「討伐叶って舞い喜ぶ気持ちは分からなくもありませんが、だからって際限なく剥ぎ過ぎです……」
「はい、申し訳ございません……」
念願のフルフル討伐を達成し、意気揚々と帰還したクリスティアーネは、戻って早々自分よりずっと小柄な受付嬢を前に、正座で床に座らされ、巨躯を縮めてその説教を一身に受け続けていた。確認のため、入れ替わりで現地を訪れたギルドの職員たちが目にしたのは、表皮をほぼ剥ぎ取られ、肉や内臓が露わになった、頭部のないフルフルの死体。
「はぁ……とりあえず、処分としては大型モンスター関係の依頼受注を1週間禁止と共に、解禁後最初の依頼の報酬減額で決定しましたから、一応は謹慎処分みたいなものとして、その間しっかり反省してくださいね?」
「それに関しては重重承知しております。私としたことが、ようやっとハンター活動を認められたと浮かれるあまり、その矢先ハンターにあるまじき振舞いをしてしまうなんて……」
幸か不幸か、クリスティアーネが過剰に入手したフルフルの体皮、『ブヨブヨした皮』は、希少性も市場価値もそこまで高くない――むしろフルフルの素材としては、広く流通しているとあって、多少多く剥ぎ取ったところで大した問題でもない。とはいえハンターとして有するべき自制を忘れさせないためにも、何かしら表立った処分を下さねばならないとあって、内容自体は――期待の新人かつ貴族令嬢相手なのを抜きにしても――ごく軽度な行動制限と罰金で済ませ、その分今後のためにも反省を促し、心機を一転させる方針で片付けることになった点から見れば、彼女は既に十分準じたと言える様子でもある。かといって「反省したならヨシ」と撤回する訳にも行かないので、指定期間中はそのまま処分を執行することになる。
「まぁ、今回の件は元々それを当初の目標としていたとのことでしたから、処分が明けたら、お祝いがてら手に入った素材で、何か武器でも作ってもらってきたらどうです?」
「そ、そうですね。幸いというべきか、素材類は没収されませんでしたから、後日加工屋を訪れてみます」
彼女の手元には、『ブヨブヨした皮』以外にも、発電器官の『電気袋』などフルフルの素材が充実しており、量は絞られたと言え、追加でもらった依頼達成の報酬分も合わせれば、十分装備を用意できるだろう。
実質的な謹慎に当たる大型モンスター関係の依頼受注禁止が明けたクリスティアーネは、早速フルフルの素材を持ってドンドルマに戻り、古巣たる第88訓練所にほど近い、顔馴染みの加工屋を訪れた。
「
持ち込まれた
「大剣使いのあなたですと、この『フルミナントソード』はいかがでしょうか?強力な雷属性と、重量を活かした攻撃力は、多くのモンスターに効果を発しますよ」
フルフルの横顔を伸ばした様なデザインの
「では、その通りにお願いします」
「承知しました。それでは明日の昼頃には完成いたしますので、そのころにまたお越しくださいませ」
クリスティアーネの了承を得た職人は、丁寧に種類ごとまとめた素材を下働きのアイルー達に渡し、完成の目処を伝えると、自身も続いて奥の工房へと姿を消す。
「明日の昼……ですか。となると今晩は、手近なところの素材ツアーで時間を潰しましょうか」
その姿を見送ったクリスティアーネは、完成まで手持無沙汰となった間をどう過ごすか悩むが、まだ日は高いと言え、今から宿をとるより、回復薬の材料となる薬草やアオキノコの収集がてら、日銭程度でも稼いでおこうと考え、集会所に向かうことにした。