―大図書館の騒々しい一日―
「あなたは扉からまともに入ってくるから、有難いわ」コーヒーを注いだ。「――それって、魔理沙の事かしら」生憎と、それ以外にこそどろはいない。今の所は。私が答えない事で、大体の想像はついたらしい。如何にも頭を抱えていた。放っておけばいい。保護者でもあるまいし。
「素行がもう少し良くなればね…」あれは一生無理じゃないか。「いつか道を踏み外す気がするのよ」知人の生きざまくらいは見届けてやるものだ、とアリスは語った。まあ、そういう趣味なら仕方がないだろう。私に飛び火しないならどうでもいい。泥棒もやめてくれれば、なおいい。
「それで、どうなの。人形の件」その為に賢者の石をわけてやったのだ。成果なしでは、何ともきまずい。「四肢は自在に稼働するようになったけど」アリスは頭を振った。「頭が駄目ね。複雑な思考力を持たせる事ができない」アリスは首を振った。「自立稼働に拘り過ぎなのかもしれない」
「その節はある」石を貰った手前、そう断ずるのは難しいかもしれないが、私は別に気にしていない。試行錯誤は何も魔法使いの特権ではない。誰でもできる事だ。その先に何を見るかは、まあ人それぞれだ。辞めてしまってもいい。執着してもいい。動きさえすれば、結果はついてくる。
まあ、動かない私に言えた事でもないか。尤も、一時期はこれでも動く移動図書館として敵を魔導書で殴っては投げ、殴っては投げしたのだ。今でもやろうと思えばそのくらいはできる。しないだけだ。己のイメージは世間体以上に大事なものだ。C射脳筋扱いされてもらっては困る。
――アリスが帰った後、私はふと考えた。魔女というものは結局の所、知識の信奉者なのだ。主人たるか、奴隷になるかは己の問題だ。貪欲であればあるほどに、知識は我が身を試し続ける。知識そのものに善悪はないのだ。それを濫用しようとする者こそ、邪道に堕ちた奴隷に違いない。
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「――あなたは何しに来たのよ」「何でございましょうな~?」化け猫が私に喧嘩を売っている。特に意味もなく飛び回って、本を抜いては読む振りをしている。どうせ読めてはいない。「あなたも実際、読めておらぬのでは?」水魔法ぶっかけるぞお前。今日が水曜じゃなくて助かったな。
「すまないな、紫様が活字が欲しいと言い出して」それは別にいいのよ。返してくれるなら。「ほら橙、帰るぞ――って、何だ。絵本か?」橙と呼ばれた痴れ者は、絵本の棚から何冊か抜き出して持ってきていた。「これなら私も読めます」「読むだけじゃないのよ。絵本ってのはね」
絵本にはそこそこうるさいつもりだ。「文だけを追っていて何も引っかかりのない絵本なんて、つまらないわ。絵だけを追っていても、すぐに目新しくなくなってしまう。読み聞かせ、読み、やがて手から離れるのが絵本」私の言葉を、橙はぼけーっと聞いていた。少し難しかったわね。
「そして、絵本を手放せなかった大人もいる。彼らが絵本を描く事で、それは次代に繋がっていくの」私は本を閉じ、絵本を一つ取った。「座りなさい。一つ読んであげるわ」橙はそっと傍に座った。「むかしむかし、あるところに――」
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「――今日は珍しい客ばかりね」「あら、そうなのね?」亡霊の姫が私を見ている。私にとっては、やりにくい相手だ。初対面ではない――むしろ散々殴り合った事があるが――し、その性格も良く知っている。何事も迂遠なのだ。それでいてその瞳は真実を見据えている。
