魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ 炎殺の邪眼師 作:コエンマ
リアルが鬼のように忙しくて、更新する暇がありませんでした。
まだ二十二日前後ぐらいまでは忙しい日々が続くので憂鬱ですが、今年も精一杯やっていこうと思います。
本日は二話連続投稿+ACEの時間差投稿ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
機動六課には優秀な戦闘技術教官がいる。
筆頭の一人は言わずと知れた高町なのは。そしてもう一人は執務官でもあるフェイト・T・ハラオウンである。他にもヴォルケンリッターの騎士ヴィータやシグナムなどによってその教導は厳しいことで有名であるが、彼女らの教導を受けた魔導師は実力も相応につけてくると評判は高い。
機動六課に所属する彼女たちは、今日もまた六課の新たな力となりし少年と少女たちを鍛えんと訓練に励んでいた。だがいつもと違うのは、
「オラオラ、スピードが落ちてんぞ! エリオ、男ならもっと根性入れて気張れィ!」
「は、はい!」
「何をやっているんだ、彼は……」
森の中に展開されたブロックツリーの周りで、回避訓練をしているエリオとキャロに怒号を飛ばしている男がいた。エリオに関してはスパルタ、そしてキャロに関しては、
「キャロちゃんはへばらない程度にしっかりな~」
「は、はい~!」
マイペースでやるように指導している。なんとも偏った指導内容であった。フェイトはオロオロしながら、シグナムは呆れたように腕を組んでその様子を見つめている。
「あ、あの和真……エリオだけに厳しくするのは……」
「何言ってんだフェイトちゃん! 男なんてのは、女を守れて何ぼなんだぜ? 好きな女ぐらい守れる力があったほうがいいからな。エリオ、お前もそう思うだろ?」
「ええっ!? す、好きな女って……キャ、キャロはそんなんじゃ……た、確かに彼女はとても大切な仲間ですけど……」
顔を赤くしてしどろもどろになるエリオに、男のなんたるかを熱く語るこの男の名は桑原和真。
かつてからの飛影や蔵馬の戦友であり、また魔界でも人間中最強という異名を持つ霊能力者である。
現在は齢二十五にしてボディガードの会社を立ち上げ、表では要人から一般人までの護衛を幅広く手がける一方、近年人間界に観光などで入り込むことが多くなった妖怪たちのトラブル対処を霊界をバックアップとして置きながらこなしている。前大会である第三回魔界統一戦にも参加し、人間とは思えない戦績を残した実力者だ。
そして新たな人物が、もう一人。
「桑原くん、君の言うことも分かるけど、彼女もいざという時に動けないと困ると思うよ。もう少しペースを落として、二人地道にやったほうが効率がいいんじゃないかな」
「う……まあ、蔵馬のいうことももっともか。よしエリオ、少しペース落としてキャロちゃんに合わせろ。二人とも、お互いのフォロー忘れんじゃねぇぞ!」
「「はいっ!」」
赤毛の青年、蔵馬の言葉に方針を変更して和真は再び指示を飛ばした。フェイトはそれに安堵の息を吐いて、訓練を続ける二人を見つめる。その様子に蔵馬は苦笑を零した。
蔵馬、またの名を南野秀一。かつて、魔界で極悪盗賊として名を馳せた伝説の妖狐その人である。
二十五年ほど前に霊界特防隊によって手ひどい怪我を負わされた際、逃げ込んだ人間界で胎児だった人間と合体し、以来南野秀一として生きてきた。だが飛影や桑原、そして幽助と出会い、数々の戦いが終わった後もこうして行動を共にしている。現在は父の会社で働く傍ら、魔界と人間界を頻繁に出入りして双方の交流に尽力している最中だ。
さてどうしてこんなことになっているかというと、それは三日前、彼らと機動六課面々との出会いまで遡る…………
-Three days ago-
「おーっす! コエンマに頼まれてきた準霊界探偵にして人間界最強の男、桑原和真とは俺様のことだ! 飛影を手伝うってことだが、おめえらもよろしくな!」
