魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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バトル回。


第32話 強者との真っ向勝負

「ゴルザリアの砦、陥落!飛竜フロッパー様、竜騎手(ドラゴンライダー)クラサック様、戦死!!」

「ロクサーネの泉、敵、(ドラゴン)の騎士の呪文で・・・じょ、蒸発!水龍ナータ様、音信不通!」

「ドラグナンの丘周辺の翼竜(テラノバット)一族全滅!」

 次々と伝えられる、その絶望的な情報。こちらは竜族の精鋭を揃えているというのに、

そして、相手はただの1人だというのに!

 

「噂以上の化け物だな、竜の騎士というのは・・・」

「だが、ここで必ず食い止める!女子供の避難は済んだか?よし、覚悟を決めろよ!」

 クナル大陸の中心にある要塞の城壁に立ち、部下たちに指示を出すガノイザーとケプラス。

半年ほど前に始まった、我らがヴェルザー様と天界の使徒、(ドラゴン)の騎士の戦いは、

ここまで終始ヴェルザー側が劣勢に進んできていた。各地で破竹の快進撃を続ける竜の騎士

バランの前に、配下の竜戦士たちはただただ屍を重ねるだけだった。

 

 あと数刻もしないうちに奴はこの要塞に辿り着くだろう、ここを守護する戦士として

ガノイザーもケプラスも腹をくくって待ち構えていた、相手にとって不足なし!と。

 このまま故郷のこのクナル大陸を突破されては竜戦士の名折れというものだ、有能な部下たちと

共に、ここで天界の犬めの息の根を止めて見せようぞ!

 

 そんな決意は、ほどなく訪れた一人の使者によって覆される。

「お久しぶりぃ~ケプラス君にガノイザー君、元気だったかい?」

「お、お前・・・死神(キル)!」

「助っ人か?お前の任務はどうした!」

 死神キル。ヴェルザーの腹心の1人である彼だったが、もうずいぶん前からこいつは、あの

大魔王バーンの元に暗殺者として派遣されていたはずだった。

 

「ヴェルザー様から緊急収集だよ、ボクも、そして君達もね。」

 人差し指をちっちっち、と振って目で笑うと、キルはさらにこう続けた。

「なんでも竜の騎士を倒す秘策があるらしい、と、なると行かないとねぇ。」

「なっ!」

「何だと・・・?」

 ケプラスもガノイザーも、竜の騎士との一戦に覚悟と決意を固めていたところだ。

それに横やりを入れられるのは不愉快ではあるが、あのヴェルザー様が言うなら受けない

わけにもいかない、キルの差し出した”キメラの翼(ルーラアイテム)”をしぶしぶ受け取る2人。

 

 と、城壁の際をとことこ駆けてくる一つ目小僧、確かキルの使い魔だったか・・・

「お待たせ~準備できたよ。」

「ご苦労、ピロロ。それじゃ行こうか、じゃあ待ってるよ2人とも。」

そう言うが早いが瞬間移動呪文(ルーラ)で本拠地ルオウ大陸の方に消えるキル。

 ケプラスとガノイザーは顔を見合わせ、仕方ないなとキメラの翼を使い、光の矢となって

要塞を後にする。

 

 その直後だった、ケプラスの部下が不審な顔をして城壁に上がってきたのは。

どうしました?と問いただす兵士に彼は答えた。

「いや・・・さっき一つ目小僧が下にえらくデカい箱を運び入れさせてな。どうするか指示を

仰ごうと思ったんだが、ケプラス様は?」

 

 

 -クナル大陸で交わされた最後の会話は、そこで途切れた。-

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「ぬおらぁああああっ!!」

 竜戦士(バルデバラン)ガノイザーが地を蹴り、リヴィアスにショルダータックルをぶちかます。

直前に踏ん張る姿勢を取ったにもかかわらず吹き飛ばされ、背後の土壁にめり込んで

砂塵を上げる、何というパワーか!

