これで何作目だよ……とか、他の作品どうしたとか、スルーしていただくと幸いです(そっちも徐々に進めてはいますんで)
しばらくは「特別編 追憶の百竜夜行」シリーズにおける装備の素材集めなど、同作の前日談になりそうです
頂上付近が雪に覆われ、銀景色の広がるフラヒヤ山脈。その内部に広がる洞窟を、頂上に向けて歩みを進める人影があった。汚れたような青紫の皮と、金属でできた『ゲリョスシリーズ』と呼ばれる防具に身を包み、背中にはその長身に迫る大剣――刃のない先端は悪魔の頭骨を思わせる装飾に覆われ、一見すると紅い刀身と相まって芸工品のようだが、その両側面に並ぶ刃が、実用に値すると主張する『バルバロイブレイド』。
やがて出口を前にして1度足を止めると、腰のポーチから赤い液体で満たされた瓶を取り出し、その中身を一口飲んでしまう。寒冷地において体温低下を和らげる『ホットドリンク』のおかげで、幾分寒さが和らいだのを確認したその人物は、改めて銀世界へと歩みを進め、周囲を見渡す。
「洞窟内にはいなかった。だとすればこの山頂付近にいるはず……」
身の丈に反し、発された声はまだ年若い女性のもの。しかし豪雪の中で明らかに目立つ自身の色合いを理解し、すぐに余計な相手に見つからない様進むその動きは、周囲の環境や、そこに住む生物――とりわけ『モンスター』と呼ばれるような一際危険な存在から身を守る術を熟知したような、どこかアンバランスなものだった。
そうして今出た洞窟の右隣にある段差を、装備の重さなど感じさせない軽い動作で登った直後、重い羽搏き音を耳にし、空を見上げる。徐々に大きくなる音と共に現れ、降り立ったのは、雪原を思わせる白い体表の生物。しかし鱗や体毛のない
「フゴフゴ」と鼻を鳴らしながら歩くその
「ブガァ!」と呻きながら後方によろめくフルフル。何とか踏み止まると頭を持ち上げ、
「ヌ゛ェエアァーーーーーーー!!」
と不快感を煽るような甲高い大音量の咆哮を放つが、これも相手は大剣を盾に防ぎ、続けて騒音で動ぎを封じたと判断して放った飛び掛かりも、横転して回避する。
有効打が決まらないフルフルは、振り向きざまに体を沈め、再度頭を持ち上げる。ただし放つのは先程の咆哮ではなく、放電を口元に溜めて放つ電気ブレス。球状の電撃となって3方向に放たれるそれは、当たれば非常に強力だが、相手は分散した隙間に身を滑り込ませ、横薙ぎからの斬り上げを頭に叩き込む。
自身の攻撃が当たらないことよりも、相手の執拗な攻撃に苛立ったフルフルは、「ヴォアァ!」と一際声を荒げると、「ブガブガブガ」と鼻を荒く鳴らし、口から電気が混ざり青白く発光する吐息を放ち出す。
「怒り状態になりましたね……こうなった時は、暫く回避を重点に……」
動きにキレが増し、見るからに危険性が上がった状態においても、冷静に状況を判断して攻撃の手を休め、周囲を回りながらポーチから取り出した『ペイントボール』を投げつける。放電しながら見当違いな方向に歩みを進めるフルフルに当たったそれは、途端付近の白い体表をピンクに染め、周囲に独特の臭いを放ち、存在を周囲に知らしめる。これで万が一この場を離れられても、追跡できる。そう安堵した直後、こちらに向き直ったフルフルの巨体は、体表に電気を纏いながら宙を舞った。
「しまった!?」
すぐさま武器を抜いて防ごうとするが、その前に飛び掛かりを浴びてしまい、大きく突き飛ばされてしまう。
「ぐっ……うぅ……ゲリョスシリーズの耐電性のおかげで、放電のダメージは軽減はされたはずなのに……」
フルフルはようやっと当たったことを歓喜するかのように
「ア゛ーーーーーー!」
と咆哮を挙げ、続く攻撃に警戒しながら起き上がる彼女の前で、皺だらけの皮膚が
「ペイントボールの匂いは向こうから……そこまで遠くには行ってないようですね」
やがて飲んだ液体が発揮した効果を感じると、同じく調子を取り戻した得物を背負い、フルフルが去った先へと向かう。途中そちらから逃げてきただろう大きな角が特徴の獣――普段は温厚だが、襲われれば反撃してくるくらいには危険な『ガウシカ』とすれ違い、強くなるペイントボールの匂いと共に存在を確信したフルフルは、先程同様「ブゴブゴ」と鼻を鳴らして獲物を探していたが、すでに逃げられたところに、再度あの鬱陶しい相手の匂いがしたとあって、早々に
「ブェエウゥアァーーーーー!」
と咆哮で威嚇する。
「警戒するほどには臭いを覚えられましたか。ですがこちらこそ逃がしません!」
再度刀身を盾にガードしてやり過ごすと、放電ブレスのために頭を持ち上げた隙に懐へと潜り込み、放出してから無防備な頭に溜め斬りを叩き込む。すでにあちこち傷だらけのフルフルだが、中でも頭から首にかけては集中攻撃されたとあってか、それまで邪魔者程度だった彼女を脅威と認識したように、青白い吐息を放ちながらにじり寄る様に襲い掛かる。それを当たる前に前転ですれ違うように回避し、背後から攻撃を仕掛けようとするが、大きく体を振り回し、短い尻尾での薙ぎ払いを放ってきたためにいったん距離を置くと、続けてその場に伏せ、放電が終わったところを見計らい、改めて得物を振り下ろす。大きく仰け反って後退りしたところに、頭目がけて再度振り下ろされると、雪原に叩き付けられた頭を持ち上げ、
