魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第19話 領主ケートスの館

 武器屋の裏手、鍛冶場のイスや地べたに座り込んで話し込む一同。

 

「そっか・・・ロズのじいさんが行方不明とはな。」

 リヴィアスから来訪の理由を聞いたドガさんは、しみじみと心配そうにそう漏らした。

師匠ロズテナーの家が湧いた水に沈み、行方不明となった彼の手掛かりを求めてドガの元に

来ては見たが、その返しから見て彼も知らなさそうだ。

 

「何か手がかりはありませんか?師匠が他に立ち寄りそうなところとか・・・」

「そうだな・・・ああいう人だから他に親しい奴はあんまり知らないが・・・。」

 神妙な顔で会話するリヴィアスとドガ。師匠のロズテナーは典型的な偏屈者で、ドガさん以外に

親しい人物はリヴィアスでも心当たりがない。

 

 が、ドガは何かを思い出したように「そう言えば・・・」と漏らし、皆の注目を集める。

「この町の領主様んトコに何度か行ってた、とか聞いたな、確か。」

「領主様?」

「ああ、あの大魔王バーン様の末端の部下らしくてな、この町を任されて統治されてる方だ。

なんの用事か知らねぇが、ロズのじいさん度々呼ばれてたらしい。」

そう言ってドガは話を領主の話題に移す。

 

 領主ケートス。大魔王バーン直轄の部下としてこの町の統括を任された魔族”タイムマスター”。

彼は町から有能な若者を募り自警団を結成すると、町で狼藉をする不届き者を次々と捕縛し、

自らの館に引っ張っていくことで、このサルトバーンの平穏を維持していた。

 また、領主の娘、魔族ミールは若いながらも聡明で、父の仕事をよく手伝い、その美貌も

若者に人気を博し、父と共にこの町の象徴とも言える存在であった。

 

 反面、黒い噂もあった。引っ張って行かれた狼藉者は誰一人その館から出て来ないのだ。

ケートス曰く、彼らは更生して大魔王様の軍勢に加わって地上に進出したのだと言うが、

ならばと町の力自慢が我も我も大魔王様の役に立つと申し出ても、彼は頑なに拒絶し続けた。

 加えて館からは度々強力な魔法の使用音や、猛獣の唸り声のようなものが度々聞こえて

きていた。個人の家で何をしようが自由であるとはいえ、領主の館でとなると訝しがる

者も少なくは無かった。

 

 そして最近は、その館に出入りする者はめっきり減ってしまっていた。自警団の面々も

いつしか見なくなり、魔法音もすっかり無くなっていた。そんな中、リヴィアスの師匠

ロズテナーだけがたまに館に訪れていた、というのだ。

聡明で美しい彼の娘も、いつしか皆の前に姿を見せなくなった。

 

 

 

『ならば失踪の前後に、その領主とやらに会っている可能性はあるな。』

 ナタルコンが口をはさむ。皆も一様にうむ、と頷くが、ドガだけはその声をスルーできない。

「って・・・剣がしゃべった!?まさかコイツ・・・魔剣の類か?」

『今更だな。それでよく武器を扱う商いをやれるもの・・・だ?』

 ナタルコンはそこで言葉を詰まらせる。ドガがその目を少年のように輝かせて興味津々に

彼をまじまじと見つめていたからだ。

「な、なぁアンタ、こいつのメンテもやってやるよ、いやいやもちろんタダでいいぜ。

ハンマーヘッド(どたまかなづち)買ってくれたお礼だ、いや遠慮するな、な!」

 オグマに詰め寄り、その手を取って拝むように懇願するドガ。リヴィアスは、あー、また

悪い病気が出たな、と冷や汗を流し頬を掻く。

 

