魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第14話 違和感の正体

飛翔呪文(トベルーラ)っ!」

 両脇にオグマとマグマグマを抱えてリヴィアスが飛ぶ、その心に違和感を覚えて。

 

 -俺は・・・獣どもこそその手を使うと疑っていた-

 -いつもと違って伏兵は無しかい!どういう風の吹き回しかねぇ!-

 

 両陣営の頭、マグマグマとメンフィスのそれぞれのモノの言いよう、まるで己が正道な立場で

相手こそが卑劣な手段を企む存在であるかのような。

 

「お前の意思じゃないとすれば、誰かお前の仲間にお前を裏切る奴がいるって事か。」

飛行音に負けずにそう声を荒げるオグマに、反対側のマグマグマが返す。

「それはありえん!俺達は常に戦って序列を競ってきた、その上で俺が頭領に成る事を

皆が認めていたのだ!」

「確かに・・・そもそも卑劣な手を使うなら、ザンを人質に取るなり、やりようはあるな。」

リヴィアスが砦の魔族たちの行動を思い出してそう続ける。彼らは少々荒くれ者ではあるが、

力ある者にはちゃんと敬意を払う者たちではあった。

 

「我々は最早残り少ない、いま全面対決などすれば全滅はさけられん、だからこそ一対一の

決闘を望んだのだ・・・それが分からぬ連中ではない、なのに・・・何故!?」

 臍を噛むマグマグマ。目指す先の村には今も閃光が走り、黒煙が新たに上がる、爆音が届く。

最悪の事態を想像して気がはやる。追い詰められた獣ほど危険なものはない、だから村への襲撃は

自重するよう常々言っておいたはずだ、獣の巣をつつく行為など愚行でしか無いのだ!

 そもそも全員で攻め込んだなら弟は、ザンはどうなった?砦に一人残っているのか?もしそこを

獣に襲われたら・・・

「急げリヴィアス!!」

「分かっている、これで全力なんだ!」

 

 事態がつかめず疑念を抱いたまま飛ぶ3人。ただオグマの鞘に収まる短剣だけは、事態の真実を

うっすらと予感していた。

『(嫌な臭いがした・・・ヤツから。忘れ得ぬあの悪臭が!)』

 

 

 ダダダンッ!

 村に到着し着地する3人。周囲は火と煙に包まれており、そこかしこで争いの気配がする。

マグマグマは大きく息を吸い込むと、大声で叫んで事態を収めようとする。

「止めんかあっ!俺だ、マグマグマだあっ!!」

その叫びも炎の音と、新たに炸裂した爆発音でかき消されて効果は成さなかった。

 

 と、リヴィアスがある光景を目に止めて猛ダッシュで駆け出す。火の向こうに見えたのは、

幼い獣人を今、まさに斬り捨てんとしている魔族ベレスの姿だった。

 振り下ろされる鎌に槍を合わせて止める。ガキィン!という鈍い音がして、刃先は獣人の少年

マルタの鼻先で止まっていた。

「お・・・お前、リヴィアス!」

「子供に手をかけるのは許さん!恥を知れ、ガッフォー!」

 先日砦で相対した地獄の門番、ベレスのガッフォーを睨み上げ、マルタの前に立ちふさがって

そう圧をかけるリヴィアス。

 

 だが、ガッフォーは意外にも恐れを隠さぬ態度でリヴィアスに叫び、返す。

「バッカ野郎っ!違う、そいつはっ・・・ヤバいんだあっ!!」

 え?という表情を見せるリヴィアスの背中で、グルバレイダの少年マルタは静かに、前に手をかざす。

その顔に、にこりとした屈託のない笑みを浮かべて。

 

爆裂呪文(イオラ)。」

 

 閃光が輝き、爆発が空気を吹き飛ばす。リヴィアスがいたその空間は瞬時にして火炎と黒煙に

嘗め尽くされる。

 衝撃の反動で吹き飛ばされ転がったガッフォーは、ヒィッと唸って飛ばされた鎌を掴もうとする。

が、恐怖からか、それとも焦りからか、すぐそこにある鎌の柄をうまく掴めない。そんな彼に

にこりとした表情を崩さないまま歩み寄ってくるマルタ。

 

