魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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物語もいよいよ最終部!


第三部 天魔大戦 プロローグ
第81話 超戦士たちの最後


 -魔界-

 

『グギャアァァァァァァァ-』

 

 巨大なモンスターが空を舞い、一点に向けて威嚇の声を上げる。そのぬめりのある体は

虹色に光沢を放っているが、その所々に穴を穿ったような傷が生々しい。

 体のあちこちから様々な翼を生やし、バラバラの速さで羽ばたくその様は、生物と言う

よりはむしろ空に浮かぶ要塞と言った方がしっくりと来る。

 

「にじくじゃく、キラーグース、アクアマリンホーク、ヘルコンドル・・・全く空飛ぶ

モンスターばかり、食いに食ったものよ。”融合の顎”!」

 対峙する竜人(キングリザード)、超戦士ケプラスが手にした棘鉄球(モ-ニングスター)をぐるぐる回しながら

目の前の化け物の咆哮に真っ向から返す。

 

『キエェェェェ!』

『ギョワアァァァッ』

『フシューーー』

 化け物の全身からポコポコ湧いた口から、様々な呪文やブレスが次々とケプラスに向けて

発射される。が、ケプラスはその見事な飛行能力で砲撃をくぐり抜け、時には竜闘気(ドラゴニックオーラ)

叩き落として上を取ると、強烈にモーニングスターを叩きつける!

 -ドッゴオォォォン-

 化け物要塞が”く”の字型に曲がる。全身から生やした口が一斉に悲鳴を上げる。

 

 融合の顎。

天界の”魔界を閉じる”事業に際し、魔界の者たちに計画を悟らせないために放ったトカゲ形の

精霊の使徒。敵を飲み込んでその能力を取り込み進化する合成獣(キメラ)

 だが各地に放たれた融合の顎は、進化して力を得たにもかかわらず魔界の戦士たちの手にかかり

その数を次々と減らしていっていた。

 

 その退治を受け持っていたのが魔界の超戦士、かのヴェルザーの最強配下である七竜将の

ケプラスと、相棒の竜戦士(バルデバラン)ガノイザーだ。今日もまたこの大陸で二匹の融合の顎を補足し、

今まさに殲滅せんと豪勇を振るっていた。

 

「そろそろ頃合いかの。」

 弱って来た怪物を見てケプラスは(とど)めに入る。素早く下方に回り込むと体を大きく

大の字に広げ、その手足の先に、頭上に、シッポの先に爆裂呪文(イオ)の光を灯す。

「イオ・・・イオイオイオイオイオぉぉっ!!」

 その6つの魔法球の間にプラズマが走る、そしてそれが六星の魔法陣を描く!かの竜の騎士を

超える事を目指してあみ出した、ケプラス最強の必殺呪文が炸裂する!!

 

爆裂陣呪文(イオタ)あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 竜闘気で撃ち出された六星の呪文が怪物のどてっ腹に着弾した時、まるでその腹に六星魔法陣の

刺青を描いたように、鮮やかに魔法陣が記される・・・さながら仕掛け花火のように。

 

 -ヴゥンッ-

 

 -ズッドオォォォォォォォォォォン!!!-

 

 背筋が凍るような発火音に続いて、閃光と轟音を伴った大爆発が魔界の空を揺らす。跡形もなく

四散した怪物の肉片すらイオタのエネルギーに焼かれ、炭となり灰となって塵と消える。

 

 

 その光景を天を仰いで眺め、感慨深く嘆く戦士ガノイザー。

「気の毒にな・・・サルトバーンにて暴れていればケートス殿の力で元にも戻れたであろうに。」

 サルトバーンの領主ケートスは、この融合の顎に取り込まれた者たちを元に戻す技術を

持っている。だがここは遠方であり、息の根を止めぬ限り暴れ続ける融合の顎をサルトバーンまで

持ち帰るのは不可能だ、ならばここで決着をつけるしかない、これ以上の犠牲を出さぬ為にも。

 

