魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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 39話の最後、キャラ紹介の所にケプラスとガノイザーの挿絵追加しました。
本作をよく盛り上げてくれた名脇役のオリキャラ、ずっと絵にしたかったんです、
強者感出せたかなぁ・・・
 ドラクエのキングリザードやバルデバランとは多少違う所があります、即気付いたら
貴方はDQ博士でしょうw


第129話 純白の竜

 ドサッ。

 

『どうしたオグマよ、これからいよいよあの”神の涙”に落とし前がつけられると言うのに・・・?』

 いきなり尻から地面に落ちたオグマにナタルコンが訝しがる。壇上では今まさにあの神の涙(ゴメとやら)

によってミールの呪いが解かれようとしている時だというのに。

「あ、ああ・・・すまん。何かフラフラして・・・」

『無理もあるまい、本来立っているのにも無理があるほどの重症なればな。』

 さもあろう、とばかりにナタルコンが返す。先の魔界皇ヒュンケルとの死闘の傷は未だ癒えず、

本来ならベッドの上でいなければならない程の容態なのだが、この結婚式のために

無理に起き出して数日、なんとか日常の動きくらいは出来るようになったと思っていたのだが。

 

(どうも・・・いかんな。時々体が言う事を聞かん。)

 ふぅ、と息をつくオグマ。あの死闘からこっち、度々意識が飛ぶことがある、意識があっても

体が動かなくなることも・・・今までの戦いでケガを負った時にはこんな事は無かったのだが。

 自覚せざるを得ない体調の悪さを押し殺してここまで来たが、どうもいけないようだ、と

尻もちをついたまま手を地面につけて支え、息を吐いて天を仰ぎ見る。

 

「・・・なんだ・・・アレは!」

 愕然として天を見上げるオグマ、ナタルコンもそれに気付いて上空に目をやる。

『何と・・・雲が、消えていく・・・いや、アレはむしろ・・・何かに、喰われて・・・』

「・・・ま、まさか!アレは、あの!!」

 戦慄する一匹と一振り。雲がある一点からまるで無に食われていくように消え去っていく、

そして彼らはそれを成す存在を知っていた・・・あのテランの泉で相対し、決着がつかぬまま

精霊に連れられて去って行った、あの恐るべき機械の竜を!

 

 

     ◇           ◇           ◇    

 

 

 拍手の鳴り響く結婚式会場、壇上ではダイとレオナが真っ赤になって恥ずかしそうに

手を振っている。誓いのキスも無事終わり、神父がここに夫婦となった二人の祝詞を告げる。

「天地よ・・・そして魔界よ御照覧あれ、今ここにふたつの魂がひとつとなり、未来への祝福の

時を迎えた。願わくば・・・」

 

 天を仰いで宣言していた神父の言葉がそこで止まった。その目は空の一点を見つめて

止まっており、そこに在るものの姿を愕然と凝視する。

 その一点を見ていたのは神父だけではない。リヴィアス、ミール、きらりん、でろりん達、

それにつられてマトリフもまた、首を上に向けて固まっていた。

「な・・・んだ、ありゃあ。」

 

 彼らは客席の最前列にいる、それが一様に上を見上げていれば必然的に多くの者が

自然とその視線を追うことになる・・・そして固まる、ざわめきを上げる、その異様な姿に。

 

 ・・・ざわ、・・・ざわ。

 

 壇上の王や側近たちも、そしてダイとレオナもそのざわめきにつられて、ようやく頭上に

何かある事を察して天を見上げる。

 

 

 空にいたのは、一匹の、純白の竜。

 

 

「な、なんだ?ありゃあ・・・」

「ヤダ、気持ち悪い・・・なんか怖いわ。」

「ヤバイ・・・んじゃ、ねぇか?」

 

 観客たちが口々にこぼす、背筋に氷を詰め込まれたような悪寒を感じて。

国王達もまたその姿に、ぞくり、としたものを感じずにはいられなかった。

 

 天に浮かぶ竜、その”白さ”は異常だった。この世に存在するどんな白よりも

混じりっ気のない白の中の白。他のあらゆる色の介入を許さない、照らす夕日の茜も

影を落とす黒も、満月の月光の蒼も跳ね返し、うすら寒いまでの純白をその身に包んで

不気味に佇んでいた。

 

