魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ 炎殺の邪眼師   作:コエンマ

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遅くなりました。第六話です。

ACEの方も同時更新してますので、よろしければそちらもどうぞ!


第六話  存在定義 ~ 過去の片鱗

 六課のブリーフィングルームは重い空気で満ちていた。明るく溌剌とした雰囲気が六課の美点だが、今はそれを求めることはできない。その原因は先ほどの模擬戦を勝利で飾り、今はソファに体を沈みこませている一人の男にあった。

 

「説明は……してくれるんやよね? 飛影くん」

 

「……」

 

 いつものおちゃらけた雰囲気は成りを潜め、機動六課部隊長の顔になっているはやてが飛影に詰問する。部屋にはFWの新人四人と先ほど飛影にやられたヴォルケンリッターの四人、そして分析担当のシャーリーやヘリ操縦士のヴァイスもいた。そしてなのはとフェイトは彼を庇うように両側に控えている。

 

「聞きたいことは山ほどあるんやけど、まずはいっちゃん重要なの聞くで。飛影くん、君は一体何者なんや?」

 

 その質問に飛影の横にいた二人がびくっと震えた。はやては二人の反応を横目で見ながら言葉を続ける。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんからは危ない所、具体的なことは知らんのやけど、そこを助けてもらったって聞いてる。二人が君のことを信頼に足る人物やって思ってるんもわかっとるつもりや。せやかて、私もはいそうですかって納得はできへん。私らみたいなデバイスを使わないで出したあの炎、魔力を使わないのに人間離れしとるそのスピード、それに何より……」

 

 そこで言葉を切り、はやては一同を見据えた。顔を伏せるなのはとフェイト以外、その心情は同じようだった。

 

「何より、あの『目』や。あれは流石にスルーできへん。話してくれへんか、飛影くん?」

 

 飛影に視線が集中した。そこには猜疑心、あるいは敵意に近いものまである。それを感じとってフェイトが慌てて間に入った。

 

「は、はやて、飛影にだって事情があるんだから無理やりは「事情ってなんや?それは私らには話せないことなんか?」――え、えっと……それは、その……」

 

 はやてに遮られ、フェイトは尻すぼみに言葉を小さくしていく。その横でなのはも俯いていた。はやての目が確信の光を帯びる。

 

「フェイトちゃんは知っとるみたいやな。あと、なのはちゃんもそうやろ。私かて、プライベートに踏み込んどるのはわかっとる。せやけどな、六課を執りまとめる者として私は見過ごすわけにはいかん。そんなもんを抱えたまんまじゃ、こっからの活動に支障がでてまうかもしれんしな」

 

 仕事の顔をしたはやてがばっさりと切って捨てる。取り付く島もなかった。嫌な沈黙が部屋の中に降りていく。だが、それはあっけなく破られた。

 

「フン。聞かせてやる義理はないが、いずれわかることだ。いいだろう、先ほどの条件を飲んだ礼に話してやる。話すつもりはなかったが、秘密にしておくつもりもなかったからな」

 

「っ! 飛影くん……」

 

「飛影……」

 

 心配そうにするなのはとフェイトにフッと笑い、飛影はソファに身を沈める。そしてその姿勢のまま、まるで酒の肴にするような軽い口調で語り始めた。

 

 

 

 自分は人間とは根本的に違う妖怪と呼ばれた種族で、物心ついた時にはもう親はおらず、ある時まで盗賊を生業とし、一人で生きてきたということ。

 

 

 スピードは自前だが先ほどの炎は妖気と呼ばれる力を使ったものであり、自分が特別な炎を扱う火炎術者だということ。

 

 

 この額にある瞳は邪眼と呼ばれ、かつてある目的のために手術で手に入れたものだということ。今は自力で取り戻したが、その際全ての力と人生の一部を代金として差し出したこと。

 

 

 そして、人間の仲間たちに会うために魔界から霊界を通って人間界へと行こうとしていたとき、次元の狭間に巻き込まれてこの世界に来てしまい、そこで同じように次元を通って来た妖怪に襲われていたなのは達を助けて出会ったことなどを話した。

