魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ 炎殺の邪眼師   作:コエンマ

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第四話です。

今回は顔見せになります。しかし、飛影のツンドラな性格では、まともな自己紹介になるはずもなく……

それではどうぞ、お楽しみ下さい。


第四話  機動六課 ~ 初見と疑念

 

 

 

「―――で、連れてきてしもうたと。そう言うわけかいな」

 

「「……はい…………」」

 

 機動六課本局。執務机が二つ並び、見晴らしの良さでは屋上を除けば一番であろう高さにある課長室で、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの二人は視線を落としたまま短く答えた。

 

 二人に正面から相対しているのは、茶色がかった髪をショートにまとめ、二人に匹敵するほど端正な顔立ちをした同年代の少女だった。名を八神はやてという。普段は人懐っこい笑みで飾られている彼女なのだが、今この場においては違っていた。

 

 眉尻は吊り上がり、両手もその胸の前で組まれていて、目に至ってはじとーっという擬音がいまにもテロップをつけて背後に表示されそうなほどに細められている。まあ要するにだ、どこからどうみても、私今最高に不機嫌なんやわ、という感じをひしひしと感じさせる表情であった。

 

「一等空尉に執務官ともあろう人間が立場を忘れて軽率やな。新設してそんなにたっとらんのに、機動六課の切り札が、任務そっちのけで、二人して、部隊長の私に、連絡すら、せずに」

 

「「…………はい」」

 

 二人は節を区切るたび、息をつくたびに徐々にトーンが下がっていくはやての声にさらに身を縮込ませていく。その後姿はスバル達が見たらぶったまげるほど小さくなっていた。

 

 まずい。あれはかなり怒っている。八年という長きに渡り、二人が密かに捜し続けていた飛影に、それも不意打ち気味に出会えたことによる喜びですっかり吹き飛んでいたが、自分達は今このはやてが設立した機動六課において重要かつ責任ある立場にいるのである。

 

 彼女の言うとおり、先に自分たちが取ったものはかなりの無茶を通した行動であることは確かであった。もともと作戦になかった行動を独断で取ったのだから、状況が良かろうがちゃんと安全確保をしていこうが、違反は違反だ。確実に始末書ものである。

 

「軽率でした。以後、気をつけます」

 

「申し訳ありませんでした。八神部隊長」

 

 畏まった言葉遣いでなのはとフェイトはもう一度深く頭を下げた。彼女とは親友であるが、組織の一員として非を詫びるということでは違う話だ。筋を通すのは当然だし、親しき仲にも礼儀ありというヤツである。

 

「……わかったんならもうええ。だからこれからは―――」

 

 深く息を吸い込むと、はやては今までで一番真剣な声色で二人に告げた。罰として与えられるものを感じ取り、二人に緊張が走る。

 

「これからは、ちゃんと飛影くんと二人の進展具合、報告してな♪」

 

「「はい、わかりま――――……え?」」

 

 素直に受諾しようとしたなのは達が、聞き捨てならない文章を耳に通して頭を上げる。そこにはいたのは、上司としての八神はやてではなく、いつもの彼女……でもなかった。

 

「で、彼と二人の関係は一体どないなん?もしかして、将来に結婚を約束し合った幼馴染とかそういうパターンなんか?」

 

 にやーり、と心底楽しそうな笑顔を向けたはやてがいた。

 

 二人には分かる。口は三日月のようになり、好奇心を抑えきれない彼女の性質の一端が顔を出していた。

 

 それも近年稀に見る興奮具合だ。タヌキタヌキとナカジマ三佐は言っているが、この表情を見れば、六課のほぼ全員が納得できよう。

 

 だが、なのはとフェイトはいきなりの展開についていけず、固まったまま後方に取り残されていた。そしてしばらくの後はやての言葉をゆっくりと咀嚼し、そして普段の倍以上の遅さでもって意図を整理し、その意味を理解する。

 

 コンマ数秒、二人は前もって示し合わせていたかのように、ほぼ同時にボンッと音が鳴りそうな勢いで顔を沸騰させた。

 

「けっ、けけけ、結婚っ!? ち、違うよ、はやてちゃん! ひ、飛影くんとは昔ちょっと縁があっただけで! ま、まだそんな特別な関係じゃ……」

 

