第67話 思わぬ味方たち
「と、いうわけで、みなさんに試合に出て貰うことになりました。」
その反応は実に様々だった。
『でかした、そうでなくてはな!』
「うむ!我らの力量で地上に認めさせるか、望むところだ。」
「ケリをつけたい相手もいるしな、燃えて来たぜ!」
ナタルコンとオグマ、そしてリヴィアスがやる気満々で頷く隣で、でろりん達が「うげぇ~」
という顔をする。
「あの大戦十傑と?誰と当たっても勝てる気しねぇんだが・・・」
「やーれやれ、男どもは肉体言語の会話が好きだねぇ、私はパスよ、パス。」
冷や汗を流すでろりんに続き、手を広げてやれやれという表情でため息をつくずるぼん。
全員参加なのか?と問うまぞっほに対して、ミールはいえいえ、と手を振って
続きを語る。
「最低3名は出なければいけませんが、基本希望者のみの戦いになります。対戦相手は
こちらが名乗りを上げてから向こう側が決めるそうです。」
つまり戦いの相性を見極めて選手を選ぶ権利は向こうにあるという事だ、不利ではあるが
相手もこちらの能力を十全に把握しているというわけでは無い、一概に不公平とは言えないだろう。
「で、ここ重要です。こちらの陣営で試合に勝てば、ひとつだけ願いを聞いてくれるそうです。
もちろん王様の権限で叶えられる範囲にはなりますが・・・」
そのミールの言葉に一気に「おおっ!」と乗り気になるずるぼん達。王家の秘蔵のお宝とか
大勢の召使い付きのお屋敷とか、妄想と欲望を膨らませる偽勇者一行。
「最低限、俺達の地上での活動を邪魔しない保障とか欲しいな。俺は賞金首にされたくらいだし。」
「できれば協力も取り付けたいですが・・・今回の会議の空気ではそれは無理でしょうね。」
リヴィアスとミールの真面目な意見に、おもわず苦笑いするずるぼん達。自分たちの浅ましさが
久々に表に出てしまった、と頭を掻いて反省。
「・・・私、出ます。」
手を上げてそう言ったのはきらりんだ。両親が同時にええっ!?という顔をするが、続く言葉に
納得せざるを得ない。
「欲しいものがあるの、あの”柱”を貰えるなら、出る価値はあると思うから。」
彼女が魔界を救う為に計画している構想、この地上に6本ある
魔界に持ち帰って、落ちてくる天の大地の支えにしようという計画。魔界から来た彼らにそれを
ホイホイくれる訳は無かったが、各国の王公認なら堂々と持って帰れる。大魔導士マトリフに
可能性アリの太鼓判を押された計画の障害をまたひとつ取り除けるわけだ。
「なるほど・・・思い切った計画だな。」
『思いついたならやってみるがよい、あの
その突飛で面白い計画を聞いた面々がうんうんと頷く。行動を起こすにはまず方針が必要だ、
それを地上に来てからの数日間で早くも形にしているだけでも、彼女を魔王に推した価値が
あると言うものだ。
「じゃあ俺とオグマ、きらりんは出場決定だな。」
リヴィアスの言葉に一同が頷く。一時その気になっていたでろりん達だが、やはりあの
大戦十傑の誰が相手でも勝ち目は無さそうだ。
「あ・・・私も出」
「「ダ・メ・だ!!」」
ミールの提案は全員に強く却下された。もう12~3歳の見た目になってしまっているのに
これ以上寿命を縮められてはいたたまれない、そのうちきらりんより年下になっちゃうよ、と。
思わずしゅん、となるミール。彼女にしてみれば、先だっての機械竜との戦いと覚醒で
新たな水を操る力をいくつも会得できた、それを皆のために役立てたかったのだが・・・と残念の表情。
「で、大会はいつやるんだ?」
へろへろの言葉に顔を上げ、皆に告げるミール。
「一か月後、場所はロモス王国にある闘技場、大々的に改装をして世界中から観客を
募るそうです。もちろん王様方も。一大イベントですよ!」
◇ ◇ ◇
”かの大戦十傑と魔界からの使者が激突!ロモス大武術会開催決定!”
