―そこには山があった―
そこには山があった。
幾多の妖怪が、そこにゴミを捨てていた。ただ最初に、いくつかのゴミがあった。いつの間にかそれは集まり、積み上がった。そこに捨てられたのは、誰かにとっての不用品だ。用途のわからないもの。外から流れてきたもの。持ち主のいなくなったもの。誰にも顧みられないもの。
そこにネズミの妖怪が現れる。彼女はダウジングロッドを携えた、一端のダウザーだった。ネズミはそのひらめきを信じてゴミをひっくり返し、紛れ込んだお宝――貴金属や装飾品、現金を手に入れ、ほくほく顔で立ち去った。掘り返された山は、ほんのわずかだけ、低くなった。
そこに半妖の男が現れる。彼は道具屋を営む、気難しい男だった。彼はその観察眼でもってゴミをひっくり返し、紛れ込んだゴミ――外の世界を伺えるような何か、用途のわからぬ何か、そして己の琴線に触れた何かを抱え、立ち去った。掘り返された山は、ほんの少しだけ、低くなった。
そこに魔法使いの少女が現れる。彼女には蒐集癖があった。彼女はむやみやたらにゴミをひっくり返し、価値のありそうなモノ、面白そうなモノをむやみやたらに集めた。やがて風呂敷一杯に詰め込まれたそれを背負い、ご機嫌に飛び去った。掘り返された山は、少しだけ低くなった。
そこに河童が現れる。彼女はメカニックだった。彼女は巨大なアームでゴミをひっくり返し、再利用できそうな機械や金属、外の世界の科学の断片をかき集めて回った。やがてキャリアー一杯に詰め込まれたそれを伴い、どっこらせ、と飛び去った。掘り返された山は、低くなった。
そこに忘れ傘が現れる。彼女はまだ生きている道具を見ると放っておけないタチだった。彼女は苦心してゴミをひっくり返し、まだ使える、生きている大小様々な道具をリヤカーに乗せ、ひいひいと息を吐きながら、それを持ち去った。掘り返された山は、とても低くなった。
そこに小鬼が現れる。彼女は建築家兼、大工であった。彼女は掲げた右手の力でゴミをひっくり返し、使えそうな木材や石材、その他の壊れた道具をかき集めた。それを玉状に固めたまま、軽々と持ち上げ、分身を引き連れてとことこと立ち去った。山はもう、山とは言えなかった。
そこに貧乏神が現れる。彼女は貧していた。彼女は細腕で必死になってゴミをひっくり返し、掘り尽くされた残りからダンボールや布きれ、焚き付け、その他もろもろのゴミグッズをかき集めると、穴開きのズタ袋に詰め込み、ふよふよと立ち去った。山はもう、僅かしか残っていない。
そこに博麗の巫女が現れる。この辺に妖怪が出没すると聞いて、見回りに来たのだ。しかし待てど暮らせど、そんなものはやってこない。いい加減に帰ろうか。そう思っていた巫女はふと、ゴミ捨て場の残滓を見た。四角い鋼板が目に留まる。それはゴミの一番下に転がっていた。
巫女はそれを拾い上げた。板には――燃えるゴミ(火・金)燃えないゴミ(水)粗大ゴミ(月)――と書かれていた。何の事やら。巫女はそれを――元には戻さず、持ち帰る事にした。雨漏りの修理くらいには使えるだろう。最後の一つが消え、山は、山ではなくなった。
そこには山があった。
◇◆◇◆◇◆
「もう!――何で皆して、ウチにゴミを持ってくるのよ!?」
「何で、つってもなぁ……?」