「ほっ!上手に焼けました~っと!しかし元気ドリンコや強走薬が悪いとは言わんけど、やっぱり腹にたまる肉の方が、その分効果があるように感じるんだよなぁ……」
焼きあがると同時に勢いよく掲げたこんがり肉を、「ほれ」とクリスティアーネに手渡し、「ありがとうございます」と礼を述べる彼女を横目に手早く次の肉を焼いては、続けてナディアとエルネアにも差し出し、最後に焼いた肉に齧り付くアダイト。
今回は事情が事情とあって、急かされるように食事の間もなく連れてこられたために、こうして現地でアダイトが肉を焼くこととなったが、昨今は制限時間を気にして「悠長に肉なんて焼いてられるか」と、お抱えや集会所のキッチンアイルー達が作る料理や、彼らに代理で焼いてもらう『よろず焼き』で手早く済ませるハンターも多い反面、古参のハンターには「狩場でこんがり焼いた肉を頬張る瞬間こそ至宝」と声高く唱え、日々肉焼きの布教や肉焼きセットの改良に励む一派も存在するなんて噂もある。
そんなことなど露知らずの4人は、崖沿いの細道を降りた先に広がるエリア2を北上し、岩場のエリア3に向かって行くが、直後ドスドスと重い足音が響き、とっさに武器を構える。直後岩場地帯と砂漠地帯を区切るように吹き荒ぶ砂嵐を破って現れたのは、翼のない、体躯がゴツゴツした、焦げ茶のモンスター。
「ボルボロス!?ディアブロスに追い払われたのか!?」
普段は水辺の泥中に潜み、体に泥を纏う姿から『土砂竜』と呼ばれる獣竜種、『ボルボロス』。おそらくエリア3の先にある湖畔地帯のエリア7を縄張りにしていたのだろうが、ディアブロス亜種の争いに巻き込まれ、追い出されて已む無く逃げ出してきたところのようで、クリスティアーネ達には見向きもせず、大砂原へと走り去っていく。
「余計な消耗を避けれたのはよかったですが、おそらく相手したディアブロスは、相当気が立ってそうですね。落ち着くのを待つまで、クーラードリンクを飲んで、南下しませんか?」
「その方がよさそうですね。そちらにもう1体がいれば、そのまま相手しましょう」
「だな。相手中にキレ出したならまだ仕方ないが、さすがに初っ端ブチギレ状態はキツそうだ……」
ボルボロスを見送ったクリスティアーネは、興奮状態のディアブロス亜種を相手取るには危険と判断し、捜索ルートを南半分の方に変更するよう提言すると、ナディアの同意を皮切りに、アダイトも賛同し、エルネアも無言で頷く。揃ってクーラードリンクを飲み干すと、真反対の方へと歩いていき、そのまま小さなオアシスがあるエリア1を通り抜け――その際オアシスに残った足跡と、周囲でアイルー達が警戒するように眺めていた様子から、どうやら先程のボルボロスは、ここで落ち着いたらしい――、もう1つの大砂原地帯、エリア5へと向かう。
入った途端、今度は背びれだけ痴情に出したガレオス達が入れ替わりで泳ぎ去って行くが、その理由はすぐにわかる。先程向かおうとしたエリア7とつながる洞窟――エリア6への入り口付近で、星空の光を吸い込むような黒い巨体のモンスターが、『ゲアアアァァァッ!!』と天高く響かせるように咆哮をあげた。
「あれこそが、ディアブロス亜種……!」
「遠目に眺めてるだけでも、とんでもねぇプレッシャーを感じさせやがる……!」
「ですが、ここにきて今更尻尾を撒いてリタイアなんてする訳にもいきません。気合いを入れねば!」
「どんなに強力なモンスターが相手でも、ハンターとして退けない!」
「その通りです。さぁ、行きましょう!」
一瞬その声量に体を強張らせたものの、ディアブロス亜種を目にした4人の闘志は衰えない。そして各々得物を構え、先の咆哮に対抗し、己を激する様に声を挙げながら駆け寄る新たな敵を前に、ディアブロス亜種は漆黒の翼を広げ、自慢の角を