「アンチエイジングの本がないかしら、と思って」「…あるわよ」この大図書館を舐めて貰っては困る。漫画から三日坊主の日記まで、いくらでも揃っている。「それじゃあ、貸して貰えるかしら」嫌だ、と言っても持っていく気だろ。妖夢は刃に手をかけるのを止めてくれないかしら。
「魔法使いはそういうのは無縁なんでしょう?」「別に、無意味ではないわよ」興味がないから、しないだけだ。「お化粧くらいはした方がいいわね」生憎と興味がないわ。「その方がずっと可愛いわよ、あなた」可愛さで食っている訳じゃないからな。私は本を開き、聞き流しに入る。
「――ところで、聞いた事があるのよ。世の中には食べられる本があるって」何を言うかと思えば、食欲の話か。「ある事はあるけど、貸さないわよ」「借りないわ。買い取るのよ」ヘイガール、ここは図書館なのですがね。知識とは集積してこそ意味がある。草々売り渡すものか。
「だめ?」…どうせ断れないのをわかって言っているな、これは。妖夢は私に肘を向けている。マジでやめろ。「――わかったわよ。取ってくるから待っていなさい」移動するのもたるい。しかし放っておけば読んでいる本に噛みつきそうな調子だ。私は棚から巻物を取り、机に戻った。
「この巻物は、読んではいけないわ。そのまま食べなさい」いつまで経っても腐らない巻物。実際得体のしれない代物だ。失っても惜しくはない。惜しくはないが。――何だか嫌な予感がする。「いただきまーす」持ち帰る間もなく、着席した幽々子はそれを口に運び、咀嚼を――
バリバリバリ!! ドォーン!!
私と妖夢は激しく帯電するそれを、驚愕と共に凝視していた。「…間違えた」隣に置いてあった巻物を間違えて渡したらしい。「ビリビリしておいひい!」そりゃ良かったな。「おかわり!」仕方がない。非礼…?を詫びると、今度こそ巻物を渡した。酢飯の香りがした。間違いない。
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「あなたは本を読むイメージがないのだけど」漫画や小説ほどは何度も貸してやったが、今持ってきたのはそれなりにヘヴィな代物だ。魔法語で書かれた題名は、ウィザードの手引き。「そもそも読めるのかしら」「読めるわよ」どうせ魔理沙に知識をひけらかされたとか、そんな所だろう。
「天才というのも難儀なものね」努力しなくても感覚でなんでもできる。だが、それに胡坐をかいている限りは、努力をしない。した事がないからだ。努力するのも才能だ。真の天才とは、その両方を兼ね備えているものかもしれない。あなたと魔理沙のように。そうなれるかい、霊夢。
私はその本を開いた。「訳注の入っている本があるわ。そっちを借りなさい」手でそれを促した。私もよく読んだ本だ。知ったかぶりをしない程度に齧るには、丁度いい。知識はあり過ぎて困る事はない。人間の一生は短い。得られる知識も、だ。有意義に使うがいい。生きて死ぬまで。
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扉を蹴り開ける者が一人。「ごめんなさい、騒がしくして!」一応は断ると読書の破壊者は飛翔し、本棚を物色――いや、引っかきまわし始めた。そこにあるのは確か、毒物関連。「何を探しているの」私は読書を中断した。これは珍しい事だが、まあ、蹴り込まれるのも珍事だ。
「魔理沙が毒に侵されちゃって!」あいつも毒で死ぬのか。てっきり殺しても死なないと思ったが。「これ、借りていくわね!」「その隣も持っていきなさい」一冊では、完全にならぬ本もある。「ありがとう、それじゃ!」飛び去ったアリスはしかし、律儀に扉を閉めていった。
こういう所で育ちがわかるというものだ。私はコーヒーを一口飲み、読書を再開した。自然における毒物というものは、大抵は己を守る為に使われているものだ。人は逆に、害す為に毒を使う。毒から毒を作り出し、更なる毒を求める。その一部は、薬として使われるかもしれないが。