「そ、そうだよ、はやて! い、いきなり、け、結婚だなんて……こ、心の準備が……あうぅ……」

 

「ん~? なのはちゃんは『まだ』、フェイトちゃんも『心の準備』かいな。なるほろなるほろ・・・それで二人とも、あないな告白の嵐をばっさばっさ切捨てとったんやな。まあ、二人で腕組んで(っていうか、連行されてきたっぽかったけど)飛影くんと歩いて来たから予想通りではあるんやけど、とりあえず納得や。せやけど……こないなビッグな話題に、私はなんでもっと早くに気づかへんかったんや! くうぅ、今までの自分が憎い!」

 

 バシバシと机を叩きながら本気で悔し涙を流すはやて。そこに部隊長としての威厳などなく、ただ自分だけ知らなかったという疎外感に駄々をこねる子供のようである。

 

 さっきの不機嫌もこれが原因のほとんどを占めていたのではなかろーか、と親友を邪推してしまう二人であった。だが、それが強ち間違っていなかったことは、後にはやての右腕であるリィンフォースⅡが証言することとなる。

 

「と、とりあえず、このままじゃダメだよね! ちゃんと皆を交えて説明しないと!」

 

「そ、そうだねなのは! 話し合いは大事だもんね!?」

 

 何となくマズイ展開が待っているように見えたので、二人は必要以上の声量を張った。ある種の必死さすら伝わってくる勢いだ。そして、それでいながら着実に後ずさっていた。

 

 ここ数年で身につけた危機回避スキルが、二人の中でぎゅんぎゅん唸りを上げている。悪い予感は得てして当たるもの。それは共に駆け上がってきた二人の共通認識だった。

 

「じゃ、じゃあ……」

 

「そういうことで……」

 

 安全圏に退避すべく、二人がそろーりと部屋の扉へと足を伸ばす。撤退完了まで後二歩足らずだ。逃げに関しては最善の一手と言えよう。

 

 だが、そうは問屋が卸さないところが世の常である。瞬間、ブツブツと机に向かって会話をしていたはやての目が理解したくない何かを宿し、ギュピィイイインッとあやしいひかりを放った。

 

 混乱はしないが、いやな予感が背中を撫でつけ、鼓動が跳ねて加速した。

 

 

「―――――まさか二人とも、このままランナウェーできるなんて、思っとるんやあらへんやろな……?」

 

 

 ゆらーり、とはやてが立ち上がった。そして素早い手捌きでリモコンを操作し、二人が向かっていたドアをロックしてしまう。訓練用のAMFを展開し、魔法すら封じる念の入れようであった。しまったと思った時にはもう遅く、なのは達のこめかみからつうっと冷や汗が流れていく。

 

「ぬっふっふ、ぬっふっふっふっふ……」

 

 振り向いた先にいたはやては無感情と激情の中間という、非常に形容しがたい雰囲気を出している。だがそれでいて鼻息は荒く、無表情なのに視線だけはギラギラとしていた。ぶっちゃけると目がかなりのレベルで据わっている。

 

 ここに記そう。親友は今、確実にヤバイ。

 

 恐いのではなく、ヤバイ。

 

 かつてないはやての気迫に、なのはとフェイトは若干表情を引きつらせながら、風雨の中に佇む案山子のような彼女から一歩距離をとった。体が未曾有の危機を感知したためだ。俗に言う防衛反応というヤツである。

 

「は、はやてちゃん……め、目が怖いよ……?」

 

「お、落ち着いてはやて。飛影のことはまた今度にでも……」

 

 なのはとフェイトが刺激しないよう恐る恐る言うが、その対応は一般的にもNG、逆効果の常套句である。再び机がドォオンと叩かれた音に身を竦めた二人の前には・・・・修羅がいた。

 

「じゃあかしい! この期に及んで隠し事は許さへんで! 今の今まで親友に黙っとったバツや、ここで洗いざらい吐きぃッ!」

 

「ふぇえええええ―――――っ!?」

 

「あぅううううう―――――っ!?」

 

 新設された六課の部屋に二人分の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 -Side change-

 

 

 

