魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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展開を煮詰めつつ書いているのでちょい短いです。


第82話 ヒムの旅①

「ったくよぉ!行けども行けども花畑ばっかし・・・何なんだよここは!!」

 足元の花を蹴っ飛ばしてそう吐き捨てたのは金属生命体ヒムだ。大戦十傑の一員として

ロモスの大会に出たはいいが、自称魔王の小娘に舞い上げられて気が付いたら

見知らぬ花畑の中にいた。

 最初はどこかに転送でもされたのかと思い、瞬間移動呪文(ルーラ)で戻ろうとしたら、次の瞬間には

派手に地面に激突していた、飛翔呪文(トベルーラ)の方は普通に使えるにもかかわらず、だ。

 

 つまり彼の知る地上は、この花畑の下にあるという事になる。

 

「天空の大陸、ってか?聞いたことも無ぇぞンな話!」

 かの大魔宮(バーンパレス)すら、数km四方の広さしか無かった上に、細いフレームが

伸びているにすぎなかった。しかしこの天空の大地は行けども行けども、そしてトベルーラで

飛べども飛べども終わりが見えない。それだけではなく、空もまたモヤに覆われていて、

いくら上に飛んでも突き抜けることは無かった。

 

 結果、とうとう魔法力を使い果たして歩き続けるも、一向に代わり映えしない景色に

ついに愛想をつかしてどっかりと座り込むヒム。

「しかし・・・マジで不気味な所だぜ。そもそもこの花、本当に植物なのか?」

 手元の花を引き抜いてしげしげと眺める、確かに感触は植物なのだが、どうにも生きている

感じが全くしない、まるで種の時期もつぼみの時も無く、永遠に咲いているかのようだ。

 

「デルムリン島の花はこんなじゃなかったな。ちゃんと虫がたかって、太陽に向いて咲いて

萎れて・・・だがコイツはまるで咲いたまま凍ってるみてぇだ。」

 あの大魔王が自らに施した”凍れる時間の秘法”を花にかけたらこんなんじゃいか?などと

思うくらいに、この花畑の世界には命の感触が無かった。

 

 花を捨て、後頭部に手を回したままゴロンと転がって天を仰ぐ。

「ま、しょうがねぇ。少し眠って魔法力を回復させるか、飛ばずに走ってるとキリがねぇしな。」

 以前なら禁呪法で生み出された金属戦士であるヒムは眠る必要はなかった、HPやMPは主である

ハドラーの魔法力で回復できたからだ。だが、今の彼は一個の生命体として自らの生活サイクルで

己の体調を管理する必要があった。眠りもその一環で、それによって回復を促進する術も自然に

身につけていたのだ。

 

(あの小娘・・・さすがにもう勝ち判定されてんだろうな。いつかお返ししてやらにゃ・・・)

 

 

     ◇           ◇           ◇    

 

-ヒム、おいヒム!-

 

「う・・・ん、誰だ?」

 懐かしい、そしてどこか聞き慣れた声に目を開け、顔を起こす。果たして彼の目の前に

いたのはまごう事無き戦友の姿。刺突槍を携え、魔法反射の盾を胸に供えた馬面の騎士。

「シ、シグマじゃねぇか!!お前・・・生きて・・・」

 

-ワシらもいるぞ-

-久しぶり、そして相変わらずですね、ヒム-

 その声に思わず立ち上がり、目を丸くしてかつての同志に驚きの声を上げる。

「フェンブレン、アルビナス・・・ブロックまで!!」

 

-ハドラーサマノ、タマシイモ、ゴケンザイノヨウダナ・・・スマナイ、ヒム-

 片言で喋るブロック(細)の言葉に、えっ?という顔になるヒム。

-そうですね・・・あなた一人に押し付ける事になってしまいました-

-なぁに、コイツが一番適任だったということだろう-

 

 ヒムは状況を理解できない。アバンの使徒との戦いで死んだ戦友たちが今、目の前にいるのも

そうだが、何よりこいつらが自分に何かを託すような表情と言葉を投げかけてくることに

背筋の芯が抜けるような切なさと孤独感を感じて。そんなキャラじゃないだろうお前ら!

