魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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やたら長くなってしまった・・・戦いやってるとどうしてもねぇ。


第33話 戦い、通じ合う

 -ズドォッシュウゥゥゥンッ!-

 

 ナタルコン現時点での最強の必殺技、バギクロスの倍掛け技である真空八文字斬撃(バギ・クルス・クロス)

竜人ケプラスの正中線を捕らえる。

彼の持ち前の竜の鱗に加え、竜族の闘気”竜闘気(ドラゴニックオーラ)”を備える防御力を突破するために放った

八薙ぎの真空斬!

その交点の破壊力は通常の真空呪文(バギ)とは文字通りケタ違いの威力を誇る。

「グオォォォォ・・・っ!」

 クロスさせた両腕でその呪文を受け止めるケプラス。しかしその真空刃は竜闘気(ドラゴニックオーラ)を徐々に押し切り、ついにはその筋肉まで達した。

「グワァォッ!!」

 食い止めることが出来ないと悟ったケプラスは、たまらず羽根をひと羽ばたきせさせて

その身を上空に躱し、真空八文字斬撃(バギ・クルス・クロス)を回避する事に成功する。

 それでも、その腕から肩にかけて深手を負わせており、その顔から遂に余裕の表情が消える。

「ゼェ・・・ゼェ・・・やりおるわ。このワシの竜闘気(ドラゴニックオーラ)を突破するとはのう・・・」

 

 

 -ッパアァァァァァンッ!!!!-

 

 リヴィアスが槍のミサイルと化し、相対する竜戦士ガノイザーの際を通過するその時、

音速突破の衝撃波が放たれ、際にいたガノイザーの耳を、三半規管を鳴らしえぐる。

「がぁっ!!?」

 経験したことのない衝撃とダメージに困惑するガノイザー。戦士として、武道家として

幾多のダメージを経験してきた彼だが、さすがに音速の壁を突破する衝撃波を受けたのは

初めてのことだ、筋肉で覆われた鋼の肉体がたまらずヨロける。

 

 リヴィアスに躊躇は無い、強敵に一瞬のスキを生み出すために編み出したこの技、効いたなら

無駄には出来ない、そのまま弧を描いて反転、今度こそその体を貫くべく弾丸となって

ガノイザーに突進する。

 

 -ぱんっ!-

 ガノイザーが己の両耳を手で打ち据える。百戦錬磨の彼はわずかな時間で、このダメージが

”音と衝撃”の仕業であることを悟り、己の三半規管に活を入れる。

体勢を立て直し、ふり向いたその時まさにリヴィアスの槍が目前まで迫っていた。

 

 -ビュオォォ・・・ン-

 

 紙一重、まさにギリギリで突進を躱すガノイザー。

「なん・・・だと!?」

 リヴィアスは直撃を確信していた。これまでの経験則から、三半規管をやられた相手が

どうヨロけ、どう堪えるかまで頭に入っていたから。

だが、ガノイザーはそのいずれとも違う、冷静かつ瞬時の反射神経で刺突を凌いで見せたのだ。

「あの一瞬で・・・回復したと言うのか!」

 

 減速し、ガノイザーがいた所から100mほどの地点に着地したリヴィアス。その距離に

油断があったのか、数瞬の間彼は敵から目を離してしまっていた。

 顔を上げた彼が見たのは、砂けむりを上げて猛然とこちらにダッシュしてくるガノイザー!

焦ってコーンランスを構え直すがもう遅い、わずか数秒で間を詰めたガノイザーの一撃が

リヴィアスの胸板を突き込む。

角竜の肘(ドラグホーン・エルボォ)っ!!

 ただの人間には明らかに致命傷となる一撃が叩き込まれ、吹き飛んて地面を転がる

リヴィアス、もはや勝負あったのは明らかに見えた。

 

 

 

「お前の最強呪文見せてもらった、今度はワシの最強呪文を見せてやろう!」

 宙からオグマとナタルコンを見下ろすケプラスはそう言うと己の両手両足を大きく

斜めに広げる、首を目一杯伸ばし、尻尾を真下に伸ばして固める。

その体を大きく広げる様は、彼がまるで空中に磔になったかのようにすら見える。

 

「・・・爆裂呪文(イオ)・イオ・イオ・イオイオイオぉぉぉっ!」

 そう雄叫びを上げた瞬間、彼の手足の先、尻尾の先、そして上を向いた口先に

爆裂呪文の光球が発生した!

