魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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魔界編もついに最終回、その記念に表紙を追加しました。画力は皆無ですが
各キャラクターのイメージがつかめれば、と思って描きました、目次のページで見られます。
オグマがやたら男前になったり、リヴィアスが女顔になったりで苦労しました・・・



第39話 いざ、地上へ!

「うわわわわああああぁぁぁーーー」

「なんとおぉぉぉぉーーっ!」

「ひいぃぃえぇぇやあぁぁぁぁーーーん!」

 

 サルトバーンの中央広場の上空。幾人もの戦士や魔法使い、力自慢から単なるクレーマーに

至るまで、多種多様な種族が空高く舞い上げられ、悲鳴を上げていた。

・・・ちなみにその被害者にはリヴィアスやガノイザー、ケプラス、そしてちゃっかりオグマと

ナタルコンも混ざっていたりする。

 

 

「皆さん、初めまして。このたび冥竜王ヴェルザーさんに”魔王”を拝命いただいた

きらりんと言います。」

 町が動き出す、いわゆる朝に設定された時間。領主ケートスによる住民の集合の鐘の音に

集まった面々を前にして、きらりんは幼くも澄んだ声で皆にそう告げた。

 

 このサルトバーンでは、既に天界の”魔界を閉じる”計画が進行しているのは周知の事実だ。

オグマ達が天竜山に向かっている間、この町の者たちは他の集落や都市と連絡を取り、多数の

者たちの行き来を経て情報の交換を行ってきた。

 それに伴いこの町にも様々な旅人や冒険者が立ち寄っている、無論その手の人物は腕に

覚えがあり、結果短期間でこの町は腕自慢が密集する所になっていたのだ。

 

 そこへきて人間の、しかも幼い小娘が、あろうことがあのヴェルザーの名を持ち出して自らを

”魔王”と名乗ったのだ。それが火に油を注ぐ行為であることは想像に難くない。

 

「はぁ?なんだってお嬢ちゃん、もいっぺん行ってみろ!」

「おいおいおい何の冗談だよ、領主!狂ったのか?さっさと黙らせろ!!」

「人間風情が・・・ヴェルザー様の名を軽々しく語るんじゃないよ!」

 

 まぁ打ち合わせの段階から想像できた反応ではある。、この力こそ正義の魔界でまともに話を

聞いてもらうには、彼女の力量を分かりやすく示す必要があるだろう。

 

「黙らぬかあぁっ!!」

 一喝して衆人を黙らせたのは傍らに控えるガノイザーだ、隣にいるケプラスが両手でまぁまぁと

ジェスチャーして「少し話を聞いてくれよ」とたしなめる。

 

「お・・・おい、アレ・・・」

「ま、まさか、あのケプラス!?」

「えええええっ!あのヴェルザー七竜将の?・・・って、隣はガノイザーじゃねぇか!!」

 先の魔界大戦、ヴェルザー一族と竜の騎士の戦いの事情に詳しい流れ者たちが、

その生き残りを目にして驚愕の声を上げる。その彼らをして後ろに従える少女が

ヴェルザーの任する魔王という言葉に若干の説得力を持たせる。もっともそれで彼らの不満が

収まるわけでは無いが・・・

 

 えーと、と前置きして話を続けるきらりん。その次の言葉に周囲の者たちが皆、愕然とする。

 

「私と、力比べしましょう!」

 

 

 かくして町の中央広場に、腕に覚えのある荒くれ者たち30名ほどが、中央に陣取るきらりんを

取り囲むことになる。

 でろりん一行は広場の隅で万一の事態に備えて臨戦態勢を取る。ただその表情はひきつって

鼻水を垂らしたビビりまくりの表情なのだが。その横ではミールと精霊レムが「大丈夫大丈夫」と

微笑みを見せる。

 

 だがその時、とんでもない提案をする人物が現れた!

 

「どーれ、ワシも参加させてもらうかのう。」

なんとケプラスが他の荒くれ者に合流し、きらりんと対峙する。

「うむ、魔王きらりんの実力、今一度確認させてもらおう。」

そう言ってガノイザーまでそれに続く。周囲の者は「え・・・いいの?」という表情。

 

「んじゃ俺も参加するか、俺はこっち側だけどな。」

 リヴィアスがきらりんの横につく、同じ人間同士ならそれはまぁ当然の光景なのだが・・・

「んーん、リヴィアスさんもあっちで。」

 笑顔できらりんがそう指示する、リヴィアスさんにも私の力知って欲しいから、と言われ

大丈夫かよ、という顔で反対側に歩いていくリヴィアス。

 そんな空気を読んでか、オグマとナタルコンは目を合わせて頷き、我々も行くか、と

リヴィアスの横について魔王(きらりん)と対峙する。その光景をジト目で眺めるミール、

あの人達はあとでお説教ね、と。

 