「毒が転じて薬となるなら、薬も転じれば毒になる」私は教科書以上の錬金術を嗜まないが、一般的な魔法使いの部屋には、世界中の毒が溢れている事だろう。与り知らぬものが害をなす。毒も同じだ。知らなかったでは済まされない。さすれば知識が必要だ。正確な、知識が。
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「今日はお客が多すぎるわ」いい加減に疲弊してきた私に、しかしてその元凶は微笑んでみせた。「わぁ、すごい!」そこらを飛び回る天狗と、それから目を離さない天狗。木簡ならそっちの方だ――と言いたくもなったが、図書館くんだりまで足を延ばすのだ。借りるだけではあるまい。
「今日は取材に来たんです」図書館の事なら既に、パパラッチ野郎がある事ない事書いてなかったか?「いえ、今日はあなたを取材させていただきたいなって」「…はい?」私って、私か?「動かない大図書館さま、今日はご機嫌うるわしゅう」何を言っているんだこいつは。「…まあ」
「あなたの名前は」「パチュリー・ノーレッジ」「御年は」「計算しないとわからないわ」「現住所は」「図書館の左の奥の斜め前の椅子」「好きな食べ物は」「肉と魚と野菜以外」「好きな事は」「それを私に聞く?」「逆に嫌いな事は」「泥棒」「座右の銘は」「我は不動」――
こいつは中々にしつこかった。そんな事は必要ないだろう、という事まで聞いてくる。射命丸とは別方向のしつこさだ。それでも不快感はあまり感じなかった。比較対象がアレだが、こちらを尊重して話をしているのがわかる。逆に言えば、踏み込みが足りない。良くも悪くも。
「――どうも、今日はありがとうございました!」天狗は深々と頭を下げた。もう一人はいつまでもその背中を見ていた。目付け役か何かだろう。図書館の中に危険は――まあ、いくらかあるが、そこまで気にする事もないだろうに。「花果子念報、お届けしますね」「はいよ」
別に悪意はないのだが、私はもう読書に戻りたかった。紫色の脳細胞が窒息寸前だ。「さあ、帰った帰った」目付け役が一瞬剣に手を当てた気がするが、気のせいだろう。たぶん。「それでは!」天狗らは飛び去っていく。扉はきちんと閉っていた。こういう所で、育ちがわかる。
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「――何だい、シケた顔をして」あんたの存在そのものが鬱陶しいんだよ。「鉱物はあっちだね。ありがとう」私は何も言っていないが、ネズミはずいずいと図書館に押し入り、奥の方へ消えた。あのくらいの図太さがないと、ダウジングなんてやっていられないのかもしれない。
「ところで魔女さん、あなたの好きな鉱物は何かな?」戻ってきたそいつは、私に何やら言ってきたが、私の耳には入らない。無視だ。無視。「私は――そうだな、何でもない石がいい。やがて鑑定され、名前がつく前の石くれ。そいつには無限の可能性がある」ネズミは主張した。
――まあ、わからなくはない。名前がついてしまうという事は、その他すべての可能性を刈り取ってしまう事だ。――尤も、それは殆どの場合、詭弁に過ぎないのだが。石はそれ以前も石であったし、それ以後も石である。可能性を見出したとて、それは私達の主観に過ぎないのだ。
まあ、何事にも例外はあるが。それに関してはあまり詳しくないので、省く。「――私は、そうね。ダイヤモンドの原石がいいわ」私の言葉に、ナズーリンは何やら聞き入っていた。結構テキトーに返したのだが。宝石なら実際、なんでもお宝だろうに。それでは足りないのか?
