魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第42話 オグマvsチウ

「まっ・・・魔王の配下だとっ!?」

「いかにも。その二人には腕試しを挑まれた、その結果こうなったまでだ。」

 

 そのオグマの返しにチウはびりっ!と緊張感を漲らせ、闘志をあらわにする。

あの大戦から8年、今だに魔王軍の生き残りがいた事にも驚きだが、遊撃隊隊員最強の二人を

わずかな時間でノしたその強さにも。

 チウはちら、とパピィに目配せする。意図を察したパピィはそのまま飛び上がり、森の中に

姿を消す。

 

「地上の平和を乱す魔王軍、大人しく魔界に帰るなら見逃してやるが、そうでなければ

この僕が退治してやる!覚悟しろ!」

 ヌンチャクを水平に構えオグマを睨みつける、熊と鼠の体格差はあるがチウは怯まない、

かつて勇気を持って挑んだあの超魔生物ザムザに比べれば臆する相手ではないはずだ。

 

「魔界に帰るわけにはいかん、この地上で、そして天界で為さねばならん事があるからな!」

 オグマが返す。平和を乱すとは心外な言われようだが、もしかして先程二人の魔族を

KOした事を意図しているのかとも思い、あえて触れずに己の目的を告げておく。

これでどうするかはこの大ねずみ次第だ。

 

「天界・・・だと!?神々のいる世界にまで・・・やっぱりお前はっ!」

 チウの心に蘇る声があった。あの大戦の大詰め、自分が”瞳”という玉に封じられていた時

大魔王バーンが放った言葉!

 

 -なんならその後、天界に攻め入ってお前の封印を解いてやっても良いぞ-

 

 魔界の者が天界に行く、チウの知識の中でその目的はあの竜の復活が一番に浮かぶ。

彼の中でこの時、目の前の人熊(ウォーベア)が悪党であることが確定した。

 ヒュンヒュンとヌンチャクをクロスに振り回し、腰をぐっ!と落として突撃体制を取る。

 

「来るか!」

 戦闘開始を察し、竜牙の手甲を構えるオグマ。その瞬間目の前の大ねずみは地を蹴り、

ヌンチャクを振り回しながら突進してくる。

「あちゅ~~~っ!」

 そのトゲの付いたヌンチャクを叩き付けて来る。オグマはそれを左手甲で弾き、右の張り手で

打ち据えようとする・・・が!

 

窮鼠綱引き撃(きゅうそつなひきげき)っ!」

 -ドコォン!-

 チウのエルボーがオグマの顔面を捕らえる。チウはヌンチャクのトゲをオグマの手甲に

引っ掛けると、それをフックにして自分の体に引きつけて一気に懐に飛び込んだのだ。

「ぐっ!」

 ダメージを貰いながらも、反射的に腕を振り回してヌンチャクのトゲのかかりを外し、

そのまま相手を放り投げる。

 

 が、チウは空中でくるくるっ、と回転して着地すると、再度オグマに突撃する。今度は

上から下に勢いよくヌンチャクを打ち下ろす・・・が、遠い。オグマの目の前の空気を薙ぎ、空降る。

窮鼠混転脚(きゅうそこんてんきゃく)っ!」

 -ガッツゥン-

なんとその空振りの勢いを利用して前転し、かかと落としを見舞うチウ。

 

「こいつ・・・っ!」

 オグマが思わず嘆く。兜のおかげでKOこそ免れたが、その一撃で目の前に火花が飛ぶ。

なんという速さ、そしてダイナミックな動きをする鼠か!と。

(これは思った以上に性根をすえてかからんといかんな!)

 相手を侮ったわけでは無い、だがオグマの想像以上にこの大ねずみは戦い慣れている。

特にあのヌンチャクの使い方は驚嘆に値する、あのトゲだらけの武器の柄だけを確実に掴み、

時には引っ掛け、時には遠心力を利用して振り子のように肉弾と交互に襲い来る。

もしここにナタルコンがいれば、その武器と使い手の練度にさぞ感心しただろう、良いコンビだと。

 

「あちゅ~~~~~!」

 右に左に飛びながら、ヌンチャクを自在に使い迫りくる大ねずみ。それに対してオグマは

ふっ、と力を抜き、柔らかな動きでその攻撃をいなしていく。ナタルコンの事を思い出した彼は

その魔剣を使う時の力の抜き方をも思い出していた。暗黒闘気を使う魔剣ゆえ、使用時には

自分の光の闘気を抑えねばならない。その際に使う静かで正確な動きこそ、この速い相手に

対抗する手段だと。

 脱力した状態でのしなやかなその動きは、チウの鋭くすばしっこい攻撃と見事に噛み合い、

まるで武術の演舞のような攻防を見せる。

 

 カキィン!キンッ、ドカッ、ガインッ!

