魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ 炎殺の邪眼師 作:コエンマ
リアルが忙しくて、小説に手をつける気力がなかなか沸きませんでした・・・・
亀更新にもほどがありますね・・・
今回は時間がとれたので、出張編を連続投稿します。
よろしくお願いいたしますです。
光が森の一角を照らし出し、風が周囲を舞うように巻き起こった。ざわっとした空間を一瞬体験し、慣れ親しんだ引力による重みが戻ってくる。無事に足を大地に付けた六課のメンバーは、深い澄んだ空気が体で浴びせられるのを感じた。
ポートを降りた先は、大きく豊かな森が広がる湖の湖畔だった。湖面が波打つように揺れるたび、光が万華鏡のように反射する。その様子にエリオたちは言葉を忘れて見入っていた。
「綺麗……」
ティアナが視線を縫い止められたまま呟いた。誰も言葉を返さないが、それは否定ではない。言葉は必要ない、というように誰もが空の色を映し出す鏡面を見つめていた。すると、遠くから車の音が響いてきた。
近づいてきたのはリムジンだった。車としてはいささか大仰すぎるほどの立派な造り、洗練されたフォルム、そしてその車体の大きさ、どれをとっても庶民には手がでない代物だ。そして、そのシックな黒のドアがバァンと優雅さのかけらも無く開け放たれる。
「なのはーっ! フェイトーっ!」
開放と同時に何かがなのはの身体に飛びついた。反動が大きすぎたのか、彼女を軸にしてくるくる回っている。それがようやく止まると、それは金髪をショートで切りそろえた、なのはと同年代ぐらいの少女だった。
「あはは、久しぶりだねアリサちゃん」
「久しぶり、アリサ」
なのはの返答に随分とご無沙汰だったじゃんか、とアリサは愚痴を零した。飛影たちや新人四人はまるっきり蚊帳の外である。
だが、全員の表情は笑顔一色で染まっていた。手を取り合い、抱き合い、互いの背中を叩きあいながらフェイトやなのはが喜びを全身で表現していた。蔵馬たちはそれを微笑みながら見つめている。しばらくはそうやっていたが、なのはがじゃれていたアリサから身体を離す。
「紹介するね、私とフェイトちゃんが中学校まで一緒だった親友、アリサちゃんだよ。今は大学生なの」
「アリサ・バニングスよ、よろしく。すずかももうすぐ……」
「なのはちゃーん、フェイトちゃーん!」
「あ、すずかちゃん!」
遠くから紫がかった黒髪をなびかせながら、アリサと同年代の少女が息せき切って走ってくる。その足は意外と速かった。遠くに見えていた影が大きくなりなのはの隣に並ぶ。そしてアリサと同じように再会を喜び合った後で此方を向いた。
「初めまして、なのはちゃんたちの幼馴染の月村すずかです。よろしくお願いします」
おっとりした見た目を裏切ることのない、淑女然とした挨拶にフォワード四人は萎縮してしまった。スバル達は微笑むすずかに少しどもりながら、順番に自己紹介を済ませる。はやて達は別にやることがあるらしく、現在ここにはいない。
と、一通り挨拶を終えた二人が飛影たちを捉えた。
「あ、っと紹介が遅れてごめんね。この人たち三人は、私たちに協力してくれてる民間協力者の人達なんだ」
「民間協力者の蔵馬です」
「桑原和真だ、よろしくな」
なのはの説明で、アリサとすずかの目が友好的なものに変わった。それぞれ二人と握手を交わす。だが、桑原がすずかの手を握ったとき、怪訝そうに眉を顰めた。
「あれ、アンタ……」
「はい、なんですか?」
握った手とすずかの顔を見比べながら桑原は首を捻る。が、僅かに視線を逸らした後、「いや、なんでもねぇ」とだけ言って彼は手を離した。
その様子に飛影と蔵馬の視線が一瞬鋭く光る。だが、瞬きほどの間に現れたその気配は掻き消え、最後に飛影の番が回ってきた。
