色竜と少女   作:ルーラララ

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色竜

「――のう、ノアルよ。お前は妾が『中』にいると気持ち悪いから、と、安易に『外』に出しおったな?」

 

「……ええ」

 

とても酷い絵面でしょう。少女に少女が問い詰められているのですから。なによりその問い詰めている方の少女は幼女と言っても差し支えない年齢に見えます。

その幼女はあり得ないほどの美貌を秘めたその幼い顔に青筋をたてて私を、幼気な少女を見つめます。薄い桃色の髪に、同じ色の瞳。鋭く整ったその顔に浮かぶのは強い怒りでした。

 

正座をしているこの部屋にはまだカーペットが引いてあるから良いものの、外でこのような事をやられたら鍛えてなどいない私の体は容易く被害を受けます。……まあ、彼女はそれも考えてここで私を叱っているのですけれど。

そして幼女に、アルアミネスに問い詰められる私は言います。と、言っても、弁解のしようがないのですが。

 

「ですが……ですがッ!今回は私が無事であったと否定させていただきます!」

 

「……はあ。お前はいまだにそのような愚痴をいいおるのか?妾は愛するお前のために言うておるんだぞ?」

 

『愛する』というワードにゾクリと背筋に怖気が走ります。そうです。この竜は、色竜は、どうやらかつて自分を殺した『ジークアルト(竜殺し)』。その血を欲していたようなのです。私が女で彼女も女と言うことは全く気にしていないようでした。それでは意味がないのではと何度か抗議しましたが、どうも彼女は『かつて自分を倒したジークアルトの血脈』と言うことが酷いソースになっているようで、聞く耳を持ちません。そんな上手い話はないということです。

ですがこんな色(ボケ)竜でも私がある程度譲歩しなければならないのには理由があります。

 

私はかつて、唯一『話しかけて』きた竜のその誘いに乗りました。

 

『肉体の支配権の譲渡』。

 

この条件――実際はもっと細かくあるのですが――で、私は彼女の力を自由に使うことが出来るのです。勿論それの匙加減は完全に彼女依存ですが。

故にこの肉体は私の物であって私の物ではありません。建前上は彼女の物です。

ですが唯一の救いは、どうやら彼女は私が彼女を『愛す』その時までその……手を出すつもりはないという事でした、はい……。

 

「……ほう?生意気にもその様な事を考えているとノアル、今お前を食っても良いぞ?勿論今貴様が考えた様な意味で、な」

 

どうも彼女と私は『繋がっている』ことを忘れていました……!

 

「ひッ……ヤです嫌です抗議します!私の意思を無視してのそういう行為はアウトです!」

 

「なるほどな……?ならば体を許してくれればお前に全力で力を貸すぞ?今までの様な紛い物の力ではなく、本物の妾の――『私』の――『竜』の力だ」

 

「…………や、です」

 

「間があったな……ふん、まあいい。お前が自分から妾を求めるようになる時までそれはお預けだ」

 

ホッと息をつきます。どうも私の力への願望は異常に強いようで、特に『竜の力』と聞くと誰彼構わず飛び付いてしまうような悪癖がありました。

……竜殺しの一族なのに何でなんでしょうね……。

 

私は落ち着くと立ち上がって自分の机へと向かいます。後ろにはアルアミネスが――

 

「アルアだ。そう呼べと言ったであろう」

 

「……はい……ごめんなさい、アルア」

 

淡々と後ろから訂正を入れてくるアルアに恐怖を感じます。後ろに着いてくるアルアは、私が椅子につくと見るや私の目の前に、膝の上に座り込みました。

……もうこのような事に関しては諦めています。私は広がる紙に羽ペンで文字を書き込み始めました。興味深そうに見ているアルアを横目に作業を進めます。

 

「……そういえば」

 

「なんだ?」

 

「そういえば、アルアは……他の方々は、何故私達の一族に力を貸していたのですか?」

 

普通なら自分を殺した者の血など、見ただけで殺したくなる気がするのですが。

 

「それは我々竜が何よりも力を神聖視するからだろうな」

 

「なるほど……?」

 

深くため息をつくとアルアは話始めます。どうも飲み込みが悪い私に苛立っているようでした。

 

「……かつてジークアルトに倒された竜達は、何かしらの『思い』があったに違いない」

 

違いないって、貴女もその一人でしょうに。

 

「うるさい。とにかく死の直前に、その竜達は『意思』を魔力で明確な指向性を持たせ、形にしたのだろうな。……それが、今お前の中に根付いている『力』の正体だ。まあどうも貴様に力を貸すなど死んでも嫌だ、と思っているらしいが……一体お前はどれだけこの一族で落ちこぼれなのだ?」

 

「大きなお世話ですよ。私はただ死にたくなくて他人より優位に立ちたいけど平凡でも良いから生きたい。ですがなんか凄い力がほしい普通の女の子です」

 

「なるほどな……ふむ。恐らくそれだろうな」

 

「一体何が問題だって言うんですか!」

 

普通ではダメなのですよ。むしろ時偶私ですら異常者扱いされるこの御時世です。

これまで『普通』ではなかった『継承者』とはなんなのでしょうか――私は頭を捻ります。

 

うんうん唸り、やがて結論がでない事を悟ると、私は作業に戻りました。すぐにぴょんとアルアが私の膝の上で立ち上がります。

不思議そうに私が首を傾げると――アルアは私の白銀の髪を掻き分け耳元へと口を近づけました。

 

「――愛しているぞ」

 

「ひッ――」

 

止めて下さい止めて下さい止めて下さい――!!!バカですか!

 

思わず飛び散るインクにも構わず、アルアから離れるために椅子ごとずり下がりました。

ですがそれにも負けず彼女はギュッと抱きついて離れず――そればかりか、くすぐるように再び耳元で囁くのです。

 

「何故だ?私はお前が私を愛すまで手を出さないとは言ったが、そのために何もしないとは言っていない」

 

「そうですけども!そうですけども!いつもの事ですけども!!」

 

本気で嫌がっている様子で顔を少し青くして抗議してくる私を見て、アルアは少しショックを受けたようでした。

 

ざまあみろと言うところですけども。




嫌がっている子がだんだん落ちていくのは好きです(迫真)。もう百合書けたからいいかな…。
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