「と、言うわけで紹介するで! なのはちゃんとフェイトちゃんの運命の人にして流離いの剣士、飛影くんや! ハイ、みんな拍手!」

 

 機動六課のブリーフィングルーム、フォワード陣と隊長陣を集めたはやてはさっそく飛影の紹介を行っていた。その顔はほくほくした笑顔で一杯、頬もエステ帰りのごとくつやつやしていらっしゃる。いまだかつてないほど、彼女は御機嫌であった。

 

 対して横にいるなのはとフェイトは、その隣でずーんと沈んでいた。なのはは「うふふふ……」と感情を感じさせない虚ろな瞳で笑みを浮かべており、フェイトに至っては俯きながらぶつぶつと言葉を連ね続けている。

 

 もはや末期症状だ。その様相は徹夜でスケジュールをこなしたあと地獄の出社を余儀なくされた中年サラリーマンのようにやつれ、二人揃ってしぼんでいた。

 

 隊長陣三人から溢れるテンションの高低差に、スバル達だけでなくシグナムやヴィータもぎょっとする。しかしそんな状況も何のその、はやては横にいる飛影に近づきながら全員を見渡した。

 

「聞くところによると彼は次元漂流者らしいんや。これから管理局の民間協力者として働くことになったさかい、みんな仲良くしたってな」

 

 次元漂流者、それが今の飛影の大まかな位置づけだった。言葉にすると簡単だが、その立場は決して軽いものではなく、本部が何かといってくる前にはやては陣営に引き込むことにしたのである。

 

 民間協力者となったのは、そっちで勝手にやるのはいいが、誰であろうとも命令に従うのは御免だという飛影からの条件があったためだった。

 

 初めはこの立場すら嫌がっていた飛影だが、驚くことになのはとフェイトの説得で降っていた。というか、彼女らの説得(『泣きそうな声+潤んだ目+上目遣い』×2×美少女補正の最強コンボ)という名の泣き落しを延々と聞かされては、流石の彼とて渋々ながらも折れるしかなかったのだ。

 

 もちろん全てにおいて飛影が納得していないのは明白であった。その証拠に、自己紹介が始まる前から子供とかお年寄りならショック死するほどの剣呑極まりない雰囲気を放出させ、初っ端から場の空気をチリチリと焦がしている。

 

「オイ貴様、何がと言うわけで、だ。一人で話を進めるな。それと、身に覚えのなさすぎる肩書きを勝手に追加するんじゃない」

 

「まあまあ、ええやないの。協力することはOKしたやないか。それになのはちゃん達にあれだけ真摯にお願いされたんやし、男としてはむしろ役得やろ?」

 

「―――――成程、今すぐ土に還りたいと見えるな。墓石には『化狸ここに死す』とでも刻んでやろうか?」

 

 飛影の視線が細まり、威圧感が一気に増す。新人FW陣並びにシャーリーはその気迫に「ひぃええ」と震え上がった。

 

 しかしそれを真っ向から受けている彼女はどこ吹く風のごとく、笑い顔を崩さない。だが、そんな彼の前にはやての守護騎士の一人、スターズ隊副隊長のヴィータが勢いよく飛び出した。

 

 そのまま真っ向から飛影を睨みつける。その表情からは猜疑心と敵意、そして今にもデバイスを起動せんばかりの威圧感が迸っていた。

 

「テメェ! もしはやてに何かしてみろ、あたしがぶっ殺してやる!」

 

「何だ貴様は。死にたいのか? 望むなら一瞬で消してやるぞ?」

 

「な、何ぃ!? じょ、上等だコラぁ!」

 

 売り言葉に買い言葉、引くことを知らない二人によって自己紹介な空気が一瞬にして殺伐としたものに変わっていく。瞬間湯沸かし器のようにヒートアップした空間に危機感を覚えたのか、いつの間にか復活していたなのはとフェイトが慌てて仲裁に入った。

 

「ちょ、ヴィータちゃん、落ち着いて! ねっ!? あれは飛影くんなりのジョークだから、あ、あは、あはははは!」

 

「もうっ、飛影もだよ! あまりヴィータを煽らないで。喧嘩はよくないんだから……」

 