「……飛影だ。よろしくするつもりはない」
飾り気も何も無いどころか、初っ端から名前と共に友人的要素を切り捨てた。これ以上ない拒絶の意思である。親しみも何も置いてきたかのような感じの彼に、フェイト達は若干苦い表情をした。
だが、二人の目は今日一番の驚きに見開かれる。一瞬にして、表情がそれまでとは別の感情を秘めたものに変わっていた。
「飛影、ですって……!?」
「じゃあ、あなたが……?」
「? ……なんだ」
相手が目の前まで来たことに飛影は怪訝な表情をする。二人は一様に飛影を見据えていた。すずかは興味深そうなそして窺うような目で、アリサは強い光を放つ瞳であからさまにじろじろと。
これほどの美人の二人に見つめられれば、普通の男子ならドギマギするかもしれない。だが、飛影は「フン」と鼻を鳴らすのみだった。不機嫌そうなその様子に、アリサの眉がピクッと反応して天に近づき、視線が刺々しさを帯びる。
値踏みするような視線に、何故かなのはとフェイトが少し恥ずかしそうに俯いた。リィンとすずかはおろおろと、新人四人は黙って成り行きを見つめている。
緊張した空気の中を通すように、アリサが腰に手を当てながら「ふーん?」と鼻を鳴らした。
「この人がなのはとフェイトを怪物から救ったっていう命の恩人? 二人には悪いけど、正直信じられないわね。私でも勝てそうな気がするもの」
「錯覚だ、バカめ」
アリサの無遠慮な一言に、瞳を半眼にした飛影が即座にツッコミを入れた。飛影の性格からすれば当然帰結と言えたが、如何せん間が悪すぎる。スバル達は「うわぁ・・・」と顔を引き攣らせ、なのは達は「あちゃ~」と頭を抱えていた。
そしてそこからは周囲が心配した通りであった。ここに集まった中で最も沸点が低いであろうアリサが、飛影のあからさまな皮肉に顔を真っ赤にしながら噴火する。
「なっ、ななな、なんですってぇ!? も、もういっぺん言ってみなさいよ!」
「バカめ」
「こ、こんのぉっ……ホントに二度も言ったわねぇ!?」
飛影の冷めたような声色に、怒りゲージがニトロエンジン仕様であるアリサがさらにヒートアップした。片方が落ち着いているからといって物事は収まらないといういい例である。そしてくわっと目を見開きながら振り返った。
「なのは、フェイト! コイツはダメよ、絶対に止めときなさい!」
「「ア、アリサ(ちゃん)……」」
眉を吊り上げ、アリサは飛影を指をさしながら怒りに満ちた形相で言い放った。二人は額から汗を流しながら、荒れ狂う親友の様子をはらはらと見ている。飛影の方はそれすら一顧だにしないかの如く、あからさまに溜息を吐いていた。
「貴様らの事情なぞどうだっていい。オレはこいつ等に連れてこられただけだからな、貴様らに関わる気はこれっぽっちもない。喚きたければ一人で勝手にやっていろ」
「あっ、こら待ちなさい! まだ話は終わってないわよっ!」
付き合ってられんと背を向けてスタスタと歩き出す飛影。それにさらに怒りゲージを刺激されたのか、アリサが地ならしをするように闊歩しながら走っていった。全員がそれを呆気にとられた表情で見つめていると、遠くから駆動音が響いてきて車が止まった。
「なのはちゃん、フェイトちゃん遅れてすまんな。今から作戦を……ってどないしたん?」
ようやく到着したはやてとヴォルケンリッターの面々は、混沌と化したこの場に眉を顰めて首を傾げた。なのは達はそれに苦笑いすると、作業を始める。新人四人も慌ててそれに倣った。
「飛影さん、何気に女の子に構われることが多いですねー。将来はすごいツンデレな天然ジゴロさんになるかもです」
リィンが、飛影が聞いていたら一瞬で血祭りに上げられそうなことを言う。失礼千万にも程があったが、ちょっと見てみたい光景だと思ったのは、乙女たちの秘密であった。
-Side change-
