「お、あったあった。しかし水没林かぁ、結構遠いな……」
早急性の高い依頼や、真新しい依頼が張り出されていた掲示版を見ていたビオが見つけたのは、付近の村から発された『水没林』でのドスフロギィ狩猟依頼。
2つの群れが衝突し、周囲の交易や交通に支障をもたらしているため、早急に両者とその傘下を排してほしいとのこと。
「水没林って、始めていく狩場だね。確か密林に近い環境だっけ?」
「植生や地理的にはそうですが、名前の通りより水場が多く、泳いで渡らなければならない箇所も複数あるとは聞きますね。さすがにドスフロギィ相手に泳いだり潜ったりするような局面はあまりないとは思いますが」
「とりあえず素材ほしいってんなら、これでもいいか?文句ないならこのまま受注してくるぞ」
行先について話し合う女性陣を不満はないと判断したビオは、早速掲示版からはがした依頼書を受付に持参し、参加者募集用の掲示版に張り出そうとするが、その前で眺めていた馴染みの顔に気づき、声をかける。
「よぉベレッタ、久しぶりだな。そこいるってことは、同伴する依頼探してたってことか?」
「っ、お久しぶりです、ビオさん……そうですが、そちらは?」
「こっちはちょうど今探そうとしたとこでな。
気づいて振り向いたベレッタにビオが依頼書を見せながら後ろを指さすと、軽くお辞儀をするクリスティアーネと手を振るテリルに気づき、前者に合わせ頭を下げる。
「ドスフロギィとフロギィ……ですか?」
「はい。ゲリョスを狩るのに対毒装備を揃えたくて、イーオス装備を狙ってましたが、ドスイーオスの素材が足りずに、依頼も見つからなかったのでその代わりに彼らをと……」
とりあえずベレッタも連れた4人は、クリスティアーネが確保した近くの空いていた席に座り、実力的に無謀とは言わずとも、強力な部類に入るだろう対象に挑むに至った経緯をと合わせて説明する。
「この前イャンクック狩りに行ったアダイト達も、似たようなメンバーだったそうだが、やっぱガンナーいた方が安定しそうだと思ってな。それで声掛けさせてもらったんだが、もし狙ってた依頼があったわけじゃなければ、一緒行かねえか?」
「……わかりました。こちらも特に目当てはなくて、どこか空いてるパーティーはないかと探していたので、問題ありません」
「ありがとうございますベレッタ様!ご協力感謝します!」
ベレッタの参入の意を聞き、協力者の獲得に立ち上がって手を握ってしまうほど歓喜するクリスティアーネだが、ビオが注意の意を込めて咳き込むと共に、「流れでここまで手を貸したが、本来はお前の仕事だからな?」と注意の意を込めた目線を向けると、気まずさを感じ、萎む様に腰を下ろして黙る。
「と、とりあえず、まずは解毒薬用意しないとね!取ってくるからちょっと待ってて!行こ、ビオ!」
「お、おい引っ張るなよ。言われなくてもわかってるから」
「それじゃあ私も、解毒薬持ってきます」
「わかりました。私はすでに持参してますので、皆様をお待ちしてますね」
その様子を険悪とまではいかなくとも、どことなく気まずく感じたテリルがビオを引っ張って解毒薬の調達に連れて行き、合わせてベレッタも席を立ったため、唯一日頃からドスイーオス狙いでその対策に持ち歩いていたクリスティアーネは、手元に余計な素材もないため、売店で回復薬の調達程度に荷整理を済ませ、席に戻り皆を待つことにする。
ベースキャンプのすぐ近くまで流れる川を始め、各所が水脈に分断された水没林。うっそうと茂る草木や、湿気がこもった空気などは、かつて試験で訪れた密林や、それ以前の訓練で通っていた『旧密林』こと『メタペ湿密林』に類似するが、それらと比べても足元がぬかるみ、泥状になっている分、名前の通り水気はこちらの方がおおいようだ。
「あまり視界はよくなさそうですね。周囲に警戒して、堅実に行きましょう」
「そうだね。さすがに川渡って東まではいかないだろうから、まずはこのままぐるっと半周してみよ」
初めて来たとあってまだ地形を把握していないため、4人で囲うように地図を眺め、どう動くかを談義する。
クリスティアーネの警告に賛同したテリルが指摘したように、弧を描くように東西で分断された狩場は、ベースキャンプのある西側に陸地の大半が集中し、ドスフロギィ達はこちらで縄張り争いを繰り広げているため、先日のドスイーオスの様に逃亡されない限り、川を渡って東に行くことはそうそうないだろう。
「それでは行きましょう。改めて、本日はよろしくお願いしますね」
「おう、いい加減ゲリョス狩りに行ける準備整うといいな」
「こっちこそよろしく!」
「後方支援は任せてください。必ず、成功させましょう」