魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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第8話 あるコンビの旅立ち

「よし、完成っと!」

 オグマは出来上がった鱗の鎧(スケイルアーマー)をかざして眺め、満足そうにそう呟く。

『しかし・・・前から思ってたが、本当に器用だなお主。』

ナタルコンが鞘に納められ、木に立てかけられた状態で、半目のままそう返す。

 

 沼竜との死闘から5日、彼らは仕留めた獲物を持てるだけ持って集落に帰還していた。

先述の通りドラゴンは獲物として大変な価値がある、牙や骨は武器や道具の格好の材料であり

血肉や内臓は食料はもちろん貴重な薬にもなり、眼球や結石等は宝玉として取引される。

 

 肉や内臓を干して保存食にし、両方の牙は形を削り整えて強力な手甲を作り、翼の膜を

縫い合わせて服や袋、ヒモなどを仕立てていく。

 

 そして今、戦いの場から拾い集めて来たウロコを、竜の口の中から剥いだ皮に縫い合わせて

ヨロイを(こしら)えた。これでドラゴンのウロコの防御力と耐火性を持ったスケイルアーマーの

完成というわけだ。

 

「俺は集落の中でも力が無かったから、女達とこういった仕事を良くしてたんだよ。」

そういって顔を上げ、石像になった父を、集落の勇者たちを見上げる。

 

『成程な・・・まぁそれも良し。どんな能力もいつ役立つか分からぬ、よい事例だ。』

ナタルコンはそう激励し、同時に感心する。先日壊れたミミックの宝玉を使って自分の鞘を作った

時から、オグマの人熊(ウォーベア)らしからぬ器用さに感心していたが、そういう事情だったか、と。

 

 ジャラッ、とスケイルアーマーを羽織り、ぐいぐいと体を動かして感触を確かめる。

金緑色に輝くウロコが波打つ鎧を眺めて、うん良い感じだ、と満足するオグマ。

これで竜の牙の手甲と合わせて、攻撃力も防御力も格段に向上したはずだ。

 

『で、それはどうするのだ?』

 ナタルコンが目で指したのは山積みになった竜の背中のトゲだった。背中から尻尾まで

突き出したそのトゲは非常に硬く、加工するのは困難な代物なのだが、オグマはこれを山まで

何往復もして大量に持ち帰っていたのだ。

 

「これは皆に供える為に持ち帰った・・・竜のニオイが付いた骨はモンスター除けになるからな。」

 そのオグマの言葉にナタルコンは何も返さなかった。彼の言葉の意味がひとつではなく

いくつもの彼の思いを凝縮したものであることを知っていたから。

 

 仲間を悼み、弔う意味もあるだろう。

 

 集落でも弱かった己が仕留めた大物を、親や仲間に報告したい想いもあるだろう。

 

 そして・・・彼がかつて精霊”輝きのシア”から聞いた言葉から、わずかな希望にすがって

この石像たちを野良モンスターに壊されないようにしたい、という意図も。

 

 -案ずることはありません、この村の者たちとはいつかまた会えます-

 -最後のその時まで、天寿を全うしてください、それが貴方達の運命-

 

 竜の棘を、集落の仲間の石像一つ一つに供えながらオグマは瞑目する。悼みと、報告と、

そして決意を胸に秘めて。

 

 最後に父、ダルタレクの石像の前に、一番大きな竜の棘を供える。

「父よ、俺は行きます、必ず天界に行って、皆を取り返します!だから・・・どうかそれまで

皆を守ってください!」

 

 精霊に襲撃された時、仲間の魂はまるで精霊に引き連れられるように天の大地に消えて行った。

そして”輝きのシア”の言葉通りなら、彼らの魂は天界にあるはずだ。ならばその魂を開放し

石化の呪文を解きさえすれば、仲間たちが元通りになる可能性はある。

 

