モンスターハンター~剛腕巨躯の狩人令嬢~   作:ゲオザーグ

22 / 56
()招かれざる客

 アダイト達が戦い始めて十数分。早くも特徴的な耳や翼幕をズタズタに切り裂かれたイャンクックは、既に縄張り争いで消耗していたこともあってか、必死の様相で逃走しようと、彼等に背を向け、足を引きずりながら進む。

 

「ここまで来て、逃がさない……!」

 

 そこにエルネアが放ったのは、着弾から間を置いて爆発する『徹甲榴弾』。腰付近に刺さってからの爆発は、威力こそ多少甲殻に罅を入れた程度に過ぎなかったが、直後炸裂した爆音は、逃げるイャンクックを足止めするには十分で、甲高い鳴き声を上げたイャンクックは、最早踏ん張る気力もないのか、直立できず前のめりに倒れる。

 

「ナイスタイミングだエル!このまま決めるぞ!」

 

「任せなさいな!」

 

 イャンクックが倒れ込んだ隙を逃さず、追い付いたアダイト達が次々と切りつけていくうち、遂にイャンクックは『キュ、キュオオォ……』と弱々しい声を挙げ、こと切れた。

 

「まずは1体か。援護感謝する」

 

「ハンターとして、これくらいは当然のこと。それより今は剥ぎ取りを済ませて、もう1体を相手しないと」

 

「っと、それもそうだな。すぐそこにいるかもしれないし……」

 

「よぉし、これが終わったら、早速新しい装備作ってもらおっと♪」

 

 レノの言葉にそっけなく返し、淡白な程手早く剥ぎ取りナイフをイャンクックの骸に突き刺すエルネアの姿は、一見すると不愛想極まりないが、いつもう1体のイャンクックが姿を見せるか分からない以上、まだ悠長に談話している場合ではないとの彼女なりの判断で、察した3人もそれぞれ剥ぎ取りを済ませ、エリア5へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 突入したエリア5では、気持ち今しがた仕留めた個体より大きなイャンクックが、何者かと戦闘していた。他の飛竜が食した残骸らしき骨を踏み砕きながら大立ち回りを繰り広げる相手は、薄暗い洞窟の中なのもあって視認し辛いが、時折羽搏く音や、イャンクックとは異なる鳴き声がすることから、同じ飛竜系統の別種モンスターなのは認識できた。

 

「何だ?イャンクックが、何かと戦ってる……?」

 

「もう、折角汚名払拭できるって時に……」

 

 幸い入り口付近は湾曲している部分が死角となり、戦闘中の2体は互いに相手でいっぱいなこともあって、4人の姿には気づいてないようだが、いつ何かの拍子に見つかるとも限らないため、可能な限り息を潜めて覗いていると、多くの飛竜が巣を作る高台に火球状のブレスが当たり、一瞬だがその射手の姿を照らす。

 イャンクックに比べ鋭利で黒ずんだ嘴と、喉元を覆う白色の鬣に、小ぶりな紫の耳。そして同じく紫の全身を覆う刺々しい甲殻に、一際大きな三叉槍状の棘が伸びる尾端。それを見たアダイト達は、該当するモンスターを思い出し、顔をこわばらせる。

 

「アイツは、イャンガルルガ……!」

 

「イャンガルルガって、ヤクライさんが卒業試験で倒したって話してた奴よね?」

 

「くっ、まさかこんなところで会うとは……」

 

「アイテムに余裕はあると言え、私達には荷が重過ぎる。悔しいけどここは撤収を」

 

 黒狼鳥(こくろうちょう)イャンガルルガ。風貌こそイャンクックに類似した部分もあれど、エルネアが撤収を推奨する様にその危険性は比べ物にならない程に高く、現に甲殻や嘴の各所に罅や欠落が見られるイャンクックが必死に逃げようと飛び上がったところに、ブレスを放って撃ち落とすと、その首を踏み潰して仕留め、歓喜の咆哮を挙げるや否や、早くも次の獲物を探しに行くかの如く飛び去って行く。

 

「行ったか。気付かれなくてよかった……」

 