 

 

 

 飛影の話が終わったとき、誰も言葉を発することは出来なかった。彼はなんでもないように話すが、その隔たりが事情を知るなのはたちには辛く、知らないはやて達も自分たちを寄せ付けないようにしていることがありありと分かったからだ。

 

「こんなところか。さてどうする? こんな危険なヤツを人間たちの中へ置いておいていいのか? オレを放り出すのなら今の内だ、機動六課部隊長、八神はやて」

 

 声色を変えることもなく、不敵な笑みで飛影ははやてを見据えた。はやては先ほどの話が重すぎたためなのか、居心地が悪そうに目を伏せる。だが、なのはとフェイトはそれ強く否定した。

 

「危険じゃないよ! 飛影くんは、確かに厳しいところとか口が悪いところとか意地悪なところとかあるけど、酷いことは絶対にしない! 私は飛影くんに救われたし、飛影くんがいたからここまで来れたんだよ? だから、そんなこと言わないで……」

 

「飛影はこんなだからみんな誤解しちゃうかもしれないけど、とっても優しい人だよ。私達が今生きていられるのも、こうしてみんなと会えたのも、なのはと笑ってられるのも、全部飛影がいたからできた。私はそんな飛影にずっと感謝してるし、それはこれからも変わらない。妖怪とかそんなのは関係ないんだ。私はずっと飛影の味方でいるって、あの時そう決めたから。だから……」

 

 優しく、しかし強い信念を感じさせる声と言葉で、二人は自分の思いを紡いでいく。六課のメンバーはそれを黙って聞いていた。敵意は今のでかなり薄れたが、代わりにかなりの戸惑いが部屋に満ちている。

 

 誰もがこの状況に肩身を狭くする。だが、それを破ったのは意外な人物だった。

 

 

 

「――――いいんじゃねーか? 別にここに置いても」

 

 

 

 声の主を全員が捉える。その先には、説得がもっとも難航するだろうと思っていたスターズ隊の副隊長、先ほどの模擬戦で飛影に敗れたヴィータがいた。

 

 なのはやフェイトもそこから賛同を得られるとは思っていなかったのか、きょとんとした顔でヴィータを見つめている。飛影も少し驚いているようで、その鋭い目を丸くしていた。

 

 全員から視線を向けられた当の本人は「な、なんだよ」と顔を若干赤くしながら視線を横に流す。

 

「なのは達の言ってることは嘘とか贔屓目じゃないって思う。だってそいつ、あたしを倒す時に寸止めしてたんだよ。アレだけ喧嘩売ったんだ、本気でぶっとばされてもおかしくなかった。それにあんだけの実力差だ。ホントにそいつが極悪人なら、今頃あたしら全員生きちゃいないだろうしな」

 

 歯切れが悪そうにヴィータは呟いた。寸止めで吹っ飛ばされるのもすごいが、それが意味するのは飛影にはヴィータを潰すつもりがなかったということだ。ヴィータに同意するようにシグナムも続く。

 

「確かに、な。斬り合っていた時も最後の一撃も、ヤツの剣は全て峰だった。お前達二人も撃墜されてはいるが、急所は外してあるようだからな。後に響いてはいないだろう?」

 

 シグナムの言葉に思うところがあったのか、シャマルとザフィーラも考え込むようにして視線を下げた。そして一度全員を見渡してから、飛影を見つめ「それに」とシグナムは続けた。

 

「こやつの剣には一滴の澱みもなかった。芯から精錬されたような邪気のないものだ。あれほど澄んだ太刀筋を持つ者が根っからの悪人だとは、私にはとても思えん」

 

 以上だ、と言ってシグナムは着席する。最後のはバトルマニアの勘に近いが、少なくとも飛影が排除すべき者だという認識はないらしかった。するとシグナムを皮切りに次々と声が上がった。

 

「あ、あたしは賛成ですよ。そんなに悪い人には見えないし……」

 

