モンスターハンター~剛腕巨躯の狩人令嬢~   作:ゲオザーグ

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なかなかやる気湧かんわ体調優れんわで手が伸びんまま1月過ぎてもうた・・・


()霧中の毒怪鳥―2

 向き合って早々、血気盛んとばかりに正面から取っ組み合いを始めた2体のゲリョスだが、体格差のほぼない両者の対決は、決定打たりうる一撃がないこともあって、拮抗していた。

 吐き散らし、浴びせあう毒液は、同族故相手も抗体を有しているために効果を発さず、牙や爪も相手のゴム質の皮膚を突き破るに至らない。結果、無尽蔵のスタミナに任せ、毒液を撒き散らしながら延々ど突き合う2体を前に、クリスティアーネ達は割り込むことも、目印とするペイントボールを投げることもできず、身を潜めてどちらかが去ることを願うしかなかった。

 

「うぅ~、ここまで来てこんなとこでお預けなんて……」

 

「早まるなよカグヤ、ここで飛び出してどっちも相手しようなんて考えるのは、後先考えない無謀な3流ハンターだぞ」

 

「わ、わかってるわよ。さすがにそこまで功を焦るつもりはないし……」

 

 試験では対峙するドスランポスとドスファンゴを前に、割り込む様に突撃したカグヤだが、あの時とは相手の大きさも危険度も段違いとあって、同じように飛び出さないようドラコが注意する。

 尤も彼女とて、ユク()モ村()を救ったハンターという明確な目標がある以上、ただ相手を求めて適当に暴れたいだけの戦闘狂ではないのだが、、そう思われたことに対し不満げに言葉を詰まらせながらも、視線をゲリョスに戻し機を窺う様子に焦りはない。

 

「しかし複数体集まって縄張り争いで周囲に被害を出しているとは聞いたが、こうも拮抗してちゃ、手を出すのも難しそうだな。いっそほかのエリアで1体だけいるのを探しに行った方が……!」

 

 その間ゲリョス達も互いに千日手と理解してか、足を止めて頭を下げ、首を上下に振って頭頂部のトサカを揺らし、嘴と打ち付ける音で威嚇しあう様子を見ていたアダイトが移動を提案したところで、突如流れが変わる事態が生じる。

 突如エリア北西部――洞窟部分につながる方から、ババコンガが勢いよく現れた。しかし塗った植物の汁の影響か、蝋燭よろしく先端に火を灯らせた自慢のトサカを始め、ピンクの体毛は所々焼け焦げた様子で、乱入の様子も、自ら飛び込んできたのではなく、何者かに投げ込まれたような横回転で無様に泥濘(ぬかるみ)を滑り、キノコが生える辺りにぶつかって悶える姿は、別の乱入者の存在を示すようでもあったが、その相手は間もなく、ベキベキと周囲の木を巨躯で薙ぎ倒し、圧し折りながら姿を見せた。

 

「ぐ、グラビモス!?なんだってこんなところに……」

 

「いえ、グラビモスは食した鉱石の発する熱で、体内のバクテリアからエネルギーを得ているはず。つまり目的は異なれど、ゲリョス同様に鉱脈を目当てに現れたのかもしれません……」

 

「うそでしょ……ゲリョスだけならまだしも、グラビモスなんてアタシ達の手に余るようなのまで来るなんて……」

 

 4人にとっては、装備も経験も相手取るには不足すぎるグラビモスの出現に絶句している間に、それを少し前まで身をもって体験していたであろうババコンガは、これ以上相手しては身が持たないとばかりに、折れた爪を必死に突き刺し、這う這うの体で外壁を乗り越えて逃亡し、残る2体のゲリョスも、思わぬ相手の出現にしばし呆然としていたものの、どちらがと言わず我に返ったところで揃ってグラビモスに威嚇し、先程とは一転して持ち上げた頭を前後させてトサカと嘴を数度打ち付け、咆哮と共に翼を大きく広げると共に、閃光を放つ。

 

「ぐっ!ここで閃光か……皆無事か?」

 

「大丈夫、アタシとクリスは得物の陰で何とか防いだ……ドラコは?」

 

「俺も無事だ。装備のおかげで救われたな」

 

「ですが、()()を食らったグラビモスが混乱して何をしてくるか分かりません!今のうちに引き返して――」

 

 幸い予備動作の大きさもあって、対象外だった4人のうち、防御ができないために『気絶無効』スキルのついたランポスシリーズを装備していたドラコ以外は、それぞれ大剣の刃や片手剣の盾で顔を隠し防ぐことには成功するも、当然そうした防衛手段のないままもろに浴びたグラビモスは、クリスティアーネが危惧した様に、『ゴハアァーーー!』と咆哮を挙げて、狙いを定めぬまま熱線を放つ。

 

「こっちに撃たれちゃたまんねぇ!いったん引き返すぞ!」

 