「私のダウジングは金銭の為にやっている訳じゃない。それならもっと効率的な方法がある」何処からともなく取り出した原石らしきものが、右手から左手に投げ渡される。「お宝を見つけた時の快感。これが止められないんだ」ご自身の性癖を暴露しながら、ナズーリンはにやけた。
「それが何か、調べる気はあるのね」「有限の可能性に、名前をつけてやらないとね」ナズーリンは原石に顔を近づけ、キスをした。「これとこれを貸しておくれよ。ねぐらにまだまだ原石が貯まっているもんでね」「そうしてそれを、死蔵する訳ね」やっている事は大して変わらない。
「死蔵はしない。磨いて、誰かにあげてしまうのさ」意外な答えだった。ネズミはえてして貪欲なものだと思っていたが。「売れば生活費くらいにはなるだろうけど、私は十分潤っているからね。所謂プレゼント攻勢って奴さ」ナズーリンは、どうも苦笑いしているように見えた。
「如何せん――そう、私のようなものは嫌われがちだからね。眷属もそうだ。だからせめて、繋ぎ止めるくらいはしておこうと思って」――まあ、ネズミは嫌われて当然だ。そうでないなら、ねこいらずの類があれほど重宝されるはずもない。ネズミの親玉は、良い顔をされないだろう。
「さっき、磨いていないダイヤモンドが欲しいって言ったろ」ナズーリンは背嚢を漁った。「ここにあるんだ。これは君にあげよう」私の目の前に、手が伸びた。「――まあ、受け取ってはおくけれど」しまったな、研磨済の何カラットとか言ってみるんだった。「これも、好感度稼ぎ?」
「そうさ」「そう」別に私は、こいつ自体に否定的な感情を持っている訳ではなかった。プレゼントなら、他を当たった方が良かったわね。「あんたの事、好きにはならないかもよ」「それでいいよ」一歩引き、首飾りを指で回した。「嫌われ慣れるのを、止めたいだけ。それでいい」
ナズーリンはロッドを掴むと、背嚢に本をしまった。「君と話せて良かったよ。無視されるんじゃないかって思ってた」実際、無視しようとはしたわよ。話を聞いてしまう私が悪いのは確かだけど。「今日はもうおしまい?」「そろそろ暗くなるからね」…うわ。もうそんな時間か。
歩き去るナズーリンの背を、何となく見ていた。嫌われ者か。或いは私もそうかもしれない。そんな事を考えた事もなかった。人と比べれば随分とおかしなやつである自覚はある。人は本ばかり読まない。人は埃の中に居続けない。――意識を戻すと、扉はきちんと閉っていた。
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「帰れ」私の広い心も最早限界だった。次からは完全に無視するからな。「えっ?」突然そんな事を言われても、といった顔で、ミスティアは固まっていた。「料理の本はあっち、食材はそっち、調理器具とかはこっちの棚」私の記憶力を舐めるな。読んだ本の位置は大体記憶している。
「あ、いえその、違くて…」何か違うらしい。「その、小説とか――」よくよく見るとそいつはメガネをかけていた。わたしが掛けているものと似たようなものだ。「読ませて頂けると、嬉しいかな――って」「別にいいわよ」小説はあっち、と指差してやる。その背中を見送る。
本を読む切っ掛けなど些細なものだ。しかしてそれは時に一生を左右する。本の中の世界は所詮、真の体験ではなく、本という媒体に切り取られたものでしかないと主張するものもいる。だが、それを言うならば、本には本の中にしかない世界がある。本は自由だ。時に残酷な程に。
要するに、どちらか一方では駄目だと言いたいのだろう。しかし私は、バランスを取るつもりはない。今の所は。外出するのは、たまにでいい。それで十分、私にとっては新鮮だ。どいつもこいつも、アクが強すぎる。幻想郷の連中は。私は再び本を取った。今日は殆ど進んでいない。
もういっそ、最初から読み直す方が良い気すらしてきた。私は傍を通ったおたんこなすにコーヒーを要求し、椅子に背を預けた。図書館が繁盛するというのは、要するに民草に知識が行き渡るという事だ。知識を死蔵はするが、独り占めするつもりはない。実際、悪い事ばかりではない。
