「大変です、貴方の仲間の方・・・ひとり、重大な命の危機に瀕しています!」
そのメルルの言葉に「何だって!?」と吐き出すリヴィアス。自分もテランで相当の危機に
あった身だが、それ以上に危険な状態・・・一体誰が?
「・・・何か来ますね。」
天を見上げて呟いたのはアバンだ。彼に習って見上げれば、空からこちらに近づいてくる光。
それはたちまち大きくなり、彼らの目前に落下して着地音を響かせる。
-ドォォン!-
「きらりん!それにでろりん達も・・・無事だったか。」
やって来たのは魔王きらりんとその両親のパーティ4人、ようやく合流呪文で集結を
始めたらしい。
「あ、リヴィアスさん、お待たせ。あのねあのね、いいコト思いついたの。」
オーザムで思いついて、マトリフに可能性ありの太鼓判を押されたナイスアイデアを
リヴィアスに語ろうとするも、彼は強い口調でそれを制する。
「話は後だ、仲間の誰かが今、大ピンチだそうだ。急いで合流を!」
「って、もしかしてきらりんちゃんって・・・」
ポップが目を丸くして驚き、メルルも「まぁ」という顔で見つめる。
アバンが「彼女が魔王だそうです」と解説を入れると、さらに大口を開けて愕然とした表情。
ポップはかつて小さかった時のきらりんにマトリフの所で会っており、わずかながら
面識があった。最もきらりんが物心つく前の話なので彼女は覚えていないのだが。
「すまない、アバン殿、メルルさん!仲間の危機だ。解決したら必ず戻って来る!」
早口でそう語ると、再び集合したきらりん一行に寄り添うように肩を組む。ルーラ系の呪文で
同行するには、体の一部が術者に人を介して触れている必要がある。
「行きます!
きらりんが呪文を唱えると、再度光の矢になった一行が舞い上がり、西の空に向かって
飛んでいく。
「うそ・・・だろ?あのきらりんちゃんが・・・魔王?」
「どうも本当のようですよ、あの魔力と行動力を見れば納得できますけどね。」
今だ信じられないと言った表情のポップにアバンが諭す。一瞬見せた子供っぽい表情を、仲間の
ピンチだと聞いた途端に消して真剣になるその行動力の高さ、なるほど破邪の洞窟を
踏破したというのもあながち嘘には聞こえない。
が、メルルだけはそれに取り合わす、先程の占術で得た情報に冷や汗を流す。
「何でしょう・・・なにか、とてつもなく危険な存在を感じます。彼らの仲間が危機に陥っている
その場所から。」
-ドォォン!-
「オグマ!ナタルコンも一緒か!」
ロモスに到着するなり、目前にいる人熊と魔剣に声をかけるリヴィアス。
「おおリヴィアス!きらりん殿も、ご無事で何よりだ。」
両手に包帯を巻いたままのオグマがそう答えるが、すぐに彼らの様子がおかしい事に気付く。
『どうした、何かあったのか?』
「仲間の誰かがピンチだそうです!」
ナタルコンの問いにきらりんが答える。魔界から地上に来た9人の内、ここには既に8人。
つまり今この場に居ない1人が、今まさに命の危機に瀕しているという事!
「「ミールか!!」」
一同が声を合わせる。あまり戦いに通じていない彼女が今まさに危機となれば一刻の
猶予もない、とにかく早く駆け付けて助力せねば!
「ナタルコン!」
オグマが両腕の包帯を噛み破って駆ける。ナタルコンも『うむ!』と答えて彼の腰の鞘に
するりと収まる。
「ちょ、ちょっと!まだ包帯取っちゃダメだってば!」
「もう治っている!マァム殿、レイラ殿、感謝する、王にもそう伝えて欲しい!」
『誰よりも聡明な癖に、誰よりも無茶をするのだその者は。一刻を争う故、別れは告げぬ!』
マァム達にそう返すと、きらりん一行に取り付いた後一礼をするオグマ。別れを惜しむ間もなく
光に包まれる一同。
「
光の矢となって飛んでいく彼らを見送って、クロコダインが一言漏らす。
「若いのう、せわしないのはかつてのダイ達と一緒か。」
「でも・・・何かただ事じゃなかったわ。あの腕で無茶しなければいいんだけど・・・」
マァムもそれに続く。いくら回復呪文と言っても骨折した腕が早々完全にくっつく訳では
ないのだ。無茶が過ぎれば今度こそ・・・
光の帯を引いて飛ぶ一同。その進む先を察知して冷や汗を流したのはリヴィアスだ。
(まずいな・・・行き先はテランか。あそことパプニカは特に俺に対する風当りが強い。
いや・・・まさか、あのラーハルトがミールに何かを?だとしたら・・・厄介だ!)