「ネ゛ェーーーーー!」
と吼えるフルフル。タイミングを見切って防いだ彼女は、次の行動を探るべく目を向けるが、意外にもフルフルは、それまでの攻勢が嘘のように動きを止め、その場で佇みながら鼻を鳴らす。
「動きが止まった……!ここまで行けばっ……!」
フルフルは瀕死になると、それまでどれほど激しく戦闘を行っていても、突如動きを止めて周囲の匂いを嗅ぎ、逃走先を探し出す。かつてそう教わった通りの行動に、足目がけて横薙ぎを繰り出し、横転させる。ジタバタ藻掻くところになお追い打ちの溜め斬りを叩き込むが、瀕死と言えども仕留めるにはまだほど遠いようで、起き上がると同時に青白い吐息を撒き散らすが、すぐさま一転して再度硬直し、やがて目的地を探りだしたのか、バサバサと羽搏き上昇し、移動する。
「くっ!流石に仕留めきれませんでしたか……ですが、寝込みを襲うのはトドメを刺すには絶好のチャンス。ここで焦ってはなりませんね」
羽搏きの風圧で舞い上がる粉雪に、思わず腕で顔を守ってしまったのもあって、逃したフルフルを見送る。しかし逃走先には目星を付けてあり、事前に周囲の小型モンスターは掃討を済ませて間がないので、少なくとも邪魔をされることはないだろう。むしろここで慌てて追ってしまえば、恐らく寝る前に気づかれて戦闘になる。ならば多少回復させても寝付くのを待った方が安全かつ確実だろうと、気を落ち着かせるために周囲を漁って採取に精を出す。やがて幾らか植物や鉱物を採取し時間を潰し、そろそろいいかと先程の洞窟を逆走し、大きく開けたところに着けば、白い鱗の肉食竜『ギアノス』の巣の近くで熟睡するフルフルの姿が。
付近にまだ小型モンスターがいないのを確認し忍び寄ると、彼女自身もどうやって収まってるのか不明だが、身の丈ほどある巨大な樽をポーチから取り出し、フルフルの周囲に並べ、ペイントボールを投げる。直後樽の爆発に呑まれ、
「ヴェーーア゛ァーーー!!」
と断末魔の叫びをあげて倒れ、フルフルは動かなくなった。油断せず念のため手にした武器を構えたまま数秒待ち、動く様子がないフルフルの絶命を確信すると、地面に得物を突き刺し、歓喜に体を震わせ、両手を天に掲げた。
「……やり遂げました皆様!不肖、クリスティアーネ・ゼークト……フルフル討伐成功です……!」
そのまましばしかつての思い出と感慨に浸っていたが、ハッと気づくと慌てて腰に挿したナイフを引き抜き、フルフルの遺体に突き立てて、その身から素材を剥ぎ取っていく。最後に地面から引き抜いたバルバロイブレイドを振り下ろし、討伐の証として斬り落とした首を手に、洞窟から去る。残ったフルフルの肉や内臓は、暫らくすれば匂いを嗅ぎつけたギアノス達が集まり、跡形もなく片付けるだろう。
後に28人の同期達と共に『伝説世代』と讃えられ、『剛腕巨躯の
名前:クリスティアーネ・ゼークト
年齢(現時点):13歳
性別:女性
武器(現時点):バルバロイブレイド(大剣)
防具(現時点):ゲリョスシリーズ
フラヒヤ山脈の近くに領土を持つ大貴族、ゼークト家の令嬢。幼くして既に170を超える長身に、大剣を振り回せる膂力を宿した少女。普段は防具に収めているが、腰まで伸びた艶のある黒髪は、当時からトレードマークと化している。
前当主だった祖父の語る曽祖父の武勇に憧れ、領民を守る「力」を求めてハンターになった。家族は他にインドア系で内政の手腕は優秀だが、父の話を「野蛮」と切り捨て「つまらない奴」と称された当主の父とその母、1人娘を心配しつつも夢を後押しする母とその両親、兄とは対照的に同じく憧れてハンターになり、妻子を連れて新大陸に渡った叔父一家がいる。
フルフル討伐は父に課されたハンター活動認可の条件で、当初は家を出て2年で果たすよう言われたが、訓練期間を考慮した祖父に「訓練所を出てから3年以内」に変更されるも、同期達と共に僅か1年で訓練所を卒業し、それから3ヶ月足らずで装備を揃え、間もなく達して見せたことでハンター活動と実力を認めさせた。
グラビモス、クシャルダオラ、ラオシャンロンの様なゴツく重厚な風貌のモンスターが好きだが、武器や防具の好みはデザイン重視で、そうしたモンスターの素材を使ったからと直結で気に入る訳ではない。
特にナンバリングしてませんが、登場した順に通ったエリアは5、6、7、3です
ついでに言うとやけにバリエーション豊富なフルフルの咆哮は親近感抱いて気に入ってた某絶叫まな板が元ですww
次回は更に遡って、彼女や他の投稿キャラ達の訓練生時代に場面が移ります。
何が大変だったかって、他の投稿者さんそれぞれに連絡とること自体でしたね(さすがに全員は無理だったし、一括でやろうとしたらスパム扱いされたのか自動ロックされたし・・・)