魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第7章最終話!がんがん行きますよー!


第66話 ロモス王の爆弾発言

「待たれよ双方!この喧嘩、わしが預かる!!」

 

 

「あれは・・・ロモス王!」

「ロモスの王様、なんでここに!?」

 空中に浮かんで対峙するオグマとダイが、声を発した人物を見下ろして同時に叫ぶ。

次の瞬間には「ん?」とお互いの顔を見合わせる、知っているのか?

 

「フォルケン王!何故このような所に、危険です!」

「・・・テラン王か。」

 ラーハルトが湖畔に現れた一団を見て思わず叫び、リヴィアスがかつて謁見した事のあった

この国の王の姿を認める。

 

 城の方から湖に現れたのは、車椅子に乗ったテラン王フォルケンとその傍らに立つ

ロモス王シナナ。

 もちろん周囲には城の兵士も大勢詰めている、兵士長のカナルやリヴィアスの旧知

フィガロの姿もあった。

「しばらくぶりだの、リヴィアスよ。」

「ご無沙汰しております、フォルケン様。」

 テラン王の言葉に頭を下げるリヴィアス。かつてアルキードから疎開してきて、この地に

住むことを許された面々の中で唯一、竜の騎士への復讐を忘れなかった彼の事は勿論

王の耳にも入っていた。その縁もあり、かつて何度か謁見をして見知った間柄ではあったのだ、

実に9年ぶりではあるが。

 

 突然現れた二人の国王に、さすがに一同は闘気を収め剣を下ろす。

 

「しばらくじゃのうダイよ、帝王教育は捗っておるかな、ほっほっほ。」

 降りて来たダイに笑顔でそう語るロモス王。ダイはうっ!という顔をした後、頭を掻いて

苦笑いで誤魔化した。

 

「さて、オグマよ。」

 ダイの後ろに立つオグマに声をかけるロモス王。その目はダイに対する時とはうって変わって

真剣そのものであった。

「言った通り、この場を収めてもらう。そしてそなた等一同の身柄を預からせてもらうぞ。」

「意図はわかりませんが、場を収めて頂けるなら仲間の手当てを許可願いたい。」

 無論じゃ、と頷く王に応えてオグマは皆と合流する。リヴィアスに肩を貸し、彼自身も

痛めた背中をずるぼんにまとめて治療してもらう、といってもその彼女ももう魔法力は

限界近く、わずかに炎症を抑える程度しか出来ないが。

 少し離れたところでは、ミールが未だ酔いつぶれているきらりんに水を与え、へろへろが

義手を失ったでろりんに包帯を巻く。

 

「王様!待って下さい、あいつらは・・・ゴメちゃんを!」

「分かっておる。悪いようにはせんから、ここは私に預けてくれぬか。」

 反論しかけたダイを柔らかくたしなめるロモス王。後ろではブラスが仏頂面で腕組みしながら

「まぁ、王様がそうおっしゃるなら」と嘆いて、それでもジト目で偽勇者一行を睨む。

 

「貴様・・・フォルケン王と知り合いなのか!?」

「この国に住んでたと言ったはずだ、ここの人口を考えたら面識のない方が不自然だろう。」

 何でこんな奴が、との意思を込めて聞くラーハルトに、リヴィアスは呆れ顔で返す。

この男は自分が魔界から来たというだけで、どこまで猜疑心を燃やしているんだ、と。

 

 各人が見えない火花を散らしながらも、お互いの陣営に分かれて敵意を収める。

ひとまず戦いは終わりを告げたのだった。

 

 

 オグマ達はリヴィアスがかつて住んでいた長屋に移された。無論見張り付きだが、

それでも食料や治療の包帯など、必要なものは十分に用意してくれた。

 3日後、物資と共に彼らのもとを訪れたのは、リヴィアスの旧知フィガロだった。

彼は今日、城で行われる一大イベントに、彼らの代表1名に出席を求めて来たのだ。

 

「「世界会議(サミット)!?」」

 驚く一同にこくり頷くフィガロ。かつて大戦中にパプニカ王女レオナによって開催された

世界の王が集まって議論する場、なんでもその根回しの為にロモス王はこの国に訪れて

いたそうだ。

「ロモス王が城に着いてすぐ、あの轟音が響いたんですよ。」

 あの機械竜の特攻がもたらした衝撃が彼らを湖に向かわせた、皮肉にもそれが絶体絶命の

オグマ達を救う事にもなったのだ。

 

「今回の議題は勿論、あなた方の処遇についてです。それでそちらからも一人、出席

するようにと。」

 詳しい事情を聴くに、なんでも彼らの地上進出を一部の王族や賢者が”天啓”として

予言されていたらしい。かつての大魔王との大戦の傷痕が残る地上の者にとって、新たな

魔王の侵攻は黙認できない問題というわけだ。

 