 当たりはしなかったものの、うまいこと間を通った熱線の熱量に驚いたゲリョス達が逃げ去るのを見て、いつ流れ弾がこちらに向くかわからない危険から、アダイトが撤収を宣言すると、その恐ろしさを理解し、黙っていた3人も足並みを崩さず続き、エリア3の草原を勢いのまま突き抜けてエリア2まで戻ると、ようやく足を止めて一息つく。

 

「もー!グラビモスまで来るなんて聞いてなーい!」

 

「うるせぇな、叫ばなくたって皆同じだよ。まぁクリスは好きだから、依頼に支障がなければ、姿を見れたのは(ぎょう)(こう)かもしれんが……」

 

 予期せぬモンスターの出現――それも、現状どう転ぼうが敵う訳などなく、「生きて帰れれば御の字」としか言えないグラビモスとあって、あまりの理不尽振りに思わず叫ぶカグヤに対し、つい最近――まさに今自身の防具と、彼女の装備一式の元となったイャンクックを相手にするためレノやエルネアと共に行った森丘で、――片方とは言え自分達が追っていたイャンクックを仕留めたイャンガルルガを思い出したアダイトは、思わずその屈辱に黙るが、ドラコは彼女の喧騒にストレートな苦情をぶつけると、かつてイスミやディードと共にした祝勝の席で、クリスティアーネから聞きだしたことを思い出しながら続け、彼女の様子を伺う。

 

「確かに、ネルスキュラ辺りが同様に集結したゲリョスを狙って来る可能性は考慮してましたが、カグヤ様の様に叫ぶほどでないと言え、まさかここでグラビモスも現れるとは、予想してませんでした……」

 

 クリスティアーネが挙げた、『影蜘蛛(かげぐも)』の異名を持つ『ネルスキュラ』は、ゲリョスを主な獲物としているが、食すだけでなく、ゴム質の体皮を剥いで纏うことで、自身の苦手な電撃への対策をする特異な生態で知られている。幸いこのメンバーなら、万が一遭遇しても抵抗して追い払うくらいはできそうだが、グラビモスはゲリョスどころかネルスキュラ以上に桁違いな存在で、このまま居座られては依頼の続行すら危うくなる。

 しかし間もなく衝突や崩落するような音が聞こえたことから、グラビモスは鉱石を求め、強引に北西の洞窟区に潜り込んでいったらしい。

 

「……とりあえず、今度はエリア5と10の方を見てみよう。それでダメだったら、悪いがリタイアしてグラビモスのことを報告しに戻ろう」

 

「わかりました。ゲリョスどころでない事態に、せっかくのチャンスをふいにされかねない件は悔やむばかりですが、運も実力のうちとも言いますし、私のわがままで、皆様を危険に晒すわけにもいきません」

 

 依頼達成のため残るにしろ、グラビモス出現を報告に戻るにしろ、どの道このままエリア2にいても進まない。とりあえずはグラビモスが洞窟から出てこないことを祈りつつ、まだまわっていない部分の確認を提案したアダイトに、無条件で即刻撤退を進言してもおかしくない状況でも、まだ付き合ってくれることを感謝するクリスティアーネは、改まった気持ちを込める様にバルバロイブレイドの柄を握った。

 

 

 

 

 

 

 エリア5に入ってすぐ、幸いにもゲリョスが見つかった。臆病なゲリョスらしからず、周囲に同族含めて敵はいないと油断しているのか、クリスティアーネ達に背を向ける形で、あくびをしながらキノコを貪っている。

 

「運よくあっさり見つかったな。まずはペイントボールでマーキングだ……」

 

 まずは万が一後程乱戦になり、いったん撤退しても、時間をおいて追跡できるようにと、アダイトがペイントボールを投げる。高く弧を描いたペイントボールは、うまいこと背中の出っ張った部分にヒットし、何かが体に当たったと気づいたゲリョスは、頭を持ち上げきょろきょろと周囲を見渡すが、その間に死角へと潜り込んだカグヤとクリスティアーネは、互いに得物のザンシュトウ【雛】とバルバロイブレイドを抜刀、振り下ろす。

 

「でぇりゃあぁ!」

 

「たあぁ!」

 

 ただでさえ刃物系の武器に弱いゴム質の体皮の中でも、肉がない分一際ダメージが通りやすい尻尾を大剣で叩かれたとあって、突然の痛みに走って逃げることも毒を吐いて反撃することもできないほど混乱したゲリョスは、『ギョワアァァ!』と叫んで大きく体を仰け反らせ、飛び上がる。

 

「よっし!先手必勝!」

 

「振れば遠心力に乗って伸び、鞭の様にしなる優秀な武器ですが、その分柔らかく、攻撃されればダメージが大きい!習った通りです!」

 

「念のためペイントは当てたが、ここから逃がさんくらいのつもりで行くぞ!」

 

「任せな!ズタズタに刻んだらぁ!」

 

 そのまま立て直す前にアダイトとドラコも合流し、4人は怒りに目の周りを光らせたゲリョスと対峙する。

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