唸るヌンチャク、弾く手甲。駆ける大ねずみ(ワーラット)、舞う人熊(ウォーベア)

 

「す、すげぇ・・・」

「隊長相手に互角かよ。」

 目を覚ましたラバーとラクーが思わず漏らす。その後ろでは、パピィによって集められた

獣王遊撃隊、総勢22匹もその戦いに見入っていた。皆一様に隊長の本気と、それを受け止める

人熊(ウォーベア)の技量に感心の視線を送る。

 

「な、なかなか・・・やるな。」

「お主こそ・・・その体で見事なものよ!」

 一度離れて対峙しお互いを称える。チウの全身運動は体力の消耗が激しく、オグマの見切りは

相当の精神力を要する。互いに息を切らしながら向かい合う。

 

「ならば!僕の最大奥義、受けてみるか!」

 チウがヌンチャクを両手で水平に構え、オグマに向けて突き出して吠える。

「望むところ!!」

 オグマは残った光の闘気をすべて頭の兜に集める、ナタルコンの暗黒闘気で増幅されていない

今の状態で果たして闘気激砕槌(オーラ・グラヴィトン)が放てるかは分からない・・・だが!

 

 相手が最大奥義で来るといっているのだ、ここで出さずいつ出すのか!

 

 

「はーーーっ!」

 なんとヌンチャクを高々と放り投げるチウ、同時にバックステップして距離を取ると、

正面にいるオグマと、落下してくるヌンチャクにタイミングを合わせて突撃する。

 回転しながら落下してくるヌンチャクに突っ込むと、なんとそのトゲだらけのヌンチャクの

鎖部分を己のシッポでつかみ取りそのまま巻き込む、回転する体の外にヌンチャクの

回転刃を備え、まるで円盤のように猛然とオグマに突撃する。

窮鼠包包斬撃拳(きゅうそくるくる・ざんげきけん)っ!!」

 

「ガルアァァァァァァッ!!」

 オグマが咆哮を上げ、光の闘気を絞り出す。それに応えて光の頭槌(どたまかなづち)が彼の頭上に

光り輝く。完調時には程遠いが、ナタルコンの無い今のオグマの最大の必殺技!

闘気激砕槌(オーラ・グラヴィトン)っ!!」

 

 -カカァッ!-

 

 交錯する両者。閃光が走り、衝撃が響く。

その決着に遊撃隊の全員が息をのんで注目する。

 

 オグマとチウは、互いに背を向けて立っていた。両者とも技を出し終わったポーズで

固まっており、像のように動かない。

 

 数秒の静寂の後-

 

「ぐっ・・・」

 ヒザをつくチウ。遊撃隊の一同が、ああっ!という顔で心配そうな顔をする。

 

「ん?・・・いや、当たってないだろ。」

 何を言ってるんだ、という表情でオグマが振り向く。

あの激突の瞬間、闘気を使い果たしたオグマはよろめき、目測を失って地面に頭槌を叩きつけた。

それによりチウの技も的を外し、地面を激しく抉るにとどまっただけの、いわば両者不発の

交錯だったハズだが・・・

 

 う・・・という嘆きと共にチウは渋い顔をする。ジト目でオグマを見ながら、指を立てて

ちっちっちと振りながらこう続けた。

「いや君・・・そこは『み、見事なり・・・』とか言ってハデに倒れてくれなきゃ・・・」

 

 -どどどどどどどっ!-

オグマと遊撃隊全員が派手にずっこけた。

 

「あんだけ盛り上げといて、何落としてんすか隊長ぉぉぉっ!!」

ラクーの絶叫(ツッコミ)が、その戦いの終了を告げた。

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「いやぁ~、なんか技を出して固まってる自分がカッコよくってね、つい・・・」

笑顔で頭を掻くチウ。遊撃隊の全員が掌をびしっ!と打って「なんでやねん」の表情。

その向かいで座るオグマは、がっはっはと朗らかに笑う、地上のモンスターは面白いな、と。

 

「なんとバアラックだったか!そんな大きな個体などお目にかかった事無いぞ。」

「いやぁ~、地上の水が合ったのか、ぐんぐん背が伸びてなぁ。」

「あの太陽もな、アレ浴びると気持ちいいんだよなぁ。」

 オグマはラバー・ラクーと話しながら、自分がここに転送された理由に得心が行っていた。

自分と同じ魔界出身のモンスターである彼らがいるこの島が、自分にとっての”縁”だったのだ。

 

