ベースキャンプをたち、霧に覆われた薄暗いエリア2に踏み入れたクリスティアーネ一行。危機感を刺激するような環境とは対照的に、ゆったりと下草を頬張るアプトノスやケルビ達の姿を横目に、隣接する3エリアのどこから巡るかを計画する。
「ゲリョスが寄りそうなポイントは、エリア3か4を通って1周できるが、ここは2手にわかれて分担するより、揃って回った方が安全そうだ。俺としては、視界がいいエリア3からがいいと思うが、どうかな?」
「それでいいぜ。ここじゃほぼ落とし穴は使えないから、足止めは実質不可能、ってことで持ってきてないし、別に捕獲狙いなわけでもなかったからな」
「遭遇した場合、私やカグヤ様が閃光の起点となるトサカを狙い、そちらに気を取られている隙に、アダイト様とドラコ様が尻尾を狙ってダメージを稼いでいきましょう」
「囮は任せといて!ゲリョスからすれば、でっかい武器のアタシ達の方が、おっかなく見えるだろうからね!」
地図を広げたアダイトが、北部にある草原地帯のエリア3と、高木と濃霧が広がるエリア4のうち、足元こそ草に覆われているが、日が当たり、濃霧がない分まだ視界がマシな前者に進むよう提案すると、ドラコの賛同を皮切りに、クリスティアーネとカグヤも支持する。
絶縁性の高い外皮に、『狂走エキス』と呼ばれる体液の効果で麻痺耐性も高いゲリョスは、感電や麻痺毒でかかったモンスターの動きを封じる『シビレ罠』の効果を受け付けず、足止めするには『落とし穴』にはめなければならないのだが、ぬかるんだ湿地が多いジォ・テラードの地質では穴を維持できず、数少ない設置可能なエリアは視界が悪く、誘導が難しいとあって、基本落とし穴は使われない。
そうした点を考慮した結果、あえて足止め用の罠を用意しない、いわゆるステゴロ形式で挑むことになった以上、足元はともかく、やはり視界がいい方が戦いやすいとあって、早速エリア3へと踏み込んでいくと、遠方からかすかに羽ばたく音が聞こえる。どうやら付近のエリアにゲリョスがいるようだ。
「早速お出ましか、気を引き締めてくぞ!」
「おうよ、防御は任せな!」
「待ってなゲリョス!アタシのザンシュトウで捌いてやるわ!」
「お、お待ちください!足取りが乱れます!」
激と共に駆け出すドラコに続き、アダイトとカグヤも先に続くエリア6へと突っ走ってしまい、ワンテンポ遅れたクリスティアーネも慌てて後に続く。幸いすぐ見つかったゲリョスは降りて間もない様子で、周囲を飛び交うランゴスタに毒液を浴びせ、落ちたところをバリバリと貪っている。どうやら縄張り争いの合間に、腹を満たすため訪れたらしい。
「あれがゲリョスか。実際見たのは初めてだが、イャンクックに比べて随分歪な風貌してやがる……」
「ふざけた見てくれだが、油断するなよ。俺やクリスはシンやレマと卒業試験の時目にしたが、一歩でも逃げるのが遅かったら、突き飛ばされて毒まみれになってたとこだったからな」
足音や防具の衣擦れ音に気づいたのか、食事を止めて周囲を見渡すゲリョスの姿を見て、イャンクックと比較するアダイトに、顔を見た程度と言え、実際に対峙した経験から、注意を促すドラコ。
太くがっしりした脚を始め、全体的にイャンクックよりも各所に肉が付き、顔は毒液に濡れた嘴が目に見えて小さい一方、頭頂で軽く揺れるトサカが目立つゲリョスだが、体格に反しイャンクック以上に臆病で、『狂走エキス』と呼ばれる特殊な体液の効果もあって、1度驚くと、驚異的なスタミナに任せて縦横無尽に延々走り回る点は、非常に厄介な特徴と知られている。
ドラコ達も対峙した時は、まだそこまで速度が乗ってなかった走り出しとあって、追いつかれずに逃げ切ることができたが、もし気づくのが遅れ、エリアの出入り口から離れていたり、逆にゲリョスが先に気づいて、反応する前に襲い掛かってきたりした場合、ハンター活動が大きく出遅れたどころか、最悪ババコンガに突き飛ばされた先輩の後を追う羽目になっていたかもしれない。
「とりあえず警戒はしてるけど、まだ気づいてないうちに攻め込みたいが……」
「ここで新手か!早々鉢合わせるとは、ついてないぜ」
そうして機を計っていたが、直後新たな羽音が聞こえ、そちらに気づいたゲリョスの視線が向いた先には、同様に確認した同じくらいのゲリョスが、着陸を中断して低空飛行に切り替え、そのまま突撃してきた。
已む無くアダイト達も、両者の様子を見守りながら、臨戦態勢を整える。