「で、今度はどこにいくつもりだ」
歩きながら、飛影は横を歩くなのはをジト目で睨んだ。ただいま飛影とヴィータを除いたスターズ隊の三人、そしてリィンの五人はなのはの実家である喫茶店、『喫茶翠屋』に向かっている。現在は場所が場所だけに、飛影はいつもの黒コートではなく、黒いジーンズと白い無地のTシャツを着ていた。
ちなみに蔵馬ははやての、桑原はフェイトの手伝いでここにはいない。別れ際、何故かフェイトが少し不満げではやてがニヤニヤ笑っていたが、飛影には理由がわからなかった。
「そ、そんなに膨れなくても……アリサちゃんは本当はいい子なんだよ? さっきはその、ホラっ、ちょっと気が高ぶっちゃっただけで……」
「誰のことを言っているんだ。それにあんな小五月蝿い女など気にしていないと、さっきから何度も言っているだろう」
なのはが少し申し訳なさそうにしながら親友のフォローをする。だが飛影の態度は取り付く島もないがごとくで、なのはから顔を背ける。すると、その横を歩いていたリィンがニヤリと笑みを零した。
「にゅふふふふ…………そう言いながら、気にしてる感バリバリなのです。前から思ってましたが、飛影さんってば意外と根に持つタイプですね?」
「――――――人形焼にしてやろうか?」
「み、身の危険を感じるのです! なのはさん、スバル、ティアナっ、ヘルプミーですぅううう!」
「「「あははは」」」
他愛もない談笑をしながらだと十分という時間は非常に短かった。舗装され、整った街路樹が並ぶ通りを抜けると、小洒落た看板が目に留まる。
喫茶翠屋。なのはの実家で、ケーキと紅茶が自慢の地域密着型店であった。
「お母さん、ただいまー!」
「おお、なのは!帰ってきたな!」
「お帰りなのは!」
店の中に入った途端、なのはは次々に迎えられた。いるのは父の高町士郎、母の高町桃子、そしてなのはの姉である高町美由希らしかった。お母さん若い、とスバルとティアナが呆然とした様子で呟いている。ちなみに兄もいるらしいのだが、今はドイツにいるのだそうだ。
なのはがスターズ隊の二人を自分の生徒だと説明すると、スバルとティアナは前に出て少し緊張気味に自己紹介をした。それに対して士郎は喫茶店の主人らしい気のいい受け答えでサービスをしてくれた。ティアナたちはほっと安堵の息を零しその脇で桃子が笑っている。
すると、士郎と桃子がなのはの後ろでポケットを突っ込んで佇んでいる飛影に気づき、おやと首をかしげた。その視線が鋭く光る。
「なのは、彼は……?」
若干声のトーンが低いことは全力でスルーしながら、なのははえへへと笑った。その頬が少しばかり赤いことに、桃子は「まぁ」と口に手を当て、美由希はニヤニヤしている。それに慌てたのか、飛影の横に立ったなのはがわたわたとしながら視線を向けた。
「えっとっ、しょ、紹介するね? この人が飛影くんです。少し前に偶然再会して、今は私たちの活動に協力してもらってるの」
「あなたが…………そう」
近づいてきた桃子が飛影と視線を同じくしながら柔らかな微笑を浮かべる。飛影はアリサ達と同じ反応をされたことに少しむっとしたが、桃子の表情を見た瞬間それは掻き消えていた。
優しげな、しかしそれでいて今にも泣き出しそうな表情。自分にはそんな表情をさせる心当たりが無かったので、飛影は動揺してしまった。
「……何を見ている」
「ふふ……あなたのことは以前からなのはに聞いていたから、ちょっとした確認をね。私も一度お会いしたいと思っていたの、会えて嬉しいわ」
魅力的な微笑みが飛影を捉える。それが見たこともない母の幻影と重なり、飛影は掻き消すように首を振った。さらに笑みを濃くして桃子が続ける。
「ホント、言った通りそのままだったわ。無口で、無愛想で、頑固で、融通が利かなくて、鈍感で、頭ツンツンで、意地悪で、嫌味ばかり言って、容赦のない、とっても厳しい人だって♪」