「大丈夫かリヴィアス!」

「オ、オグマ・・・お前が俺を?それに・・・今、何が!?」

 背中でイオラが炸裂する直前、オグマとナタルコンが彼とマルタの間に割って入っていた。

ナタルコンの真空呪文で爆発の威力を抑え、オグマがリヴィアスにタックルして転がりながら

爆心点から辛うじて避難したのだ。

 

 その声に反応したマルタが、ガッフォーから彼らに視線を移し、穏やかな顔のままでこう話す。

「へぇ、避けたんだ、すごいね熊のお兄ちゃん。」

「・・・ナタルコン、これは一体?」

 オグマがナタルコンにそう問う。リヴィアスがマルタを庇おうとした時、ナタルコンは咄嗟に

オグマに指示を出していた、あの小僧から離れろ!と。ただその指示に対して咄嗟に

リヴィアスまで離そうとするところがオグマらしかった。

 

『やはりお前か・・・小僧!』

 ナタルコンがその眼光を少年マルタに向けてそう吠える。憎悪の感情を剥き出しにして!

「へぇ、気付いていたんだ。魔剣だけのことはあるねぇ。」

 平然と、にこやかにそう返すマルタ。この戦場で年端も行かぬ少年が、穏やかにそう語る様は

とてもあの臆病で他人任せなマルタとは思えなかった。

「どういう、ことだっ!」

オグマのその声に応えたのは、暗黒闘気をぶぁっ!と燃え上がらせた彼の短剣だった。

 

『天界の精霊だなぁっ、その小僧に取り憑いておるのは!!』

 

 ナタルコンは最初にこのマルタを見た時から嫌な臭いを感じていた。かつて自分が嫌悪した

”神の涙”が持つ天界の使徒の臭い、オグマと出会った時に相対したあの精霊シアの臭い、

そしてあの山頂で戦った沼竜からも、わずかに感じたその悪臭!

 

「でも遅かったよね、もう終わったよ、ほら。」

 そう告げて彼らの後ろを指差すマルタ。オグマ達2人と一振りも、今だへたり込んでいる

ガッフォーも、その指差す先を見て・・・絶句する。

 

 彼らが見た光景、それは小さな魔族の少年が宙に浮き、右手に魔物の頭領、左手に獣人の頭目

それぞれの首根っこを握りしめてぶら下げている姿だった。

 

「マ・・・マグマグマの大将っ!!」

「・・・メン、フィスっ!」

 ガッフォーとオグマの呟きに続いて、リヴィアスはその魔族の少年に声をかける。

信じられない、といった表情で。

 

「どういう、ことだ・・・ザンっ!」

 

 あの臆病だった魔族の子が、今は敵の頭領であるグルバレイダと、自らの兄である

サタンジェネラルをまるで仕留めた獲物と言わんばかりにぶら下げているその様が

信じられなかった。

 何よりその表情が、猛るでもなく、魔族らしく不敵に笑うでもなく、まるで人間の子供のように

屈託ない表情をしていたから。

 

 

「なんだ、まだ終わってないんだ、そっちは。」

「うん、この人たちカンがよくってね、もう終わらせるよ。」

「手伝おうか?」

「手こずるようなら頼むよ、ま、ありえないけど。」

 

 そんな言葉を交わすマルタとザン。あくまで穏やかに、まるで陽だまりの中の子供のように。

 

「精霊・・・だと?」

 思わずそう嘆くリヴィアス。人間としての常識で言うなら、精霊と言うのは神に近い存在。

あくまで正しい行いを成すものであり、このような非道を是とする認識は無かったから。

 

 その隣でオグマが、最大限の戦闘態勢を取りながらこう吐き出す。

 

「俺が、俺達が挑むべき敵・・・お前にとっての竜の騎士(ドラゴン きし)に当たるのが、こいつら精霊どもだっ!!」

 

 

 

 

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