魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第3章 時遡(トキサカ)のミール
第18話 武器屋のドガさん


「うぁ~~~、さっぱりするぅ!」

「ちょい傷に染みるが、生き返る気分だ~。」

 

 山あいの崖道、そこから小さな滝のように湧き出している清水のシャワーを堪能する

オグマとリヴィアス。

『うむ、いい水だな、塩分も含んでおらぬ。後で我も研いでくれよ。』

際でそれを眺めながらナタルコンも言う。刃物にとって塩分や脂分は天敵だが、この水は

実に純度の高い良い水だ。

 

 魔界には全ての生命の源である太陽がない。そんな中であまたの生物が生存できているのは

この地下水の存在がやはり大きい。地下世界であるがゆえにそこかしこに水脈が走り、

水が湧き出ている。

土地によってそれは違う養分を含んでおり、太陽の無い魔界で不足しがちなミネラル等の

栄養素を補ってくれているのだ。

 そしてそんな水場こそ、彼ら魔界の住人が寄り集まる拠点となる。オグマの集落には谷があり、

メンフィスの村には井戸が、マグマグマの砦には近くの池から引いた簡易水道まであった。

 

 だからこそ、こういう誰にも見つかっていない湧き水というのは価値がある。まぁこんな

山岳地帯の崖の際だからここに住むわけにはいかないだろうが。

 

 山登りでほてった体を冷水で冷やした後、ナタルコンを研ぎながらオグマがリヴィアスに問う。

「で、君の師匠はこんな山奥に住んでるのか?」

「ああ、魔族にしては知識に長けた人でね、それが災いしてかあんまり人付き合いが無いんだ。」

 コーンランスを洗いながらそう返すリヴィアス。確かに動乱の魔界において知識人は

どちらかと言うと”めんどくさい奴”みたいな見方をされることが多い。オグマのような

思い立ったら即行動の者の方が交友関係は広くなるだろう。

 

 服を羽織り、荷物をまとめて旅路を再開する。リヴィアスが言うにはもうすぐそこだそうだ。

林を抜け、丘を越えて、開けた場所に出る。視界が開ける。

「ほら、ここ・・・だ?」

手を広げて景色アピールをしたポーズのまま固まるリヴィアス。

 

「・・・泉、だな。」

『うむ、泉だ。』

 オグマとナタルコンが目の前の景色を見てそう呟く。彼らの眼に写るのはまごうことなき

泉、いや湖と言っていいほどの大きな水たまりだった。

「あ・・・あれ?確かにココ・・・え??」

 間抜けな面できょろきょろするリヴィアス。確かにこの窪地に小さな一軒家があり、そこに

師匠である魔道鬼が住んでたはずなんだが・・・。

『最近出来た泉のようだな。草も木も生えたまま水没しておる。』

ナタルコンの言う通り、草木も岩も陸上にあったそのままの姿で水に沈んでいる。どこからか

湧いて出た水で、このあたり一帯が水没してしまったようだ。

 

「って、あそこだっ!師匠の家まで水没してる!!」

 リヴィアスが湖の底を指差して叫ぶ。確かに湖の底に、木造りの小さな一軒家がある。

深さにして約30mほどだろうか。

「あーあ、こりゃ家はダメだな。まぁ師匠の事だから溺れてはいないと思うけど・・・」

「だとしたらどこに行かれるのだ、その師匠の方は・・・?」

オグマの返しに、リヴィアスはうーん、と首をひねって思案する。

 

「そうだ、この近くに大魔王直轄の町があるんだよ。俺の刺突槍(コーンランス)作ってくれた刀匠も

そこにいるから行ってみよう、何かわかるかも。」

「凄ぇ、あの大魔王バーン様の収める町・・・行こう行こう!」

 オグマは田舎者丸出しで興味津々だ。それも無理なるかな、かつては魔界を二分し、

片方の勢力であるヴェルザーが竜の騎士に討たれてからは実質魔界の頂点として

君臨していた存在。

数年前より地上進出を目論んでそちらに攻め入っているという話を伝え聞いている。

『(バーン・・・あやつが今や大魔王、か。)』

ナタルコンが目を細めて笑う。今や魔界の神とまで称されるその人物の、若き頃を思い出して。

 

「じゃあ善は急げだ。師匠も心配だし、あの町なら地上への情報も得られるかもしれない。」

そう言ってオグマの手を取り魔法力を発動させるリヴィアス。ここに来るまでは魔法力の温存と

身体鍛えるべし!とのナタルコンのアドバイスで歩きで来たが、こうなっては流石にのんびり

してはいられない。

飛翔呪文(トベルーラ)っ!」

 

