魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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※タグに「残酷な描写」追加。いきなりきますので閲覧注意です。


第2章 赤い首巻(レッドネック)リヴィアス~仇は”竜の騎士”
第9話 空を飛んだ日


 その日、ぼくは、生まれてはじめて空をとんだ。

 

 さいしょに見えたのは、戸板、どこかの家のドアなのかな・・・?

それに押されるように、ぼくの体はいきなりうき上がった。

 

 あそんでいたひろばから、ぼくも、ともだちのみんなも、いっせいに空にとびあがった。

 

 でも、いきているのは、ぼくだけだった。

 

 ともだちはみんな、手だけだったり、こしから下がなかったり、からだがへんな向きに

おれまがったりしていた。

 

 なかのよかったサイミアは、しろめをむいていて、そのからだは火につつまれていた。

 

 いじわるなボングがじまんしていた新しいクツが、ふとももからさきだけになった足と

いっしょにぼくのよこをとおりすぎた。

 

 ぼくにはりついて、ぼくををおしだす戸板はあつく、木のすきまからもれる火が体に当たって

いたい。

 

 その熱においついてくるのは、風と、まっくろなけむり。人と、からだと、木切れやかわら。

それは、ぼくたちのまちをつくっていたもの。

 

 ああ、そうか、きっとばくはつがおこったんだ。

 

 ともだちも、いえも、まちも、そしてぼくも・・・ふきとばされたんだ。

 

 

 

 

 あおむけにねたまま、空をみあげていた。

 

 せなかが、足がいたい、からだじゅうがいたくて、あつい。

 

 こげくさい、けむりくさい。

 

 あしもとのほうがくから空に、けむりがもうもうとたちのぼっている。ぼくたちのまちが

あったほうがくから。

 

 お父さん、お母さんは・・・どうなったんだろう。お母さんにいわれたことをおもいだす。

 

 -今日はこの広場で遊んでいなさい、けっしてお城に来てはだめよ-

 

 ぼくだけでなく、まちじゅうの子供たちもみんな、ひろばにきていた。

みんなぼくとおなじで、お城に来てはだめ、と言われていた。

 

 お城で、ばくはつがおこったんだ。

だからお母さんは来てはだめ、といったんだ。

 

 いいつけをやぶってお城にいったボングは、だからぼくよりいきおいよくとばされて

足だけになってしまったんだ。

 

 ぼくは、とんできた戸板におされながらとばされた、だからからだがちぎれなかった、

もえなかったんだ。

 

 じゃあ、お母さんやお父さんは?

 

ヒュウゥゥゥ・・・ドスン!ゴロッ、ゴロッ・・・ドッ!

 

 おおきないわが、そらからとんできてぼくのよこにおちてきて、ころがってとまった。

 

 それだけじゃなかった、きぎれが、かわらが、クイが、いろんなものが上からふってきて

ボトッ、どさっ、パァン、と音を立てて、じめんにおちつづけていた。

 

 人も。

 人だった物も。

 

 手が、足が、くろこげになった人のかたちをしたものが、まわりにおちてくる。

 

 みんな、じめんにおちたしゅんかんに、ばらばらになる。

 

 ・・・あれ?じゃあ、ぼくは?

 

 なにか、なにかをわすれている、だいじなこと。

 

 あとでおかあさんにきいてみよう。ねぇ、ぼくはなにかだいじなことを・・・

 

 -じゃあリヴィアス、ルミナをおねがいね-

 

 そうだ、わかれるまえにお母さんに、そうおねがいされた

 

 ルミナ。はんとしまえにうまれたばかりの、ぼくのいもうと。

 

 せなかにおぶったそのいもうとを、おかあさんは、おんぶひもでぼくのせなかにこていした。

これでだいじょうぶ、と笑った。

 

 そうだ、ぼくはきょう、いもうとをおんぶしていた。

 

 そして、ばくはつでとばされた。戸板がぼくをまもってくれた。

 

 でも、じめんにおっこちたぼくは、ばらばらにはなっていない。

 

 せなかからおちた。

 

 じめんにおちた。

 

 ものすごいいきおいで。

 

 でも、ぼくはまだ、ばらばらにならずにいきている。

 

 

 ぼくはきょう、いもうとをおんぶしていた。

 

 ぼくはきょう、せなかからじめんにおちた。

 

 

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

 

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

 

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

いもうとをおんぶしていた。

せなかからじめんにおちた。

 

 ぼくは、くびを、せなかをもちあげ、からだをおこした。

 

 -ぬちゃり-

 

 ちのようなにおいと、にくをこねるようなおとがきこえた。

 

 背中から。

 

 

「う・・・うあ、うぁあ"あ"あ"あ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ー」

 