――だがそもそも、私は館長でもないし、小悪魔はその辺極めて適当だ。あいつがそういう業務をやってくれれば、私は本当に本だけ読んでいられるのだが。もう二、三体くらいレミィに都合してもらおうか。――駄目だな。こいつがクアッドコアになっても、仕事が改善する気はしない。
「あの」…今はいいわ。いくらでも声をかけなさい。ぷんすか。「これ、貸してください」差し出されたのは――確か、恋愛小説だったと思う。悲劇的展開から二人の愛はジェットコースターめいて走り続ける。オチは――いや、それを教えてやるのは野暮だ。貸出票をくれてやった。
足早に去ろうとするミスティアの背中を見送っていた。野良妖怪もそういうものを嗜む時代か。そうやって知的水準が上がれば、世の中ずっと過ごしやすくなるだろうに。私は世を憂いながら、三度本を手に取った。扉はきちんと閉っていた。意外だった。珍しくもあった。
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「おおい、やってるかい?」よく聞く声。――いや、聞いたり聞かなかったりする声だ。「珍しいわね、レミィ」私は顔を上げた。「たまには顔を見たくなったのさ」確かに、ここしばらくは茶の誘いもなかった。「ここんところは蒐集が捗ってね」あなたは無為なものが大好きだものね。
「何処に行ってきたの」大体想像はつくが。「香霖堂」…やはり、あのゴミ収集業者か。「それで、ただ成果を見せに来た、って訳でもないんでしょう。どうかしたの?」「よくぞ聞いてくれた」嬉しそうに翼を鳴らした。「有り体に言って、使い方がわからない」長い爪が、頬を掻いた。
「誰に聞いてもわからないから、お前の所へ持ってきたのさ」迷惑な話だ。私はなんでも屋ではない。「――いいけど、具体的にどれなの」手提げの中に入っているのは想像に難くないが。「ほら、この向日葵」それは確かに向日葵――プラスチックの向日葵?――だ。
サングラスをかけた向日葵を向日葵と呼ぶなら、だが。「どんな命令も聞く道具らしいんだけど、使い方が分からなくてね」こういう物体には調べ方というものがある。恐らくレミィは適当に扱っているだろう。私は向日葵を手に取り、横から見た。太陽からエネルギーを取り出す機構。
これは見た事がある。つまり、何かしらの動力を必要としている。動くのだ。そのまま裏返す。制作した工房の名と謎の数字、マークが刻まれている。そのすぐ傍に突起を見つけた。これは恐らく、これを起動させる装置だ。迂闊に触るべきではないが、他に怪しい所は見つからなかった。
レミィを見た。手を振られた。…結局、私がやるしかないのか。念の為、障壁を張ったままで指を伸ばす。何が起こるかがわからないのだ。警戒しすぎる事はない。私の指が突起に掛かる。少しの躊躇と共に、それを――引いた。しかしそれは、何のアクションも起こさなかった。
「…何も起こらないな?」そう呟いたレミィが唐突に後ずさる。私の手の中でそれは動いた。動いていた。私はそっとそれを机に乗せると、レミィの方を見た。「大丈夫よ。何となく想像がついたわ」私の声に反応して、再び向日葵は動いた。その動きは踊っているように見えた。
「どんな命令でも聞く――確かにね。それを実行するとは言っていない」私の言葉に反応し、向日葵は再び踊り始めた。「何だ――大した事はないな。それじゃ」さっきから腰が引けてるわよ、レミィ。「まあいい。早速これで門番を驚かせてやる」レミィは外へ飛び出していった。
扉を閉めてほしいわ、と思った。こういう所で育ちが――いや、やめよう。誰かさんに刺さる。――意外な事に、レミィはすぐに戻ってきた。「門番も咲夜も、全然怖がらないでやんの」…妖精メイドをびっくりさせるのが関の山じゃないか?「まあいい。こいつは私のコレクションに――」
「その事だけど。思い出したわ。向日葵畑の妖怪がこれと似たようなものを持っていたと思う」私の言葉は、或いはレミィを落胆させたかもしれない。「何だ、誰も持っていないと思ったのに」レミィは口を尖らせた。「そんじゃ、はい。パチェにやろう」「いや、邪魔なんだけれど?」
傍で延々とウィンウィンされたらたまらない。「何、読書中は踊りゃしないさ。ベル代わりにもしたらいいわ」レミィが肩を叩き、それを机の端に飾った。「それじゃ。邪魔したわね」扉は閉めなかった。こういう所で云々。目の前の向日葵はレミィの声で、嬉しそうに踊っていた。