「しかし酷い有様だな。奴が満足してくれたおかげで、俺達もこうなることは(まぬがれ)れたが」

 

 幸いにも、こちらが逃げる前に自ら移動したイャンガルルガを見送り、しばらく経って戻ってくる様子がないことを確認した4人が入って行くと、内部は両者の放った炎で所々が煤け、足元に散らばる骨も、燻ぶって煙をあげている。そして敗れ果てたイャンクックは、特徴的な耳を引き裂かれ、うつ伏せに近い体勢で地に伏せ息絶えていた。どうやら最後の踏み付けが、そのままトドメとなったようだ。

 

「とりあえず結果的に目標は達成できたし、このイャンクックも剥ぎ取って、帰ったら報告しとかないとな」

 

「同感。いつイャンガルルガが戻ってくるか分からないし、道中で遭遇する危険もあるから、手早く済ませて戻らないと」

 

 イャンガルルガの出現こそあれど、狩猟対象のイャンクック2体は討伐されたことに変わりはないため、依頼としては成功と言える。なので手早く剥ぎ取るべくイャンクックの元に向かう中、唯一カグヤのみその場に佇んで動かないことに気付いたエルネアが振り向く。

 

「カグヤ……?」

 

「……納得いかなぁ~~い!!

 

 よく見ると俯いたまま体を震わせており、英雄を目指す彼女でも、イャンガルルガを前に恐怖したのかと思いきや、ドン!と脚を鳴らすと共に上を向き、不満を爆発させた。

 

「ちょ、おいカグヤ!急にデカい声出すなよ!」

 

「愚痴は後にしろ。イャンガルルガを呼び戻す気か!」

 

「気持ちは理解できる。でも、今はまだ安全じゃない。ベースキャンプに戻るまで抑えて」

 

 イャンガルルガの脅威がまだ完全に去った訳ではないからか、普段は冷静沈着なレノも珍しく声を荒げて咎めるが、カグヤは3人の忠告を気にも留めず、地団太を踏み続けながら怒りを発散し続ける。

 

「だぁって勝手に期待しといて落胆した連中をイャンクック2体討伐で黙らせるつもりだったのに、片っぽとは言え獲物奪われたんだよ!?また碌でもないこと言ってくるに決まってるよ!もぉこうなったらこのイャンクックから得た素材で装備作って、クリスとゲリョス仕留めてやるんだからぁ!」

 

「そういやそんな話してたなお前……完全に決定事項かよ……」

 

 そのままズカズカとイャンクックの遺体に歩み寄るや、腹いせとばかりに剥ぎ取りナイフを突き立て解体していく姿に、思わず押し負けて固まったままの3人も我に返ると共に続き、無事素材を入手した後は慎重に確認しながら帰路に付いた結果、幸いにもイャンガルルガと遭遇することなくベースキャンプまでの道中をやり過ごすことができた。

 

 

 

 

 

 

 一方火山のクリスティアーネ達も、予期せぬモンスターに遭遇してしまい、ベースキャンプへの帰還を阻まれていた。

 

「まさかここでショウグンギザミに足止めされるなんて……」

 

「幸いクーラードリンクは余裕あるが、とっととどっか行ってくれねぇと通れねぇよ……」

 

 洞窟帯の中腹に広がる平地のエリア7。その北部にある、エリア8から下った崖の上に留まる4人の前で悠長に地面をつつき、食料を探すのは、青い甲殻に身を包み、背中に大きな巻貝の殻を背負ったショウグンギザミ。

 現状彼等の武器ではその甲殻を破れず、逆に『鎌蟹』の異名を冠す由来となった、普段は折り畳まれ、怒りと共に解放される鋭利な爪に防具ごと体を引き裂かれ、腹に収められるのが目に見えており、それ故下手に刺激することなくやり過ごしたいがために、段差から降りれずにいる。

 

「帰りがてらエリア3でも採掘するつもりだったが、この調子じゃ、これ以上長居するのは危険そうだな。下手すればエリア9や10の方にヴォルガノスも来てるかもしれないし、奴が立ち去ったら、一気に駆け抜けた方がよさそうだ」

 

