魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第63話 ファースト・コンタクト

「なっ・・・何者だ!」

 闘気激砕槌(オーラ・グラヴィトン)を跳ね返し、機械竜の前に立ちはだかった若者に思わず声を荒げるオグマ。

その行為とモノの言いようからすれば、奴はあの機械竜の仲間か?

 

「俺の名はダイ!勇者ダイだ!!」

 

 その若者の名乗りに、魔界から来た全員が思わず息をのむ。あれが・・・大魔王バーンを倒し

地上を破滅から救った勇者、ダイか!

 

「ヤツが・・・今の(ドラゴン)の騎士っ!」

 リヴィアスが槍をぎゅっ!と握って睨み上げる。

 

「アレが・・・勇者ダイ。」

 きらりんが、かつて魔王を目指そうとしたその根源である存在を見つめる。

 

『全員、気を張れっ!アレは・・・あれ()は・・・化け物だ!!』

 ナタルコンが空気を震わせてそう叫ぶ。そのあまりに巨大な力を両の拳に秘める戦士も

さることながら、同格に恐れるべきはその手に握られている剣だ!

 

(なんという見事な、剣と使い手の姿!ああまで一体化した人と剣の有り様を・・・我は・・・知らぬ!)

 ナタルコンが、その長い一生に思いを馳せる。我が主の魔界皇ヒュンケルが手にした剣は

己を含めていずれも使い手に物足りず、”神の涙”で得た覇者の剣は同格に強力ではあったが、

それでも今、目の前の若者と剣ほどには一体感を感じなかった、ここまで剣と戦士がひとつと

成れるのか・・・あのレベルの高さで!

 

 

火炎呪文(メラミ)。」

 勇者ダイが呪文を唱え、生み出した炎を己の剣に預け、宿らせる。

「あれは・・・魔法剣!」

 リヴィアスが叫ぶ。武器に魔法を宿らせる高等戦闘技能、だがそれは武器の寿命を

著しく縮めると師匠(ロズテナー)に聞いていた。竜の騎士に対する乾坤一擲を生むために

得た刺突槍(コーンランス)に、それを乗せる気にはならなかった。

 だがあの剣は、メラミの炎など涼風と変わらぬと言うかのごとく、ゆらぎもしない。

 

「はっ!」

 ダイが真上にジャンプする。来るか!と身構える一行だが、ダイはなんと空中で体を反転させ、

後ろにいる巨体、機械竜に対して剣を打ち下ろす。

 

「火炎大地斬っ!」

 

 -パッキイィィィン!-

 -ジュオォォォ・・・-

 

 剣の一閃が機械竜の表面を覆う氷を粉砕し、その斬撃に宿った火炎が機械の中に入り込んで

動きを封じていた氷を瞬時に溶かし消す!

「な・・・んだと!?」

「一撃で、あの氷を全部!?」

「そんな・・・せっかく皆で、あそこまで・・・」

 愕然とする一同に続き、きらりんが勇者の実力を垣間見て思わず嘆く。私たちがあれだけ

苦労して封じた機械の竜が、たった一撃で解放されてしまった。

現に機械竜は体を軋ませながら、ゆっくりと体を起こしにかかる。

 

 と、その時、空からダイの傍らに光の矢が落ちてくる、ルーラの着地音を響かせてそこに

現れたのは、軽装の鎧と怒気を纏った槍使いと、T字型の魔法の杖を手にした鬼面導師だった。

 

「ラーハルト!」

「見つけたぞリヴィアス!覚悟しろ!」

 因縁の槍使い(ランサー)同士が激しく視線の火花を散らす。

 

「な・・・なんじゃあこれはっ!」

 鬼面導師ブラスが周囲の惨状を見て思わず嘆く、テランの豊かな森が所々で砂漠化して

いるのだから無理もない、あれもこいつらの仕業か?と厳しい表情をする。

「無論ですよブラス殿、こいつらは魔王の手の物なのですから!」

その言葉にダイが弾けるように反応し、きっ!と眼下の敵を睨む。

「魔王軍!?まだ・・・生きてたのかっ!」

 

 対峙する両陣営。勇者ダイを中心に、左翼にブラス、右翼にラーハルト、そして背後に機械竜。

向かい合うのは聖水でわずかながら魔力を回復した魔王(きらりん)、背中から木に叩きつけられ、

負傷したオグマ、機械竜の一撃を受けてアバラを数本折ったたままのリヴィアス。そして、

地上に来てからさらに力を使い、ますます残り寿命を消費したミール。

 

 ほぼ万全な勇者サイドと、満身創痍の魔王サイド。これではまともに勝負になるはずもない。

だが両陣営の緊張感は臨界に達し、わずかなきっかけで戦闘に突入するのは避けられそうに

なかった。

 

 だが、その緊張の腰を折る一言が、両者の間に割って入る。

「おいおい待てよダイ!そいつら別に悪者じゃねぇ!」

「え・・・?あ!あんた、ニセ勇者のずるぼん達!」

 声のした方を向いたダイが驚く。かつて勇者を騙り悪さばかりしていた彼らだが、

あの大戦の最後の最後、彼らはゴメちゃんの声に応え、世界を救うべく奔走してくれた。

その彼らが、何故ここに?

