色竜と少女   作:ルーラララ

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都市襲撃②

それは空に浮きながら呑気に声をあげて男へと声をかけた。深い紫のローブと片眼鏡は、理知的な印象を強く周りに与えている。

 

「――なんだ『アレ』は。仮にも弟子であろう、アレン。答えよ」

 

「んなこと知らねーよ!なんだよアレ!化け物見たいな魔力プンプン放ちやがって!まあ……師匠には、かなわなかった……のか?」

 

ふん、とアレンに似た動作で鼻を鳴らすとローブを纏った老人は空中からふわふわと地面へと降り立った。

 

「なんだ、アレはそれほどまでの魔力を持っていたのか?」

 

「……あんたなら分かるだろ、七つだか八つだかの滅茶苦茶な内包された魔力に、あの量……」

 

「……だが、儂はそれに気付かなかった。そのような事があるとでも?」

 

「いやいやいやいやー!師匠に感知出来なかったのならそんな訳ありませんね!俺の気のせい――……は?」

 

「……ほう」

 

感心したかのように老人は声を漏らすが、それには確かな警戒が見てとれる。

なにせ、自身の魔術を真っ正面から受けて無事だった者など一度も見たことがなかったからだ。

興味深げに魔術の衝突地点から立ち上がる少女に目を向ける。

 

「……誰が、死んだかのように、楽しくお喋りしているんですか……?」

 

パラパラと残骸を纏いながら『ソレ』は再び現れた。瞳に確かな怒りを灯して、少女は解れた軍服を気にしながらもゆっくりと立ち上がる。

 

 

「……今のはとても危なかったです。――覚悟、してますよね?」

 

そして、青筋をたてた少女がブレた(・・・)

 

 

「――いや、真面目に苛ついてるんです。久しぶりですよ」

 

 

「なっ!」

 

「……これは」

 

後ろから(・・・・)声が聞こえた。老人とアレンはあわてて振り向くが、すでにその姿はそこにはない。

当初は確かに見えた溢れ出る程の魔力は後片もなく、その痕跡すら消えていた。

 

「――こんなに魔力を使わされたのは」

 

「ッ――!」

 

駆け出そうと前へと視線を戻そうとしたアレンの目の前に少女は突然現れる。あまりのことに恐怖を微塵も隠そうとせずアレンは全力で後ろへと飛び上がり――後ろから友達に語りかけるかのように優しくかけられた声に目を見開いた。

 

「知ってます?『死んだ』時戻すのに、どれだけ魔力を使うか?」

 

「――アレン、これは不味い」

 

「だからいったんだよ師匠ッ……クソッ!」

 

アレンは咄嗟に握った短剣を振り下ろすが――それはすり抜けた(・・・・・)

 

「は?」

 

あり得ない光景に、本日何度目かも分からない驚きの声をあげる。

少女はそれになんの痛痒も感じていない様子で、淡々と手を振りあげた。

 

そして――強く、手を広げた。

 

「そうです、貴方方にも同じ苦痛を味あわせてあげますよ。ええ、ええ。それが良いですね――」

 

ゆっくりと、それは形作られた。先程よりもはるかに巨大な太陽が、上空へと作られる。その熱が一点へも漏れていないことが、逆にその少女の魔力操作の精密性を示しているのが老人には分かった。

 

「この力……なんのだ、お主は……」

 

「冥土の土産です。私は――『殺竜の一族(ジークアルト)』の者ですよ、ご老人……精々、我々帝国に仇なした事を後悔し逝きなさい」

 

それは老人に取って衝撃的な名だった。一瞬目を大きく見開く。

そしてその間にも少女の魔術は完成へと近づいていた。ギリギリと、引き絞られた弓のように閉まっていく手が閉じられた時が終わりの時。

段々と縮み、圧縮されてゆくそれを見てその事を悟った老人はアレンの肩を掴む。

 

「逃げるぞ……『転移』」

 

「……クソ」

 

そして音もなく二人の姿は消え去った。まるで元からそこになど存在しなかったかのように、その二人は蹂躙された都市だけを残してその姿は消える。

 

そして一人残された少女はそれを見て無駄を悟ったのか、握っていた手をゆっくりと開く。

太陽は空気が抜ける様に小さくなってゆき、やがて完全に消えた事を確認すると、少女は大きくため息をついた。

 

「……命拾いしましたね」

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