「まぁ、食われたのもその者の実力が無かった故に、仕方のない事なのだがな!」

 そう言って彼は目の前の敵に向き直る、あばれこまいぬの頭部にアルミラージの角を持ち、

オックスベアの強靭な巨体を持つその”融合の顎”は、あらゆる攻撃をガノイザーに仕掛けて

その度に跳ね返され、カウンターの一撃で吹き飛ばされていた。己の100分の1にも満たぬ

その小さな、だが極限まで鍛え上げられた肉体に全く歯が立たなかった。

 

 グルルル、と唸り声を上げる化け物。顔に似合わない蛇のような舌をちろりと出し、

ガノイザーの胸元を舐めると、大口を開けてガノイザーを捕食にかかる。

 

 -ばっくん!-

 あばれこまいぬの大きな口の中にすっぽりと収まるガノイザー。化け物の目がにやぁっ!

と笑みを見せる。この恐るべき戦士を己に取り込めば、無敵の怪物になる事間違いなしと感じて。

 

 ごむっ!

 

 その目玉がまるでボールのように跳ね上がる、顎の下の肉がゴムのように下方向に

引き延ばされる。猛烈に鼻血を吹き出し、痛みと恐怖と、そして後悔に全身をのたうち回す、

だがもう遅かった。

 ガノイザーは口の中で暴れていた、というより元々それを想定してあえて食われたのだ。

屈強の格闘家である彼を健康なまま体内に取り込むなど愚の骨頂といえるだろう。

舌を引き抜き、歯を残らず叩き折り、鼻孔を引き裂いて上あごの骨を粉砕すると、その先にある

脳にジャンプして連撃を叩き込む!

 

「魔撃、暗黒の激流!」

 闘気を込めたパンチの連打が脳をたちまち液化させ、そのまま頭をぶち破って噴出させる。

空いた穴からばっ!と飛び出したガノイザーが着地すると、哀れな怪物はゆっくりとその体を

横たえて絶命した。

 

     ◇           ◇           ◇    

 

「これで6体目か、何匹いるのやらのう。」

「しらみつぶしに叩いて行くしかあるまい、犠牲を少しでも減らさねばな。」

 戦いの後、焚火を囲んで一息ついて話す二人。

魔王(きらりん)殿は地上で上手くやっておるかのう。」

「案ずることは無い、あのオグマやリヴィアスが一緒ならな。」

 ケプラスとガノイザーはかつてオグマ達と戦っていた、自分より明らかに劣る種族と肉体で

ありながら、その”魂”の有り様で見事に勝利をもぎ取って見せた。そんな彼らが

同行して地上に行ったのだ、彼らで叶わぬなら誰が行っても叶わないだろう。

 

「魔界を閉じる、か。」

 ガノイザーが上を見上げてそう呟く。あの天の大地を陥没させて魔界を埋め立てる

その天の意志に嫌悪と、そしてどこか違和感を感じて。

「神々は本当に我々を見捨てたのか、魔族の神や竜の神すらも・・・」

「それだけ大魔王バーンが恐ろしかったのだろう、ならば我らもせいぜいその後に続いて

神々をビビらせてやらねばな、がっはっは。」

 

 陽気なケプラスは豪快に笑うが、真面目なガノイザーは考えをめぐらさずにはいられない。

元々は神々が人間に地上を与え、竜と魔族を魔界に押し込めたのだ。だが魔界から這い出る脅威に

神々はついにその魔界を潰す決断をした。その中には魔族の神、竜の神も含まれるというのに。

 いや、あるいはいつかこうなる事を想定して、危険な魔族や竜を魔界に落としたの

かもしれない、まるで罪人を牢に放り込み、そのまま吊り天井で押しつぶして処刑するように。

 

「考え過ぎだガノイザー。ほれ、レムの言葉を覚えておるだろう。」

ケプラスの言葉にうむむ、と唸るガノイザー。かつて出会った精霊レムは神々の使徒でありながら

魔界の者を殲滅する事を好ましく思っていなかった。また自らの使命である”魔界から地上への

脱出路を封印する”行為に対して神々が積極的では無かったと語っていた。

神もまた、この魔界を閉じる行為に迷いがあるのだろうか。

 