「見て、悪い所は直しといてやるよ。なに、どうせ領主様の所は刃物の持ち込みは禁止だ、

その間に行って来るといい、今紹介状書いてやっからよ。」

 うっきうきで話を進めるドガの際で、ナタルコンが半目でよどんでいる、嫌な予感しかしない。

仲間二人に視線を送り助けを求めるが、ドガの腕を信用しきっているオグマと、「諦めろ」と

いう顔で同情するリヴィアスに、がっくりと柄の先を垂れる。

 

 結局、ナタルコンとミミックの鞘、そしてコーンランスをドガに預けて領主の館に向かう二人。

「なぁ、なんかナタルコン悲鳴上げてたけど、どうしたんだ?」

「・・・帰ってきたら分かると思うよ。」

 オグマの能天気な言葉にリヴィアスが返す。願わくばあの魔剣が面白武器に成り果てません

ように、と心で祈って。

ちなみにオグマはハンマーヘッド(どたまかなづち)を装備したままである。基本、刃物でなければOKらしい。

 

 町を見下ろす小高い丘に領主の館はあった。立地はいかにも権力者の住む配置と言った所だ。

だが、そこはしばらくの間、誰も訪れていない事を示すかのように荒れていた。雑草が茂り、

門扉は錆び、守衛や使用人の姿も見えず、持ってきた紹介状を渡す事すら出来ない。

 

 門の前まで来て、その扉をドンドンと叩くリヴィアス。

「領主様ーーっ!領主ケートス様ーーーっ!御在宅ですかーーーっ!」

大声で呼び掛けるが返事はない。

 

 と、オグマがリヴィアスの肩を掴み、一歩下がらせる。

「中から声がする・・・獣の唸り声だ!」

人熊(ウォーベア)であるオグマの聴覚は並ではない。この扉の向こうに凶暴な野獣の気配を

耳と鼻で察知したオグマが警戒を促す。

「なんだと!?じゃあ、下手すりゃ領主様は・・・」

「ああ、魔獣に殺された可能性もある、気を付けろ!」

 

 もしそうなら師匠の手がかりが潰えてしまう。慌ててドアを開けようとするリヴィアスだが、

向こうからがっちり閂が掛かっているようで、扉はびくともしなかった。

 

「どけ、俺がやる!」

 一歩下がり、体を大きく反らせたまま扉に突進するオグマ。ハンマーヘッド(どたまかなづち)を打ち下ろし

門扉の中央に叩きつける!

 

 -ドッバァリィン・・・!-

 

 その一撃でドアは真っ二つに割れ、内部に向かって吹き飛ぶ、その威力に感動するオグマ。

「おお!凄い、闘気を込めてない状態でこの破壊力とは、さすがドガさんお勧めの武器だ!」

「・・・ってお前、試したくてウズウズしてたろ。」

 リヴィアスのツッコミに、へへへ、と頭を掻くオグマ。まぁ新装備を手に入れたんだから

使ってみたい気持ちはわからんでもないが。

 

 気を取り直して館の中に踏み込む二人。内部はメラの明かりが灯っており闇ではない。

それが誰か住んでいる感じを醸し出してはいるが、やはり誰の姿も無い。

「!!」

 今度はリヴィアスが先に気付いた。師匠の教えにあった気配を読む能力に引っかかったのは

廊下の奥からこちらに向かって来る、理性無き獣の気配!

 

「オグマ!」

「うむ、来るぞ。飛翔呪文(トベルーラ)でフォローを頼む!」

 

 気配が加速し、部屋に飛び込んでくる。躍りかかって来たその姿を見て、ふたりは同時に叫ぶ。

 

「「合成獣(キメラ)!!」」

 

 それは確かにキメラであったが、彼らがお目にかかったことのないタイプのものであった。

まるでトカゲと魔族を合体させたようなそのバランスの悪い姿に、どこか”作られた”

イメージを浮かばせる。

 