「そうやでヴィータ。これから一緒にやってくんやから、そないなことでどうするんや。飛影さんもあまりヴィータをからかわんといてな」

 

 はやてが子供を叱るようにメッとする。主からの言葉にヴィータは居心地悪そうに肩を竦める。フェイトに諭された飛影も、そっぽを向きながら雰囲気を収めた。

 

「……わかったよ」

 

「チッ……」

 

 しゅんとするヴィータと面白くなさそうに舌打ちしつつも退いてくれた飛影に、一同は安堵の溜息を零す。と、そこで今まで黙っていたシグナムが声を上げた。

 

「主はやて、僭越ながら私に提案があるのですが」

 

「うん? なんやシグナム」

 

 声に反応してはやてが首を傾げる。なのはとフェイトは今までの経験から嫌な予感が過ぎったが、それに口出しをする前にシグナムがスッと居住まいを正して言った。

 

「主やテスタロッサ達を疑うわけではありませんが、ヴィーダの気持ちも最もと言えます。ですからここは彼の力と性質を計る意味合いも込めて、模擬戦をしてみてはいかがでしょうか?」

 

「あっ、あたしもそれに賛成!(キッ!)」

 

((やっぱり!))

 

 烈火の将の提案に隊長の二人は頭を抱えた。ヴィータは大賛成という感じで諸手を挙げながら飛影を睨んでいるし、シグナムもバトルマニアの血が騒ぐのか少し気が高ぶっているようだった。だが普段の彼女と違うのは、その表情がいつになく硬いことだ。

 

「そうやなあ、ガジェットを倒したゆうても私らはその場面を見ておらんかったのやし、模擬戦なら危険も低いしな……飛影くん、いいやろか?」

 

 はやてが手を顎に当てて唸ったあと、飛影へと視線を移した。彼女を一睨みし、飛影が全員に目をやった。

 

「フン。オレを計るというのは気に喰わんが、ここの戦力がどの程度のものか少し興味もある。それに、オレもあんな屑鉄相手ばかりで退屈していたところだ。

 ――――――提案には乗ってやろう。ただし、一つ条件があるが」

 

「条件だと? 一体何だ?」

 

 シグナムが怪訝そうに尋ねる。同時に条件と言われた一同に軽い緊張が走った。

 

 実はこういう例がないわけではない。以前にもフェイトやなのは、そしてはやて相手に『勝ったら付き合ってもらう』『勝ったら貰っていく』系の条件をつけて挑んでくる男は少なからずいたからだ。その数は層々たるもので、山を築けば結構な規模になるだろう。

 

 言わずもがな、そんな男たちを彼女らは残らず完全撃破してきたのだが、つまりは飛影も模擬戦に何らかの報酬を求めていることを感じて全員が身構える。無論その類の提案なら、なのはとフェイトが拒むことはない、というか諸手で万々歳だが、彼の提案は彼女達の予想の遥か斜め上を行くものだった。

 

「フッ、簡単だ。一対一ではすぐに終わってしまってつまらんからな。今の二人とそこの女、そしてその犬か、貴様らまとめてなら相手をしてやろう。何、死なない程度に加減はしてやる」

 

「「「「「「ええええっ!?」」」」」」

 

 飛影の提案にFW陣だけでなくなのはにフェイト、それにはやてまでが驚きの声を上げた。指名されたのはシグナムとヴィータの二人とシャマル、そしてザフィーラの四人という守護騎士フルメンバー、六課どころか管理局内でも指折りの実力者だったからだ。

 

 指名された四人はしばし呆気に取られていたが、数秒の後自分たちの扱いを理解したのか、空気を一気に凍りつかせた。四人がかりに加え、手加減という完全な上から目線。相手にされていないどころの話ではない。

 

「テメェ……舐めてんのか……!」

 

「流石にその言葉は聞き捨てならんな。我らも、随分と見くびられたものだ」

 

「自信があるのはいいが、仮にも六課の副隊長陣相手に少し言い過ぎだ。報いは受けてもらうぞ」

 

「…………」

 

 怒りを露にするヴィータ、体から覇気を滲ませるシグナムとザフィーラ、そして飛影をじっと見つめたまま考え込むシャマルに視線が集中した。だが彼はその表情を崩すことなく、むしろ挑発するように口の端を吊り上げた。