 と、周囲の空気がスッ、と変化するのに気付いて、思わず頭を上げる二人。その前には

ひとりの少女が宙に浮いて彼らを見下ろしていた。

「噂をすれば何とやら、レムではないか。」

「一別以来だな、この周辺で任務か?」

 精霊レムは答えずに、そのまま彼らの前まで降りてくる。フードをかぶった顔を伏せており、

その表情は相対するまで伺い知れなかった。

 

「・・・どうした?」

「何があった、何故、泣いておる。」

 彼女は顔を伏せたまま、顔を歪めて泣いていた。それは苦痛の涙ではなく、これから起こる

悲しみを内包しての涙だった。

 

「ごめんなさい・・・ケプラスさん、ガノイザーさん。お二人を・・・お二人を・・・」

 その瞬間、がたぁっ!と立ち上がる戦士2人。だが遅かったことを彼らはすぐさま悟った。

周囲の景色が、空が・・・白い。それはこの周辺一帯がすでに彼女の、天の8行”降りのレム”の

勢力範囲に、彼女の手の内にある事を物語っていたから。

「封印しなけれな・・・利用しなければ・・・いげなく・・・ヒッ、なりばじたぁ・・・」

 

 (ドラゴン)属。彼らは生物として変温動物に属する。体温が下がるとその活動能力は著しく

低下するのだが、この地熱とマグマで温かい魔界においてその心配は無かったはずだった。

 だからこそ失念していたのだ、このレムが、大気の気温と雪を操るこの精霊が、

ドラゴン族である自分たちの天敵となり得る事を。

 

絶対低温雪(ダイヤモンド・ダスト)

 そうレムが唱えた瞬間、焚火がかき消え、薪が凍る。彼らの周囲にはまるで宝石のような

氷の結晶が舞い降りて、ふたりの竜戦士の体をあっという間に白く染め上げて行く。

 

 そんな中、レムの涙だけは凍らずに、その頬を濡らす。

 

 神の使命に従う為だけに生み出された自分が出会えた、仲間というかけがえのない存在。

そんな二人を、今もまだ自分に優しい目を向けてくれているこの人たちを、殺さなければならない。

 そしてそれが知られれば、あのミールさん、きらりんさん、リヴィアスさん、オグマさん、

そして魔剣ナタルコンさんが自分をどう見るだろう・・・魔界で出会えた宝物(なかま)を今まさに

手放そうとする自分の運命に涙が止まらない。こんな事なら・・・私はいっそ・・・

 

「やられたのう、体が動かんわい。」

「泣くなレム、我らを仕留めたのだ、胸を張って凱旋するがよい!」

 笑顔を見せるケプラスとガノイザー。魔界の戦士なればこそ戦いに敗れるなら潔く散りたい、

そして自分たちを倒した力の持ち主に称賛を送るべきではないか、と。

「なんで・・・そんなにすまして居られるんですか・・・やっぱヘンです、魔界の人って・・・」 

 ぼろぼろと熱い涙をこぼすレム。かつて殺し合ったオグマ達と笑いながら飲み食いする様に

呆れたものだが、この人たちは変わらない、相変わらずだ、と。

 

 その戦士としての気高さで自分を認めてくれた、元気づけてくれた二人に、彼女は心で告げる。

 

 -ごめんなさい、ありがとうー

 

 笑顔のまま氷の彫像となったふたりの竜戦士に、レムは手をついて別れを告げる。

 

 

「レム、ご苦労様。この二人が私の使途をさんざん消してくれたのですね。」

 雪の中から現れたのは、同じ天の8行”昇りのクト”だ。融合の顎の母体であり、魔界の

動向を管理統括する精霊の1人。

「ですが、この者たちを取り込めば、私の使徒もさぞ強くなるでしょうね。」

 ふふっ、と笑うクトに向けて、レムは振り向いてこう告げる。表情も、涙も、目の光さえも

凍り付いた無表情で。

 

 

「ええ、誰も勝てない最強の使徒が出来るでしょう・・・それは私が保証します。」

 

 

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