「なら、適任はミールかな。」

『うむ。冷静で博識でなければ務まらぬ故な。』

リヴィアスとナタルコンの意見に皆が頷く。ミールもぐっ!と手を握って「お任せください」と

意気を上げる。

「見た目が幼くなったのが惜しいよなぁ、元のままなら威厳もあったのに・・・」

でろりんの意見に、あら、と笑顔を見せてこう続ける。

「私が大人の意見で場を制したら、幼くなる呪いを秘めている良い証拠になるでしょう。」

 彼女にかけられた呪い、それすらも武器にする覚悟が彼女にはある。これなら世界の王を

相手取っても後れは取らないだろう。

 

 

 その日の正午、テラン城内で世界会議(サミット)が開始される。

主催のテラン王、議長であり提案者のロモス王が上座に陣取り、国力で勝るベンガーナ王と

大戦時の貢献度が光るカール王女フローラが次席に、僅差で並ぶパプニカのレオナ王女の

対面には、王族不在のまま復興が進むリンガイアの国王代理、バウスン将軍が末席に座る。

 

 かつての魔王軍対策会議と違うのは、その周囲に国の大臣や重臣、ご意見番がすらりと

雁首を並べて立っている事だ。もちろんカール宰相アバンやパプニカの三賢者、バウスンの

息子ノヴァ、そして次期テラン国王候補の勇者ダイ、ロモス王の後ろにはゲストとして

クロコダインの姿もある。彼らは意見があれば挙手をして、許可が得られればこの場で

発言することも可能だ。

 

 そしてミールは、彼らから離れたところに置かれた机の前に立たされていた、

ちょうど裁判を受ける被告人のように、皆から見下ろされる位置に佇んでいる。

 

 そして会議が始まると、予想通りに魔界勢への非難と処断の意見が次々と出される、

元気なのは王よりもむしろ各国大臣の面々だ。場を仕切って己の立場を上げようと

次々に挙手、発言をする。

 

「即刻処刑しかありますまい、あの魔王軍の脅威をお忘れか!」

「王族が魔王軍をかくまったと国民に知れてごらんなさい、クーデターすら起きかねませんぞ。」

「やはり公開処刑すべきです、それが世界に向けて我らの立場を明確にする!」

「何を言う、奴らを拷問して魔王軍の全てを吐かせてからじゃ!」

 それらは乱暴な言いようではあるが、政治的には決して間違っていないからタチが悪い。

出世欲に取り付かれた者たちが何より好むのは正論による自己主張だからだ。

 

「ですが、彼らを処断すれば当然、魔界からの報復がありますよ?」

 そう告げたのはアバンだ。目の前のミールや仲間たちを単に政治の具にすれば、

その報復はあなた方に降りかかる、その覚悟はありますか?と。

 その意見に大臣たちは思わず鼻白む。権力をかさに着て処刑を強要する彼らに殺される

覚悟などありはしないのだ。

 

「私も大臣たちに同意見です、災いは芽の内に積んでおかないと、後々に禍根を残します。」

 レオナ王女がそう発言する。”天啓”を王族で唯一受けた彼女にとって、ここで

動かないのは神の意志に反する行為だ、その意思を皆に伝えねばとの使命感を持って!

 ・・・もっとも厄介事はさっさと排除して、すみやかにダイ君と結ばれたいという思いも

無いわけでは無いが。

 

「ワシは勇者殿に全賭けしておる、勇者殿の敵なら即刻処断すべきだとは思うが・・・」

 そう続いたのはベンガーナ王クルテマッカⅦ世だ、彼は口髭をいじりながら、こう続けた。

「だが勇者殿ならもし事が起きても、あのような輩に後れを取る事はあるまいて。慌てて

処刑するのは小心者のやる事では無いか?」

 その意見には別の意図も含まれる。どうせならあの勇者ダイの勇敢に戦う姿をもう一度

見てみたい、という子供っぽい意図も。

 

「かの者の1人は、我が領内の”破邪の洞窟”から訪れたと聞きます。わが宰相アバンの

言う通り魔界からの報復があるなら、その彼らとの距離は皆さんが思うよりずっと近いと

考えるべきでしょう。」

 フローラ王女がそう言って夫の意見を後押しする。誰よりも長く魔王軍の脅威に晒され

続けてきた彼女は、今の平和が危ういバランスで成り立っていることを芯から理解している。

 

「ミール殿、そなたらの魔王の背後におるのは、あの冥竜王ヴェルザーとの事だが・・・

相違ござらぬか?」

 テラン王の問いに、ミールは平然と「間違いありません」と返す。だがその返しに

会場の反魔界の空気はますますテンションを上げる!かつての大戦時、神の涙ゴメの力で

世界にその存在を知られた恐るべ覇王竜の名は、魔界に潜む恐怖の象徴となって

浸透していたからだ。

 もはや挙手すら省いて声を荒げる有象無象。この場でその娘から処刑すべきだ!などと

言い出すものまで現れる始末である。

 