 これだけの大勢を相手にするだけでも自殺行為だというのに、かのヴェルザーの最強の

部下7人衆に数えられるふたりの戦士、そしてついひと月前にこの町をエイの怪物から救った

赤い首巻(レッドネック)リヴィアスと、熊人と魔剣、(オグマ)暗黒(ナタルコン)のコンビまで相手に

しようとは・・・

 

 

「呪よ、その力を虚に映し、映りし力を(うつつ)とせよ。反転性魔法(マホリグル)!」

きらりんがそう唱えた瞬間、彼女を中心にして広場いっぱいに魔法陣が広がる。

 その光景に警戒の構えを取る者、体に異常が無いか腕をぐるぐる回す者など、各々対応

しようとするが、特に何か効果は感じられない・・・?

 

「これは魔法の効果を反転させる呪文です。火炎(メラ)を使えば氷呪(ヒャド)になり、回復呪文(ホイミ)を使えば

逆にケガが酷くなる、そんな魔法陣なんです。」

 

 その説明にざわつく一同。参加者の1人が試しにメラを撃ってみるが、確かにヒャドに変わっている、

珍しいがこれが一体どうだというのだ?

 

「じゃあ、はじめます。」

 

 そのきらりんの言葉に参加者一同がザッ!と身構え、大勢のギャラリーが次のアクションに注目する。

もし、最初の攻撃が不発に終わったなら・・・彼女は、終わる。

 

重力呪文(ベタン)。」

 

 彼女がそう唱えたその瞬間だった。参加者全員がふわっ、と浮き上がり、そのまま加速をつけて

天高く舞い上がっていく!

「え・・・ええええぇぇぇぇェ ェ ェ ェ ・ ・ ・ 」

「は、はあぁぁぁぁぁァ ァ ァ ァ ァ ッ ァ ァ ?」

「おっおわわわわゎ ゎ ゎ ゎ ゎ ヮ ヮ ヮ ヮ ~」

ドップラー効果満載の悲鳴を上げながら、高らかに舞い上がっていく荒くれ者たち。

 

 きらりんが破邪の洞窟199階で得た呪文、反転性魔法(マホリグル)。メラをヒャドに変え、

真空呪文(バギ)を空気を生み出す魔法に入れ替える、不思議だけどいまいち使いどころの

良く分からなかったこの術。

 その効果的な使い方に気付いたのは、狭い洞窟を抜けて魔界に来た時だった。もし天の

開けているこの場所で重力呪文を併用して使ったら・・・

 

 果たして荒くれ者たちは”上空に向かって落下して”いたのだ。無論彼らの中には

翼を持つ種族もいる、だがケプラスも他の翼人族たちも、瞬時に天地逆転したこの状況に対応して

羽ばたくなど不可能だ、地に向けて空気をかき上げる翼を重力逆さまの状態でまともに使えるはずもない。

 

瞬間移動(ルーラ)!」

飛翔呪文(トベルーラ)!」

 リヴィアスを含んだ勘のいい数名の魔法使いが、ルーラ系でこの危機を脱しようとする。

だが呪文は発動せず、逆に彼らの体内に魔法が圧縮され、指一つ動かせなくなる。

 ルーラ系の呪文は基本、体から魔法力そのものを放出する魔法である。だが今この場所は

きらりんのマホリグルによって魔法効果が反転してしまう、放出したはずの魔法力は

逆に彼らの内に凝縮し、そのまま魔法力そのものが硬化してしまった。

 

 彼らが加速しながら、ついに魔界の天井”天の大地”が目視できる所まで舞い上げられた時

その落下速度がすすすっ、と遅くなり、、空中で一時停止する猛者たち。

「え・・・これって、」

「ま、まさか・・・」

 動きのベクトルが180度入れ替わり、今度は本当に落下していく一同。地上できらりんが

マホリグルを一時的に解除し、彼らをベタンで遥か下の地面に招待したのだ。

「 ゃ っ ぱ り か あ あ あ あああああ!」

「ダ ァ ァ ぁ ぁぁっ、ま ほ う が 使えねええええ!」

 

 下から上へ、上から下へ。ドップラー効果の効いた悲鳴を響かせながら天地を往復する

荒くれ者ども。こんな小さな人間の少女に、まるで赤子をあやす「高いたかーい」を

されているように翻弄され続ける。

 

 30往復し、ようやく地に降りる事が叶った時には、すでに彼女に逆らう強者はいなかった。

重力酔いで頭を抱える者、吐く者、土に頬をこすりつけて「地面って素敵・・・」と

悦に浸る者等、皆様々にヘタレている。

 