 オグマから話を聞いたチウは、う~ん、と腕組みして考えていた。まさか天界が魔界を

滅ぼそうとしているなんてとても信じられない、だけどこの熊人が嘘を言っているようには

思えなかった、戦ってみたからこそ分かる武道家としての勘がそう言っている。

 

「ブラスさんも出張中だし、誰に相談したものかなぁ・・・」

そうぼやくチウに、ラバーがぽんっ!と手を打って、そういえばと切り出す。

「そろそろロモスからの差し入れ隊が来る頃じゃないですか?」

 

 チウが、遊撃隊全員が「それだ!」と彼を指差す。頭にハテナマークを浮かべるオグマに

ラクーが解説を入れる。

「海の向こうのロモスって国な、月に一度いろいろ差し入れしてくれるんだよ。こっちも

島の果物とか魚とかあげたりしてな。」

 

 ロモス王国。ここデルムリン島から一番近いその国とは、勇者ダイとの縁もあり友好な

関係が続いていた。彼らは自国の産物を月一ペースで送ってくれ、代わりにここの果実や

鉱石などをお土産に持ち帰っていた、昨年には漁師が使者として訪れ、獲れる魚の大きさに

仰天したものだ。

「船で来るときもあるけど、魔法使いが瞬間移動呪文(ルーラ)で来る時もある、その時に

相談してみるのがいいかな。」

「それなら是非同行させて頂きたい、俺の仲間も地上に来ているはずだが、まずは彼らと

合流しなければ。」

 そう頼み込むオグマに、チウは頼んでみるよと了承すると、その後にモミ手をしながら

こう提案してくる。

「どうかな?我が獣王遊撃隊に入隊しないかね?君の実力なら歓迎するよ。」

「いや、俺は魔王きらりん殿の配下だからな、二君に仕えるのは師から不義理と聞いている。」

その返事にがっくりと首を垂れるチウ。

 

 それから数日、オグマはその島で彼らと暮らした。食料はどれも甘露美味の極みであり、

風も波も星も月も、そして太陽の輝きもオグマを飽きさせることは無かった。

そこで生きるモンスター達もまた、穏やかな性格で良き友、良き仲間となってくれた。

 

 そして6日後、デルムリン島に待望の”使者”が訪れる。

 

 -ドドォン-

 

 ルーラの着地音を響かせながら到着したのは、チウの知己でもあるロモス王国の腕自慢達だった。

「フォブスターさん、ゴメス、バロリアさんまで!」

魔法使いと格闘家っぽい大男、そして鎧を纏った剣士が今回の使者だった。

「ほいチウ、今回の差し入れ。」

 ゴメスがマジックアイテム”魔法の筒”の束を渡す。本来生物を閉じ込めるための物だが、

改良を加える事により物資を詰める事にも成功していた。

 

 ラバーがデルパの言葉で中身を出す様に思わず腰を抜かして驚くオグマ。そんな彼を見て

新顔かい?と首をかしげるフォブスター。

「そうそう、戻る時に彼を連れて行って欲しいんだけど・・・」

チウの頼みに、よろしくお願いすると頭を下げるオグマ。とにかく彼はリヴィアス、ミール、

きらりん、そしてナタルコンと合流するのが最優先事項だ、この孤島にいてはそれが敵わない。

そんな彼の頼みに、フォブスターはお安い御用さ、と快く了承する。

 

「そうそう、今ベンガーナで面白いイベントやってるぜ、なぁバロリア。」

笑ってそう言うゴメスに苦虫を返す剣士バロリア、嫌なこと思い出させるな、と。

「イベント?」

 興味津々で食いつくチウ。差し入れのリンゴをかじっていたオグマも何か興味を惹かれ、

彼の話に耳を傾ける。

 

「ほら、良くあるだろう、台座に刺さった”伝説の剣”ってヤツ。ソレを抜いたヤツが

その剣の真の使い手、ってアレ。」

 英雄伝説(ヒロイック・サーガ)では良く知られたお約束のイベントだ、今時そんな物がベンガーナみたいな

商業都市で?と首をかしげるチウ。

「バロリアの奴、自信満々で挑んで、でも抜けなくってなぁ、挑戦料1000G丸損したんだよ。」

ダハハハハッ、と笑うゴメスにジト目を返すバロリア。

 

「でもなー、なんかどう見てもその剣、伝説の名刀じゃなくて魔剣なんだよな、怖ぇ目が

付いてるし、なんか暗黒闘気にじみ出てるし・・・」

 

 -ぶふぅーーーーーっ!!!-

 

 リンゴを思いっきり吹き出すオグマ。ありすぎる心当たりに思わずムセてせき込んだ。

 

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