 

「お主ら!更生したと聞いておったが、また悪さしておるのか!」

 ブラスがでろりん達に杖を向けてそう怒鳴る。元々島のモンスターであるゴメを誘拐した

奴等を十全には信用できなかった。

「大人しくしておれい!拘束呪文(マニクト)!」

杖から伸びた魔力の拘束が、でろりんとずるぼん、まぞっほ、そして未だ倒れ込んでいる

へろへろを拘束する・・・その時!

 

「ぐあぁぁっ・・・うぎゃあぁぁぁぁっ!!」

 思わずのたうつでろりん。失われた左腕の付け根に絡みついた拘束が、彼の傷痕を

まともに締め付けていたのだ。

「な・・・左腕が、無い?いかん!」

 慌てて拘束を解くブラス。だがそれでも激痛は収まらない、慌ててずるぼんがその傷口に

回復呪文を施す。

 

「お父さんに・・・何をするんですかあぁぁぁっ!」

 ドン!と魔力を開放してブラスを睨みつけるきらりん。その強烈な威圧感に思わず背筋が凍る、

まるでかつての魔王ハドラーを思わせる魔力の圧に、老練な鬼面導師も思わずたじろぐ。

 

 

 -ビリビリビリィッ!-

 

 両陣営に張り詰める緊張感がついに限界を突破する。最初に動いたのはラーハルトだ!

 

「死ね!ハーケンディストールっ!」

「うぉらあぁぁぁっ!」

 -ガッキイィィィン!-

 強烈な金属音を響かせて槍と槍が激突する。刺突槍(コーンランス)の重さを利して受け止めたリヴィアスだが

負傷が響いているのか、そのまま鍔迫り合いでじりじり押されていく。

 

『抜かるなよオグマ!』

 ナタルコンがありったけの暗黒闘気を剣の刃に変え、オグマと共にダイに向かう。

相対する勇者は剣を逆手に持ち、体の後ろに回して構える、オグマ達は知らないが、

それは勇者の必殺の構え!

 

「はあぁぁぁぁ・・・っ!」

「ぬぬぬぬぬぬぬ!」

 きらりんが紫龍の杖を、ブラスがT字の杖を前にかざし、魔法力を高めていく。こういう場合は

両者の発動した魔法の相性が勝敗を分ける・・・さぁ相手は何で来る!?

 

 

 その緊張感から、ひとりだけ外れている人物がいた、ミールだ。

彼女は近くの木に生っていた洋梨の実を手に取ると、ひと口かじってから、すっ!と

湖の中に音もなく入る。

 

(生成・・・増幅・・・そして、転送!)

 

 再生する時に手に入れた、水の性質を自在に変える能力を駆使し、戦場にいる各々に

水の塊を転送して送り付ける。

 

「頭を冷やしなさい!」

 

 その瞬間、戦っている全員の頭上から、どざぁっ!と水の塊が落ちてくる。いきなり

滝をかぶった全員は瞬時に水浸しになり、え?何事だ?という表情で固まる。

 

「少しは落ち着きなさい!狂戦士(きょうせんし)の呪いでもかかっているのですか!」

 

 全員をびしっ!と叱りつけるミール。見た目こそ少女だがその中身は立派な大人の一喝に一同、

びくっ!と体を固める。

 

 が、ラーハルトはすかざす彼女に向き直る。彼にとってダイ様の敵は殲滅するべき存在であり、

それを庇い立てするなら誰であろうと容赦はしない!

「小娘が、にゃめた真似を!」

「お前の相手は俺だ!」

 ミールに向かおうとするラーハルトをリヴィアスが槍を突き出して制する。

その槍を払いつつ、ばっ!と間合いを離したラーハルトは、再度槍を回しにかかる。

「にゃらば、まとめてたおしゅまでだ!くらえ、はーけんでぃすとぉぉ~~~」

そのままどたっ!と地面に倒れるラーハルト。なんかロレツも回っていないし、これは一体?

 

「あらら、効果覿面でしたね。」

 ミールが予想以上の惨状に目を丸くする。その言葉を受けて、リヴィアスが体を濡らす水を

指ですくってぺろ、と舐める。

「これは・・・酒か?」

「ええ。果物が実っていたので、それを取り込んで酒精(アルコール)を生成したんです。」

 あっけらかんと物凄い事を言うミール。確かに酒は甘味を発酵させて作るものだが、

この短時間にそれを成し、全員が頭からかぶるほど増量して、しかも各人の頭上まで

転送するとは、水を操れる能力にも程と言うものが・・・。

 

 見回せばきらりんは「はらほろひれほろ~」と目を渦巻きにして倒れ込んでいるし、

ブラスは上機嫌で笑いながら不思議な踊りを踊っている。オグマはかつての集落で

ビワブナの実から作った酒の酸っぱさを思い出して口をすぼめ、勇者ダイは

けろりとした表情のまま横倒しで地面に倒れている・・・なんともシュールな絵面だ。

 

「リヴィアスさんはお酒、お強いんですね。」

「ああ、ロズテナー師匠が好きでな、よく付き合わされたよ。」

 ミールの言葉にそう返しながら倒れたラーハルトを見るリヴィアス。なんかうわごとで

ダイ様の敵コロスコロスコロスと呪文のように唱えている・・・一途な奴だ。

 

 ふっ!と笑って、思いついた妙案を口にする。

「フィガロにも教えてやるか、コレ。」

 




アルコール万能説w
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