「このバカスバル! 根拠のないことを簡単に言わないでっ……と言いたいところだけど、私にも彼が取り締まるべき犯罪者には見えませんね」

 

「えっと、僕も賛成です。そ、それにあんなに強いんですから!」

 

「わ、私も……なのはさん達の友達が悪い人のわけがないですし、なんだか、えっとその……―――んみたいだし……」

 

 と、次々に賛同の声が上がっていた。そこに至って、決定権を持つはやてに視線が戻ってくる。はやては苦笑しながら溜息を吐いた。

 

「まったく、ここでダメなんて言うたら私だけが悪者みたいやないか……なんて冗談や。私も飛影くんが悪人だなんて思ってへんよ。ただ六課のリーダーとして、納得のいく理由が欲しかっただけやからな」

 

 はやてがそういうと、なのはとフェイトを中心として六課に笑顔が戻ってくる。二人がよかったねと口々に零すなか、飛影は呆れたように溜息を吐いた。

 

「やれやれ。こいつら二人も救えないようなお人好しだと思っていたが、オレの勘違いだったようだな。どうやらどうしようもなく突き抜けたバカ集団の一員だったらしい」

 

「なんだとぉ!? テメェもういっぺん言ってみろ! 今度こそぶちのめ「だが」あ?」

 

 ヴィータがさっそく飛影の毒に噛み付く。だが飛影はそれをスルーして遮りながら、

 

「そんなバカは手が掛かるが……退屈はせんな」

 

 力が抜けた笑みを見せた。いつもの皮肉げなものではなく、彼の本当の心を映しだしたようなその表情に全員があっけにとられる。そしてしばらくすると、我に帰った数人が顔を赤らめた。

 

(フェ、フェイトちゃん……飛影くん、い、今笑ったよね)

 

(う、うん……は、初めて見たかも……いつもの飛影もすごくカッコいいけど、今のは不意打ちだった……うぅ、顔が熱いよ……)

 

(あちゃー、あかんなあ。こりゃ、なのはちゃんとフェイトちゃんがコロッとやられてまうわけや。ま、私はもっと優しいんが好みやけどな!)

 

 

 

(ふ……いけ好かんと思っていたが、認識を改める必要がありそうだな……)

 

(あ、ぅ……い、今のドキッは気のせいだ!)

 

(な、何かしら……背中にゾクって来たのは……これが、保護欲?)

 

(貴奴にもあんな表情が出来るのか。これなら大丈夫だな)

 

 

 

(うん。やっぱり笑顔がいいよ!)

 

(はあ、こりゃ大変ね。飛影さんも……)

 

(クールでカッコいいなあ……)

 

(飛影さんかぁ……やっぱり、お―――んみたい……)

 

 

 

(みなさん大変ですね……)

 

(でも仲がいいのはいいことなのです! ユニゾンもしてみたいですねー!)

 

 飛影は自分のギャップに少女たちが当てられていることなど露ほども知らず、ぽわーっとなるメンバーを不審そうに眺めていた。蛇足ではあるが、後に飛影が笑うことはほとんどなかった。が、これは飛影を意識し始めた少女達の脳内で永久保存されている。

 

 

 

 そして数十分後。とりあえず六課への居住が許された飛影は、スバルやヴィータ、シグナムから模擬戦のことについて質問攻めに遭うこととなった。そのほとんどがヴィータやリィン、そしてスバルなどである。

 

「なあ飛影。さっきあたしらと打ち合ってた剣だけど、アレって本当にただの剣なのか?」

 

「次から次へと騒々しい奴らめ……貴様らのデバイスとやらの材質は知らんが、相当な強度と見たのでな。オレの妖気を通して構成を強化しただけだ」

 

「ああ、だから互角に打合えたんですねー、納得です! でもそんなことも出来るんですかー、妖気ってすごいです!」

 

 途絶えることのない質問の嵐に飛影は渋りながらも答えていく。当初は無視していたのだが、どれほど蚊帳の外に置こうと破って入ってくるので答えたほうが楽なのであった。だが、リィンとヴィータが納得する横でシグナムとシャーリーが唸っていた。何事かとみんなが集まってくる。