「同じく飛影の手伝いに派遣された蔵馬だ。仕事柄、いろいろ助けにはなれると思う。よろしく」
レリックの護送受け渡しを完了した機動六課は、ブリーフィングルームにて新たな協力者と相対していた。簡単な事情聴取はしていたが、飛影の知り合いだというのを皆に説明するためこうして集まってもらったのである。
部屋には六課の主要メンバーが勢ぞろいしていた。なのはとフェイトの二人に部隊長である八神はやて、ヴォルケンリッターの騎士たちと新人フォワード四人に加え、シャーリーやリィンフォースⅡ、さらにはヴァイスやグリフィスもいる。
ヴァイスが恐る恐る、といった感じで挙手した。
「んで、お二人さんが飛影の旦那の仲間なんだよな? やっぱ、その……妖怪ってやつなのか?」
ヴァイスの質問に部屋に少しの緊張感が満ちる。彼が妖怪だと知るのは二つの隊とはやて達情報員を除けば六課内でも極少だが、ヴァイスとグリフィスはその数少ないうちの二人だった。
問われた二人は妖怪という単語に少し驚いた顔をしたが、飛影の性格なら不思議じゃないなと苦笑した蔵馬がそれに答える。
「正確に言うと少し違うな。けど、オレのことは概ねそう思ってくれてかまわない。使っているのも妖気と呼ばれる力だし、人間とは少し違うから。あ、けど桑原くんの方は正真正銘の人間だよ。霊界やら魔界やら、いろいろと関わりは多いけどね」
蔵馬の説明にま、そういうこったと肯定を口にする桑原に複雑な表情をする一同。そしてそのなかの一人、ティアナが何かに気づいたように手を挙げた。
「人間……あれ? でもさっきフェイトさんみたいな光の剣を出してましたけど、アレは一体なんですか? 蔵馬さんも何か鞭みたいのを・・でもデバイスも何も使ってなかったですし……」
一緒にいたスバルも、記録を拝見した者もそれに同意するようにうんうん頷いた。「デバイス?」と首を傾げる二人になのはとフェイトが簡単に説明すると、合点がいったように笑みを浮かべ、桑原が一歩前に出る。
「そんじゃ、いっちょ見せてやりますかね。出でよ、霊剣!」
桑原が握手をするように出した右手へと力を込めると、手の中に光り輝く球形が出現する。それに一同が驚くより早く、玉は爆発するように巨大化し、剣の形を成した。部屋にいた全員が呆気に取られたように剣を見つめるなか、桑原はふふんと鼻を擦りながら笑う。
「こいつが俺の霊気で作った武器、『霊剣』だ。物質系能力ってやつでよ、オレ自慢の主武装だぜ」
桑原がバチバチと音を立てる霊剣を見せながら、得意げに胸を反らす。飛影がほう、と少し驚いたような声を発した。
「前に見たときより霊気の密度が数段アップしているな。切れ味や強度も以前より洗練されている。イメージの悪さだけは改善されていないようだが」
「褒めねーヤツだなテメーは!!」
飛影の痛烈な皮肉に桑原はさっそく食って掛かる。まあまあと二人を仲裁しながら、蔵馬が苦笑いしているフェイト達の前に出た。
「それじゃ次はオレの番か。――――
どこからか取り出したバラの花を蔵馬が無造作に振るう。と、花びらが宙を舞い、部屋全体バラの香りで覆いつくした。美しい花びらの舞に、シグナムが気障だなと呟く。中にはシャーリーのようにぽわーっとしている者もいた。その手に握られているのはあの鞭だ。
「
「ふぇ~。飛影さんもすごかったですが、こんなこともできるんですねぇ」
「これが妖気の使い方か。けど、桑原は普通の人間なんだろ? さっき言ってた『霊気』ってのは何なんだよ」
ヴィータが眉を寄せながら疑問の声を上げた。少し離れて座っていた飛影が答える。
「貴様ら魔法と同じ、オレ達の世界で裏に関わる人間のほとんどが持っている力だ。霊気は人間の肉体に宿るオーラの総称、人間であれば誰でもその可能性を持ち、それを操る人間をオレ達は霊能力者と呼ぶ。戦闘に耐えうるほどの霊気を持つ人間は少ないが、使いこなせればお前らの魔法にも負けはせん。甚だ不本意だが、コイツがいい例だ」
「おめぇはいちいちうるせェんだよ!」