お互いに理解を得られぬまま確執だけを残して別れた
もしミールを仲間と知られ、彼女にも向けられていたとしたら・・・
-ドドォォン!-
一行が到着したのは広い湖のほとりだった。周囲は静かで、リヴィアスが危惧した
なら、ミールはどこに?
「ミール殿ーっ!おられるかーーっ!?」
「ミールさーんっ!聞こえたら返事してーーー!」
オグマ達が散りつつ声を上げ、リヴィアスは
彼女の姿を探す。
だが、どこにも彼女の姿が無い。
「おらんのう・・・だとすれば、泉の中か?」
「ありえるわね、彼女の能力を考えたら・・・」
まぞっほの呟きにずるぼんが応える。彼女は半魔半水竜の合成獣、水中においても陸上以上に
活動が出来るだけに、地上に居なければ水中の可能性は高い。
「なんか上がって来るぞ・・・」
水面を見ながらへろへろが言う。皆は一様に「ミールか?」と期待するが、その上がってくる
影の大きさに、その認識を消し飛ばす。
「なんだ・・・デカい!」
「ヤバいぞ、みんな、構えろっ!!」
水面が盛り上がり、それを押しのけて黒い影が地上に姿を現す。
-ザザザザアァァァァァ・・・ッ-
その巨体から水を滝のように流れ落としながらソレは現れた。その姿にパーティ全員が
口を開けたまま・・・絶句した。
誰もが知っている姿。
誰も見たことが無いその有り様。
ドラゴンなのだが・・・その肌、その貌、そして腕、足、翼に至るまで、彼らの知る物とは全くの
別物だった。
「機械の・・・ドラゴン、だと!?」
肌には肉も鱗も無く、鉄の部品が剥き出しになった隙間をワイヤーとローラ-が軋みを上げて
稼働して体を動かしている。目は松明の中心のように一色に光り、蛇腹のようにつながった尻尾は
ギャリギャリとこすり音を響かせてうねる、翼の下部から炎が何条も下に伸び、その反動で
巨体を空中に浮かび上がらせている。
「き・・・キラーマシンのドラゴン版、とでも言うべきか、な。」
そうこぼしたのはでろりんだ。かつて魔王が勇者を倒す為に作った
大魔王の配下にいた
科学者のみが成し得るという
「ドラゴンよ!ミールという女性を、竜と魔族の特徴を持つ者をご存知無いか!?」
オグマが声を荒げて機械の竜に問う。その鉄の表情からは敵意も融和も感じられない。
敵か味方か、知性が有るのか無いのかも分からない。まず聞いてみる判断は正解だろう。
だが、その問いに対する竜の返答は、ゆっくりとその口を、大きく開ける事だった。
それは明らかに
「
きらりんが皆の周りに光の防御壁を張る。この防御は攻撃呪文にも有効だが、特に効果が
あるのが敵の
機械の竜が大口を開けたまま、その首を突き出す。
『シ』
その声が聞こえた瞬間、見えない何かが竜の口からパーティに向けて発射される。
水蒸気のような航跡を引きつつ迫りくる”何か”に、ナタルコンが絶叫する。
『いかん!よけろおぉぉぉぉぉっ!!』
オグマがナタルコンを構えたまま横っ飛びに避ける、へろへろがまぞっほにタックルして逃げる、
ずるぼんが危険を感じ、我が娘のきらりんをがばっ!と抱き抱える。その二人をでろりんが
「危ない!」と叫びつつ突き飛ばす。
そうして着弾点に残った父に、機械の竜の放った『シ』が到達する。
同時に響く魔王の、愛娘の、きらりんの声-
「お父さあぁんっ!!」