「・・・な!?」

爆裂呪文(イオ)を・・・6発同時、だと!?』

 驚くオグマ達に、ケプラスはにやりと笑って返す。

「本番は・・・これからよ!」

 

 その時だった。生み出された6発のイオが、隣のイオに向けて魔法のプラズマを繋げる。

右に左に、縦に横に、イオの間にプラズマの線が描かれていく。やがて6つの光球から伸びた

魔法力が、一つの大きな魔法陣を描き出す!

 

「六芒星魔法陣!!」

 そう発したのは避難して見ていたミールだった。あの魔法陣は攻撃呪文の威力を

底無しに上げる、もしあの呪文が炸裂したら、単にイオ6発の威力では済まない・・・いや、

極大爆裂呪文(イオナズン)ですら比較にはなるまい、下手をするとこの廃墟の町そのものが

吹き飛びかねない!

 

「6つのイオで魔法陣を描き、竜闘気で撃ち出すわしの最強呪文、”爆裂陣呪文(イオタ)”とくと見よ!」

 

 間近にいるオグマとナタルコンには、その絶望的な威力はひしひしと伝わってくる。

それがむしろ、彼らに覚悟と冷静さを与えていた。やることは一つ、あの呪文が撃ち出される前に

決着をつけるのみだ、その方法もすでに仕込んである!

「ぬん!」

 オグマは兜の魔法石に埋め込んだ呪文を竜の手甲に取り出す。ナタルコンをカチリと鞘に納め、

彼の暗黒闘気で限界まで高めた光の闘気をフルパワーで発する。

「行くぞ、竜人の超戦士よ!」

 

 

 

「な・・・に?」

 ガノイザーは信じられなかった。吹き飛ばしたはずの人間が、苦しそうな表情ながら

胸を押さえて立ち上がって来るでは無いか。

 我が技は人間ごとき即死させてもおかしくない、いくら彼が優れた槍戦士(ランサー)であろうと、

致命の一撃を与えられ、なおかつ己の得意戦法を破られたのだ。それでもなお折れない

心の持ち主という事か・・・

 

「生憎、俺は不死身の戦士ってワケじゃない、コレのお陰さ。」

そう返したリヴィアスの、その首に巻いている赤い布がふわりと舞い踊る。

「ぬ!それは・・・闘気か。その布に通して我が一撃を受け止めたか。」

「まぁな・・・何でも習得してみるもんだ。」

 

 彼はサルトバーンでの修行中、オグマやナタルコンのような闘気の力を身につけられないかと

試行錯誤していた。だが彼は憎しみの暗黒闘気を身につけるには正道を行き過ぎていたし、

光の闘気を身につけようとしても、竜の騎士への憎しみを捨てきれないでいた為、

身にならなかった。

 そんな彼に師匠のロズテナーはこうアドバイスする。

「己の原点、それに思いを馳せてみよ。」

 リヴィアスの原点。それは(ドラゴン)の騎士に殺された仲間たちの、両親の、そして

自分を生かすために肉のクッションになってしまった妹への懺悔。

それこそが彼の赤い首巻、かつて守れなかった、守られてしまった己への自責の心。

 そんなおんぶ紐を手にし、己の思いを念じた時、彼の手から闘気が、生命エネルギーという

名の”想い”が布に伝わっていった。

 

 -それは”守る”者の魂-

 

「あれからだな、この赤い首巻(レッドネック)に闘気を通せば、俺をほぼ自動で守って

くれるようになった。不思議な話だろ?」

「・・・別段不思議とは思わぬよ、それが君の魂の力なのだろう。」

 ガノイザーがふん、と息をついてそう感心する。この人間、いい心を持っておる、と。

 

「だが、勝負は別だ。降参するなら受け入れてやっても良いが・・・」

「だったらヴェルザーには会わせてくれないんだろう?なら諦めるわけにはいかない!」

その返しに腰を落とし、武術の構えを取るガノイザー。

「ならば来るがいい!見せてみろ、お前の悪足掻きを!」

 

 

 

「当たれぇっ!」

 オグマが空中のケプラスに向けて呪文を投げつける。だがケプラスは意に介さず、

己の爆裂陣呪文(イオタ)を撃ち出す為の竜闘気を体の前に集め続ける。

「無駄だ無駄だ、この魔法陣と我が竜闘気を貫いて我に届く攻撃呪文など存在せん!」

 

 そう、その通りだった。それが”攻撃呪文”ならば。

だがオグマの放った呪文は魔法陣をするりと抜け、竜闘気を存在しないように通過し、

すぐ後ろにいるケプラスに直撃する。

「な・・・に・・・?」

 驚くケプラスが次に見たのは、光の闘気を全開にして自分めがけてジャンプしてくる

熊人(オグマ)だった。飛翔した後、その闘気を頭の兜に集め、一本の頭槌(どたまかなづち)を生み出す。

 だが遅い!もうこちらの発射準備は完了している、奴が我に届く前にこの爆裂陣呪文(イオタ)

撃ち出し、それで終わる・・・

 

 撃ち出せなかった、動けなかった。

いや、正確には体が”動きたがらなかった”のだ。

 

「これは・・・この呪文は!!」

それはあまりにも正攻法からかけ離れていた、相対する敵にこの呪文を放つ者など、ありえん!

