魔界のオグマ   作:三流FLASH職人

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テーレッテー♪


第97話 無法者の大陸

「はあぁぁぁぁ・・・っ!いいですよ、ケートスさんっ!!」

 柱に手を当て、魔法力を注ぎ込んだきらりんのその言葉に応えて、魔族(タイムマスター)ケートスが

習得したばかりの呪文を唱え、両手を突き出して目の前の柱に魔法を注ぎ込む!

「我と魔界の大地に宿る魔力よ、その力をこれなるに宿し、天へと伸ばせ・・・長尺呪文(ラングウェップ)!」

魔力を受けた柱が青く輝き、その丈をゆっくりと、そして確実に伸ばしていく。

 

 -ヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・ン!-

 

 かつて魔界に転送し、一度は建てる事に成功した3本目の大魔王の破壊柱(ピラァ・オブ・バーン)。だが精霊

”落ちのイタ”の地下深くで起こした爆発により沈められ、全体の2/3が地中深く落ち込んでいた

この柱の先端が、再び天の大地までその尺を伸ばしていく。

 

 -ズズゥ・・・ン!-

 やがて天の大地に突き刺さり、轟音と振動を残してついに天地を支えて固定される3本目の柱。

周囲で見守る者、精霊の再襲撃に備えていた者たちも、成功を確信して歓喜した。

「いやったぁーーー、成功だっ!」

「おっしゃあ、見たかぁ天界っ!」

「領主ケートス様、魔導鬼ロズテナー様万歳ーーっ!」

 

 この柱が沈められた時、同時に精霊の襲撃で命を失った老魔族ロズテナー。だがそれは同時に

天の大地まで届かなかった柱の再利用の方法を魔界の者に教えていた。彼が得意とした呪文

巨人呪文(メガロ・ゴリア)を応用して柱そのものを伸ばせば、再び天地を支える柱として利用できるだろう、と。

 ロズテナーの家に残された魔法の資料を回収し、ケートスやパパオ、ネグネグなどの手練れの

魔法使いが吟味研究すれば、それを習得して応用、巨大化を伸長化へと置き換えて、物体に

かけるための魔法にするのは困難では無かった。ただ大きさが大きさだけに、対象物を魔力で

満たすのにはきらりんの手が必要だったのだが。

 

「じゃが・・・やはり強度は下がっておるな。」

 ケートスが柱に手をやってそう嘆く。物体の分子そのものが巨大化しているこの呪文、

長く大きくなった分どうしても強度は失われてしまう。かつてのロズテナーが巨大化した時も

そのせいでほぼ身動きが取れなくなってしまっていたのだ。

「これ一本で、というワケにはいかなくなったか。」

 ミールを背負ったままのリヴィアスがそう嘆く。元々このポイントは柱が最も効く場所で、

ここに建てさえすれば魔界は救えたも同然だったのだが、伸ばした柱の強度ではそうもいかない

ようだ。

「となると・・・やはり・・・」

 オグマの嘆きに全員がううむ、と唸る。地上に残る2本を持って来る必要があるのも勿論だが、

問題はその建てるポイントだ。少なくとも一つは”あそこ”に建てなければならなさそうだ。

精霊が一度は駄目にしたこの柱のフォローに、彼らはさらなる難題を課されていた。

 

『行くしか無かろう、無法者の大地”アルゴス大陸”へ。』

 

 

 魔界の北西部に位置するアルゴス大陸、そこはいつしかならず者や無法者の集まる、破壊と

暴力の場所になっていた。類が友を呼ぶが如く悪人たちがそこに集い、今やまともな魔界の

住人たちが近づかない悪の巣窟となっていたのだ。

 彼らは各所に出向いて略奪や蹂躙を繰り返し、どのエリアの者たちもその対処に手を

焼いていた。かつてケートスがサルトバーンの領主に就任した時も、かの地のならず者どもが

何度も襲撃をかけて来た。まぁ奴らはすべからくケートスの研究の具に消えて行ったのだが。

 

 そんな経歴もあり、アルゴス大陸の連中だけはこの”魔界を閉じる”計画を阻止する事に

対して協力を得られずにいた。伝令に走った者も、各所を旅する冒険者たちも、その地に

向かった後は消息が途絶えていたのだ。

 出来たら関わりたくはないその地は、残念ながら柱を建てるのに避けられない場所だった。

この3本目が強度不足であるがゆえにもはや背に腹は代えられない、なんとしてもかの地の

者たちを説得し、あそこに柱を持っていかなければ。

 

 