「まずい!刺突槍(コーンランス)はアルキードに置いてきたんだ・・・!」

「紫竜の杖もサルトバーンだよ・・・どうしよう。」

 リヴィアスの声にきらりんが返す。この式場には当然ながら武器の持ち込みは禁止であり、

唯一この場にあったはずのナタルコンはオグマと共に姿を消していた。

「私も・・・今はもう水を操る力は・・・ありません。」

 水竜の雛を抱いたミールが呆然とそうこぼす。もしあの白い竜が彼らの知るアレならば

今の彼らに、そしておそらく会場の誰もが、アレに対する手段を取り得ないだろう。

 

 翼を大きく広げて、ゆっくりと降下してくる白き竜。その姿が大きくなるほどに

その圧倒的な白さが、会場のあらゆる者たちの心の奥底にある恐怖心を掻き立てていく。

まるでこの世の全てが失われた時、世界はあの白に包まれるのではないか、とすら思えた。

 

 その白き竜が眼下に視線を落とし、ゆっくりと口を開く。

 

『竜の騎士、ダイ・・・王女レオナ・・・』

 

「・・・え?」

 その声にダイは覚えがあった。かつて自分を導き、また絶命の窮地から自分を救い

時をかけて復活させてくれた、あの神殿の・・・

 

「竜水晶さん、だね。よかったぁ、無事だったんだ!」

 顔をほころばせて一歩前に出るダイ。だが白き竜はそんなダイを一瞥すると、周囲に

目をやって言葉を続ける。

 

『王族、人間たち・・・モンスター、魔族、竜族・・・』

 

 一通りを見渡した後、ひと羽ばたきして少し高度を上げた竜は、こう発した。

 

 

『何故、戦わない-』

 

 バリッ!パリパリッ!!

 

 

 

「な、何だ・・・苦しい?」

「ノ、ノドが・・・痛いっ。」

「み、水持ってないか?ノドが・・・乾いて・・・」

 

 まるでその白き竜の怒りに当てられるように、観客たちが一斉に体調不良を訴えだした。

多くの者がノドを押さえ、渇きを口にする、これは一体・・・?

「間違いない・・・ヤツだ!!」

 でろりんが義手を押さえながらそう吐き捨てる。かつて自分の別の義手を瞬時に砂に変えた

あの忌まわしきブレスと似たものが、周辺の空間を満たしている事がすぐに理解できた。

 今、この場の空気は、ほぼ極限まで乾ききっている!汗や唾が、まるで空中に吸い取られる

ように体から失われていく・・・間違いなくあの機械竜(キラードラゴン)のブレス、”シ”の力だ!!

 

「な・・・何言ってるの!戦う必要なんて・・・ゲホッ、ケホ!」

 抗議しかけたレオナも思わずせき込む、口を開いた途端、口の中が乾ききって

しまったのだから無理も無かった。うずくまるレオナをダイが抱き抱えて、改めて空中の

竜に向き直る。

「レオナの言う通りだ!世界は平和になったんだよ・・・それも竜水晶さんが俺を導いて

くれたおかげだ・・・なのに、どうして・・・?」

 

『我は竜水晶、聖母竜(マザードラゴン)の思念の一部にして、(ドラゴン)の騎士を導く存在・・・』

その言葉は、まるで自分の存在を自分自身に言い聞かせるかのように紡がれていた。

『竜の騎士は、世の悪を倒す為に在る。戦いがあればこそ、竜の騎士は存在する・・・ならば

我の母体の聖母竜も、そして我自身も、戦いあればこそ・・・存在していられる。』

 

 その言葉がダイの心をずきり、と抉った。

 

 ダイは純粋な心の持ち主だ、怪物(デルムリン)島に育ったがゆえに、あらゆる生き物や意志を持った

存在を、彼らの立場で公平に感じ取ることが出来る。かつて大魔王バーンと相対した時すら

彼の強さの孤独をその身に感じたほどだった。

 そんなダイが、目の前の竜水晶の立場、使命、そして生み出された存在理由を思った時、

その残酷さに愕然とせずにはいられなかった。

 

『戦いなくば、我は最早無用の存在・・・人間が、魔族が、怪物が・・・そして竜が和合するならば

我は・・・我は・・・一体何だというのだ!!』

 

 バリバリィッ!

 

 周囲の空気がさらに乾く!生物の毛穴から水分が抜けていく!!竹のボトルから振り掛けた

水が、ノドに到達する前に霧散して消えていく!!!