 事前に目撃情報のあったドスイーオスならまだしも、確認されていないショウグンギザミが現れたとあっては、今までの様な素材ツアー感覚とはいかないため、警戒を高めるディノ。しかし事態はその横――エリア6と繋がる道から来た、新たな存在のせいで、更に混乱を極めることとなる。

 

「……なぁ、何か聞こえねぇか?」

 

「確かに、何かが転がる様な……しかも大きくなってる?こっちに来ます!」

 

 アカシが気付き、ナディアが驚いた音の主。それは体を丸め転がってきたモンスター――大きく発達した、特徴的な顎を鈍器の如く振るい戦う生態から、『爆鎚竜(ばくついりゅう)』の異名を持つ獣竜種(じゅうりゅうしゅ)のモンスター、『ウラガンキン』だった。

 

「ウラガンキンまで……!?さっきまでエリア6に大型モンスターはいなかったはずだが、どこから来たんだ……」

 

「このまま両者が戦わずに済むか、早めに決着がつけばいいですが、下手に長引けば、余計通れなくなりますよ」

 

 4人が見守る中、先に相手を見据えたのはウラガンキン。つながった左右の道に区切られた溶岩溜りを挟んで、対岸にいるショウグンギザミに向けて咆哮をあげながら、大きく突き出た下顎を地面に叩き付けて威嚇する。対するショウグンギザミも、最大の武器たる爪こそしまったままだが、両腕を大きく持ち上げてウラガンキンに威嚇し返す。直後ウラガンキンが溶岩溜りを飛び越え、大きく突き出したショウグンギザミの角部分に食らい付き、力任せに噛み砕いて圧し折ったばかりか、ダメージに悶えた拍子にショウグンギザミが後ろを向いたところを突いて、背負った巻貝の殻目掛けて顎を振り下ろし、先端部分を砕いて見せる。

 命の危機により苛烈な攻撃を仕掛けてくることもあると言え、ここまで畳みかけられてはたまらんと判断したのか、ショウグンギザミはすぐさま地面に潜って姿を消すが、残されたウラガンキンは勝ち誇るように吼えると、そのまま縄張りと誇示するかのように、各所を顎で押し潰していく。

 

「幸か不幸か対峙は早々に終わったが、あの野郎まだ居座るつもりかよ」

 

「そろそろいったんクーラードリンクを飲み直した方がよさそうですが、一体いつまで居座るつもりでしょうか……?」

 

 クーラードリンクの効果が切れ、焼けるような熱気もあって、なかなか立ち去らないウラガンキンへの苛立ちと緊張から、汗にまみれたアカシの顔を目にしたクリスティアーネは、クーラードリンクを口にしながら観察し続けるも、ウラガンキンは一向に立ち去る気配を見せず、引き続き顎の地均しや、身体に付着した火薬岩を振り落としてから顎の叩き付けで爆破し、アピールし続ける。そしてそこに4人の頭上を飛び越え、新たな乱入者が現れる。

 ウラガンキンを輪と表現するなら、さながら球とでも言うべき赤い甲殻の主は、半分に割れた球から手足と頭を出し直立すると、大きく口を開き、長い舌を伸ばしながら吼える。

 

「ラングロトラまで……一体何が起きてるんだ……」

 

 直後『赤甲獣(せきこうじゅう)』こと『ラングロトラ』とウラガンキンの縦横無尽な回転対決が始まると思いきや、溶岩の中から放たれた熱線が両者を分断する。振り返った先にいたのは、今まさに顔を出したとばかりに体から溶岩を滴らせながら上陸する白い甲殻の巨体。

 

「あれは、グラビモス……!こうも早く目にできるなんて……!」

 

 眼前で頭を伏せ、唸り声を上げるラングロトラもウラガンキンも気にすることなく、「我こそがこの火山の主なり」とばかりに悠長なあくびを晒す飛竜。それこそまさに、目を輝かせるクリスティアーネが、先日ドラコ達に明かした好きなモンスター。 鎧竜(よろいりゅう)ことグラビモスだった。




ギリギリぞろ目投稿に間に合ったが、他に全然着手しないまままた年取っちまったなぁ・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。