「ま・・・魔王きらりん様!万歳!!」

 死屍累々の中そう声を上げたのは、最初にきらりんにケチをつけた獣人族だった。

彼はすぐそばに居たリヴィアスに「調子いいぞこの野郎!」と頭をハタかれるが、

間を置かずに周囲のギャラリーから拍手と笑いが巻き起こる。

 

 そしてシュプレキコール。

「「「魔王きらりん様万歳、ばんざーいっ!ばんざーいっ!ばんざーいっ!」」」

 

 本人が顔を赤らめて苦笑いする中、周囲は皆、彼女を魔王として受け入れていた。

そう、力こそが正義の魔界、ならばこの大勢に対して力を示して見せた彼女には最大の

敬意を払う、それこそが魔界の礼儀なのだ。

 かつて魔王ハドラーはその邪悪な魔力で地上のモンスターを凶暴にしてみせた。大魔王バーンに

至っては大陸一つ(死の大地)を魔法で支配し、その魔力で大魔宮(バーンパレス)を天に舞わせた。

 それに比してはささやかながら、この広場を自分の魔力で支配し、数々の強者を手玉に取った

この小さな人間の少女に、魔王の名を託してみるのも悪くは無いか、と皆が思ったのだ。

 

「やれやれ、こりゃ責任重大よね・・・」

 そう言って目頭を押さえるずるぼん、そんな妻の肩をそっと抱くでろりん。

残った獣の左手でぐっ!と親指を立てて見せると、彼女もまぞっほもへろへろも、にかっ!

と歯を見せる、良い笑顔だ。

 

 

 その日の夕食会、領主ケートスの応接室にはきらりんを上座に、オグマ達直属の部下が

脇を固めつつ、他の町の実力者や情報通による、今後の方針が話し合われた。

「ヌムーンの森より南は連絡が取れません、おそらく噂の怪物が暴れていると思われます。」

「サックの溶岩川の向こう側も同じです、なんでも食った相手の能力を取り込む怪物とか・・・」

 全員がその報告に沈痛な表情をする。それは恐らく先日この町を襲ったエイの怪物と

同じ類の化け物だろう、と。

 

「融合の顎・・・ある精霊が放った、魔界を混乱に陥れる怪物です。」

 そう告げたのはレムだ。精霊の彼女が精霊の所業を明かすのは意外な事だったが、彼女は

あっけらかんとこう続ける。

「混乱を招く目的は、魔界を閉じる事を”隠す”為です、みなさんもうご存知ですし。」

おどけた笑い顔で話すレムに一同ふっ、と気が抜ける、それもそうか。

「私の旅を助けてくれたみなさんに対する、私からのお礼です。」

 そう言ってぺこりと頭を下げるレム。それは遠からず彼女はこの地を去り、また地上に向かう

きらりん達にも同行しない、別れを予感させる態度でもあった。

 

「まぁその化け物退治は俺とガノイザーの役目だな。」

 ケプラスの提案にガノイザーも頷く。屈強の竜戦士である彼らは地上に行くよりも

この魔界でこそ活躍の場があるだろう。また、きらりんの持つ世界を超えるアイテム

”移転の(まどか)”は最高で8人しか転移させられない。オグマ達に加え、でろりん達も

地上に戻さなければいけない都合上、二人が同行するには定員オーバーだ。

 

「私たちは地上に向かいます。より天界に近い世界に行く事、地上の人間たちに協力を

願う事、そして・・・私たち各々が目指す目的のために!」

 きらりんがそう告げ、皆が一様にうんうんと頷く。そう、彼らが地上に向かうのは

何も魔界を救うためのみではない。各々が抱く感情。後悔、復讐、人生、そして救済。

それらを成すこともまた、彼らの旅の大きな目的なのだから。

 

 方針は決まった。いよいよ明日、彼らは地上を目指して旅立つ!

 

 

 朝、出立の支度を整えた彼らのもとには大勢の者が見送りに訪れた。武器屋のドガさんが

息を切らせて彼らの先頭に立ち、紫色の杖を差し出す。

「間に合った・・・ミサーの村にコイツがあるって噂を聞いてな、自警団のネグネグに頼んで

探しに行ってたんだ。魔王さまに、ってな。」

 それは紫龍の杖と呼ばれる逸品、木製の杖ながら紫色にコーティングされた、極めて強力な、

かつ使用者にも強力な技量を擁する、伝説級の魔法の杖。

「うわ・・・すごい、これ。」

 持った瞬間にそう呟くきらりん。技量が互角なればこそ分かる、道具と持ち主の関係。

ナタルコンも思わず目を細め、フフフ、と笑いをこぼす。

 