 だが、その方法が見えているわけではない。あの時シアは「天寿を全うしてください」

と言った。

つまり死ぬことが天界に行く方法ということだ、果たして生きたまま辿り着ける場所なのかすら

今の彼には分からなかった。

 

『では、行くか。』

「うん。」

 ナタルコンの鞘に付けたヒモをベルトに巻き、己の相棒を腰に携える。そして食料や価値のある

竜の骨石を詰め込んだバッグを肩にかける。

 

 

『まずは地上を目指さねばな、それすら方法は見当もつかぬが、な。』

 そう語るナタルコン。天界というからには遥か上にあるのだろう、そんな彼らがまず目指すのは

この魔界の天の大地の上にある、地上と呼ばれる豊穣の世界、全ての生命の源と言われる”太陽”が

存在し、神に愛された種族”人間”が支配する世界だ。

 

 長年ヒュンケルに仕えて来たナタルコンも地上に上がる方法は知らなかった。主が地上進出に

興味を示さなかったせいもあって、その情報はまるで無かった。

 

 ひとつ確実なこと、それはこのままこの集落にとどまっていても、決して天界には

辿り着けない。ならば意思をもって足を動かそう、目的をもって歩を進めよう。そうすれば

間違いなく目的に近づくはずだから。

 

 

 さぁ、旅を始めよう。

 

-この一匹と一振りの、長い物語を-

 

 

 





登場人物解説

・オグマ

【挿絵表示】

人熊(ウォーベア)♂。人間の年齢でいうと15歳くらい。
 174cm125kg、人熊でこの年齢としては破格に小柄(通常、成体は3mにもなる)。
外見は熊ベースながらも本家『ダイの大冒険』のクロコダインやボラホーン同様、人間のように
直立歩行し、言葉や思考を理解する高い知能を有している。
手の指は人や魔族のそれに近く、指は5本に分かれており、物を掴んだり武器を扱ったりできる。
 彼の遠い先祖は魔獣の英雄と言われるガルドという男、剣豪ヒュンケルの片腕とも称され、
彼の子孫もその誇りを胸に代々戦斧を振るい、苛烈な魔界で勝ち残って来た。
 父ダルタレクの教えにより、小さな体でも己の未来に絶望せず、自らを正道で鍛え上げて来た。
ナタルコンと出会い、その暗黒闘気に当てられて光の闘気に目覚め、一気にその実力を
レベルアップさせる事になった。
得意技は光の闘気を纏ったパンチ、張り手、体当たり等。ナタルコンと交互に攻撃する事により
光と暗黒の闘気を増幅させることが出来る。

装備:ナタルコン(剣)、スケイルアーマー(鎧)、竜の牙(手甲)

・ナタルコン

【挿絵表示】

 意思を持つ魔剣。全長45cm刃渡り27cm。鍔の部分に宝玉があり、その部分に物を見る
”瞳”を持つ。
デザインは本家に登場したパプニカのナイフに酷似しているが、それよりずっと骨太で禍々しい
イメージがある。本家で行方不明の”海のナイフ”とは別物。
真空呪文(バギ)を備えており、使い手に振るわれることで衝撃波を飛ばしたり、真空の刃を
刀身に上乗せしてより長い刃を作り出せる。また空気を震わせて声を出し、会話をする
こともできる。
 かつて魔界の支配者”魔界皇ヒュンケル”の懐刀。(ヒュンケル)が若い時から長年使われるうちに
魂を持った”ひとくいサーベル”の一種となり、意志を持つようになる。その後も彼に使われ続け、
その剣技を学習し習得していく。
 主ヒュンケルが”神の涙”を手に入れ、最強の剣”覇者の剣”を手に入れたことから
お役御免となり、側近の人熊ガルドに授けられる。その直後に主が覇者の剣で殺害され、それ以来
”神の涙”を激しく憎悪し、その怨念から暗黒闘気を身に宿すようになる。
 以降、長きにわたり銀のミミックに封印されるが、精霊の襲撃により目覚め、オグマと出会う。

装備:シルバーミミックの鞘
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