魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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5章最終話、まさかの展開に刮目せよ!


第48話 異世界の価値観

「ぐっ・・・ぐおあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ロモス城の一角、拘束台に縛られたオグマの悲鳴が響く。だが、その傍らにいる人間たちは

お構いなしにオグマに、その折れた両腕に取り付き、ひねり、捩じる。

「んぐ・・・があぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「あらあらまぁまぁ、フォブスターさんじゃない、いらっしゃい。」

 瞬間移動呪文(ルーラ)でネイル村に到着した彼を出迎えたのは、30後半とは思えない

美貌に笑顔を浮かべた女性。元僧侶のレイラだ。

「さぁさぁ、マァムは家の中ですよ。若い人同士ゆっくりしてって下さい。」

 うきうきした表情で自分の腕を引っ張り、家に向かうレイラを見て思わず「またか」という

表情を見せるフォブスター。

 

「もう!お母さん、また誤解されるようなこと言って!」

 ドアを勢いよく開けて出てきたのは、レイラの娘であり、あの”大戦十傑”にも名を連ねる

武道家マァム、その人だった。

「そ、そうですよレイラさん、私はただロモス城からの使いできただけで・・・」

 フォブスターの言葉にマァムはうん?と訝しがる。わざわざ王様が私に用となれば

軽く扱えるものではないだろう。

 

「私に?何かあったの・・・?」

「実は・・・城で重傷者が出まして、複雑骨折をしているものですから、お二人に治療を

お願いしたいと。」

 オッケー任せて、と腕まくりをして笑顔を見せるマァムの後ろでレイラはため息をつく。

せっかく美人に育ったのに、彼女にはここ数年浮いた噂の一つも無いのだから母親としては

心配になる。なにしろもう彼女も24歳なのだ、女としてそろそろ余裕で構えていていい年ではない。

 

 8年前の大戦時、マァムには同じ勇者のパーティに気になる男性と、自分に好意を示して

くれている少年がいた。戦士ヒュンケルと魔法使いのポップ、母レイラはてっきり自分同様に、

そのどちらかと結ばれるものだと思っていた。

 

 が、その二人とも彼らに熱烈アタックする女性達にあえなくゲットされてしまったのだ。

どうもマァムは、こと恋愛ごとに関しては疎いようで、それでいてやたら生真面目な彼女は

自分の二人に対する”想い”が、彼らに恋焦がれる二人・・・賢者エイミと占い師メルルに

とても及ばないことを痛感し、自ら身を引いたのだった。

 

「ポップ、貴方が幸せにする(ひと)が誰か、わかってるわよね。」

 あの勇者ダイが発見されたその日、マァムはポップにそう告げる。

「遠回しにフラれた、と取っていいのか?」

「そういうこと。さ、行きなさい。」

 そう言ってポップの背中を押すマァム、ルーラでテランに飛ぶ彼を見送って、彼女は自分の

恋に別れを告げる、これでいいのよね、と。

 

 呆れ返ったのは母レイラだ。そもそも恋愛のチャンスなど無限になるものでは無い、

ほんの一時、ここぞというチャンスに飛びつかなければ実る物も実らないものなのに。

 

 それ以降彼女は事あるごとにマァムにお見合いを斡旋してきた。が、あのヒュンケルや

ポップに匹敵する男性が早々いるはずもなく、地元ロモスの伊達男たちは、あの武術会の

マァムの男勝りの力量と度胸に、とても手に負えないと逆に距離を開けられる始末。

 わざわざ来てくれたフォブスターに一縷の望みをかけるもこの有様である、そりゃ

溜め息のひとつも出るものだ。

 

(でも、ひょっとしてその患者がイイ男なら、マァムに新たな出会いがあるかも・・・)

 そんな儚い希望を持ってロモス城に飛んだレイラは、患者の人熊(ウォーベア)を見てがっくりと

ヒザを付くのであった・・・。

 

 

 回復呪文(ホイミ)というのは患者の生命力を生かして治療する呪文だ。だが骨折してる

相手に対してだた呪文をかけると、骨が曲がったまま繋がってしまい、元のような力は

出せなくなってしまう。

 オグマの戦士としての力量を惜しんだクロコダインは、王に嘆願して彼が元の力を

発揮できるように治療する事を求めた。ロモス王もそれならばと、回復呪文を使える上に

人体の構造に詳しい武道家のマァム母子に治療を依頼するに至ったのだ。

 

 

 で、現在。ロモスの治療室で、マァムとレイラがオグマの骨をまっすぐに繋げつつ直すという

荒療治を施しているのだ。戦士であるオグマが悲鳴を上げ続けているのもむべなるかな。

「ほら、男の子でしょ!我慢しなさい。」

 全身でオグマの右腕を抱え込み、折れた腕の骨を強引に差し込むという光景を見ながら、チウは

冷や汗を流してぼやく。

「何故だろう・・・マァムさんにぴったり張り付かれてるのに、全然羨ましくない・・・」

 

 腕の骨を全て繋げ直し、添木をしたうえでそこに回復呪文(ベホイミ)をかける。オグマは全身から

脂汗を流しながらも、そのボロボロだった腕が確かに繋がったことを実感する。

「おお・・・凄い!繋がっているのが分かる、分かるぞ。マァム殿、レイラ殿、ありがとう!」

「2~3日は動かしちゃ駄目よ、まったく、クロコダインの必殺技をまともに受けるなんて!」

 そう嘆いたマァムは、対面のベッドで寝ていたクロコダインに向き直ると、その胸の怪我に

やはりベホイミをかけて直していく。

「いやぁ毎度すまぬなマァム、手間をかける。」

「昔っからねぇクロコダインは・・・ほんと無茶するんだから。」

長年のパーティメイトを笑顔で治療するマァムの背中を見つつ、思わず嘆くレイラ。

 