「ではみなさん、お別れです。」

 精霊レムが一足先にそう告げる。彼女はこれからも歩きに等しい遅さで、広大な魔界を

回らねばならない。為さねばならぬわけでも無い”使命”の為に。

「俺達が言うのもなんだが・・・頑張れよ!」

『いつかまた会いたいものだな。』

オグマが、そしてナタルコンがそう返す。かつて精霊を、神の使いを嫌悪していたナタルコンが

初めて本音で話せた精霊、ほんの短いひと時の邂逅は、彼の長い一生の中に確かに刻まれていた。

 

「また戦ろうぜ、今度は勝つぞオグマ、リヴィアス!」

「その時まで精進を怠るなよ。」

 ケプラスとガノイザーが居並んでそう告げる。オグマ達が戦った相手で間違いなく一番の強敵に

拳をコツコツと合わせ、にやりと笑顔を交わす。

 

「生きてる内に報告に来いよ、我が弟子リヴィアスよ。」

「今生の別れになるかもしれぬ・・・だが、最後は笑っておくれ、この愚かな父の為。」

 ロズテナーがリヴィアスに、ケートスがミールにそう告げる。告げられた二人は笑顔で

己の恩人にそっと抱きつく。ありがとうございます、ありがとう、と。

 

「みんな、かっこいいな・・・」

 そんな光景を見て呟くきらりん。その言葉を聞いた両親が、彼女の小さな肩にそっと手を置く。

全てが終わった時、きっとお前もあの輪の中に、それも真ん中にいるよ、と。

 

 街はずれまで歩いて彼らは振り返る、サルトバーンの町と、世話になった様々な人々。

彼らに向き直り、全員が手をぐっ!と上に突き上げる、さらば魔界の町よ!

 

瞬間移動呪文(ルーラ)!」

 

 

 天竜山、ヴェルザーの石像が佇む門の前、きらりんは移転の(まどか)の8欠片を全員に

配って回る。門の中は地上扱いなのでまずきらりんがあっちに入り、そこで移転の(まどか)を使えば

彼ら8人は地上の”自分に最も縁のある場所”に飛ばされる。

 再び会うまでしばしのお別れ、このパーティもここで一時解散となる。

「はい、ナタルコンさんの分。」

『我も・・・頭数に入るのか?』

 うん、と頷くきらりん。魂を持つものならこのアイテムの転移対象となる、つまり転移した先で

オグマとすら別行動になる可能性もあるのだ。

「行ってみてのお楽しみ、ってワケだな。」

 

「ではヴェルザー様、行ってまいります。」

 石像に一礼するきらりん、そして一同。

対するヴェルザーは答えない、だがその石像の眼の光が雄弁に語っていた、さぁ行け!と。

 

 轟音と乱気流を巻き起こしながら門を開き、中に入っていくきらりん。

「じゃあ、すぐに呼ぶよ。」

そう言い残して閉じる門の向こうに姿を消す、いよいよ見果てぬ、そして懐かしの地上へ!

 

 

 -境界転移呪文(オットールーラ)!-

 

 

 




さぁいよいよ地上編、原作”ダイの大冒険”のキャラ達がここから大挙して登場します。
いわば二次創作としての本番が次回から開始です、ご期待ください(少しだけ)


登場人物紹介

・きらりん

【挿絵表示】

 人間で8歳の女の子、黒髪で整った顔立ちをした次期魔王。
かつての偽勇者一行、でろりんとずるぼんの一人娘。オーザムでかまくら生活をしていた
時に、へろへろとまぞっほの留守の間に仕込んでいたのだが、実は二人にはバレバレで、
わざわざ気を使って漁の時間を長く取ったりされていた。
 父や母を英雄だと思っていたが、実は小物である事を知り家出。崇められるのが真の勇者なら
自分はその対極の魔王になってやる!との志を魔界の冥竜王ヴェルザー(の残留思念)に
見込まれてその声に導かれ、破邪の洞窟から魔界まで到達する。
 が、そこで出会ったオグマやナタルコン、リヴィアス、ミール、そしてケプラスや
ガノイザーの歩んでいる人生を聞き、己の小ささを思い知った。彼らの為にも魔界を
滅亡から救うという目的にスイッチし、改めて魔王を目指す。
 ちなみに彼女はどの魔法系統でも最上級のものは使えない。メラはできてもメラゾーマは
撃てず、ギラは使えても極大閃熱呪文(ベギラゴン)は使えないといった具合に。
ただ、魔法力のキャパはケタ違いの才能で、メラやギラなら全然余裕で一日中連発できる。
複数の魔法を同時に使うのも彼女の才能の一つ、ただ攻撃魔法を合成するのは苦手。
 破邪の洞窟を踏破した経験が生きており、罠や呪術の回避能力にも長け、魔法を応用した
発想も目を見張るものがある。

装備:紫龍の杖、サルトバーンの礼服(ミールのお下がり)
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