懲りずに言い争う飛影と桑原に、フェイトやなのは達は苦笑しつつも少し羨ましいなと思った。飛影がこんなふうに突っ掛かっていくのは、彼や蔵馬のことをそれほどまでに信頼しているからだ。少し寂しそうな彼女らの横顔を横目で捉えつつ、蔵馬がいつものように二人の仲裁に入った。
「まあまあ、二人とも。今は俺と桑原くんがこの機動六課に何を提供出来るか考えるほうが先ですよ。基本的に俺や桑原くんは会社勤めしていますからデスクワークも大抵はなんとかできますが、どちらかといえば―――」
戦闘技術を教えるほうが得意ですね、と蔵馬は涼やかな笑みを見せて言った。桑原もそれに同調し、それをなのはやはやてが了承して――――……
――――今に至るというわけである。
「おう、お前らも結構しごかれたか」
「そちらも終わったようだな」
ヴィータが自らのデバイスを肩に掲げながら飛影とともに歩いてきた。その後ろからは、ふらふらと覚束ない足取りでスバルが歩いてきている。別訓練をしていたなのはとティアナも、森の奥のほうから出てきた。どちらも相当絞られたようだ。
「ま、こんなトコだろ。とりあえず帰って昼飯にしようぜ」
桑原の言葉で解散の雰囲気になる。だが全員が歩き出そうとしたとき、不意に声を上げた人物がいた。戦技教官、高町なのはである。
「あの……和真くんに蔵馬くん。二人は、その、どんな風に飛影くんと知り合ったの?」
「「飛影と?」」
なのはの言葉に全員が注目して立ち止まる。飛影も彼女を横目で見ていた。しかし誰も止めないところを見ると興味はあるようだ。
「どんな風に、か。俺は妖怪がらみだよ。そのあとこの場にいないもう一人の仲間とも知り合って、桑原くんはさらにそのあとだったね。改めて考えると、この中じゃ俺が一番付き合いが長いってことになるのかな」
「オレは今蔵馬が言った奴とずっと喧嘩仲間だったんだ。あいつと一緒に霊光波動拳の継承者トーナメントってのを戦ったあと、四聖獣戦のときに助っ人として来た二人に会ったんだよな。もう十年ぐれぇ前だから、懐かしいぜ・・・ん?でもなのはちゃんよ、なんでいきなりそんなこと聞いてきたんだ?」
「えっ!? な、なんでって……それは……その……」
いきなり問い返されたなのはは頬を赤く染めて黙り込んでしまった。だがその視線はチラチラと飛影の方と行き来していて、当の彼は不可解そうに眉を寄せる。それを見たフェイトやヴィータなどがむぅと不満そうに頬を膨らましていた。
蔵馬が珍しく呆気に取られた様子で固まる。だが少し考えるように顎に手を当てた後、まじまじといった視線で全員を見渡した。
「これは……正直驚いた。あの堅物さと気難しいことで有名な飛影に、こんな素敵なガールフレンドが出来てたなんて。幽助や魔界のファンクラブ会員が聞いたらなんて言うかな?」
「ふぇえっ!?」
『なっ!?』
蔵馬の爆弾発言に、なのはをジトっと睨んでいた少女たちが驚愕の声を上げた。そのなかには焦りらしきものも見受けられ、蔵馬はやはりかと内心溜息を零す。
どうやらかつての戦友は、ここでは王子様という立場らしい。本人は気づいていないようだし、詳しい経緯は聞かないが。
「蔵馬、あまりふざけたことを抜かすと貴様でもただでは……待て、ファンクラブだと? そんなものいつの間に出来ていたんだ!?」
「飛影……君は一応軀陣営でのNo.2、男ではNo.1だろう? 強い上に容姿端麗、加えてフリーとくれば、人気が出るのは当然のことじゃないか。君は、自分が思っている以上に注目されていることをもっと自覚した方がいい。ああ、潰すなんて考えないでくれよ。どうせすぐ元に戻るだろうし、いらない作業を増やされるのは御免だからね」
飛影の思考を先読みした蔵馬が釘を刺した。図星だったのか、飛影は心底苛立たしそうな表情をする。組んでいた腕をさらにきつく締めつつ舌打ちしてそっぽを向いた。
ちなみに蔵馬のもあるけどな、と零した桑原の後ろからはやてが駆けてきた。その肩にはリィンの姿もある。
「みんなお疲れさまや。午後の教練のために今はしっかり身体を休めとくんやで?」