「お、お母さんーっ!?」
「……ほう、それはなかなかに面白いことを聞いたな。オレの知り得ないところで、まさかそんな認識が飛び交っていたとは。感謝するぜ、後で本人に聞かせてもらうとしよう。ククク……」
飛影が目に邪悪な光を宿らせながら低く笑った。スターズ隊の二人と美由希、それにリィンがひぃいいいと悲鳴を上げる。なのははわたわたと慌てながらオロオロしていた。
他には何か言っていなかったかと飛影が聞くと、「もうやめてーっ!?」と涙目になるなのはを桃子が押しのける。そして「うーん」と唸ったあとで優しい笑みに戻って言った。
「そうねぇ、厳しいけどとっても優しくて、頼りになって、かっこよくて……ずっと憧れて、いつか追いつきたい人だと言ってたわ」
「…………っ」
今までで最高の笑顔を見せながら桃子ははっきりと告げた。なのはは青くなっていた顔を瞬時に赤に沸騰させる。飛影は少しばかり面食らったあと、驚いた顔を隠すように鼻を鳴らした。
それが単なる照れ隠しであることは一目瞭然であったが。
「……そうか、ならば精々研鑽を積むがいい。一生を賭けたところで追いつけんとは思うがな」
「ひ、ひどーい! いいもんいいもん、いつか絶対に追いついて見せるからね!」
飛影の辛口になのはが頬を膨らまして宣言をする。それを飛影は短く息を吐きながら笑みを浮かべた。
『すぐに追いついてやるぜ。ヤツにも、お前にもな』
かつて自分が放った言葉が脳裏をよぎる。人間最強の名をほしいままにした元霊界探偵に向かって、一度は死んだものの挑んでいった『アイツ』。それに追いつくと誓い、そして飛影は成し遂げた。いつの間にかヤツは魔界の王にまでなってしまっているが、サシなら五分に持ち込める自信はある。
飛影はそこでふと思った。あの時宣言を聞いたアイツも、今の自分と同じような気持ちだったのだろうか、と。
「ふふ、その意気よなのは。どうせなら一緒に歩いてくれるような仲になるとお母さん嬉しいわねー」
「お、お母さんッ!?」
「クシシシ、いい感じじゃないの」
「む。桃子さん、それはなのはにはまだ早いと……」
悪乗りする桃子に顔を真っ赤にして焦るなのは、そして忍び笑いを零す美由希と娘とはなんたるかを語りだす士郎。絵に描いたような理想の家庭がここに存在した。
飛影は呆れつつも目を離すことはなく、スターズの二人は笑って見ている。リィンはアーモンドココアを飲みながら、自分の主たちのことを重ねていた。
そこからは他愛もない談笑が続いた。六課の出来事から、飛影たちの指導まで、思いつく限りのことを話していく。最初は渋っていた飛影だったが、桃子の雰囲気につられケーキまでご馳走になっていた。彼自身、楽しいと思っていたのかもしれない。
だが楽しい時間というのは瞬く間に過ぎていくものだ。そうこうしているうちに集合の時間がくる。スバルとティアナはお礼を言って店を出、なのはも持たされたお土産を持ちながら扉を潜った。それに飛影も続く。
「飛影くん、ちょっといいかい?」
扉に手をかけようとした際、飛影は士郎に呼び止められた。この男からは強い闘気を感じる。飛影が少し警戒を施して振り向くと、その両隣には桃子と美由希の姿もあった。
「オレに何の用だ?」
「そんなに身構えなくてもいい。ただ、僕らは君に言いたいことがあるんだ」
士郎の言葉に桃子と美由希が頷いた。警戒から一転、飛影は疑問に満ちた表情になる。何がなんだか分からないという状況に士郎たちは息を深く吸い込み、
「ありがとう。かつてなのはを救いだしてくれたこと、本当に感謝している。あの子が今も元気でいるのは君のおかげだよ、飛影くん」
全員一斉に頭を深く下げた。士郎など机に届かんばかりに掘り下げている。予想外のことに飛影は目を見開いたが、彼の言いたいことは理解できた。