「あー・・・クロコダインさんが人間だったらなぁ。」

 

 

 翌日、城の会議室で王と国の幹部たち、フォブスターやゴメスなどの国の顔役、そして

オグマとナタルコン、クロコダインにチウ、ラバー、ラクー、そしてマァムやレイラが

彼らの関わる事案に対して話し合っていた。

「これがパプニカの賢者から聞かされた、天界からのメッセージじゃ。」

 ロモス王が紙に書いた文章を全員に配る、そこにはレオナ達が聞いた神々からの天啓が

文章にして記されていた。

 

 -敬虔なる神の子、人間たちよ。よくお聞きなさい-

 -この世界に新たな”災いの目”が芽吹いてしまいました-

 

 -魔界にて、新たな”魔王”が誕生したのです-

 -魔王は、その下僕と共に再び地上を、そして天界を暗雲に染めるでしょう-

 

 -心ある賢者よ、勇者よ、今再び立ち上がる時が来ました-

 -魔界からの使者を、魔王の先兵を、その野望に満ちた企みを、どうか皆の手で-

 

 -彼らの言葉に、耳を貸してはなりません-

 -悪しき者の意志に、力を貸してはなりません-

 -力こそ全てと信ずる災いの使徒達から、この世界をどうか、守って-

 

「うそ・・・この夢、私も見たわ。」

「ええ、私も。てっきりただの夢かと・・・」

 僧侶の経験を持つマァムとレイラがそうこぼす。どうも話を聞くに、神に仕える存在である

僧侶や賢者の立場の者たちには等しく伝えられた”天の意志”であるらしい。

 そして現実に今、その”魔王の使徒”であるオグマとナタルコンがここにいる。

だが彼らが主張する魔界の滅亡、それは天界の言い分に対して確かに齟齬こそないが、魔界の

住人である彼らにとっては座するわけにはいかぬ、天界の”策謀”でることは否定できない。

 

 思いがけず突きつけられた難題に、一同は思わず言葉を詰まらせる。

 

『言っておくが、天界の言い分も的外れという訳では無い。今の魔界が強者を生む苗床で

ある事を否定はせん、いつかは天地魔界を席巻する者が現れる、その可能性は否定せぬよ。』

 ナタルコンのその言葉にオグマはふっ、と笑みをこぼす。雪の精霊レムと出会って

ナタルコンも少し変わったな、と。

 

「魔界の者が破壊と殺戮を旨とするならその言い分にも従おう。だがわしはオグマ殿の

正道を行く姿勢を確かにこの目で見た、彼は決して悪しき者などでは無い!」

 ロモス王が確信を持ってそう叫ぶ。そう、命がけの戦いの中では誰もがその心を裸にする。

卑劣漢は卑怯な行為を、小心者は命乞いを、そして真の戦士は、毅然として正々堂々を。

クロコダインもチウも、ゴメスやバロリア達も、皆一様にうんうんと頷く。

 

「俺の仲間は世界中に散っている、一刻も早く合流して先に進まねばならん、願わくばどうか

御助力をお願いしたい。」

 そのオグマの言葉に一同うーん、と唸る。ここロモスなら問題ないが、信仰の深いパプニカや

かつて魔王軍に滅ぼされたリンガイア、オーザム、そしてカールを納得させるのは一筋縄では

いかないだろう。

 

「まぁわしに考えがある、オグマ殿とナタルコン殿には焦らずにしばらく待って頂きたい、

今回の事でよい方法を教えてもらったで、な。」

その王の言葉で会議は一段落する。

 

 しばしの懇談の後、レイラは王にため息交じりにこう発した。

「どこかにこの娘を貰ってくれる人はいないものですかねぇ・・・」

「もう、お母さん!またそんな事言って。」

 ゴメス達が一様に目をそらせ、ロモス王が相変わらずじゃのう、と朗らかに笑う。このマァムに

吊り合う男がそうそう居るはずも無いのだ、いい女も程が過ぎると伴侶探しには難儀する、か。

 

「ホント、クロコダインさんが人間だったらいいのにねぇ。」

 そうこぼすレイラに、オグマとナタルコンは目を見合わせて、うん?と首をかしげる。

「いや・・・お似合いだと思うが、何か問題が?」

『異種族同士が伴侶となるなど魔界では常識だが、不都合があるのか?』

 異界の価値観に全員がえっ!?と目を丸くする。思わず渦中の二人を見比べて固まる一同、

マァム殿とクロコダイン殿の・・・カップル?

 

「・・・アリかも」

「あるな。」

「まさにピッタリ。」

 

「ウチの娘を何だと思ってるんですかーーーっ!」

 顔を真っ赤にして一同を追い回すレイラ。当のクロコダインは光栄な評価だと大笑いし、

ロモス王は地上(にんげん)魔界(モンスター)の融和のモデルケースにならないかと真剣に考え込む。

 

 

 そんな中、マァムはふと、懐かしい女性の言葉を思い出していた。

 

 -私はただの駒、駒に人を愛する資格など無い!-

 

 愛に準じた悲しき女戦士、アルビナス。叶わぬ恋を心の奥底に押し込め、それに準じて逝った。

そんな彼女が、その思い人ハドラーと添い遂げる光景をふと想像し、心を温かくするマァム。

 

(私とクロコダインが、か。確かに私には勿体ないくらいイイ男、かもね。)

 

 

 後に、ロモス一番の異色カップルとなる二人の話は、もう少し先の、そして別のお話。

 

 




いや・・・声優さん同士がアレだしw
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