翌日から世界中にそのニュースが発表され、町中にポスターが張られるとたちまち
世界中の人々の話題をかっさらう事となった。
「あの勇者ダイの・・・英雄たちのガチバトルが!?こりゃ見に行かないと!」
「天啓で告げられた魔王の手下、公衆の面前で退治・・・いや公開処刑か!」
「おい!この熊のモンスターと魔剣、ひょっとしてベンガーナのデパートにいた・・・?」
「ヒュンケル様も出られるの?あの方まだ独身らしいし、私も狙ってみようかしら。」
『おい、これはチャンスだ!我ら妖魔師団の残党の復活の商機!』
リンガイアの南端に潜伏していた魔王軍の残党の魔導士たちは、大会に行けない人の為に
中継用の悪魔の目玉と黒水晶をベンガーナの商売人に売り込みに来る事態まで起きた。
その場での魔導士たちと商売人の値引き合戦も、後にこの大会のエピソードの一つになる。
3日後、訓練と準備に明け暮れるオグマ達の元に来客が訪れる。
「いよぅ、張り切ってんな。」
「マトリフおじいちゃん!」
ルーラで飛んできたのは大魔導士マトリフだった。手にポスターをひらひらさせて、
にやっと笑って毒舌を吐く。
「あいつら相手にやり合おうとはねぇ、さて、何人生き残るやら。」
この方は?と問うオグマ達にマトリフを紹介する。まぞっほの兄弟子で大魔導士ポップの
師匠だとの説明に一同は頼もしさを感じる。特にリヴィアスはポップ夫妻に世話になっており、
またマトリフの雰囲気はどこか自分の師匠のロズテナーを思い出させるものがあった。
「で、こないだの計画だがよ、めぼしい地点を調べておいたぜ。」
そう言ってきらりんに紙の束を渡す。それには地上の世界地図と、その各所を大きく
拡大した部分地図。そこにマル印がいくつも書き込まれている。
「地盤の強いトコ、重心が集中してそうなトコ、下から支えても大地が割れなさそうなトコを
ピックアップしておいたぜ。200か所くらいあっから、魔界側から見て使えそうな地点を
決めるといいぜ。」
え・・・?と固まる一同。あれからまだ数日もたっていないのに、これほど綿密な情報を
調べ上げて、わざわざ届けてくれたと言うのか。
「ありがとう、おじいちゃん!」
「「ありがとうございます!」」
きらりんに続き、全員が頭を下げると、マトリフはよせやい、と脇をむいて鼻をほじる。
「試合に勝ったら柱を貰おうと思っています、なので調べてくれて本当に嬉しいです!」
「勝てたら・・・か。無意味な妄想だな。」
突然横から話に入ってきたのは彼らの誰もが知らない人物だった。青い肌に燈色の服を纏い
手には酒瓶をぶら下げているその魔族を皆が睨む。
「やれやれ・・・先生はもう少し話題の振り方を考えましょうよ。」
そう言って魔族の後ろから現れたのは人間の若者、先の世界会議でミ-ルが顔を見知った相手。
「ノヴァさん、先日はお世話に。」
「魔族の方、我らに勝ち目はないという事か?」
オグマの問いに、その魔族は当たり前だとばっさり切り捨てる。
「お前たちの実力がどの程度かは知らん。だが奴らは明らかに強者、そして扱う武器は
天地魔界のどこを探してもありえぬ最強の武器だ、ナマクラで立ち向かえるもんじゃない。」
『ほう・・・我をナマクラとぬかすか、若造が!』
ナタルコンが暗黒闘気を揺らめかせて鞘から抜け出し、魔族を睨みつける。
「サルトバーン随一の名工、ドガ・カーンの
リヴィアスが槍をどん!と突き立てて対峙する。
「そのドガさんが俺にぴったりだ!と譲ってくれたこの
「「いや、それはい-から!」」
オグマの武器自慢は全員のツッコミで遮られた。
「だがな・・・俺が手を入れてやれば、奴等とも勝負にはなる。このロン・ベルクがな。」
「「!!」」
全員が硬直する。魔界に住む者ならその名を知らぬ者はいないほどの伝説の名工、ここ百年近く
魔界から姿を消していたが、この男が?・・・まさか地上にいたとは!
「ノヴァから事情は聞いたよ。俺も魔界出身なんでな、故郷のピンチともなれば少しは動かねば
とも思うし・・・何よりな。」
そこで一度言葉を切って、にやりとした顔つきでこう続ける。
「俺の作ったダイの剣は史上最強の剣だ。もうあれ以上の武器は作れん、作れんからこそ・・・
やってみたくなるんだよ。」
ハッハッハ、と高笑いをするロン。かつて大魔王に武器を献上し、その”光魔の杖”の
馬鹿馬鹿しい強さを超える為に作った”ダイの剣”。それは見事に仕上がり、そしてバーンを
下してあらゆる武器の頂点に立って見せた。ならばそれを超えたいという欲はどうしても
抑えきれるものでは無かったのだ、彼もまた求道者なのだから。
思わぬ協力者に感謝しつつ、二人に武器を預ける一同。それらを吟味するロンとノヴァ。
「この魔剣と紫龍の杖はお前の手には負えんな・・・この二本は俺がやるから、お前はそっちの
槍とヘルメットを頼む。」
「しかし先生、腕は大丈夫なんですか?まだまだ完治は先なんじゃ・・・」
ロンは先の大戦時、超魔ゾンビとの戦いで両腕を負傷した。完治には100年近くを有するが、
それを覚悟の上で剣を振るった彼の男気に惚れ込み、弟子入りしたのがこのノヴァだったのだ。
「心配いらん、この2本は腕力で鍛える類の物ではない。お前の方こそそろそろ一人前の武器を
仕立てて見せろ!」
「任せて下さい、あのダイの剣以上の武器にして見せますよ!」
それから連日、テランの森に心地よい槌の音が響き渡る。ランカークスの実家から道具を
持ち込み、ジャンクという名の助手を連れて来て連日武器のメンテナンスに励む。
それをBGMに戦士たちは連日己を鍛え、ミールときらりんはマトリフの指導の元、
魔界を救う計画を煮詰め、また様々な知識を時に教え、時には教えられた。
・・・ちなみに、ロンとマトリフがいい飲み仲間になったのは言うまでも無い。
さぁ、いよいよ魔界の運命を決する武道会、その開催の時!
さぁ、戦いのドラを鳴らそうかい!