 

「貴様らは『同じ』ようだからな、実力も纏まっていてちょうどいい。それにこの場にいる全員と言わないだけ譲歩してやっているんだ。まさか、今更取りやめるなどとは言わんだろうな?」

 

「―――――良いだろう。だが覚えておけ。ベルカの騎士を侮ったこと、戦いのなかで後悔させてやろう。飛影、お前にこの六課はふさわしくない」

 

「シ、シグナム……そこまで言わなくても……」

 

 シグナムは感情を排した顔でそう告げると、弁護しようとしたフェイトを置いて踵を返して部屋から出て行く。一見さんには分からないが、あれは飛影の煽りで怒りを通り越してしまっている状態だ。誰が言わずとも、手加減などしないだろう。

 

 いくらリミッターをかけているとはいえ、SランクオーバーとニアSランクの本気だ。下手をすれば大怪我どころでは済まない。

 

 だが、どうにか空気をよくしようとわたわたするメンバーに対して、状況は止まらなかった。出て行こうとした四人の先頭、部屋の出口で立ち止まったシグナムが一度振り返る。そして、その目に殺意すら滾らせながら口をついた言葉は、幼い少年と少女たちにとって衝撃的なものだった。

 

「貴様は気に入らん。その尊大な態度もそうだが……貴様からは血の匂いがする……それも幾重にも渡って浴び続けられた、濃密で危険な返り血の香りがな」

 

『!?』

 

「ほう、少しは鼻が利くようだな。ただの木偶の棒じゃなかったか」

 

 シグナムの言葉に、はやて達は飛影を見つめながら言葉を失う。対する飛影は少し感心したように息を吐いた。そこには罪悪感など微塵も無い。シグナムから溢れるものが露骨な敵意に変わった。

 

「認めるのだな? やはり貴様は害悪だ」

 

「フッ……偉そうに説教した上、勝手に害虫よばわりとは随分といい身分らしい。だが、貴様らも他人(ひと)のことを言えた立場か? その『人の型をした』身体に染み付いた、人間を呪い殺せるほどの憎悪と怨嗟を含んだ血の痕は、いくら正義面しようがもはや消せまい。それとも血が染み込み過ぎて今更に嫌悪でもしたか?なら筋違いもいいところだ。オレをわざわざ引き合いに出すより、鏡を見たほうがよほど手っ取り早い」

 

「貴様ッ……くっ、時間は今から二十分後、場所は演習場の中で行う。そこで完膚なきまでに貴様を叩きのめしてくれる……!」

 

 シグナムは飛影の言葉に動揺と怒りを内包させながら、足音荒く部屋を出て行った。ヴィータ達も怒気を滾らせながら無言で退出してゆく。

 

 雰囲気の重さに誰も口を開くことが出来ない。沈黙があたりを支配するなか、はやてが飛影に向かってため息をつく。その表情には若干の怒りが浮かんでいた。

 

「勝手に決めてしもうて……どないするんや飛影くん、シグナム達たぶん本気やで?」

 

 自分の守護騎士全員相手というのには、流石の彼女も予想外だったのか、声には飛影を慮る色が混じっている。警戒も滲ませているが、その言葉は本物なのだろう。

 

 彼女の言葉の意味は理解できているであろうに、わざわざ御苦労なことだ。新人四人は青くなっており、フェイトやなのはの二人も「大丈夫?」というように見ていた。

 

 だが飛影はそれを「余計な世話だ」というように鼻で笑い、一蹴する。そして口の端を心底楽しそうに吊り上げた。

 

「フン、当然だ。それぐらいしなければオレがわざわざ戦う意味がない。そもそも死に物狂いでこなければ勝負にすらならんだろうからな。それに頭に血が上って冷静に戦えない奴らなら、端から試そうなどとは思わん。そこまでのバカなら死んだほうがいい」

 

 暴言一色の言葉にはやては唖然となる。そして硬直している全員を捨て置いて、飛影は訓練場へと向かった。

 

 

 

 

 




感想と評価、お待ちしています。

次回はヴォルケンリッターVS飛影です。

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