     ◇           ◇           ◇    

 

 

「ヒャッハー、人間だ、人間がいるぜエェェ・・・」

「しかも女じゃねぇか、そそるなぁハーハーハー・・・」

「よぉ姉ちゃん嬢ちゃん、こんな物騒な所に何の用だい?」

 アルゴス大陸に到着するなりこの有様である。アークベリアルやサイクロプス共がだらしなく

涎を垂らし、股間の腰巻を膨らませて一同に迫る。慌ててきらりんの目を手で隠すずるぼん。

「・・・教育上よろしくない場所だねぇ、ココは。」

 

 とりあえず彼らに迫るうち一匹の股間をリヴィアスの焼きゴテ(ヒートランス)であぶってやり、別の一匹の

イチモツをでろりんがそのゴツい義手で握りつぶす、すっごく嫌そうな顔をしながら。

 -ぎにゃあぁぁぁぁ・・・-

「次に焼かれたいものは前に出ろ!」

「ま、女として逞しく生きて行けよ・・・」

 目隠しをされたままのきらりんが「?」という表情をする、何が起きているのかを彼女が

知るのはもう少し先の方がいいだろう・・・。

 

「これはこれは、噂の魔王様ご一行ですね。こんなむさくるしい所にようこそ。」

 と、チンピラ魔物の群れの中からひとりのデスプリーストが現れる。その姿を見た有象無象は

一斉にざざっ!と後ずさると、そのまま蜘蛛の子を散らすように逃げ散っていった。

それだけでこの者が只者でないことが伺える、彼はオグマ達にうやうやしく一礼すると

こう続けた。

「失礼、ワタクシはこの大陸の覇者ヒュードラドン様の執事、ソネヤと申します、

どうかお見知りおきを。」

 臨戦態勢を取っていた一同が、その紳士的な対応にとりあえず襟を正す。まだまだ油断は

禁物だが、それでも先程の野獣共よりは話が分かりそうだ。もうういいわよ、ときらりんの

目隠しを解くずるぼん。

 

「どうぞルーラでご同行ください、ヒュードラドン様の城にご案内いたします。」

 そう言ってふわりと浮き上がるソネヤ。答えてリヴィアスが、きらりんがルーラを発動させ、

皆もろともに光の矢になって飛んでいく。

 

 

「ヒュードラドン様、自称”魔王”様をお連れしました。」

 城の中に入るなり目にしたのは巨大な紫の三つ首竜(ヒドラ)だ。普通のヒドラよりも

はるかに巨大なその頭が強烈な威圧感を醸し出している。その脇には一匹の獣人虎人(ワータイガー)

両手に湾曲刀(シミター)を手にしてこちらを睨んでいる。いずれ劣らぬ強者らしさがその佇まいから伺えた。

 その周囲には無数の魔物や魔族たちがたむろしていた、いずれも礼や制には無縁のゴロツキで

ございと言わんばかりの凶悪な態度だ、その中に交じって足枷をはめられた魔族や獣人の女性が

光を無くした目で彼らを接待している、全身傷だらけなのを見るにロクな扱いはされて

いないのであろう。

 

「うむ・・・で、どいつが魔王だ?」

「あ・・・私です、初めまして。私が魔王きらりん・・・」

 ヒュードラドンの言葉に応えて、一歩前に出てそう告げたきらりんの言葉を遮ったのは、

周囲にいた有象無象の爆笑だった。

「ぎゃっはっは・・・なんの冗談だい!」

「聞き間違いか?魔王の意味知ってんのかい。」

「アンタも”こっち”に来なよ、可愛がってやるぜ!」

 足枷の鎖をビィィン!と引っ張ってにやりと笑う4本腕の魔族メガトンケイル。へっへっへ、と

下品に笑うと、きらりんに向かって一歩踏み出す・・・

真空十字斬撃(バギクロス)!』

 オグマがかざしたナタルコンが放った一撃がその魔族を吹き飛ばす。仮にも自分たちの旗頭を

侮辱されて黙っているわけにはいかないのだ。その様を見て虎人(ワータイガー)が「ほう?」と興味深く

笑みを見せる。

 

「我らが魔王きらりん殿を侮辱するなら、この場で一戦も辞さぬぞ、ヒュードラドンとやら!」

 オグマがそのまま前に出て言葉を叩きつける。もしこの場にあの最強の戦士、ケプラスや

ガノイザーがいたらきっと同じことをするだろう、ならば我らも引くわけにはいかぬと

リヴィアスと共にヒドラの前に並び立つ。

 