回復呪文(ホイミ)・・・だとぉっ!!!」

 

 体が回復する時、それは体がもっとも”動きたがらない時”でもあるのだ。

疲労に身を横たえ眠る時、マグマで熱せられほどよい温度の湯につかる時、

飯を食らい満腹の充実を過ごす時、体は脳の意思に反してでも動こうとはしないものだ。

 

 そしてもちろん、回復呪文で、先程の真空呪文で受けた傷口が塞がりつつあるこの時も!

 

 

 

飛翔呪文(トベルーラ)!」

 リヴィアスが空中に舞い、そのままガノイザーから距離を空ける。今度は油断なく間を取ると

そのまま天高く舞い上がっていく。

「ふん、また加速しての刺突か。だが無駄だ!」

 ガノイザーがふふんと笑って構える。先程の二度の突撃からその速度は把握している、

あの衝撃波も二度とは通用させない自信があった、奴が何をしてこようとも打ち破る!

 

「はあぁぁぁっ!!」

 高高度から落下して加速をつけ、地面すれすれで弧を描き、一本の槍のミサイルとなって

ガノイザーに突撃するリヴィアス。

 対して構えたガノイザーは、ここだ!と右手を円に捌き、その槍を捕らえ・・・なかった。

「なに?」

 慌てて左手で槍を打ち払う・・・その手も空を切る。体ごと身を躱すが、まだ槍は来ない。

手で、足で、体さばきで槍に対処しようとするが、そもそも槍がまだ到着していない。

 

 リヴィアスはガノイザーに突進しながら”減速”していたのだ。元々円錐状の刺突槍(コーンランス)

体を隠して突撃しているせいで、相手からは丸い姿しか見えない。

近づくにつれ大きくなるその姿で距離感を測ったガノイザーは、先の二度の突進との差に

感覚を狂わされ、完全にタイミングを外されてしまったのだ。

 

 ようやくランスがガノイザーの目前に来た時、その槍は空中で停止していた、主である

リヴィアスと共に。

 ぽいっ、とガノイザーに槍を投げ渡す。え?という表情でそれをキャッチした瞬間、

リヴィアスは再度飛翔呪文を使い、相手の頭の上を飛び越して真後ろを取る。

 

 -かくっ!-

 そのままガノイザーの両ヒザを自分のヒザで押してヒザをつかせると、そのまま

後頭部を鷲掴みにして地面に叩き伏せる!

 かつてエイの怪物を地に伏させた自警団の連携、子供の遊びのようなヒザカックンを使い

達人の域にある武道家を完全に崩して見せたのだ。

 

 素早くコーンランスを奪い、倒れた彼の首元に刃先を突きつける!

 

 

 

 ケプラスの目の前まで飛翔したオグマが、その頭の光の槌を大きく振りかぶった時、

彼は目を細め、一言こう呟いた、お見事、と。

 

闘気激砕槌(オーラ・グラヴィトン)ツッッ!!」

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

「がっはっは、そうかそうか、あのガルド様の末裔かよ、強いわけだ。」

「うう・・・気の毒になぁ。故郷を失うってのは悲しいもんだよ。」

 戦いの後、先程の屋根の下に戻った彼ら。ケプラス達がひそかに溜め込んでいた酒と食料を

山のように持ち込んで酒宴となっていた。笑い上戸のケプラスと泣き上戸のガノイザーが

なんとも対照的なコンビだ。

「あんたたちも・・・ヴェルザーに故郷を大陸ごと・・・辛いよな。」

「お前程じゃねぇよ・・・妹さんが背中で死んだって、そりゃさぞ・・ヒック。」

「熊の兄ちゃんとこもみんな石になぁ・・・元に戻るといいな!」

「父は勇敢に戦い壮烈に散っていった。だが、出来るなら戻って欲しい!」

 すっかり意気投合した彼らと飲み食いしながら語り合う。そんな彼らを一歩引いた

所で眺める精霊レム。

「さっきまであんなに殺し合ってたのに・・・やっぱ魔界の人達ってヘン。」

 そんな彼女にミールが、そして立てかけられたナタルコンがそれぞれ返す。

「戦士たちとはそういうものです、戦ってこそ心が通じ合うのですよ・・・冷や汗ものでしたが。」

『命のやり取りに勝る会話など存在せぬよ、本音を、そして命をぶつけ合うのだからな。』

 