「リヴィアス!」

「お前の相手はワシだよ、熊のあんちゃん!」

 叫ぶオグマの右手を竜人(キングリザード)ケプラスががっしりと掴む。そしてそのまま力任せに振り回し、

まるで荷物のようにオグマを投げ捨てる、地面をバウンドしながらも、光の闘気で

なんとかダメージを凌ぐ。

 同じ獣人族とはいえ、2mにも達しないオグマと3m超えのケプラス、膂力に差があるのは

当然だが、それ以上に戦士としての格の違いをありありと感じさせる初手の攻防。

 

「ミール、レムを連れて下がっていろ、こいつら・・・強すぎる!」

 リヴィアスの言葉に従い、彼らから距離を取るミールとレム。その様を見てガノイザーは

手を腰に当ててふん!と息をつくと、呆れ声でこう話す。

「パーティ全員の力を使わないとはな、舐められたものだ。」

「生憎、こっちにも都合があるんでね!」

 そう返したのはオグマだ。ミールの水魔法や氷魔法は確かに彼らにも有効だろう、

しかし力を使う程に確実に死に近づく以上、彼女に戦闘を担わせるわけにはいかないのだ。

 

「ならば貴様らだけで何とかしてみせろ!行くぞおぉぉっ!!」

 ガノイザーはダッシュして間を詰め、リヴィアスに鉄拳を振るう。それを飛翔呪文(トベルーラ)で躱した

リヴィアスはそのまま地上をすべるように移動し、お返しとばかりに刺突槍(コーンランス)を突き入れる。

 

「んじゃ、こっちも行くぞ、熊の兄ちゃん!」

そう言って翼をひと羽ばたきさせ、一気に20mほど舞い上がるケプラス。腰に下げていた

鎖付き鉄球(モーニングスター)を取り出すと、直下のオグマに向かって投げ振るう。

 オグマが抜いたナタルコンが真空の刃を伸ばしその鉄球を打ち弾く。ならばと返しに振るわれた

一撃を今度はオグマが光の闘気で弾きいなす。

「ほー、面白いなお前ら、光の闘気と暗黒闘気を交互に使って、しかも威力を上げてやがる。」

 オグマとナタルコンの戦法を瞬時に見抜いたケプラスは、少し嬉しそうに笑みを見せ、

手にした鎖を素早く巻きつけて腰に戻す。

 

「闘気ならワシも負けんぞ、ふうぅぅぅ・・・ん!」

 ケプラスが気合を入れた瞬間、彼の全身から青白い闘気が吹き上がる。そしてそのまま

真一文字に落下し、オグマ向かって上から拳を打ち下ろす、間一髪躱したオグマだが・・・

 

 -どっごおぉぉぉ・・・ん!-

 

 勢いあまって地面を打ち付けたそのパンチは、着弾点に巨大なクレーターを生み出していた。

ただの拳でこの威力とは!

『竜の闘気・・・竜闘気(ドラゴニックオーラ)というやつか!』

 ナタルコンのその叫びに、オグマとリヴィアスが思わず反応する。それは確かリヴィアスの

仇敵、(ドラゴン)の騎士が使う鉄壁のオーラ!

 

「ガルゥアァァァッ!」

 オグマが竜の牙の手甲に光の闘気を込めて左パンチを返す。だがその一撃を手のひらで

事もなく受け止めてみせるケプラス、その掌にかすり傷すら付けることが出来ない。

 余裕の表情のケプラスに対し、ふっ、と闘気を消して右手でナタルコンを抜くオグマ。

瞬時に暗黒の真空刃を伸ばしたナタルコンの一撃がケプラスのどてっ腹を捕らえる!

 -ガキィン!-

 それでもケプラスは崩れない、その竜の体を覆うウロコに竜闘気(ドラゴニックオーラ)を通しているのだ、

生半可な攻撃が通用する相手ではない。

 

 -バチィン-

 ケプラスが放った掌底突きがオグマを吹っ飛ばす。ナタルコンを抜いている時には光の闘気を

抑えねばならず、そのせいで防御力の無いオグマにはただの張り手でも体の芯に響く。

 

 

「どこを見ている!」

 オグマ達の方に気を取られていたリヴィアスにガノイザーが襲い掛かる、その筋骨隆々な

腕が、足が、ガードしたリヴィアスをお構いなしに吹き飛ばす。

 さらに追撃をかけるガノイザーを誘い込むようにしてランスを突き込むリヴィアス。だが

その槍先をクルッと手で回しいなすと、そのまま槍先を持って槍ごとリヴィアスの体を巻き込む。

転がって逃れたリヴィアスが飛翔呪文(トベルーラ)を使って前後左右上下から次々と刺突を

繰り出すが、今度は足を止めたままその全てを捌き、躱すガノイザー。

 