 ぼくの耳に、こころにひびくそのこえが、ぼくじしんのひめいだったことに、きづかなかった。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁああああああァァァァアアアアアーーーーー!!!」

 

 こえがかれるまでさけびつづけた。うしろをみるのがこわかった。からだにまいたおんぶひもが

赤いいろにそまっていた。

 

 いもうとの、ルミナの血で

 

 

 この日、ぜんぶこわれた。

 

 お父さんも、お母さんも、ルミナも、サイミアも、ボングも、ぼくの家も、みんなも。

 

 あるきーど、っていうこのまちも。

 

 そして・・・ぼくも。

 

「あああああアアアアアアアアああぁあああぁああああアアアアあァァアアアーーーーーーーーッ」

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

 魔界。そのはずれにある砦。石造りのその小さな要塞は、かつて魔界の実力者によって築かれた

前進基地の廃墟。その屋上や窓に当たる風穴の周囲には十数匹のモンスター、主にアーゴンデビルや

ヘルバトラー等、魔族に属する連中がピリピリとした殺気を放ちながらたむろしている。

 

 と、その砦のすぐ前の森から、小さなせせらぎが聞こえる、何者かの接近する気配!

 

「誰だぁっ!!」

 地獄の門番ベレス2匹が鎌を向けて威圧、砦にいる全員が緊張感を漲らせてその様に注目する。

 

 スッ、と森の中から出てきたのは、魔物たちに比べて小柄で、どこか華奢な人物。

門番の前に立ち、懐から青い石を取り出して彼らに見せ、こう話す。

 

「敵意は無い、このマヌカイトを食料と交換してもらいたい。」

 男が差し出したのは、マヌカイトと呼ばれる希少な石であった。石の目に沿って薄く割れる性質があり

逆に目の垂直方向には相当な強度を持つその石は、ちょっとしたナイフやカミソリの代用品として重宝し、

また金属で叩くと大きな澄んだ音を出すことから、遠方への合図や連絡のための道具にもなる。

 

 その男の言葉に緊張を解く魔物たち。どうやら彼らが警戒している敵対勢力とは無縁のようだ。

ならばと手を伸ばした門番が石を受け取ると、回しながら眺めて吟味する。

「おうおうおう、こりゃ上物だぜ。」

「ホントか?ラッキーじゃねぇか。」

「悪いなあんちゃん、ヘッヘッヘッ・・・」

 

 マヌカイトを手渡ししながら口々に呟く魔物たち。その口調はどこか強欲で、とてもまともに

男と取引をしようという意図は見えなかった。やがてその石が砦のリーダーらしき

サタンジェネラルに渡った時、門番は男に背を向けて後ろ手でこう告げる。

「ご苦労だったな、じゃあ、さっさと帰んな。」

 

「食料と交換、といったハズだが・・・」

 その男の声にやれやれ、と言った顔でため息をつく門番。全く察しの悪い奴だ、仕方ねぇなぁ・・・

 

「だったら、コイツでも喰らいなっ!!」

 振り向きざまに鎌を男に向けて振り下ろす、さっさと死ねと言わんばかりに。

 

 彼らはその男の風貌を見てなめてかかっていた。魔族にしては角も翼も持たず、かつ小さな

その体と、やたら白く柔そうな肌、そんな奴の持ち物などこの魔界では力づくで奪って

当たり前だ、と。

 

 ガッキィィィン・・・!

 

 振り下ろされたその鎌は、男の目の前で止まっていた。鎌の刃の付け根に男の持つ槍の先が

押し当てられ、それ以上振り下ろすことが出来ない。

「コーンランス・・・だと?」

 男の持つのは円錐状の、突くことに特化した2mほどの槍だった。その先端を相手の

鎌の付け根、ここしか無いという一点に押し当てて止めている、それだけでこの男が只者では

無いという事を物語っていた。

 

「ぐっ!」

 飛び退いて後ずさりする門番2人。砦の魔族たちもぴりっ、とした緊張感を復活させてその男を見る。

 

「・・・お前まさか、人間か?」

 そう聞いたのはリーダー格のサタンジェネラルだ。周囲の魔族はえ?まさか!という顔をするが

男はその問いにこくり、と頷いて答える。

 

 青年といっていい風貌の男は、黄色い肌に黒い髪と瞳を備え、ゆらりとランスで円を描いて構える。

その首には真紅のマフラーのようなものが巻かれ、その先は腰までたなびいていた。

 

「人間、コーンランス、そして赤い首巻き・・・お前、お前、まさかっ!?」

 サタンジェネラルが冷や汗を流して問う。周囲の魔物たちもその言葉に背筋が凍る、最近魔界の

この近辺に流れる噂、それに合致するその男の存在に!

 

 

「お前が・・・赤い首巻(レッドネック)・リヴィアスか!!」

 

 

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