おそらく自分が過去に遡った時、彼女を土蜘蛛から救ったことだろう。そのときもう一度夢を目指すための希望を与えられたとなのは自身も語っている。だが、あれは事故によって起こった偶然だ。そして助けたのも自分の気まぐれにすぎない。
「礼を言われる理由がわからんな。あの時あそこで会ったのも、オレがあいつを助けたのも、今こうしているのも全てが偶然にすぎん。最後のはヤツ自身の努力だったろうし、生きているのも単なる気紛れによる結果だ。感謝される謂れはない」
「けど、その偶然と結果が重なって今があるわ。あの子が笑っていられる、あの子が生きていられる、あの子達が夢を掴むチャンスを持つことができる現在がある。それは本当に尊いことだと私は思うの。だから、あなたがなんと言おうと私たちは感謝してる。飛影さん、本当にありがとう」
今にも涙を滲ませそうなほど輝いた桃子の瞳に自分が映る。その目に宿った母としての慈愛に、飛影は懐かしさと共に強烈な寂寥感を覚えた。
『お前が抱いているのは、氷河の国に対する激しい憧れだ』
一昔前に軀に言われた言葉がよぎる。かつては憎み、皆殺しにしようと思っていた氷女たち。自分を捨て、自ら死を選んだ母親の意志。母の愛情に触れることはできなかったが、自分の中に答えを見つけることが出来た。
自分が預けた形見の氷泪石を持つうちの一人、高町なのは。彼女もまた飛影に憧れているのだという。飛影からすればその心は全く読めないのだが、その対象が力であれなんであれ、求め続ける意志を持つ限り、道を違えない限りは見ておくのもいいかもしれない。
高町なのはが、その答えを見つけるときまでは。
「フン、ヤツが今後どのように生きるのかは知らんし憧れなんぞ関係ない。だが、本気でオレに追い付くつもりなら、それこそ死ぬ瀬戸際までやらねばならんだろうからな、ヤツが潰れそうになったときは引き上げてやるとしよう。が、そのときは一切の容赦もせん。それだけは覚えておけ」
「ええ。なのはが道を間違えた時は、張り倒してでも分からせてあげて。あの子思った以上に頑固だし、思い込みも激しいから。手を焼くこともあるだろうけど、これからもなのはをお願いします」
桃子の言葉に飛影はふっと笑う。そして、それに答えることなく扉を潜って出て行った。名残惜しげにドアベルが鳴り響くなか、士郎たちは去っていった飛影の背中を思い出しながら笑みを零す。
「―――――――――強いな、彼は」
士郎が視線をそのままにぽつりと呟く。美由希がそれに同調するように頷いた。
「あ、お父さんもそう思う?やっぱり只者じゃないよねぇ、彼。ずっと見てても隙の「す」の字も見当たらないんだから。ありゃ恭ちゃんでも瞬殺かな~」
「いや……彼は確かにとてつもなく強いだろうが、それだけじゃない。ただ強いだけ、ただ力を持つだけじゃなく、その力を根底で支える『強さ』がある。やれやれ、まさか生きているうちにあんな青年に会うことになるとはなぁ……」
士郎の言葉に美由希が首を傾げる。桃子は娘の考えぶり見て、心から穏やかな表情で笑った。
「ふふ、美由希もそのうちわかるわ。でも飛影くんがとっても頑固なのは思ってた通りだったけど、鋭いように見えて、意外と人の感情には鈍感そうだったから、アレは一筋縄じゃ無理よ。周りの女の子の様子もちょっと怪しかったし、なのはも大変な人を相手にしたものね。どうやったら貰ってくれるかしら?」
「も、貰うっ!? ちょ、桃子さんっ!?」
「あちゃ~、お母さんにロックオンされちゃったみたい……ご愁傷様です、飛影さん……」
美由希は去っていった扉に向かって十字を切る。同時刻、歩いていた飛影が珍しくくしゃみをしたことと、何か言いようのない感覚が背中に走ったと後に語っている。
連続投稿まだまだ続くよ!