モンスターハンター~剛腕巨躯の狩人令嬢~   作:ゲオザーグ

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結局筆が進まなくなったんで、一旦投稿しときました
今度こそ試験編完結にしたい・・・


狩人としての幕開け

 同期の中では唯一帰還していないアダイト達の班は、そうとは知らず、洞窟内のエリア7にて、ランポスの巣が広がる南側で今まさにとあるモンスターと対峙していた。

 

「まさかコイツがいたとはな……」

 

「すまぬ、こやつの機動力が相手では、鈍重な某は少々足手纏いになるやもしれぬ」

 

「気にするな、その前に閃光玉で落として封じるさ」

 

「来るぞ!皆気を付けろ……!」

 

 直後散開する4人の間を風と共に通り抜けるのは、発達した前足の爪と頭上の巨大な角が目を引く、一際巨大な甲虫種のモンスター、『アルセルタス』。『徹甲虫(てっこうちゅう)』の異名を持ち、さすがにランゴスタ程ではないものの巨体ながら自在に空を舞い、角や爪で相手を仕留める。しかしある意味その機動力以上に厄介かつ危険なのは、同族のメス、『ゲネル・セルタス』の存在だろう。『重甲虫(じゅうこうちゅう)』の異名通り、アルセルタスとは対照的に羽を持たず、先に鋏を備えた尾を振りながら陸を闊歩する巨躯は、到底同族の雌雄とは思えないが、アルセルタスを特殊なフェロモンガスで呼び寄せ、自身の機動力を補助させると共に、空腹時の非常食にする恐ろしい性質を持っており、ただでさえ高い単体での戦闘力に加えて、危険度を上げる厄介な要素となっている。

 幸い先に来ていた他の班が狩り尽くして間もないためか、付近にランポスはおらず、同時にゲネル・セルタスも姿が確認されていないが、アルセルタスがいる以上いつ現れてもおかしくなく、逆にこのアルセルタスが誘引されて向かう可能性を考慮すると、早急に仕留めるに越したことはないだろう。

 

「今だ!取り囲め!」

 

 角を突き出すように構え、4人の間を通り過ぎたアルセルタスが戻り、誰を狙おうかと吟味していたところに、ディノが号令をかけると同時に閃光玉を投げる。直後発される強烈な光に目を晦ませたアルセルタスは仰向けで墜落し、身動きが取れずにいるところを事前に構えていた4人が集中攻撃を叩き込んでいく。カツユキは飛翔を封じるべく羽の付け根をアイアンランスで突き刺し、アダイトは角に跨り顔をハンターナイフで切りつけ、ディノは爪を叩き潰す様にボーンスラッシャーを振り下ろし、レノも残りの足を斬り落とさんと骨を振るうが、アルセルタスは目を覚ますと同時に飛び起き、引き下がった4人に前足と頭を振り上げで威嚇する。

 

「たかが虫けらと侮れぬとは覚悟していたが、さすがにデカいだけあって、そうやすやすとは仕留められんか……」

 

「だな、ランゴスタみたいにアッサリバラバラにできたら苦労しねぇよ」

 

 骨を構え警戒するレノに、同じくハンターナイフを手にしたままアルセルタスを睨み続けるアダイトが、軽口を叩きながらも攻撃する隙を窺っていると、足の間から腹部を突き出し、4人目掛けて先端から腐食液の球弾を連射して攻撃する。

 

「これは分が悪い!しばし失礼させてもらう!」

 

「こればっかりは仕方ないさ!ランスは格段に相性悪いからな……」

 

 どっしりと構え、仲間の盾となる普段とは打って変わって逃げに徹するカツユキだが、ランスや片手剣のような敵の攻撃を受け止め、隙を見つけて反撃する戦闘スタイルの武器を使うハンターにとって、アルセルタスに限らず装備を溶かしてくる腐食液系の攻撃は、ディノがフォローする通り受け止めてはならない厄介な物と言える。

 実際アルセルタスが振り下ろした爪を左腕の盾で受け止め、大きく後退したアダイトも、続けて先程同様腹部を突き出し、今度は腐食液を霧状にして周囲へと噴出するのを見るや、「やっべ!」と慌てて剣をしまい、走って距離を取る。その隙を突いて飛び上がったアルセルタスは、彼等が近接攻撃しかできないのをいいこととばかりに、上空から腐食液の球弾を撒き散らす。

 

「クソ!いやらしい真似してきやがる」

 

「もう1回くらい撃ち落としたいが、誰か閃光玉残ってるか!?」

 

「ならば某にお任せを!先の醜態、これで返上する!」

 

 南北に一直線で、壁がない側面には底の見えない暗闇が広がる一本橋状の地形と相まって、大きく動きを制限される4人を挑発する様に上空を飛び回るアルセルタス。その足止めにとカツユキが投げた閃光玉で再度墜落したところを攻撃していくうちに、ディノが溜め斬りで角をへし折り、続いてレノとアダイトが2人がかりで右の爪を斬り落とすことに成功した。

 

「大分ダメージを与えられたようだな。後はこのまま仕留められれば……!」

 

 地面に落ちた爪を見てレノが呟くと共に、起き上がったアルセルタスが怒りを表すかの如く残った左の爪を振り上げながら吼える。それをアダイト目掛けて振り下ろす前に、「させぬ!」とカツユキが割り込み、アイアンランスの盾で防ぐと共に、カウンターの突きを放ち、左の爪を腕の途中から砕いてみせる。

 

「助かったぜカツユキ!」

 

「礼には及ばぬ!これもまた、先の醜態を払拭する一環よ」

 

