作者が見た強めの幻覚、あるいはウマ娘短編集   作:海月くらげ

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多分続かない


シリアス:義足のウマ娘#2

 未知が嫌いだ、嫌いだねぇ。

 先が見えない、見えないから道を踏み外したとき対処が難しい、道を踏み外せば襲いかかるのは破滅。未来を予測できないから襲いかかる不安、ジワジワと身を蝕む漠然とした恐怖。それがたまらなく嫌いだ。

 

 既知が嫌いだ、嫌いだねぇ。大っ嫌いだ!

 知っていることをもう一度やらないといけないのは退屈だ、やりがいもなければ面白みもない。全くもって生産性のない。マルチエンディングも、強くてニューゲームもなく、ゆるゆると決められた運命を待つのが気に入らない。

 

 

 それが私の人生だ。因果の力(原作再現のことをわかりやすく因果とよんでいる)が強いウマ娘世界でサイレンススズカが、メジロマックイーンが、トウカイテイオーだって最悪の結果こそなかったものの選手生命の危機に晒された。感動的な復活劇もあったけれど、全員がそうなれるわけじゃない。

 

 ゲーム/アニメの世界に転生させてあげた?ウマ娘にしてあげた?ハイハイどーも、余計なお仕事ありがとう。だったらせめて力を寄越せ。

 

 怪我で引退していくウマ娘がいるように、私が彼女らのようになれる保証なんてどこにもない。前世と同じように若いまま天に昇る可能性だってある、なんならその方が高いかもしれない。前世の疾患が、体質が、だいたい同じタイミングで襲い来るのは前話した通りだ、おかげでウマ娘だってのに走りたくても走れない。

 

 あの優しげな世界を否定はしない、優しい世界だからこそ救われたこともあるだろう。元ネタがあり、その上に成り立っているということも理解している。

 

 

 なんとなく行く末を察して諦めていた折に出会った私の親友が変革をもたらしてくれた。前世の趣味だったアーマードコアの機体を元に作ってくれた義足は私に馴染んだ。私の体が機械との適合率が高いからできたらしい。それとウマ娘ゆえに美人だからメカメカしいものが映える、そこらへんだけは本当に生まれ変わって良かったと思っている。我が親友もだ、先が見えないことが嫌いな私のために1年以上もかけて準備と検査をしてくれた。

 

 違うアプローチを提示してくれた。個人でできる限界の壁を壊すきっかけをくれた。

 

 前世の時にできなかったことで、この世界(ウマ娘世界)に存在しないもので、因果をねじ伏せる。

 

「ゼー…ゼー…ハハ、ハハハハハハハ!!!いいね、いいねぇ、最高だ。50メートルも走れば胸が苦しくなり咳が止まらなかった私が、AIサポート搭載の義足のおかげで200メートルも走れた。因果も、この貧弱な体も!ねじ伏せてやる!」

 

「はいはい、今のアンタ本当に悪役みたいよ?」

 

「ゼー…だって悪役好きだもん。人に迷惑かけない範囲なら演じたくもなるじゃん?」

 

 今私は親友ちゃんと前回のフラジールモデルの義足を改良したもののテストをしに近くの商店街の空き地に来ている。私が走れる距離を十分確保できるくらいには大きい。理由は知らない。

 

 でも些細なことだ、モノローグみたいなことを心の中で語ってしまうくらいテンションが上がってるんだ。あとで思い出して恥ずかしくなりそうだけど。モノローグも、悪役みたいなセリフ言ったのも。

 

「それで、どうだった?」

 

「かかる負担は格段に落ちているはず、だけどそのぶん消耗が激しくなった、特に関節。AIから送られたデータもそう示してる」

 

「まあ元々操縦者のことを考えずに飛行適正を追求して設計されたものだったからね」

 

「すごいゲームね」

 

「うん、最高に面白いゲームだよ」

 

 そんなこんなでいい時間になったので撤収作業を始める。と言っても特に大きな荷物を持ってきたわけでも、大量に機材やらを持ってきたわけでもないので5分もかからないうちに作業は終わった。

 

 帰りに肉屋によってメンチカツでも買って一緒に食べようかなと思っていたその時、一人のウマ娘と目があった。

 

 何やら変身ベルトのようなものをつけているのを察するに特撮が大好きなのだろうか、そういえばこの商店街はトレセン学園の近くだった。前世の記憶もだいぶ朧げだし、走れないからと言う理由でレースのテレビ中継も、そういう内容の新聞も見るのが嫌だったから仮に有名人だとしても私はわからないが、あの目を私は知っている。

 

 あの目は特撮好きの目だ。

 

 私も特撮は好きだ。そして、特撮好きに悪いやつはいない。

 

 特撮からメカが好きになり、そしてアーマードコアにつながっていく。要するに私を構成する要素の一つ。

 

 きっと私も彼女と同じ目をしていたのだろう。ゆっくりとキャロットマンのベルトをつけた彼女はゆっくりとこちらに歩み寄り手を差し出す。差し出された手を私はしっかりと握り返した。

 

 

***

 

この後めっちゃヒーローごっこした

 

もちろん()()()が悪役で。

 

 

 

 

「キャロットパンチ!!」

 

「AMSから、光が逆流する…! ギャァァァァァッ!」

 

「ええ…」

 

 




主人公ちゃん:なんかベルフォメットみたいになった。神様アンチ。この後しっかり思い出してベットを転げ回る。

親友ちゃん:関係性としては親友兼被験体

ビコーペガサス:特撮友達ができた

ギャグとシリアス、どちらが多く見たい?

  • ギャグをたくさん見たい
  • シリアスをたくさん見たい

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