 

「どうしたんや?」

 

「あ、いえ。私がやられた時、飛影が一体何をしたのだろうかと調べていたんですが…………」

 

「ああ、最後のシーンだね」

 

 そこには画面の中で対峙するシグナムと飛影の姿があった。そこまではいいのだが、動いて交差した瞬間だけでは、とてもシグナムがやられるような一撃を受けているふうには見えなかったのである。横にいるシャーリーもいろいろな計測器やグラフを出して唸っていた。

 

「特殊な術か何かだと思ったんですけど、どうにも分からなくて……隠蔽性の高い攻撃でしょうか?」

 

「私みたいな打撃攻撃じゃないだろうし、ティアみたいな幻影系かな?」

 

「うーん、分からないけどたぶん違うんじゃない? どこかから攻撃したとか出てないから」

 

 意見を交わしながらも、シャーリーは納得はできていないようだった。分析を得意とする彼女もお手上げのようである。そんな二人の周りに集まっていたなかから顔を出し、フェイトが飛影に尋ねた。

 

「ねぇ飛影、あそこで一体どんな魔法…………じゃなかった、技を使ったの?」

 

「あ、それ私も聞きたいな。確か、いざよいって言ってたよね?」

 

 ストレートに尋ねるフェイトになのはが援護射撃をかける。皆も興味津々であるようでそこかしこで聞き耳を立てていた。

 

「別に技でもなんでもない。ただ連続で斬っただけだ。名前も、知り合いが勝手につけたにすぎん」

 

 口調はいつもどおりだが、飛影は少し優しい目をしながら特徴的な青緑の髪を思い出した。これにはもともと名前などなく、飛影の剣の凄さを知った『彼女』がつけてきたのだが、まんざらでもなさそうではある。少なくとも彼の周りはそのように感じた。

 

「ほう? ちなみに何回斬ったのだ?」

 

 シグナムが興味によるものか、語尾を強めながらずいっと飛影に顔を寄せる。バトルマニアとして、そして剣士としての血が騒ぐのだろうが、それを見たなのはとフェイト、そしてヴィータ達がむっとしているのには二人ともまったく気づかない。

 

 そして、彼は彼で大して興味もなさそうな口ぶりで、

 

 

 

「十六回だ」

 

 

 

『…………はい?』

 

 全員が思わずハモッてしまうほど見事な爆弾を落とした。新人たちやはやてはもちろん、なのはやフェイト、そして実際に戦って彼の強さを知るヴォルケンリッターの四人ですら完全に固まっていた。

 

「う、嘘やろ? 十六回って……しゃ、シャーリー!」

 

「は、はい! 映像をウルトラスーパースローにしてみます!」

 

 サーモグラフィーやら魔力視化プログラムやらを落として、シャーリーがさきほどの映像を持ってくる。そして出来うる限り最高の遅さで件のシーンを再生しなおす。するとシグナムがゆっくりと一閃するまでの間に、まるでそこだけ時間が違っているかのように太刀を振るう飛影が映った。

 

 例えるなら、乳母車を押していた横をF1カーが最高速でぶっちぎって行ったぐらいの違いだ。パネルを操作していたシャーリーやはやては、ブリキのような動きで首を動かし、飛影に向かってありえないものを見るような視線をよこした。完全に呆気にとられている。

 

「なんつー出鱈目な……あたしの鉄球を蒸発させたって聞いた時も思ったけどさ……」

 

「もう、驚く気力も湧かんな……」

 

「す、すすす、すっごーい! ねぇねぇティア、どんな訓練をすれば私もあんなふうに動けるようになるのかな!?」

 

「はぁ……いつもながら、アンタのポジティブさは時々呆れを超えていくわね……」

 

「す、すごい……(僕も、この人みたいになりたいな……)」

 

「ほわー……(←尊敬の眼差し)」

 