 既に相手は武器をほぼ失ったとあって余裕を見せてやり取りをする眼前の両者に対し、こうなれば当然それしか攻撃手段がないのもあってか、アルセルタスは残る武器たる腐食液を放つべく腹部を突き出すも、それも彼等が対応する前にレノが脚を1本切り捨てたことでバランスを崩し、横転して失敗する。

 

「これで、トドメだ!」

 

 そして顔面目掛けてディノが横薙ぎを叩き込むと、ボーンスラッシャーで喉まで縦に割かれ、真っ二つとなった顔が左右に分かれたアルセルタスはこと切れる。

 

「終わったか……」

 

「やっとだな。まあこれで満足してる場合でもないだろうけど」

 

「当然だ。むしろやっとスタートラインに立った証だぞ」

 

「左様。まずはその証明のために、こ奴の素材を剥ぎ取り、持ち帰らねばなるまいな」

 

 既に命尽きながらも、未だ残った脚や左右の顎がピクピクと痙攣するように動き続けるアルセルタスの骸を前にした4人は、感慨に耽り、労う様に一撫ですると、軽口を叩きつつも甲殻や羽を剥ぎ取っていく。

 

 

 

 

 

 

 一方ベースキャンプでは、既に合格判定を貰った面々が4人の帰還を待っていた。

 

「アダイト様達、ご無事でしょうか……」

 

「大丈夫ッスよ。こうして皆で待ってるってことは、ちゃんと生きてるってことッスから」

 

 心配を声に出すクリスティアーネに対するレマの返答は、一見雑に見えるが、彼女なりの信頼であり、実際お目付け役のハンター達がリタイアした訓練生や、犠牲となった訓練生の遺体や遺品を回収してきたが、そこに彼等の姿や装備はなく、回収不能の報告も入ってない以上、逆説的に彼等の生存、かつ未だ試験に挑み続けていることを証明している。

 

「にしてもイャンクックにババコンガなんて、初っ端から結構な大金星じゃないの。こっちなんてドスファンゴをヤツマ達に任せて、それでもドスランポスに大苦戦したからね~」

 

「あれはお前が無計画のまま戦闘中の両者に喜々(きき)と突っ込んでいったせいだろうが。運よく順番に来たのを相手したコイツ等と一緒にするな」

 

 そこにそれぞれ対峙したモンスターの話で盛り上がっていたところで、シンから戦果を聞いていたカグヤが絡んでくるのを、レインが止める。

 

「そ、そうですね。ただやはり惜しむべくは、相手をするには装備やアイテムが足りなかったと言え、ゲリョスを前に逃げの一手を取らざるを得なかったことでしょうか……」

 

「そこはしょうがないッスよ。解毒薬すら持ってなかったんスから、遭遇自体想定してなかったアクシデントだった以上、あの場じゃむしろ逃げの一手が正解ッス」

 

「そうだな、『帰ろう、帰ればまた来られるから』だっだか?そんな感じで、今度はしっかり準備してきゃいいんだよ」

 

 自分も戦いたかったイャンクックに加え、おまけでババコンガまで倒してみせたことを羨むカグヤに苦笑しながらも、クリスティアーネはその帰り道で最後に遭遇したゲリョスに対し、事実上姿を見ただけで撤収したことを悔やむも、レマとドラコは無理に相手しようと突っ走らず、未練を断ち切り帰還した決断を称賛する。

 

「レマ様、ドラコ様……ありがとうございます」

 

「気にするなよ。事情や種類は違えど、俺もお前も相手したいモンスターがいるんだ。声かけてくれりゃ協力するぜ」

 

「お、いいねえ!その時はアタシも混ぜてよ!」

 

「お前はまず装備を整えるところからだろうが」

 

「そ、それもそうですね。私も装備やアイテムを揃えたいですし、ついでと言うわけではありませんが、しばらく一緒に素材集めしませんか?」

 

 己が好敵手と認識したゴシャハギに挑みたいドラコと、仕留め父に実力を示すべくフルフルを、そしてそのための装備を揃えるにあたりゲリョスを狩りたいクリスティアーネ。前者の言う通り目的も標的(ターゲット)も異なるが、特定のモンスターを狙う者同士の親近感に、割り込むカグヤも込みで今後の予定を話していたところに、突如周りがざわめきだしたのに気づいたレインがディードに尋ねる。

 

「急にどうした?」

 

「ああ、ようやくアダイト達が戻ってきたんだ!どうやらアルセルタスと戦ってきたそうだ」

 

「アルセルタス!?それもそれで結構なおお手柄じゃん!」

 

「お前何が相手でも首突っ込んでくな……」

 

 他人の成果を聞いてはそれに興奮するカグヤに呆れながらも、ドラコに並んでレマとクリスティアーネも戻ってきたアダイト達の元に向かう。既にそれぞれアルセルタスから剥ぎ取った羽や甲殻をイボンコに見せた4人が無事合格判定を貰ったことで、見事同期全員が合格する形で試験も終了する。

 

「見事だお前達!今回の参加者60人中、合格したのはお前達30人だけだ。だがこれで終わりではない、むしろ始まりだということをしっかり頭に叩き込んでおけ!そしてこれからのハンターとしての活躍、期待しているぞ」

 

「っしゃあ!やったで!こりゃあめでたいわ!」

 

「俺達30人全員が無事デビューか、感慨深いもんだぜ」

 

「そうだな、早速故郷(カムラ)の皆に吉報を伝えがてら、顔を出しに行くか……」

 

 各員がハンターデビューに歓喜する中、当然クリスティアーネも静かに噛み締めていた。同時にゲリョス、更にはフルフル狩猟を目指し、改めて気を引き締める。




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