 

「おおおおお!店だ、魔族だ、獣人だ、亜人だ!家だらけだーーーっ!」

 大魔王直轄の町”サルトバーン”にて、目をキラキラさせて大はしゃぎしている人熊(ウォーベア)が一匹。

街中にはメラの明かりがこうこうと輝き、敷石で整備された道路や整然と居並ぶ家や店。

そして様々な種族がいさかいも起こすことなく、むしろ親しげに言葉を交わす。

いずれもオグマが生まれて初めて目にする繁栄の光景、興奮するなと言っても無理な話だ。

 

「あー・・・この町で俺より目立ってる奴、初めて見たわ。」

少し距離を開け、ジト目でそれを眺めるリヴィアス。さすがにこの町にあっても人間は

彼以外いないが、そんな彼よりオグマは遥かに注目を集めてしまっている。

「で、お前は何でこっちにいるんだ?」

『我は、誇り高き魔界皇ヒュンケル様の懐刀だった物だ・・・今のアレの腰に居れるか!』

ちゃっかりリヴィアスの懐に避難しているナタルコン。心なしかいつもより暗黒闘気が

嫌そうにゆらめいている。

 

 迷走するオグマを引っ張って、ようやく目的地である武器屋”ドガバッキ”に到着。

ドアを開けて店内に入る一行を、赤い体の骨太な魔族、アンクルホーンが出迎える。

「らっしゃい!って、おおリヴィアスか!久しぶりやなぁ。」

「ご無沙汰です、ドガさん。」

「どうだい俺の作った槍は!あれなら竜の騎士だってイチコロだろうがよ。」

 

 ドガパッキ店主ドガ・カーンが上機嫌でリヴィアスの肩をばんばん叩く。彼は刀匠でもあり

その腕前はこのサルトバーン随一との評判だ。数年前に訪れたリヴィアスと師匠の依頼で

彼の使う刺突槍(コーンランス)を叩き上げた人物でもある。

 

「おおおおお!見たことが無い武器の数々・・・装備、細工も凄い!」

 オグマはここでも絶好調だ。彼にとって武器や防具は自分でこしらえる範囲でしか知らない、

ナタルコンやコーンランスのようなワンメイク物はいざしらず、廉価品ですら奇麗に整った形の

剣や盾の数々に嬉々としっぱなしだ。

 

「ほーう、人熊を連れてるのかい。どうだいあんちゃん、アンタにぴったりの武器が

あるんだが・・・」

 その声にえっ?と反応するオグマ。勧めてくれるのは嬉しいが、オグマにとって武器の

チョイスは思案が必要だ。ナタルコンとの闘気干渉を使うがゆえに並みの武器では

最大闘気の力に耐えられなくなる。そもそも短剣(ナタルコン)と竜の手甲で両手は塞がって

しまっているので、新たに武器を持つのは無理がある。

 

 その旨伝えるオグマに、ドガはにかぁっ!と笑って嬉しそうにこう告げる。

「安心しな!やっぱり今のアンタにはぴったりの武器だ。この武器はアンタと今ここで

運命の出会いをしたんだよ、ガハハハハ!」

ひとかかえした包みをオグマにどさっと渡す。早速それを開くと、その中からなんとも珍妙な

丸太のような槌が現れる。中央部がえぐれており、ちょうどそこにオグマの頭がすっぽりと

収まるサイズの兜がハメ込まれている。

 

ハンマーヘッド(どたまかなづち)ってんだ。今地上で主流の武器らしいぜ、仕入れるのに苦労したんだが

使える奴が限られてなぁ!」

 上機嫌で続けるドカ。なにしろヘルメットの体を取っている武器なもんでドガみたいな

ツノの生えている種族じゃ使えないらしい。また細身の亜人じゃその重さに耐えられず

首を痛めそうで勧められなかったんだが・・・獣人の人熊にはもってこいだぜ!と解説する。

 

「運命の・・・武器。」

それを頭にかぶったオグマが、首を縦にぶんぶん振って素振りする。

「すごい!俺の頭突きの威力倍増間違いなし。頭も保護出来るし、この強度なら俺の闘気にも!」

「気に入ってくれたかい、安くしとくよ!」

「ありがとう!」

嬉々としてバッグから竜の鱗を取り出し、代金代わりにドガに手渡すオグマ。

豪快に笑う両者を、リヴィアスとナタルコンが冷たい目で眺めていたのは言うまでもないだろう。

 

『運命の武器・・・我じゃなかったのか・・・オグマよ・・・』

「強く生きろよナタルコン。」

 

 




どたまかなづち=脳震盪生産機、だと思います。誰だアレ考案したのw
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