 

「やっ、やめろおぉぉぉーーっ!!」

 バタバタと倒れていく皆を見てダイが叫ぶ。今この竜から感じるのは、孤独、憎悪、そして

胸を引き裂くほどの悲しみだった。彼の存在そのものを否定する言葉、それは・・・

 

 ”平和”!

 

「じゃあ、俺と共に生きようよ!俺はあんたに命を救われた・・・だから」

『ならば戦ええぇぇぇいっ!!竜の騎士よ、お前が戦う事が我が生きる理由なのだあァァッ!』

「そんな・・・そんなのおかしいよっ!平和を目指して戦うんじゃないか・・・」

 

 離れた高台の上、クロコダインが苦しみながらもその言い分を解釈する。

狡兎(こうこ)死して走狗(そうく)烹らる、か・・・哀れな。」

 

『我は魔界の者を根絶やしにすべく、天界にてさらなる成長を遂げた・・・己の意思と

この体を融合させ、その身に宿す使命を持って、世界を白き清浄の世にするために。』

 

 その言葉に背筋を凍らせたのはミールだった。かつて竜の神殿で見た、あの機械竜の

体を構成していたのは、他ならぬ殺人兵器(キラーマシン)の部品たちだ。もしそれがナタルコンの

ように意志を持った存在としてあの水晶と融合したなら、その存在全てが戦いに振り切られて

いるだろう・・・

 

『だが、あの精霊は我にこう言った・・・”もう戦う必要はない”と。ならば、ならば・・・』

 

 -ならば我は何だあぁぁぁぁぁぁぁっ!!-

 

 そこまで発して、白き竜は翼を大きくひと羽ばたきさせ、一気に上空へ舞い上がる。

そして睨め下ろして、うらめしそうにこう叫んだ。

 

『世界は、我など要らぬ、と言った・・・ならば、ならば我は・・・!』

 

 鎌首を持ち上げ、口を広げる。そこに目に見えない”何か”が灯る。ほんの指先ほどだった

それは、次の瞬間には人間より、白き竜より、そして下の壇上よりも大きく膨れ上がる。

目には見えなくとも、周囲の空気の歪みからその大きさが、そして恐ろしさが伝わって来る!

 

「まずい!”シ”だあぁぁぁぁぁっ!!!」

 リヴィアスが絶叫する。あの直径200mはあるであろう”シ”が撃ち出されたら、この場の

者たちは皆、砂と化すだろう。

 

『我もまた・・・この世界など、要らぬわあぁぁぁぁぁっ!!』

 

 まるでシャボン玉のような”絶望”が今、撃ち出される。

 

 

 -()!-

 

 

真空極限斬撃(バギ・エグゼド・クロス)うっ!!!」

 

 ドガアァァァァァン!

 

 真空呪文が、白き竜の鼻先を吹き飛ばす!

 

 瞬時に首の方向を曲げられ、”死”は眼下から水平方向に向きを変えられたまま発射された。

通り過ぎた木々が瞬時に立ち枯れ、森に砂漠の道が航跡となって残る。行く先の海をまるで

筒のようにえぐり続け、水平線の彼方まで水の半トンネルを生み出していく。

 

 

「オグマさん!」

「オグマ!ナタルコン!!」

 白き竜のすぐ横、オグマがナタルコンをかざして浮いていた・・・いつの間に!?

 

「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ・・・」

 ナタルコンを構えたまま息を切らすオグマ。いち早く機械竜の存在に気付いたオグマと

ナタルコンは密かに姿を消し、機械竜の死角から一撃を与えるチャンスを狙っていたのだ。

それはかつてテランの泉で、仲間であるへろへろが見事に一撃を食らわせた方法、かつての

仲間の使った戦法に習ったのだ、機械竜の心の死角を突く一撃を。

 

 ゆらり、とオグマに向き直る白き竜。その目を光らせて目の前の人熊の持つ

短剣を睨みつけ、そして咆哮を上げる。

 

『また・・・また貴様かあぁぁぁぁ、魔剣があァァァァァァッ!!』

 怒り狂った声と共に、その足でオグマに掴みかかる白き竜。だがこの距離ならそれは

回避でき・・・

 

 ガシィッ!

 

 オグマは動かなかった。そのまま竜の足に体を鷲掴みにされる・・・どうして?

 

「・・・グフッ」

 吐血するオグマ。掴まれたからではない、強靭な獣人の体がその程度で吐血などするものか!

 

 その光景に誰よりも愕然としたのは、彼の手に在るナタルコンだった。

『オグマ・・・お主、まさか!』

 

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