「静粛に!!」

 一括して場を黙らせたのは議長のロモス王だ。その剣幕に流石の一同も声を止め、

会場にしん、とした静寂が訪れる。

 元々この世界会議(サミット)を提案したのは彼自身だ、ならば彼はこの事態に対する適切な

意見が有るのだろう、との思いで次の言葉を待つ。

 

「魔界と言うのは”力こそが正義”の世界と聞く。相違ないか?」

その問いにミールは、はい、と頷くと、手を上げて続きの発言を求める。

ロモス王が快諾すると、彼女は場の全員に向けてこう発した。

 

「力こそが正義、ならばこそ魔界の者はいついかなる困難にも、己の力全てを持って

立ち向かいます。」

 その前フリで全員を黙らせると、彼女は自分たちが魔界から来た理由を話し始める。

かの大魔王バーンの死後、天界が魔界を、地上を陥没させて押しつぶそうとしている事。

それに対抗するためにヴェルザーは魔王きらりんを見出し、志を同じくする者たちを

この地上に派遣したのだという事を。

 

「近年、この地上で地震が多いという気はしませんか?」

 最後のその台詞に、会場全体が一気にざわつく。たしかにあの大戦以降、各所で小さな

地震が不規則に、とどまることなく多発していた。地質学者によるとそれは大戦で

”死の大地”が吹き飛んだ影響によるものだという説が有力だったのだが・・・

 

「その話、証明することは出来ますか?」

 フローラ王女の問いに、ミールは平然とありません、と答える。思わず、ずるっ!と

コケそうになるフローラとアバン、そんなあっさり・・・

 

「よし!では無いなら、見せてもらうとしよう。」

 議長のロモス王がやおら立ち上がってそう発する。え?無いものをどうやって・・・見せる?

 

「我が国で毎年、武術大会が開催されておるのをご存知じゃろう。」

 かつて魔王軍ザムザの策略で開かれたロモス武術会、皮肉にもそれは恒例行事となって

毎年開催され、数多くの参加者と熱戦と、そして経済効果を生み出してきた。

 

 続いての爆弾発言が、その会議に会心の一撃を放つ!

 

 

「その大会に、魔界の戦士にも出て貰おうではないか!相手をするのはかの大戦十傑じゃ!」

 

 

 戦い、それは戦士の心を裸にする事を王は良く知っていた。卑怯者は反則や語り騙しを、

臆病者は好機に踏み込めず、熱くなるのを嫌う策略家は罠に走る。

 そして、真に志のある者ならば、あくまで真っ向から正々堂々と戦う。そう、かつてオグマが

クロコダインとの戦いで見せたように。

 

 そんな彼らの心の有り様を、各国の王にも、そして地上の多くの人々にも見てもらえば、

魔界の者が必ずしも悪ではないという事を否応なしに理解する事だろう。

 かの大戦十傑の出場を大々的に公表すれば、おそらく全世界から見物人が訪れる。

人類にとっての常識を覆す為のイベントとして、これ以上の発案はまずあるまい。

 

「す・・・素晴らしい!これ以上ないナイスアイデアではないか!」

 子供の目をしてベンガーナ王が絶賛する。あの勇者の、大戦十傑の戦いを見れるとなれば

彼に反対する理由は微塵もない。

 

「ま、まぁダイ君なら、負けるはずは無いんだけど・・・」

 レオナ王女が考えるフリをしつつ、再びあの勇敢な姿を見せてくれると期待して頬を赤らめ、

その後ろでは3賢者とバダックが、本音を見抜いて王女をジト目で見る。

 

 その他の有象無象も特に反対する理由はない、武術会にかこつけて始末してしまえば

同時に大義名分も立つと言うものだ。その適切な意見に思わず拍手が沸く。

 

 が、そんな中、一人の青年が挙手をし、発言を求める。リンガイアのノヴァだ。

「しかしロモス王、それを地上で開催すれば、いわば彼らをリンチするだけの行為には

なりませんか?」

 そのもっともな意見に大臣たちは思わず舌打ちする。リンチでいいんだよ、魔界の者など!と。

ロモス王も思わぬ正論に少しう~ん、と頭をひねるが、それを止めたのは被告席にいるミールの

高々と差し上げられた手だった。

 

「ノヴァさんと言いましたか、お優しい気遣い感謝します。」

 ノヴァに微笑みを向けてそう告げた後、全員に相対して高らかにこう告げる。

 

 

「ですが、望むところです。我ら魔界の住人の心意気、必ずや示して見せましょう!」

 

 




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