 ケプラスとガノイザーは語る。彼らはかつて(ドラゴン)の騎士バランと決戦すべく故郷の

砦に陣取っていた。だが劣勢だったヴェルザー側はその地にバランをおびき寄せ、魔法の超爆弾

”黒の結晶”で大陸ごと消し去るという強硬手段に出たのだ。

 ヴェルザーにとっても2人は重要な戦力であり、失いたくない人材だった。だからこそ

同志合流呪文(リリルーラ)が使える死神(キル)を呼び寄せ、彼らだけを助けた。

 

 だがそれで納得する彼らでは無かった、故郷の仲間を捨て石にされ、それでもバランを

仕留められなかった事に対するヴェルザーへの憤懣から、彼らは冥竜王の元を去っていった。

 そして同時に、バランを倒すほどの実力の無かった不甲斐ない自分たちをも恥じた。

もし真っ向からあの(ドラゴン)の騎士を倒す力が自分たちにあれば、ヴェルザーに

あのような愚行をさせる必要も無かったのだ、と。

 

「なるほど・・・強いわけだ。」

 そうこぼしたのはリヴィアスだ。過去の後悔を糧にして己を鍛え上げる、そんな自分と同じ

志を持つ2人の竜戦士に、敬意と共感(シンパシー)を感じずにはいられない。

 

 2人もまたオグマの、リヴィアス、ミールの、そしてナタルコンの”物語”を聞いて

感銘を受けずにはいられなかった。

自分たち同様、仲間を救えなかった人間、一縷の望みに賭け抗う熊人、武器の使命を

果たさなかった”神の涙”に一矢報わんとする魔剣、寿命の終わりを明確に認識し、

死までの時間を仲間の為に使うと決めた水龍魔族。

 

 -そして”魔界を閉じる”決断をした神々-

 

「よっしゃ、明日にでも俺達がヴェルザーんトコに案内してやるよ。」

「うむ、殺されるなよ。残留思念のみとはいえ化け物には違いないからな。」

 ケプラスとガノイザーはそう言って彼らの願いを快諾する、かつてルオウ大陸や

アルキード王国を襲った悲劇が、今度は魔界全体に波及しようとしているのだから、

そして、この高い志を持つパーティの願いを叶えてやりたかったから。

 

 一同、拳を突き出し、コツコツとそれを合わせる。

 

 それを離れて見ていた精霊”降りのレム”は一言、皆にこう告げた。

「私の使命は、魔界と地上をつなぐ”道”を封印する事です。」

 その言葉にえっ!?と振り向き、彼女を見る一同。彼らの目的の地上への道を封印する

役目を担ったレムは、やはり彼らとは相容れないのか・・・?

 

「でも、神は私に瞬間移動呪文(ルーラ)も、明確な攻撃呪文も与えませんでした。」

「それって・・・つまり・・・」

 ミールのその返しを受け、レムは皆の正面を見据え、はっきりとこう返した。

 

「私の使命は、絶対に成し遂げなければいけないものでは無い、という事です。」

 

『ふむ、ようやくお主の”本音”が聞けた気がするよ。』

 天界の使者である精霊を何より嫌っていたナタルコンが、嬉しそうに目を細めて

一言、そう返した。

 

 

 

 




登場人物紹介

・ケプラス&ガノイザー

【挿絵表示】

 かつて冥竜王ヴェルザーに使えていた竜族の豪傑。獣人系の竜人(キングリザード)の方がケプラス、
魔族の肉体に竜の耳を持つ竜戦士(バルデバラン)がガノイザー。
ヴェルザーが竜の騎士バランを倒す為に”黒の核晶(コア)”を使ったことにより、彼らの故郷である
クナル大陸を失ったことにより離反、だがその後ヴェルザーが敗れたことを知り、自分たちは
一体何をやっていたのかと後悔する。
 やがて復活するであろうヴェルザーに落とし前を付けるため、また竜の騎士に及ばずとの
評価を覆す為に彼らは自らを鍛えに鍛える。
目標が竜の騎士だっただけに彼らの強さは今やそれと同レベルまで叩き上げられている。
ケプラスの必殺呪文”爆裂陣呪文(イオタ)”はドルオーラに匹敵する威力を持ち、
ガノイザーの格闘技術は原作に例えればクロコダインの腕力とブロキーナ老師の体術を
併せ持つレベル。
ケプラスは豪放磊落で大酒飲み、ガノイザーはクッソ真面目で武人系。
ちなみに名前の由来はアーケードゲーム”サイバリオン”のボスキャラから。
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