魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第64話 再会!

(やはり・・・悪を制裁するのは、我しかいない。)

 機械竜の眼を通してその光景を見下ろす竜水晶は、心の奥でそう決意していた。

魔界より出でる悪人どもを、我の長年培って手に入れた”シ”で駆逐できる、その決意を持って

ついに湖から戦いの場に赴いたが、ついに誰一人倒すことも叶わず、必殺の”シ”を封じられた。

 

 その身を凍結させられ、絶体絶命の危機に陥った時、我を救ったのはかの(ドラゴン)の騎士、ダイ。

敵の攻撃を粉砕し、一撃で我を開放してみせたその姿に、やはり我では竜の騎士の

代わりにはなり得ぬのか・・・聖母竜(マザードラゴン)に成り代わることは出来ぬのか、と

格の違いを認識せざるを得なかった。

 

 だが、絶望の淵にあった我が今見ているのは、敵を目の前にして横倒しになり、鼻提灯を

出して寝こけている勇者と、意識を混乱させられて戦闘不能に陥っている従者2人。

 

(なんとも不甲斐無い、かの聖母竜が生み出した竜の騎士とはこれほどまでに頼りないのか。

いや、ならばこそ、だからこそ我が戦わねば!竜の騎士が倒せなかった悪を我が制裁する!

それこそが、我が正義の使徒に、聖母竜に成り代わる証では無いか!)

 

 それは、決意ではなく、使命でもなく・・・竜水晶の強く願う『願望』-

 

 

 -ドオォォォォッ!!-

 

 それは突然だった。勇者ダイが参戦して以来動きを止めていた機械竜が、翼から一斉に

炎を激しく噴き上げて一気に上空に舞い上がった。

 突然の烈風に、オグマもリヴィアスも、きらりんを介抱しているずるぼん達も思わず

火煙と砂塵から顔を覆う。

 

「まだやる気か!」

「もう”シ”は吐けないハズ!」

『侮るなよ、爪や尾の攻撃に注意しろ!』

 即座に臨戦態勢を取るオグマ達。先程は思わぬ横やりが入ったが、彼らが酔いつぶれている今

今度こそあの機械竜の息の根を止める!

 

 

(思えば・・・我の計画を狂わせたのは・・・あの水竜の娘。我が”シ”を受けて死なずに

我が前に立ちはだかった、我が目的を迂闊にも告げてしまった・・・)

 

 上空からその眼で見る、その視線の先に居たのは、ミール!

(あの者だけは、なんとしてもここで消す!)

 

 その視線にミールはぞくり、と悪寒を覚える。湖のふちにいた彼女はしゃがみ込んで

水に手を付け、いつでも水を操れるように構える。

 だが、機械竜が取った行動は、その全てを受け付けない”特攻”だった。

 

 音もなく、声もなく、機械竜は体を下に傾ける。翼の噴射を下から斜め上に変え、重力の

導きに噴射を加えて直下に突進していく!

 

「なっ!?」

『いかん!』

「ミール、危ない、逃げろおぉぉっ!」

 

 巨大な機械の塊が、その全身を武器に変えて落下してくる。その質量と速度の前には

彼らが何をしても止める方法などありはしない。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)っ!!」

 機械竜がミールを地面にプレスするその寸前、リヴィアスは残った魔法力をつぎ込んで

ルーラを発動し、彼女にタックルして抱え込む。

 

 その刹那、巨体が地面に突き刺さる!

 

 

 -ズドッガアァァァァンバリバリバリガラッシャアァァァァァドドンバキバキバキッ-

 

 

 衝撃!轟音に注ぐ轟音、飛び散る機械片、その威力は木々を薙ぎ倒し、土煙の津波が放射状に

森を駆け抜ける!想像を絶する衝突エネルギーが地を激震させ、空気を叩き割る!

 

 -ゴゴゴゴゴゴゴ・・・-

 

「み、みんな、無事かっ?」

「ったくもう、無茶苦茶じゃわい・・・」

「ゲホゲホッ、きらちゃん、大丈夫?」

 落下点から比較的離れていたでろりん達が煙にムセながら声をかけあってお互いの

無事を確認する。

「オグマ達は・・・無事か?」

 へろへろの言葉に、彼らは今だ砂煙が立ち込める湖畔に目をやる。だが、オグマも

リヴィアスもミールも、彼らの視界には入らなかった。

 

 そして煙が晴れる。彼らは当然のようにその落下点に注目する。

そこにあったのは、激突で出来た巨大なクレーターと、その中心にぺしゃんこになった状態で

鎮座する機械竜の成れの果てであった。

 

『おのれ・・・おのれ、おのれえぇぇぇぇっ!』

 

 そう吠えたのは機械竜だ。いや、正確には機械竜を操る竜水晶の声、ミール以外の全員が

初めて聞く機械竜の『シ』以外の言葉。

半分潰れた竜の顔を向けたその先、そこに倒れていたのはミールを抱えたリヴィアスだった。

 