 ヴィータとシグナムは疲れたように肩を落とし、スバルは目を輝かせながら隣にいるティアナに呆れられていた。エリオとキャロも、飛影に向かって憧れの人を見るような視線を送っている。なのはやシャマルは皆と飛影を交互に見比べながら、顔を付き合わせて苦笑いしていた。

 

 そんな中、不意にフェイトが近寄ってきた。少し緊張した様子で飛影の隣に座る。

 

「ね、ねぇ飛影。も、もし……もしだよ?飛影がよかったらなんだけど……私もスピードタイプだし、剣を使ったりもするから……今後のために、あの、その……わ、私に稽古をつけてくれないかな?」

 

『!』

 

 両手の人差し指をつき合わせ、頬を若干赤くしながらフェイトは尋ねた。場が水を打ったように静まり返る。飛影は彼女の態度に怪訝そうに眉を寄せたが、少しの間をおいて小さな溜息を吐いた。

 

「……オレは早朝に訓練する。勘が鈍らんように剣もその時に使うからな、付いてくるなら勝手にしろ。だが試合相手としてならいいが、邪魔は許さん。それにお前から頼んできたことだ、オレに手加減など期待するなよ」

 

「あ、う、うん! ありがとう飛影!」

 

 そっけなく言う彼の言葉を聞いて、フェイトの顔に赤い笑顔が咲く。飛影がそれにやりにくそうな表情をしていると、フェイトの後ろからなのはがひょいと顔を出した。

 

「そ、それなら私も! 早朝訓練前なら時間とれるし、フェイトちゃんと飛影くんが一緒ならすごくためになるしっ!(飛影くんを独り占めするのはずるいよ、フェイトちゃん?)」

 

「な、ならあたしも、時々ならいいぞ!? ま、負けっぱなしなのは気に喰わねぇからな!(あ、あたしだって強くなりたいからな。そ、それだけだぞ!?)」

 

「ふ、騎士は引かぬ。私も参加させてもらおう(抜け駆けは卑怯ではないか、テスタロッサ? 自分だけ強くなろうなどと)」

 

「け、怪我は任せてくださいっ(ま、まあ実際必要だものね……)」

 

「私もやりますっ!(なんかざわつくのはよくわからないけど、なのはさんもやるんだし、とりあえず参加しなきゃっ!)」

 

「キ、キャロ。僕たちは基本見学にして、しっかり学ばせてもらおうよ……(み、みんなすごい気迫だ……)」

 

「うんっ(飛影さんと特訓かぁ……いいなぁ、フェイトさん……)」

 

 なのはを筆頭に、次々と飛影との教練に参加を表明する機動六課のメンバーたち。予想外だったのか、飛影は少し面喰らっている。そしてはやてとティアナ、そしてシャーリーにリィンフォースは部屋の隅で溜息を吐いた。

 

「はぁー、一気に六課が桃色になってきたなぁ。そんで、はっきり自覚しとるんはなのはちゃんとフェイトちゃんだけ、と。しかも飛影くんはわかってないみたいやし、これから面白くなりそうやなぁ。クシシシシ……」

 

「はやてさん、笑みが邪悪ですよ……」

 

「わくわくするわー。いろんなデータが取れそうね、リィン」

 

「はいです! それに私も飛影さんがいてくれて楽しいです!」

 

 離れた場所で和やかに談笑する四人を飛影は殺意を漂わせる目で睨んだが、四人が即座に目を逸らしたので舌打ちする。その間にも順番がどうたらこうたら、内容があーだこーだと、付き合わされる自分そっちのけで言い合いを続けているなのは達に、飛影は頭痛をこらえるように頭に手を置いた。

 

 結局一日目の日程は決まらず、翌日大勢で押しかけたなのは達から飛影は当然のように逃げ出した。その後に偶然出会ったエリオとキャロに稽古をつけることになり、二人が本気で羨ましがられたのは余談である。

 

 それからしばらくして、逃亡する相手を捕らえるという訓練ミッションが追加されたが、それが飛影の行動を契機としているかどうかは定かではない。

 

 

 

 

 




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