色竜と少女 作:ルーラララ
「というか手紙が汚れたんですけどどうしてくれるんですか?」
「……妾はしらん」
「あっ――」
逃げました。彼女は一言言い捨てて霞となったかと思うと私の中に入ります。そしてそれっきりだんまりを決め込みました。
はあ……彼女が私の生命線だと言うのに。……どうやってご機嫌を取りましょうか?あっ……これアルアに聞かれてるんでしたっけ?
そう考えた時、突然部屋にノックが響きました。
「――お嬢様、旦那様がお呼びです」
…………アルア、後で一回だけなんでも言うこと聞くので力貸してくれません?
『――良いぞ!』
……わーい、ありがとうございます。
その後、私は泣きながら力を使いました。虚しかったです。
◆◇
「お父様がお呼びとは、一体何事でしょうか?」
「旦那様のお考えは私程度にはとても……」
私はアルアとの最悪の約束の結晶――『色彩』の力で見せかけの私を作り外に行かせました。現在私は自分を見えなくして部屋で『色彩』こと、世間一般に言う幻を操作しています。これ凄いんですよ。
魔力も自由に幻で作れるし、見た目も完璧、動いたときに連動する服や慣性の再現もばっちりでした。
私は始めてこの力を貸して貰ったとき興奮でどうやって使うか夜通し考えた物です。今では第一に代償が浮かびます。
「では私はここで」
「ありがとうございます……さて」
――ここから先は死地です。
というわけで、アルア。後は任せました。
『良いだろう。だが、妾との約束、忘れるなよ』
……勿論です。
私は部屋の体へと意識を戻る感覚と共にアルアにこちらの体(幻影なので体?ですが)を委ねました。
◆◇
三人の人間が一部屋に集まっていた。一人は壮年の男。その肉体は隆々とした筋肉に覆われており、その偉容をさらに大きく見せていた。その隣には書類をまとめていた一人の女がいる。
そしてもう一人――儚げな笑みをたたえた銀髪の少女は、女に目もくれず男へと言葉を発した。
「それで、お父様。一体如何様な要件でこの私をお呼びになられたのでしょう?」
「……先程襲撃があった最北の都市、ミスト。お前はどのようにしてその情報を知った」
「あらあらお父様、私はなにも知りませんよ?それに、私が知ったところで問題など無いでしょうに」
鋭い蒼の瞳で自身の親に当たる人物を見据えると、少女はゆっくりと微笑む。それに、少女とは瞳の色が違う男は尚それよりも強い意思を込めて少女を睨み付けた。
「――お前と王家との接触は我々に取って悪影響しか及ぼさないと、そう言ったはずだな?」
「お父様、どうして私がこの家を裏切っているというような言い方をなさるのですか?それに、再三言うように私がミストの情報を知ったところでなんの影響が――」
「お前がミストを守ろうとした。王家直轄の都市だ。意味は分かるな?我々は王家を諌める立ち位置の筈だ。
そしてお前にはそう教えたな?」
少女はにこやかに笑むと、しかし瞳は欠片も笑わさず男へと言った。
「お父様は記憶違いをなされているのかもしれませんね、落ちこぼれだった私にそのような話をされた記憶がおありで?」
「――『今』のお前の立ち場を考えろ」
「ふふふ……面白い事を言いますね、お父様。これ以上話が無いのでしたら私はこれで」
「まて――」
突然姿が霞となって消えたかと思うと、その少女は跡形もなく消え去った。残った静寂には嫌なモノが混ざる。
そして少し後、男の後ろに立つ女はゆっくりと口を開いた。その声には苦々しさと、なぜか少しの喜びの様なものが混ざっていた。
「……お嬢様は、成長なされましたね」
「ああ……
交わされた会話を最後に、部屋には静寂が戻った。
分かりづらかったので一応補足。
アルアはノアルに秘密にしていることが沢山あります。家の使命などはそれに当たりますね。
特にその大きな物として、親との関係を体の支配権を使ってバレないように段々と変えている事があります。今回はノルアからの要望があったのでそれに答えた形で代わりましたが、何も言われなくともどちらにせよ今回の様な形になりました。