 髪の毛一枚の差で竜の体当たり(プレス)からミールを救ったリヴィアスだったが、その背中から

足先まで竜の体にこすり付けられて派手な擦り剥き傷が出来ていた、それはほどなく彼の体に

血だまりの絵を描いていく。

「リヴィアス・・・なんて無茶を!」

 彼の下敷きになっていたミールが首を持ち上げ、彼の背中の惨状を見て悲鳴に近い

声を上げる。

 

「ずるぼんさん・・・お願いです、彼を!」

「分かった。まぞっほ!きらりんちゃんをお願い。」

 抱えていたきらりんをまぞっほに任せてリヴィアスに向かうと、彼の背中に回復呪文をかけ

治療を施す。幸い派手にすりむいただけで、内臓や骨には異常はなさそうだ。

 

『全く、人が良いにも程があるぞ!』

 森の一角から声が響く、あの空気を震わせる声は・・・ナタルコンだ。

「こやつらとは雌雄を決するべきだろう、こんなことで死なせるわけにはいかぬ!」

その傍らで転がっていたオグマがそう返す。左手にブラス、右手にラーハルト、口に勇者ダイを

咥えた状態で。

 

 オグマは激突の瞬間、咄嗟に際に倒れていたラーハルトを抱え上げると、素早く襷ベルトの

飛翔呪文(トベルーラ)を取り出して発動、同時に衝撃波に吹き飛ばされるが、そこから

トベルーラを操作してブラスを引っ掴み、最後にダイの服に噛み付いて彼らを爆心地から離した。

 かつて獣人の集落で、マルタとザンに取り付いた精霊が放った呪文から決闘相手である

リヴィアスを救ったオグマの心意気は、あの頃と少しも変わっていなかった。

 

 もっとも、正気を失っているダイ達は、オグマに救われたことなど知る由もないだろう。

だがそれでいい、見返りを求めての行動では無いのだから。

 

 むくり、と身を起こすオグマ。彼ら3人を横たえると、ナタルコンを掴んでゆっくりと

機械竜の残骸に歩を進める、オグマももう満身創痍だが、あの機械竜もあれでは動けまい、

今こそ決着をつける時!

 

『心臓の位置に見える水晶、アレを潰すぞ!』

「おうっ!」

 ナタルコンが暗黒闘気の刃を伸ばし、オグマが突きの構えを取って狙いを定める。

アレを叩き割ればさすがにもう復活は無いだろう。

 

 -ひょぅっ-

 

 その時、風が吹いた。

 

 -ザザザザザザ・・・ゴオォォォオォッ-

 

「な、何!?」

 ほんのつむじ風程度で始まったその渦は、またたく間に烈風となって吹き荒れる。そして

たちまちに竜巻となってオグマを吹き飛ばす。

 

 そして・・・渦の中心にいた機械竜を、少しずつ、少しずつ、空中に舞い上げる!

 

聖母竜(マザードラゴン)の遺志を継ぐ者、竜水晶よ、貴方の願いを叶えましょう。』

 

 風の上からそう声を発したのは、青緑色の衣と髪の毛に身を包んだ女性。オグマや

ナタルコンにとっては久々に見る存在、もうお馴染みの神の使徒。

 

「精霊・・・か!」

『この者は私が預かります、その志の高さを実のある物にするために・・・この精霊、天の8行

”流れのシル”が。』

そう言って空高く舞い上がっていく精霊と機械竜。だがオグマとナタルコンにとっては

聞き入れる事は出来ない物の言いようだった。

 

『逃げるか!』

「悪いが、天界の思惑通りにはさせぬ!」

 ナタルコンが吼え、オグマが残りのカプセルからトベルーラを再びチョイスして、頭の兜に

魔法力をセットする。

 逃がすわけにはいかない、あの機械竜は魔界の者の敵だ。まして精霊”天の8行”は

魔界を閉じる計画の実行者、奴らにあんな物騒な物が渡ればどうなるか分かったものでは無い!

 

『では、後は頼みましたよ、シア。』

 そうシルが発すると同時、彼女の隣に突如光が溢れ、それが人の形を成していく。それもまた

オグマ達にとってはお馴染みの、あのイタやニカと同じ、精霊の登場のシーンだ。

そしてその瞬間、機械竜とシルの姿が空中にかき消える。まるで青い空に溶け込むように。

 

 後に残ったのは、空中から冷たい表情で見下ろす精霊と、その彼女を見上げて

泡立つ闘気に全身を震わせるオグマ、そして手に有るナタルコンもまた、その因縁の相手に

暗黒闘気を抑えきれずにいた。オグマが光の闘気を放っているにもかかわらず、だ。

 

「か・・・輝きのっ、シアアァァァァァッ!!!!」

 

 絶叫するオグマ。彼の集落を焼き滅ぼし、父や仲間たちを石に変え、己を戦う価値無しと

打ち捨てた精霊。

 

 いつかまた相まみえる事を悲願とし、その名を心に刻んだ宿敵が今、目の前に有った。

 

 

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