作者が見た強めの幻覚、あるいはウマ娘短編集   作:海月くらげ

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AC6どこ…

傭兵…応答してくれ…

2021/8/26 もし良かったらアンケートに答えていただければ助かります


シリアス:義足のウマ娘

 バカは死んでも治らないというが、本当に死んだら治るのか。

 そんなことは誰もわからない、だって人は1回しか死ねないから。何回も死ねるのは物語の登場人物やゲームの主人公くらいだ。

 

「ここをこう繋げて…はあ、疲れた」

 

「ちょいちょい、アンタがやりたいって言い出したんじゃん」

 

「うるへー」

 

 だから多分その答えを知っているのは私くらいだ。

 前世は普通の人間で、人より体もメンタルも貧弱気味だったけどそれなりに幸せに怠惰に生きていた。それなりにバカやって、働いて、病気になって若くして死んだ。親しい人たちは泣いてくれてたから、あれが演技じゃなかったらしょうもない私の人生でも捨てたもんじゃなかったのかなって思えて、最後の最後で死にたくないって思ったけど、瞼が落ちるのに逆らえなくて

 

 気づけばウマ耳生やして女体化していた。

 

 よくある赤ちゃんの頃から記憶があるとかじゃなくて、自意識が形成されてく時期に徐々に思い出していった形だ。ウマ娘という種族が人と共存する世界。前世とまるきり一緒なのに、何かが違う世界。チャンスだと思った、今度はうまくやろうと。勤勉に、真面目に生きてみようと思った。

 

 幼稚園で喘息にかかるまでは。

 

 中学校に入る頃には治ったものの、気管が弱くなり激しい運動はできなくなった。聞いたところによればウマ娘は別世界から名前と魂を引き継いでいるとかなんとか。そして思い出した、前世で私が喘息にかかったのは幼稚園で、治ったのは中学校だったことを。器官が弱くなり、激しい運動ができなくなったところまでまるきり一緒だ。

 

 なんとかしようとした。ウマ娘となった影響か走りたいという欲求が体のどこかでずっと燻っているのだ、前世でも気管が弱かったのもあって本気でなんとかしようと色々なことを調べ実践した。徒労に終わったけど。

 

 心から思ったよ、クソッタレがって。もし神様がいるならこんな前をなぞるように生きるより、もう少し前世を長く生きたかったって。もっと友達と遊びたかったし、もっと親孝行もしたかった。そもそも私の前世は馬じゃなくて人間だって慟哭した。見たいアニメだって、プレイしたいゲームだって食べたかったものだってたくさんあったのに。それはもう暗くふさぎ込んでしばらくは引きこもったね。

 

 そして諦めることにした。

 誰だっけな、「これが運命なら、あるがまま受け入れよう」ってセリフ言ってたの。とにかく諦めて、自分の興味のあることに時間を割くようにした。「『諦めたらそこで試合終了』なんて人は言うけど、『終わらなかったら次の試合に行けないんだから』」なんて自分に言い聞かせて受け入れることにした。地方でも、中央でもどちらでもいいからレースに出て、勝ちたかったけど、どうにもならないから諦めた。

 

 ここで諦めなかったらまた何か変わったのかもしれないなんてifをたまに考えるが、考えるだけ時間の無駄。結局私は前世と変わらず楽な方に流れた、人は死んだくらいじゃあ変わらない。

 

「ねえ、足のパーツはどれ選ぶの?」

 

「んーと、フラジールモデルのやつ」

 

 

 

 

 

 ところでアーマードコアって知ってる?

 

 

 

 

 

 荒廃した世界でアーマードコアという兵器に乗り込んだ傭兵たちが自らの思想、野望、未来のために戦うフロムソフトウェアから発売されている私の好きなゲームの一つだ。この世界には悲しいことに存在しなかったが私はふと思ったのだ、どうせ走れないならACよろしく強化人間のようになればいいんじゃね?と。

 

 所詮走ることを諦めて何もしていなかったウマ娘だ、正規のレースになんぞ参加できる体もしてなければそういうための勉強もしていない。それでもウマ娘となったこの体は走りたいと渇望している、だから走れるならなんでもいいと開き直って、今私と同じ部屋にいる友人の女子(人間)に体の改造を手伝ってもらっている。歳は私と同じ16歳だが何やら生物工学の天才と呼ばれるくらいにはすごいらしい。

 

 両親もなんとか説得して許可ももらった。どうやらウマ娘が走れないのは相当なストレスになると世間的に知られているらしいので「それで元気になるなら」と頷いてくれた。

 ただ、意識を丸ごと機械に移すなんて技術は無いし、体全てを機械に置き換える技術もない。だから少ないスタミナで最大効率で走れる機械の義足を友人ちゃんに作ってもらい、足をそれに置き換えた。日々のメンテナンスは欠かせないが他の奴らと同じように走れるようになった。代わりに私は性能のテストやらをしている。彼女は本当にすごい。私が前世の記憶を元に書いたあやふやなパーツの絵から、私の記憶通りのものを作り上げてしまう。

 

 作ってもらった足はもちろん好きなACのパーツの見た目にしてある。今つけているフラジールモデルはACfaに出てきたフラジールの脚部ユニットを参考にして作ってもらった。重量を極限まで削ぎ落とした細身な足は速度を出しやすいので、それ相応にかかる負担を気にしなければ最高傑作だ。

 

 なまじウマ娘という種族が美人だらけという例に漏れず(自分で言うのもなんだが)美人なので映える映える。(もちろんゴツゴツしたガチタンも好き)友人ちゃんはその負担を気にしてあまりつけてはくれないが、すらっとしているこのパーツは前世メカ好きでメカ娘等も好きだった自分からすればずっとつけていたい代物だ。

 生まれ変わってよかったと思える点の一つだ。

 

 

 

「さて、今日も元気に走って計測しますか。んで、それが終わったらご飯食べにいこうぜ」

 

「いいけどあたし金欠よ?」

 

「いいよ、奢らせて。こうして私が走れるようになったのはあなたのおかげだし、少しずつ返さなきゃ…的な?」

 

「そう、ありがと」

 

 

 

 

 中央でサイボーグのウマ娘を見たと話題になるまで一週間。

 

 

 

 




主人公ちゃん:ウマ娘の本能で走りたいのに前世をなぞるだけになる可能性に気づき、だがどうすることもできずに諦めた『前世が普通の人間の』ウマ娘。走れるかもという未来のために自分の足を簡単に捨てれるほどには狂っている。神様が普通の人間だった自分をウマ娘に転生させたと思っているので神様が大っ嫌い。

見た目は見てくれた人のご想像にお任せします。私はジト目気味の三白眼でギザ歯、そこそこある胸に機械の義足という作者の性癖詰め合わせセットで妄想しときます

友人ちゃん:生物工学の天才。主人公ちゃんはこの友人ちゃんに会ってなかったら荒んだ生活を送っていた。そうならなかったのはひとえに家族と友人ちゃんのおかげ。



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