名前を出してもいいのかな?
「勇者ダイさーん、剣をもっとこう・・・力強く。」
「きらちゃん、もっと自然に笑ってー。」
「もっと寄って寄って、隙間があると絵的に映えないからー。」
夕焼けに染まる武術会場。王族御用達の観客席の中央でダイときらりんが大勢の
絵師に囲まれて、寄り添いながらポーズを取っていた。
何でもこの会場に建てる銅像のモチーフから上等な絵画の下書き、果ては世界に発する
ダイは年下の女の子に縁が無かったせいか、いささか緊張気味で、それでも彼女を不快に
させないよう表情を見ながらポーズを取る。
きらりんの方はこんな事より、自分との戦いで消失してしまったヒムの方が心配だったが、
十傑一同に「あいつは大丈夫」の太鼓判を押されたこともあって、やむなくこの場に残って
ちなみに提案したのはロモス王である。この絵面が世界中に知れ渡れば、地上と魔界の
融和のいい宣伝にもなるだろうとの意図もあるのだが・・・その横で暗黒闘気(のようなもの)を
放っているパプニカの王女はあえて見ない事にする。
「王女、あんな小さい女の子に嫉妬ですか?彼女まだ8歳ですよ。」
賢者マリンのツッコミにむっ!とジト目を向けた後、ぷんすか怒って腕を組むレオナ。
そうは言ってもレオナ21歳ダイは20歳だが、5年間治療で時が止まっていたから実質ダイの
年齢は15歳、きらりんが8歳だから年の差はほぼ一緒だったりする。
もうすぐダイとゴールインとはいえ、3年間おあずけを食ったレオナにとって、今の二人の
ぴったりくっついた絵面は胸にドロドロしたものを去来させる。勇者と王女という鉄板の関係を
上回りそうな勇者と魔王のカップルとかシャレにもならない。
「それ
パプニカ王国は神への信仰が厚い国で、王族自体も賢者として神に使える習わしがある。
その彼女が天界に敵対する魔界を認める事は、厳密にいえば国制に反する行為となるのだ。
「・・・嫉妬は認めるんですね。」
マリンのツッコミに周囲にいた王たちが一斉にぷっ!と吹き出す。
「ガハハハハハッ・・・いやいや、レオナ王女も気苦労が耐えんのう。」
「レオナ、信じてあげるのも女の器量よ。私なんて何年待った事やら・・・」
ベンガーナ王が豪快に笑い、フローラ王女が優しくたしなめた後、夫アバンのほうを見て
にっこりと微笑む。当のアバンは目を反らして冷や汗を流しつつ口笛など吹いているが。
脇に控える騎士団長のエルキンスは、こりゃ帰ったらまたこってり絞られるな・・・と、
武術会場は選手や観客の宿泊施設として解放されていた。試合時間が予定より押しており
帰国の船や駅馬車に間に合わなかった観客が大勢いたので、場内での野営を許可したのだ。
幸い会場の外には多くの露店が並んでおり、一夜を明かす程度ならどうとでもなる、と
多くの観客や選手は無理に帰ろうとせず、ここで一泊を決めこんで今日目にした凄まじい
戦いの話を肴に酒や食事に浮かれている。
「うぉ~い・・・こりゃふぃがお~、おみゃえ、いいたいこたあったりゃ~・・・うぷっ!」
会場の一角で早速へべれけになっているラーハルトを横目に見て、フィガロが感想を
漏らす。
「うわ・・・本当に弱いな。どうりで皆の宴会に付き合わなかったわけだ。」
「だろ?コップ一杯でコレじゃあ、さすがに竜騎将とか威張れんよなぁ。」
リヴィアスが樽酒をかぱかぱ空けながらフィガロの肩を叩く。アルキードは元々酒豪が
多いことで有名な国だったのだが、二人ともその遺伝子はしっかり受け継いでいるようだ。
「で、お前はどうなったんだ?」
反対側にいたヒュンケルにそう声をかけるリヴィアス。
「どう・・・とは?」
「とぼけんなよ、エイミさんだよ。ちゃんと告白したんだろうなぁ。」
やや絡み酒でヒュンケルに問うが、彼は「いや・・・まだ」と目を伏せる。ちょうど彼が
エイミの想いに応えようとした矢先にリヴィアスの逮捕劇があったもんで、すっかり機を逃して
しまっていたのだ。
ごんっ!