部隊長としての心配りを忘れないように新人たちに声をかける。それに気の抜けたような返事が返ってきたことに少し苦い笑みを零し、飛影たち三人に向かい合った。心なしかその頬は赤いような・・・
「く、蔵馬さん達もおおきに。民間協力者の立場でここまでしてもらってるゆうのに、ほとんど何にも返されへんでごめんな」
蔵馬は「気にすることはないですよ」と笑顔で返した。だが、はやては何だか納得いかないようで、モジモジと手を握ったり開いたりしている。と、そこで何か思いついたのかパチンと手を合わせた。
「ほ、ほんなら……お礼とは少しちゃうねんけど、わ、私のこと名前で呼んでくれへんか? 蔵馬さんは管理局員やないし、私より年上やのに、敬語使われるんは何か恥ずかしゅうて仕方ないんや」
「はい、それはかまわないですが――「敬語!」かまわないけど、いいのかい? 君はこの課の部隊長なんだろう? 確かにそのほうがやりやすくはあるけど……」
心配する蔵馬に、はやては大丈夫だし何も心配いらんの一点張りだった。挙動不審な上にその顔はほんのりと色づいている。なのはやフェイト、そして他の少女たちもぽか~んとした表情をして、かつてない態度を振りまく親友、あるいは部隊長を見ていた。
(ねぇ、フェイトちゃん。はやてちゃんってもしかして……)
(う、うん。たぶん考えてる通りだと思う……)
フェイトとなのはは、飛影に対する自分たちと同じような反応をするはやての心情に気づいたようだ。彼女を主とするヴォルケンリッターは複雑な表情をしており、フォワード四人やらシャーリーやらは顔を突き合わせていた。
(主がそういった思いを抱く相手が出来たことは喜ばしいが、ううむ……心配だ)
(こればっかはしかたねーよ…………気持ちはわかるし……って、何考えてんだあたしは!?)
(はやてちゃん、可愛いわー。実を言えば彼に会った瞬間からあんな調子だったものねー♪)
(成る程、一目惚れというやつか。主の性格から考えれば意外だが、まぁそれを省いても蔵馬殿はなかなか出来た人物のようだからな。だがシャマル、なぜそんな実感がこもっているんだ?)
(はやてさんが蔵馬さんを……確かに超のつくほどいい人だし、かっこいいしね~)
(はぁ、いいのかしらこんなんで……)
(仲良しなのはいいことですよ!)
(キャロ、それはちょっと違うんじゃ……)
(はぁー、はやてちゃんにもようやく春が来たですね。リィンは嬉しいのです!)
(いいなぁ、はやてさん。私もいつか……!)
聞こえないとはいえ、本人を前にして言いたい放題な六課メンバーであった。一部羨望も混じっているようだが、全員が念話でひそひそと意思伝達をするなか、壁に寄りかかっていた飛影がフッと笑う。その口元はかつて無いほど、心底愉快そうに吊り上っていた。
「クッ、クク……いいからそう呼んでやれ蔵馬。その方が面白いことになりそうだからな。フ、部隊長とやらは本当に大変だ」
「ひ、飛影くん!? い、要らんこと言わんといて!」
いつもとは逆のパターンに好機ととったか、援護というか追い討ちをかける飛影。Sっ気全開で忍び笑いを零す彼だが、なのはたちは引き攣った笑顔をしていた。理由は無論、明日はわが身という言葉を彼が認識していないためである。
「なあ、どうしたんだこの空気? シグナムちゃん分かるか?」
「分からないお前もどうかと……って、く、桑原! 貴様、ちゃん付けは止めろとあれほど言っただろうが!」
恥ずかしさから顔を赤くするシグナムに、「そうか~?」と首を傾げる桑原に笑いが巻き起こる。そんな光景を遠巻きにしながら、穏やかな時間は過ぎていくのだった。
ここで第五話のオリジナル技の説明をば。
<妖剣-
すれ違いざまに十六回の連撃を叩き込む、飛影の持ちうる剣技の一つ。四聖獣戦で青龍に使用した技と同じものだが、太刀筋はより洗練されたものとなっている。妖剣には他の派生技も存在し、その効果や攻撃力は技によって様々である。
名づけ親は雪菜。飛影もこの名前は気に入っている。