「・・・強い、どの方向から攻撃しても全く崩せる気がしないな。」

息を切らせながらリヴィアスが毒づく。攻めに転じればそのパワフルな肉弾戦で圧倒し、

受けに回ればまるで老練な達人のようにこちらの攻撃を捌いてしまう。

 先程までは竜闘気(ドラゴニックオーラ)を使うケプラスの方に気が行っていた彼だが、

今はこのガノイザーの方にこそ、あの(ドラゴン)の騎士に通じる強さを感じていた。

 -(ドラゴン)の騎士は、代々受け継いだ格闘、戦闘のセンスがある-

師匠ロズテナーからそんな事も聞いていた、ならばこの達人のような戦いをするこの竜魔族を

上回って見せる事が、いつか己の目的を達するための指標となるだろう。

 

 

「ガルァッ!」

オグマの光の闘気を圧縮したパンチを、体を絞めて胸板で受け止めるケプラス。

『闘魔真空斬!』

すかさず後ろ回し斬りの要領で回転しつつナタルコンを抜き、真空の刃を首元に突き立てる。

「まだまだじゃ!」

 ケプラスのもろ手突きに吹き飛ばされる一人と一振り。挑みかかっては跳ね返されるをもう

何度繰り返しているか分からない。

 何度も攻撃することで、オグマの光の闘気もナタルコンの暗黒闘気もその威力は充分に

高められている。それでもなおケプラスの竜の鱗に満ち溢れる竜闘気を打ち破ることが出来ない。

相手のその余裕の態度からしても、こちらの限界を測られているのは明らかだ。

 

『目先を変えるぞ、オグマ!』

「わかった!」

 応えたオグマは、胸の襷ベルトからひとつのカプセルを取り出し、額のメルメットにある

宝玉に吸わせる。同時にナタルコンを構え、空いた左手の手甲で今仕込んだ魔法を取り出す。

真空竜巻(バギネイド)!!』

 ナタルコンが放った竜巻がケプラスを捕らえる。翼がある竜人にとって突然の突風は

体のバランスを失う危険がある、彼もまたその思わぬ技に体を崩され、よろよろと後退する。

飛翔呪文(トベルーラ)!」

オグマが取り出した魔法力を自らに浴びせ、瞬時に姿勢を乱したケプラスに突進。この兜の

宝玉にストックできるのは何も攻撃魔法だけではない、敵との間合いを瞬時に調整する

リヴィアスの戦い方をオグマも学んでいたのだ。

 だが、渾身の一撃は空振りに終わる。状況不利と見たケプラスはすかさず空中に舞い上がり

その攻撃を躱していたのだ。

「真空呪文に魔法を溜める石か・・・いろいろ持っておるな。」

 

 

 リヴィアスは瞬間移動呪文(ルーラ)でガノイザーから大きく離れていた。自分の

相手に纏わりつく戦法は全く通用しない。ならば己の持つ一番の戦法で勝負をかけるのみ!

 大きく弧を描き上空に舞い上がると、そこから反転して地面スレスレを猛スピードで突進、

彼はルーラを会得し、ルーラからトベルーラへと繋ぐことで、より短い時間で音速に達する

加速力を身につけていたのだ。

「馬鹿め、突っ込んでくるのはいいが、逸れておるぞ!」

 突進技かと思いきや、その槍先が自分をわずかに外れていることを見て取り、嘲笑する

ガノイザー。だがリヴィアスはお構いなしに突進する!

 

 

『竜人よ、我が最大の攻撃呪文、受けてみるか!』

 ナタルコンのそのセリフに、空中から「応、来るがいい!」と体を固めて構えるケプラス。

その身に竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏わせて!

『抜かるなよ、オグマ!』

ナタルコンの刃先に暗黒闘気が満ちる、それが真空呪文を呼び、X字の真空の刃を生み出す。

真空十字呪文(バギクロス)か!それがワシに通じると思うか!」

『まだだよ、竜人ケプラス!』

 既に生み出されたバギクロスの上に、もうひとつ同じ呪文を重ねるナタルコン。X字と十字に

重ねられた真空の8枚刃が、上にいるケプラスにかざされる。

 

「何と・・・面白い、さぁ来いっ!」

 腕をクロスさせ、防御の姿勢で受けて立つべく竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にする。

 

「『受けてみろ、真空八文字斬撃(バギ・クルス・クロス)!!!』」

 2重に重ねられたバギクロスが、その交わる中心の切断力が、ケプラスの体の芯に向かって

打ち放たれた!

 

 -ズドォッシュウゥゥゥンッ!-

 

音速衝撃波(ソニックバリアブレイク)!!」

 槍のロケットと化したリヴィアスが、ガノイザーの真横で音速を超え、空気が爆ぜる!

 

 -ッパアァァァァァンッ!!!!-

 

 




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