無言で空のコップをぶつけるリヴィアス。この甲斐性無しがと嘆くと、客席の隅っこで
ひそかにこっちを見ている女性を指差して、目の前の奥手男にハッパをかける。
「とっとと行ってこい!」
「・・・え?」
指さされた先に目をやるヒュンケル、その視線の先には何年も”その時”を待ち続けた
「・・・あ。」
ふぅ、と息を吐き、身を起こすヒュンケル。全く、こんなろくでもない自分のどこが
そんなに良いのか、と。
それでも彼はエイミの元へと向かう。自分の進むべき
くれていた彼女に応えるべきは、もう自虐でも後悔でも無い事を、今の彼は知っていたから。
少し言葉を交わした後、ス、と抱き合う二人。そのまま彼らはルーラで天高く消えて行った。
「ハァ・・・若いっていいわねぇ。」
彼らを見送ってそう嘆いたのはマァムの母レイラだ。みんな恋に人生に一直線なのに
わが娘ときたら今現在、ミールに平謝りしている真っ最中なのだから。
「本っ当にごめんなさい!わたしお酒呑むともう何が何だかわかんなくなっちゃって・・・」
「いいんですよ、アルコールの竜を作ったのは私なんですから、お気になさらず。」
マァムは先の試合で、炎の竜と化したミールの水を真っ向からぶち破った。結果アルコールを
したたかに浴びて酔いどれ、自分が脱ぐわミールを脱がせるわと
発揮してしまった。
「私が脱ぐだけならまだしも・・・本当にごめんなさい!」
土下座するマァムを横目で眺めてレイラが
「脱ぐのも駄目でしょう!本当にこの子は・・・わが娘ながらはしたない。」
と、隣で飲んでいたマトリフがそのセリフを聞いて、ぶふぅっ!と酒を吹き出す。
「どのクチが言ってるんだよ、お前さんが言うなって!」
大笑いするマトリフ。かつてアバンと共に戦っていた頃のレイラは、ぱっつんぱっつんの
忍者装束や布地極小のあぶない水着を平気で着こなして駆け回っていたのだから。
そんな武勇伝を聞いて、ええ!本当に?と目を丸くするマァム。私も若かったわねぇ、と
大人ぶるレイラにマトリフがうりうりと肘ゴリして楽しそうに言う。
「血は争えんなぁ、ロカの奴もそれでタラし込まれて・・・」
-ごんっ!-
「しかしお前さん、暗黒闘気から生まれたとは思えんな。」
ロン・ベルクが酒瓶を煽りながらナタルコンに話しかける。本来暗黒闘気とは、憎悪や嫉妬、
嫌悪や絶望などの負の感情を核として発生するものだ。にもかかわらず今のナタルコンは
どこか正道を行き、己の信念に従って行動しているように思える。
『ふ、我もまた甘くなった、と言うべきか。』
自虐的に言うナタルコン。そう、彼もまた元々は復讐の念に駆られていただけの存在だった。
それを変えたのは数々の出会い、今の素晴らしき未熟者たちのために在りたいという想い。
そんな彼らに、隣で焼き魚をかじっていたクロコダインが口を挟む。
「ミストがそうであったな。暗黒闘気の集合体であったヤツも、バーンという主の為に在る
ことを志してか、どこか気高く情も備えておった。」
「ま、光の闘気を備えていても、名誉欲に目が眩んだ者もいるがな、ハッハッハッハ。」
カラカラ笑うロンに、隣で酌をしていたノヴァが渋い顔で「それはもう言わないでくださいよ」
と抗議の声を上げる。
ナタルコンはクロコダインのその言葉に、思わず瞑目して思いを馳せる。
『(
彼の最初の主、魔界皇ヒュンケル。魔界の覇者であり他の追随を許さぬ剣豪。
常に武器の非力さを気に病み、その度に我を完璧に使いこなして窮地を楽しむように
切り抜けて来たその姿を思い出す。自分をまるで濡れた紙のように優しく扱い、
それでいて幾多の強敵の血を吸わせてきた、心から心酔し、尊敬いや敬愛の対象ですら
あった主。神の涙の不義理により、その命を奪われて我は永い眠りにつくことになった。
そして現在の主。否、相棒と言った方がいいであろう熊人の若者に目をやる。
彼は武術場の一角で大勢の人間に取り囲まれていた。しかもその人間がこぞって
頭に丸太付きのヘルメットを被っているのだから・・・全く妙な奴にかかわったものだ、と
呆れて目を細める、それでもどこか嬉しそうに。
なぜか良い武具に巡り合う、そんな不思議な資質を持った相棒、魔界のオグマ。
「オグマ殿!是非我ら”どたまかなづち愛好会”の名誉会長に!」
「あの勇者ダイにぶちかましを放つなど、さすがはどたまかなづち随一の使い手!」
