしてジャンプしたのだ。

空中で蜂の巣に成るのは覚悟の上で、闘気と鎧に命を預け、決定的な反撃のチャンスを

ナタルコンに託した。

 

「うおぉぉぉっ!」

 全身から出血しながらもオグマはジャンプする。敵が空中制御を失っている今こそが

乾坤一擲のチャンス!

 両手の平を合わせると、それを開いて光の闘気の帯を作る。そしてそれを圧縮し、両手を

噛み合わせてハンマーパンチを打ち下ろす!

 

 ドコォン!

 

「ぐはぁっ!!」

 胸板に闘気を圧縮した一撃を受け、苦悶の表情で下に打ち飛ばされるリヴィアス。

これで地上に激突すればそのダメージで勝敗は決するだろう!

 

「やった!」

「バ、バカな・・・」

 歓喜するメンフィス、驚愕するマグマグマ。瞬時の逆転劇に歓喜と焦燥が交錯する!

 

 ギュゥンっ!

 

 だか決着はつかなかった。リヴィアスは地上に激突するまさに寸前に飛翔呪文(トベルーラ)

弧を描いてUターンし、そのまま上空へ舞い上がる。

「くっ、くそっ・・・。」

胸板を抑えながら苦悶の表情でそう嘆き、オグマ達を見下ろすリヴィアス。

アバラが何本か折れており、胸やわき腹が引きつるように痛む。

 

「しぶとい・・・!」

 血まみれになりながら、オグマは上を見上げてそう嘆いた。乾坤一擲の一撃でも仕留める事が

叶わないとは!

 もう俺とナタルコンの闘気相乗効果も限界が近いだろう、この宙を飛び回る敵に対して

果たしてあとワンチャンスあるか・・・?

 

 しばし対峙する両者。そしてその沈黙を破ったのは、オグマの手に握られていた短剣だった。

 

『リヴィアスとか言ったな、貴様に聞きたいことがある。』

真空呪文で空気を震わせてそう声を出すナタルコン。その様に一同が注目する、今喋ったのは・・・

剣か?

 

「生きている剣・・・人食いサーベルの類か?」

『あのような下賤なモンスターと一緒にしてくれるな、我はあくまで使い手と共にある存在よ!』

 リヴィアスの問いにナタルコンが返し、続ける。

『それより何故だ?例え飛翔呪文(トベルーラ)と併用するにせよ、その刺突槍(コーンランス)

あまりに手に余るだろう、剣でも長刀でも使えばもっと応用も効くであろうに・・・』

 

 リヴィアスは身長175cmほどだが、その彼が握っている槍は2mはある。似た背丈ながら

筋量で遥かに勝るオグマが短剣を使っているのと比較すると、明らかに獲物が大きすぎるだろう。

 

 リヴィアスはその問いに少し瞑目し、やがて首から下がる赤い布を手ですくいながら返す。

「・・・俺は、倒すべき相手がいる。この槍はその為に必要なものだ。」

ひと呼吸置いて、彼は力強くこう続けた。

 

竜の騎士(ドラゴン きし)を倒すためになぁっ!!」

 

 

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