「はっはっは、戯れだ、そう粋がるな熊人よ。」

 ヒュードラドンの中央の顔がそう言って笑う、なかなかの跳ねっかえりぶりでは無いか、と。

「これだけの力を持つものが仕えているなら、その魔王とやらも見た目通りではあるまい。

良かろう、要件を聞こうでは無いか。」

 

 そこから先は思いの外すんなりと話は進んだ。この地に柱を建てるなら是非この城の目の前に

建てろと言うのが彼らの提示した要求、実際に魔界を救うその様を我々の目の前に示してみろと

いうのが黙認の条件だった。

「分かりました。後日柱を建てる為の職人たちが訪れます、最終的な場所は彼らとミールさんが

決定する事になります。」

「うむ、転送のショーとやら楽しみだ、せいぜい失敗するでないぞ魔王どの。」

 クカカカカ、と笑うヒュードラドン。続いて周囲の魔物も邪悪に笑う、決して協力的ではない

侮辱と嘲りに満ちた、不快極まる笑い声で。

 

 

 それでも何とか最低限の約束は取り付けたと城を辞する一行。こんな危険な所は用が済んだら

さっさと出て行くに限る。最後に約束をして別れれば、次に来た時はそれが多少なりとも奴らの

枷になるだろう、反故にするなら奴らは醜悪な裏切り者として、ぶちのめす為の大義が立つのだ。

 

「私、あの城の女の人達、助けてあげたいです。」

 きらりんが陰りのある表情でそうこぼす。ならず者共に捕らえられたのは彼女たちの

責任とは言え、あの扱いはあまりに惨いものだ、特に少女のきらりんにとっては。

「お優しいですね、きらりん様は。」

「うむ、あれこそ下衆のやることだ、あの女達にも活躍できることはいくらでもあろうに。」

 ミールに続いてオグマも同意する。各々の統治には出来るだけ干渉したくはないが、それも

限度がある。柱の構築のほかにもう一つ宿題が出来たようだ。

 

『リヴィアス、でろりん、どう見る?』

 ナタルコンの問いかけに対して、人間の男二人が揃って首を横に振る。

「クロだね、真っ黒。絶対背中から刺すタイプだよ、あーゆーのは。」

「ああ、何を狙ってるのかは知らんが、迎撃の準備と心構えが必須な相手だ。」

 望むところ、とランスを握るリヴィアス。あのヒュードラドンのような図体のデカイ相手は

リヴィアスの刺突槍(コーンランス)の格好の的、もし戦うなら俺がと気合を入れる。

 

 

     ◇           ◇           ◇    

 

 

「ヒュードラドン様、本当によろしいので?あんな連中に協力など・・・」

 城の中でそう問うたのは脇に控える虎人(ワータイガー)だ。主のらしくない対応に疑念を隠せない、

あれではまるであの熊人の真空呪文に恐れをなしたようでは無いか、と。

「フッホホホホ、お分かりになりませんか?ロガッツさん。」

反対側にいたソネヤが不気味に笑う。ロガッツと呼ばれた虎人は何ぃ?と眼光を返す。

「あの魔王ちゃんは地上への道を知っているのですよ、これは利用しない手はないですよねぇ。」

 ソネヤの言葉にはっ!とするロガッツ。そうだ、たしかあの計画は魔王が地上に行き、

そして柱を持って来るのだ、ならば・・・我らが地上に行くための重要なカギとなるのか!

 

「そういう事だロガッツ、あの娘の魔法力は確かに絶大だ、だが地上から柱を転送した直後は

流石に魔力も尽きていよう。そこを捕らえ、我らが地上へ進出するのだ!」

 ヒュードラドンが3つの首をにやぁっと歪めてそう答える。豊穣の地である地上に赴き、

略奪、蹂躙、そして支配する未来図を見据えて。

 

「あの魔王ちゃんを捕らえるのはわたくしに任せて貰いましょう、楽しみですねぇ、フホホホホ。」

ソネヤの下卑た笑いに続いて、虎人(ワータイガー)ロガッツが両手の湾曲刀(シミター)をブン!と振るって

居丈高に吠える。

「ならばあの熊人は俺の獲物だ、誰も手を出すなよ!!」

その言葉と同時に、彼が握る刀にヴン!と目が、口が浮かび上がる、ひとくいサーベルだ!

 

「こやつらも獲物を欲しがっておるわ。食い殺してくれようぞ、熊小僧!!」

 




次回予告

「あべし!」
「たわば!」
「ひでぶ!」

待てやコラw
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