「フン!」

ハンマーヘッド(どたまかなづち)でその怪物を打ち返すオグマ。カウンターを食らったキメラはそのまま

壁まで飛ばされて叩きつけられ、ずるずると地面にダウンする。

「よ、弱っ!」

 思わず漏らすリヴィアス。その不気味な風貌に似合わず理性なしに突撃してきたわりには

正面衝突にあまりに弱い。自然を、この魔界を生きる獣としてはあまりに戦闘スタイルが

適切では無かった。

膂力が弱いなら弱いなりに、呪文なり気配を消すなり生き方や戦い方はあるだろうに・・・。

 

 が、オグマはぎりっ!と牙を噛みしめ、戦闘態勢を崩さない。まだまだ別の方向から、

廊下から、無数の気配を感じ取っていたから。そして、もうひとつ!

「(まさかとは思うが・・・あの”沼竜”と同じ?)」

 かつて竜を丸飲みし、その力を吸収してキメラとなったあの生き物。見たことが無い合成獣と

いう点でのみ、あの沼竜と一致する。まさか・・・

 

 と、複数の廊下からやはり大勢のキメラが乱入してくる。そしてその姿を見て二人は顔を

しかめずにはいられない。彼らに共通しているのは様々な獣と”魔族”の合体した姿だったからだ。

それが望んで生み出された存在でない事は明らかだ。理不尽に捕らえられ、他の魔獣と

合体させられ理性を失った哀れな魔族、その成れの果ての姿。

 

飛翔呪文(トベルーラ)っ!」

 オグマの腕を掴んだまま呪文を発動させ、飛び上がってキメラの群れを飛び越すリヴィアス。

広い部屋で囲まれて戦うのは不利だ。ならば廊下のような一本道に誘い込めば一対一の状況に

持ち込めるとふんで、彼らが来た方角の廊下に進み、着地する。

 

 あとは無双状態だった。といっても魔剣(ナタルコン)刺突槍(コーンランス)も持たぬ彼らが強いわけでは無い。

その合成獣(キメラ)達は理性も戦略も呪文も、そして闘う手段すらロクに無いまま襲ってきた。

哀れな彼らは残らずハンマーヘッド(どたまかなづち)の餌食となっていった。

 

「嫌な戦いだ・・・戦った気がせんよ。」

息を切らせて語るオグマにリヴィアスは冷静に返す。

「気持ちはわかるがそう言うな、むしろ問題はこれからだ。もしこいつらを作ったのが領主なら

そいつとは相容れることはできん!違うならこの程度のキメラに殺される領主ではないだろうから

むしろ安心だが、な。」

 とはいえリヴィアスも前者の可能性の方が遥かに高い事に気付いてはいた。統治していた頃の

連行した狼藉者の成れの果てでは無いのか、いつしか見なくなった自警団とやらの末路の

姿ではあるまいか、と。

 

 廊下を進み、突きあたった階段を降りる2人。そして降り立った部屋にある者を見て、彼らの

不安は確信に変わる。

「これは・・・」

「ッ!」

ぎりりと牙を食いしばるオグマ、目を背けるリヴィアス。そこにあったのは3mほどの球の水槽、

その中に魔族と獣の合成獣(キメラ)が液に浸かった状態で浮いている。

しかもひとつではない、ずらり並んだ水槽に、魔族と獣の合成された哀れな姿が、小さく呼吸

しながら浮かんでいる。生きるのすら精一杯、といった感じで。

 

 奥に進むオグマとリヴィアス。かつては情報の提供を願っていたここの領主に、今は明確な

嫌悪と、そして敵意を抱いて。

 

 やがて開けた部屋に出る。その部屋にもひとつの球水槽があり、その前には机とイス、そして

それに突っ伏している一人の魔族(タイムマスター)

 

 

 -水槽の中にいたのは、美しい魔族の女性と水竜(アクアドラゴン)の合わさった姿-

 

 

 

 




レトロゲーム”ドンキーコング”でハンマーを持った状態が近いかな、どたまかなづち無双w
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