「いやぁ~売れて売れて、もう笑いが止まらんわ、ありがとうよ熊の兄ちゃん!」
オグマを囲んでいるのは、彼が地上でナタルコンと再会したデパートに居合わせた
者たちがメインだった。店主のコネさんやひと悶着あったヤテランヌ一家のおば様たちまで
顔をそろえている。
どたまかなづちが今、ベンガーナ周辺でひそかにブームになっている。そのキッカケと
なったのはオグマがデパートで見せたあのパフォーマンスだ。強固なミスリルの台座を
一撃で陥没させて鍋に変形させた威力を見て、在庫処分の箱にあったものはその日に売り切れた。
その後も注文が殺到し、単純に武器として欲したものから転売目的、果ては軍隊に正式採用
しようとして大量発注したものまでいた。
そうして広まった結果、この武器に思わぬ
武器としてはイマイチなこのどたまかなづち、実はトレーニング機器として、美容と健康の
促進アイテムとして非常に優れた物であることが明らかになっていった。
被っているだけで首から体幹が鍛えられ、縦に真っすぐ振る武器だけに体の左右の負荷が
均等になり、利き手と逆手の均整が自然と取れていく。叩きつけると衝撃が頭に響くため、
インパクトの瞬間の集中力が鍛えられる。
前後にスイングする事で胸筋、腹筋、背筋が鍛えられ、バストアップやウエストの引き締めに
効果を発揮し、首をひねれば体をねじるストレッチに効果を発揮する。何より頭にかぶる
物なので両手が開くのは大きなメリットだ。両手でダンベルを上げつつ使うなどは勿論のこと、
日常生活の仕事や家事の最中でも常に自らを鍛えられるなど、その評価は使用者によって
うなぎのぼりに上がっていたのだ。
そこにきて今大会のオグマの活躍である、あの勇者ダイに最後の一撃を浴びせた武器が
このどたまかなづち(オーラ)となれば、彼らが意気上がるのも無理からぬことである。
「いや・・・名誉会長と言われても、何をすれば良いか・・・」
「なってくれればそれで良いザマスよ!顔役ですからねぇ。」
「あのデパートで悶着したのも何かの縁、良い関係で居たいですわねぇ。」
困惑するオグマにヤテランヌの娘たちがずいっ、と詰め寄る。というかダイエット機器として
使っている割に、彼女たちの見事な樽腹を見れば効果に疑問が浮かぶのだが・・・
妙なモテ方をしているオグマを見て、まぞっほがくっくっく、と笑う。彼ら偽勇者一行は
周囲の人間を集めて魔界の話に興じていた。もともと嘘八百で各国に取り入っていた
彼らにとって物語を広めるのはお手の物、勇者よりむしろ吟遊詩人が適任かもしれない。
「焼けただれたあたしの顔を直してくれたのは、なんとも妖艶なヘルヴィーナス!いやぁ
女だけどホレたねあたしゃ。」
「行ってすぐ会ったのがあのヴェルザーだぜヴェルザー!魔界サービス精神旺盛すぎだろ!」
身振り手振りで魔界の印象を良くしようと奮闘する一行、試合では出番なしだっただけに
少しはポイントを稼がなくては、と自然と演説にも力が入る。
入場口の階段近くに立つポップは、会場のあちこちで和気藹々とする魔界勢を見て
感慨深く呟く。
全く、あのバーンとの戦いで得た印象とここまで違うかよ、と。
隣のメルルがそうだ!とポップに提案をする。
「あの方たちの行く末を占ってみましょう、きっといい未来が見えると思います。」
そりゃいいや、と同意するポップ。2人は通路の奥の人気のない所に移動し、そこで占いの
カードを広げて彼らの未来を占う。
数分後、青ざめたメルルの顔を見て、ポップがどうした?と問う。メルルが返した答えは
とても今の目の前の光景からは想像できない結果だった。
「彼らの中の誰かが・・・裏切ります!そのせいで、一人・・・命を失います!!」
案外こういう話って書くの難しいんですよね。
どかーん!ばきーん!!って戦い書く方が楽だw
さぁ裏切者は誰だ?アンケート方式のクイズいきまーす
-
・まさかの主人公、オグマ
-
・裏切りと言えば相棒、ナタルコン
-
・復讐心潰えずか?、リヴィアス
-
・残り寿命僅か。動くか?ミール
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・旗頭が反旗を?魔王きらりん
-
・わりと自由な立場、偽勇者一行の誰か
-
・新パーティメンバー?フィガロ
-
・実はメルルの虚言、誰も裏切りませーん