 

-生きて何かを、我らの分も-

-お主なら、何でも成せる-

-忘れないでくださいね、あなたは私たちの-

ーイキロ、シッカリト-

 

「お、おい!待てお前らぁっ!!」

 

     ◇           ◇           ◇    

 

 がばぁっ!

「あ・・・」

 

 ヒムが跳ね起きた時、彼らの仲間は消えていた。

「夢・・・ってヤツか、初めて見たぜ。」

 

『夢?果たしてそうかの?』

「うおわぁあぁっ!?」

 いきなり真後ろから声をかけられ思わず飛び跳ねるヒム。戦士たる彼はたとえ眠っていようが

夢を見ていようが、周囲の気配には即座に反応できる自信があった、だがその声の主は何の気配も

感じさせずにいきなり後ろに立っていたのだから。

 

『ひゃっひゃっひゃっ、さすがに驚いたかいな。』

 朗らかに笑うその人物、老人と言っていい見た目年齢に青いローブを纏い、その頭には

巻き貝のような帽子をかぶっている、いわゆる”まほうじじい”に分類される魔族だ。

 

「驚いたっていうか、誰かがいた事が一番の驚きだよ。なぁアンタ、ここは一体なんなんだ?」

 代り映えしない花畑で、ようやく会えた住人らしき人物にかぶりつくヒム。

「行けども行けども気色悪い花畑だし・・・ってうおおぃっ!!」

 愕然とするヒム。それもそのはずだ、花畑にいたはずがいつの間にか石造りの建物の中らしき

ところに立っていたのだから。

「なんだなんだ・・・なんなんだ一体!俺は確かに花畑に?」

 

『まぁ落ち着きなされ。ほれ、彼らにも笑われておるぞ。』

 そう言って手を広げるじじい。だが周囲に人の姿はない、代わりに何かぼうっとした光が

まるで綿毛のように漂っている。

 軽くパニックに陥るヒム。理解不能の現象の連続攻撃に不快感をあらわにしたその時、

彼はじじいの言った事をわずかに理解した・・・気がした。

 

「そ、それ・・・まさか、アル、ビナス?」

 目の前のモヤを指差し目を丸くしてそいう呟く。何故そう思ったのかは分からない、ただ

自分の中の何かがソレをかつての仲間と認識している。周囲にいるその光のモヤがかつての

親衛騎団の仲間である事を!

 

「フェンブレン・・・ブロック、シグマ、間違いねぇ、お前たち、なんだな。」

 もちろん光のモヤは何も答えない、だがそれでもヒムには彼らが頷いているのが分かった。

「おい、じーさん・・・答えてくれ。俺の仲間が・・・どうして、こうなっている?」

じじいに真剣な目でそう告げる。状況を見てもこの老人が、仲間が何故このような姿になって

いるのかを知っているのは明らかだ。

 

『それはお前さんの友人たちの”魂”じゃよ。』

「魂、だってぇ!?」

 半分突拍子もない、そして半分は予感していた通りの答えに、驚きと納得の感情が同時に

湧き上がる。かつて仲間たちは戦いに敗れ、そのオリハルコンの駒の体は爆発して失われた。

ならば残るのはその体を動かしていた”魂”のみだ。だがそうだとしても、これはあまりに

荒唐無稽な話だ・・・一体なぜ?

 

「説明してくれ。俺はアタマ良くねぇから、なるべく簡潔に、んで納得できる説明をな!」

 じじいに詰め寄ってそう凄む。我ながら無茶を言っているとは思うが、そうでも言わないと

収まりがつかない。

 

 長々と難しい話を聞く気はない。

 簡単な言葉ではぐらかされる気も無い。

 

 まほうじじいは、その無茶な注文をいともあっさりと叶えて見せる、ただ一言で。

 

 

『ここは天界で、ワシはまぁ・・・神じゃ。一応、な。』

 

 

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